新規開業医のための保険診療の要点(総論)
[11] 生体検査・画像検査・病理検査
I 生体検査
生体検査(生理検査)とは、受診者自身を対象とし、各種心電図、脳波、筋電図などの電極を通した電気的情報を調べる検査や、肺機能検査(呼吸機能検査)、超音波検査、心音図、基礎代謝、サーモグラフィなどがあります。
<注意点>
1 超音波検査
- 超音波検査を同一の部位に同時に2以上の方法を併用する場合は、主たる検査方法により1回として算定する。また、同一の方法による場合は、部位数にかかわらず、1回のみの算定とする。
- 超音波検査(胎児心エコー法を除く。)を算定するに当たっては、当該検査で得られた主な所見を診療録に記載すること又は検査実施者が測定値や性状等について文書に記載すること。なお、医師以外が検査を実施した場合は、その文書について医師が確認した旨を診療録に記載すること。
- 検査で得られた画像を診療録に添付すること。また、測定値や性状等について文書に記載した場合は、その文書を診療録に添付すること。
- 超音波検査の記録に要した費用(フィルム代、印画紙代、記録紙代、テープ代等)は、所定点数に含まれる。
- 体表には肛門、甲状腺、乳腺、表在リンパ節等を含む。
- 在宅患者訪問診療料(I)又は在宅患者訪問診療料(II)を算定した日と同一日に、患家等で断層撮影法(心臓超音波検査を除く。)を行った場合は、部位にかかわらず、訪問診療時に行った場合を月1回に限り算定する。
- 胸腹部を算定する場合は、検査を行った領域について診療報酬明細書の摘要欄に該当項目を記載すること。複数領域の検査を行った場合は、その全てを記載すること。
- 断層撮影法(心臓超音波検査を除く。)において血管の血流診断を目的としてパルスドプラ法を併せて行った場合には、加算を算定できる。
- 心臓超音波検査の所定点数には、同時に記録した心音図、脈波図、心電図及び心機図の検査の費用を含む。
- 心臓超音波検査の所定点数にはパルスドプラ法の費用が含まれており、別に算定できない。
- 負荷心エコー法には、負荷に係る費用が含まれており、また併せて行ったトレッドミルによる負荷心肺機能検査、サイクルエルゴメーターによる心肺機能検査は別に算定できない。
- 末梢血管血行動態検査は、慢性動脈閉塞症の診断及び病態把握のために行った場合に算定する。
- 脳動脈血流速度連続測定とは、経頭蓋骨的に連続波又はパルスドプラを用いて、ソノグラムを記録して血流の分析を行う場合をいう。
- 脳動脈血流速度マッピング法とは、パルスドプラにより脳内動脈の描出を行う場合をいう。
- 血管内超音波法の算定は次の方法による。
- 検査を実施した後の縫合に要する費用は所定点数に含まれる。
- 本検査を、左心カテーテル検査及び右心カテーテル検査と併せて行った場合は、左心カテーテル検査及び右心カテーテル検査の所定点数に含まれる。
- エックス線撮影に用いられたフィルムの費用は、フィルムの所定点数により算定する。
- 呼吸心拍監視、新生児心拍・呼吸監視、カルジオスコープ(ハートスコープ)、カルジオタコスコープの費用は、所定点数に含まれる。
- 「造影剤を使用した場合」とは、静脈内注射、動脈注射又は点滴注射により造影剤を使用し検査を行った場合をいう。また、心臓超音波検査においては、心筋虚血の診断を目的とした場合に算定できる。この場合、心筋シンチグラフィーを同一月に実施した場合には主たるもののみ算定する。
- 呼吸心拍監視の算定には以下に注意すること
- 呼吸心拍監視は、重篤な心機能障害若しくは呼吸機能障害を有する患者又はそのおそれのある患者に対して、常時監視を行っている場合に算定されるものであるため、診療報酬請求にはこれらの症状を明記すること。
- 閉鎖循環式全身麻酔と同一日に、呼吸心拍監視を行った場合は、当該検査の費用は、当該麻酔の費用に含まれ算定できない。
- 観察した心電曲線、心拍数の観察結果の要点を診療録に記載しなければならない。
