新規開業医のための保険診療の要点(総論)
[15] レセプトの点検、審査、返戻、査定、再審査請求など
I レセプト点検
診療報酬明細書(レセプト)は、診療月の翌月10日までにまとめて支払基金、国保連合会に請求することになりますが、その前にレセプトを点検することになります。
患者の名前、性別、生年月日、保険証の記号、番号、どれか一つでも不備があれば返戻されます。病名が正しく記載されているか、日付があっているかどうか、病名と診療内容があっているか等をチェックします。
II レセプト審査
請求されたレセプトを支払基金、国保連合会では、請求内容が保険診療のルール(療養担当規則、診療報酬点数表等)に対し適正かどうかを審査します。
審査は「診療担当者代表」「保険者代表」「学識経験者」により構成される「審査委員会」により審査されます。(「診療担当者代表」「保険者代表」は同数となります。)
具体的には
- レセプトが療養担当規則、点数表、薬事承認事項、関連通知等に従って、適正に算定されているか。
- 病名や診療開始日に照らして診療内容が一致しているか、妥当かどうか。
- 診療内容が水準的かどうか、医師の裁量の範囲内かどうか。
- 「医科点数表の解釈」、関連通知等、事務的レベルで判断できるものについては審査委員会の前にコンピュータチェックが行われます。
III レセプト返戻
レセプトを審査した結果、記載項目の不備、不明点などが判明し、医療行為の適否について判断ができなかった等、請求内容が不適切な場合や、何かしらの疑義があった場合にレセプトが医療機関に差し戻されることを「返戻」といいます。
返戻されたレセプトは、疑義等を訂正し再度請求することとなります。返戻されたレセプトを再度請求しなおすため、支払等は1か月以上遅れることになります。
レセプトの返戻で最も多いのが、名前、性別、生年月日、番号、記号の誤記など事務手続き上の間違いです。(図1参照)
IV レセプト査定
レセプトの項目について審査支払機関が審査した結果、保険診療のルール等上、不適当と判断した場合、請求自体を認めないことや、請求項目の減点等されることを査定といいます。査定された内容は「増減点連絡書(通知書)」により医療機関に通知されます。(図2参照)
査定された理由は査定記号(カッコ内のアルファベット)で表されていますので具体的にその意味を説明します。
1 診療内容に関するもの
- 医学的に適応と認められないもの(A)
- 薬剤の適応に関するもの
- 薬剤以外の診療行為の適応に関するもの
- 病名が抜けていたり、間違っている等
- 医学的に過剰、重複と認められるもの(B)
- 薬剤の過剰投与に関するもの
- 薬剤以外の診療行為の回数過剰、重複に関するもの
- 薬の過剰、検査の過剰等
- (1)・(2)以外の医学的理由により適当と認められないもの(C)
- 禁忌、用法外使用に関するもの、A・B以外の医学的に不適切なもの
- 告示、通知に示された算定要件に診療行為が合致しないもの(D)
- 縦覧点検によるもの(J)
- 過去のレセプトを参考に査定されます。
例)PSA の検査は3カ月に1回算定可能であるが、先月も実施している等
- 過去のレセプトを参考に査定されます。
- 横覧点検によるもの(Y)
- 入院分と入院外分のレセプトを照合
例) 特定疾患療養管理料は、退院後1 か月は算定できないが、退院直後に算定している等
- 入院分と入院外分のレセプトを照合
- 突合点検によるもの(T)
院外処方を行ったレセプトと調剤レセプトの傷病名があっているか、適応のない医薬品が処方されていないかを突合審査します。
突合した結果、請求が適応外等不適切であった場合は、調剤薬局が購入し処方した薬剤であったとしても、院外処方せんを発行した医療機関が減点されます。
支払基金では「縦覧点検」「横覧点検」「突合点検」の点検は実施していますが、(J)(Y)(T)の記号は使用していません。
また、「横覧点検」という表現もしていません。
2 事務上に関するもの
- 固定点数が誤っているもの(F)
- 請求点数の集計が誤っているもの(G)
- 縦計計算が誤っているもの(H)
- その他(K)
V レセプト再審査請求
「増減点連絡書(通知書)」を確認した後、査定の判断に納得がいかない場合は、審査支払機関に再審査を申し立てることができます。(医療機関再審査)
その結果は原審通り、一部復活、復活の3種類になります。
再審査の方法は、「再審査請求書」を作成し、減点通知書と対象のレセプトを添付し審査支払機関へ郵送するか、地区医師会に提出してください。(図3 参照)
再審査請求期限は原則6カ月です。
また、保険者が審査支払機関の結果に納得がいかない場合は、やはり、再審査を申し立てることができます。(保険者再審査)
VI 支払
医療機関への医療費の支払は、計算センターで作成された医療機関ごとの総括票(支払額のデータ)の金額と医療機関の請求額とを突合するなどの確認を行なった後、診療した月の翌々月の原則21日までに医療機関の指定する銀行口座に振り込む方法によって行います。
図1及び図2は、国民健康保険中央会ホームページより抜粋
以下、「社会保険診療報酬支払基金」より抜粋