- 残尿測定検査は、算定できる対象患者が前 立腺肥大症、神経因性膀胱又は過活動膀胱と定められており、対象外の患者に対し超音波若しくはカテーテルを用いて残尿を測定した場合は算定できない。
- 令和4年度より、脂肪性肝疾患の患者であって慢性肝炎又は肝硬変の疑いがある患者に対し、超音波減衰法による肝脂肪化定量を測定した場合は「超音波減衰法検査(200点)」が新設された。
2 経皮的動脈血酸素飽和度を算定する場合には以下について注意すること。
本検査は、算定可能な患者(呼吸不全等)や酸素吸入等を行っている又はその必要がある場合など患者の状態が定められており、それ以外の患者や状態に対しては算定することは出来ない。
- 酸素吸入を行っていない。また、行う必要のない患者には算定できない。
- 閉鎖循環式全身麻酔と同一日に、経皮的動脈血酸素飽和度を行った場合は、当該検査の費用は、当該麻酔の費用に含まれ算定できない。
3 認知機能検査その他の心理検査を実施した場合は、その分析結果をカルテに記録しなければならない。
II 画像検査
画像検査は、画像によって病気の有無や広がり、性質を調べる検査です。画像検査には、X線検査(レントゲン検査)、CT検査、MRI(磁気共鳴画像)検査、PET検査、超音波(エコー)検査などの検査があります。
画像診断等を行った場合は、その診断内容を診療録に記載しなければなりません。
<注意点>
1 エックス線
- エックス線診断の費用は、区分番号E000に掲げる透視診断若しくは区分番号E001に掲げる写真診断の各区分の所定点数、区分番号E001に掲げる写真診断及び区分番号E002に掲げる撮影の各区分の所定点数を合算した点数若しくは区分番号E001に掲げる写真診断、区分番号E002に掲げる撮影及び区分番号E003に掲げる造影剤注入手技の各区分の所定点数を合算した点数又はこれらの点数を合算した点数により算定する。
- 同一の部位につき、同時に2以上のエックス線撮影を行った場合における写真診断の費用は、第1の診断については写真診断の各所定点数により、第2の診断以後の診断については各所定点数の100分の50に相当する点数により算定する。
- 同一の部位につき、同時に2枚以上のフィルムを使用して同一の方法により、撮影を行った場合における写真診断及び撮影の費用は、第1枚目の写真診断及び撮影の費用については写真診断及び撮影の各所定点数により、第2枚目から第5枚目までの写真診断及び撮影の費用については写真診断及び撮影の各所定点数の100分の50に相当する点数により算定し、第6枚目以後の写真診断及び撮影については算定しない。
- 撮影した画像を電子化して管理及び保存した場合においては、電子画像管理加算として、前3号までにより算定した点数に、一連の撮影について次の点数を加算する。ただし、この場合において、フィルムの費用は、算定できない。
- 単純撮影の場合57点
- 特殊撮影の場合58点
- 造影剤使用撮影の場合66点
- 乳房撮影の場合54点
- 特定機能病院である保険医療機関における入院中の患者に係るエックス線診断料は、基本的エックス線診断料の所定点数及び当該所定点数に含まれない各項目の所定点数により算定する。
<<エックス線診断に係る一般的事項>>
- エックス線写真撮影の際に失敗等により、再撮影をした場合については再撮影に要した費用は算定できない。再撮影に要した費用は、その理由が患者の故意又は重大な過失による場合を除き、当該保険医療機関の負担とする。
- 「同一の部位」とは、部位的な一致に加え、腎と尿管、胸椎下部と腰椎上部のように通常同一フィルム面に撮影し得る範囲をいう。ただし、食道・胃・十二指腸、血管系(血管及び心臓)、リンパ管系及び脳脊髄腔については、それぞれ全体を「同一の部位」として取り扱うものである。
- 「2」又は「3」の「同時に」とは、診断するため予定される一連の経過の間に行われたものをいう。例えば、消化管の造影剤使用写真診断(食道・胃・十二指腸等)において、造影剤を嚥下させて写真撮影し、その後2~3時間経過して再びレリーフ像を撮影した場合は、その診断料は100分の50とする。ただし、胸部単純写真を撮影して診断した結果、断層像の撮影の必要性を認めて、当該断層像の撮影を行った場合等、第1の写真診断を行った後に別種の第2の撮影、診断の必要性を認めて第2の撮影診断を行った場合は、「同時に」には該当せず、第2の診断についても100分の50とはしない。
- 「2以上のエックス線撮影」とは、単純撮影、特殊撮影、造影剤使用撮影又は乳房撮影のうち2種以上の撮影を行った場合をいう。この場合、デジタル撮影及びアナログ撮影については区別せず、1種の撮影として扱う。
- 「同一の方法」による撮影とは、単純撮影、特殊撮影、造影剤使用撮影又は乳房撮影のそれぞれの撮影方法をいい、デジタル撮影及びアナログ撮影については「同一の方法」として扱う。
- 特殊撮影、乳房撮影、心臓及び冠動脈の造影剤使用撮影の診断料及び撮影料は、フィルム枚数にかかわらず、一連のものについて1回として算定する。ただし、別個に撮影した両側の肺野の断層写真等、撮影部位の異なる場合(乳房撮影を除く。)は、部位ごとに1回とする。
- 画像診断管理加算(1・2)を算定している場合には、地方厚生(支)局長に届け出た、専ら画像診断を担当する常勤の医師以外の医師が読影したものは算定してはならない。
- 医学的必要性が乏しい、または結果が治療に反映されていない画像診断等は認められません。
- 画像診断は患者ごと、症状ごとに必要に応じて実施するものであるから、画一的・傾向的な画像検査は、査定、指導等の対象となる場合がある。また、実施回数の過剰、または重複についても、同様に査定、指導の対象となる場合がある。
- 研究目的、または健康診断目的と推定されるものは保険適用外
- フィルム枚数や撮影数は必要最小限度にとどめること。部位を変えて毎月CTやMRI検査を行う傾向が見られる(例:頭部→胸部→腹部、など)
2 電子画像管理加算
- 画像を電子化して管理及び保存した場合とは、デジタル撮影した画像を電子媒体に保存して管理した場合をいい、フィルムへのプリントアウトを行った場合にも当該加算を算定することができるが、本加算を算定した場合には当該フィルムの費用は算定できない。
- 電子画像管理加算は、同一の部位につき、同時に2種類以上の撮影方法を使用した場合は一連の撮影とみなし、主たる撮影の点数のみ算定する。
- 電子画像管理加算は、他の医療機関で撮影したフィルム等についての診断のみを行った場合には算定しない。
III 病理検査
病理検査とは、疾患の診断や原因(病因)の究明を目的として、採取された臓器や組織(ヒトや動物など)を対象に行う検査のことです。
病理検査は、主にがんの発見、診断を目的として行われます。そのために組織や細胞を顕微鏡で観察して調べます。大きく分けると、下記の方法で病理検査を行います。
1 組織学的診断法(組織検査)
生体の一部から摘出した組織の顕微鏡標本を作製し、病理医が顕微鏡で標本を見て良性・悪性の診断を行います。
2 術中迅速診断検査
手術中に、病変部が良性か悪性か、リンパ節等に転移がないか、病変部が取りきれているかなどを確認するために行う検査です。通常の組織検査と異なり、組織を急速に凍結させて標本を作ります。結果報告まで30~40分程度です。この検査により、手術の方針が決定されます。
3 細胞学的診断法(細胞診検査)
自然剥離している細胞または人口的に擦過したもの、組織の捺印、穿刺吸引により採取した細胞の標本を作製し、顕微鏡下で観察します。細胞学的に癌を診断する為に行われる検査です。
4 病理解剖
患者様が亡くなられた際、ご遺族のご理解とご承諾を得られた場合、疾病の原因、診断及び治療効果の検証の目的で、遺体を解剖します。
病理判断料について、病理学的検査の結果に基づく病理判断の要点を診療録に記載しなければなりません。
<注意点>
1 病理診断
- 病理診断の費用には、病理標本作製を行う医師、看護師、臨床検査技師、衛生検査技師及び病理診断・判断を行う医師の人件費、試薬、デッキグラス、試験管等の材料費、機器の減価償却費、管理費等の費用が含まれる。
- 病理標本作製に当たって使用される試薬は、原則として医薬品として承認されたものであることを要する。
- 病理標本を撮影した画像を電子媒体に保存した場合、保存に要した電子媒体の費用は所定点数に含まれる。
- 簡単な病理標本作製の費用は、基本診療料に含まれ、別に算定できない。
- 病理標本作製のうち簡単な病理標本作製の病理標本作製料は算定できないが、特殊な病理標本作製については、その都度当局に内議し、最も近似する病理標本作製として通知されたものの算定方法及び注(特に定めるものを除く。)を準用して、準用された病理標本作製料に係る病理診断・判断料と併せて算定する。
- 保険医療機関間の連携により病理診断を行った場合は、標本若しくは検体(以下「標本等」という。)の送付側又はデジタル病理画像の送信側の保険医療機関において病理診断料を算定できる。なお、その際には、送付側又は送信側の保険医療機関において、別紙様式44又はこれに準じた様式に診療情報等の必要事項を記載し、受取側又は受信側の保険医療機関に交付するものであること。 更に、病理標本の作製を衛生検査所に委託する場合には、衛生検査所にも当該事項を同様に交付すること。また、病理診断管理加算1又は2については、標本若しくは検体の受取側又はデジタル病理画像の受信側の保険医療機関において、病理診断を専ら担当する常勤の医師が病理診断を行い、標本等の送付側又は送信側の保険医療機関にその結果を文書により報告した場合に当該基準に係る区分に従い、送付側又は送信側の保険医療機関において所定点数に加算する。標本等の受取側又は受信側の保険医療機関における診断等に係る費用は、標本等の送付側又は送信側、標本等の受取側又は受信側の保険医療機関間における相互の合議に委ねる。
- 保険医療機関間のデジタル病理画像の送受信及び受信側の保険医療機関における当該デジタル病理画像の観察による術中迅速病理組織標本作製を行った場合は、送信側の保険医療機関において術中迅速病理組織標本作製及び病理診断料の「1」を算定できる。また、病理診断管理加算1又は2については、受信側の保険医療機関が、当該加算の施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長に届け出た保険医療機関であり、病理診断を専ら担当する常勤の医師が病理診断を行い、送信側の保険医療機関にその結果を報告した場合に当該基準に係る区分に従い、所定点数に加算する。受信側の保険医療機関における診断等に係る費用は、受信側、送信側の保険医療機関間における相互の合議に委ねるものとする。
- 保険医療機関間のデジタル病理画像の送受信及び受信側の保険医療機関における当該デジタル病理画像の観察による迅速細胞診を行った場合は、送信側の保険医療機関において迅速細胞診及び病理診断料の「2」を算定できる。また、病理診断管理加算1又は2については、受信側の保険医療機関が、当該加算の施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長に届け出た保険医療機関であり、病理診断を専ら担当する常勤の医師が病理診断を行い、送信側の保険医療機関にその結果を報告した場合に当該基準に係る区分に従い、所定点数に加算する。受信側の保険医療機関における診断等に係る費用は、受信側、送信側の保険医療機関間における相互の合議に委ねるものとする。
- デジタル病理画像に基づく病理診断については、デジタル病理画像の作成、観察及び送受信を行うにつき十分な装置・機器を用いた上で観察及び診断を行った場合に算定できる。なお、デジタル病理画像に基づく病理診断を行うに当たっては、関係学会による指針を参考とすること。
- 病理診断管理加算(1・2)について、病理診断を専ら担当する常勤の医師以外の医師が病理診断を行った場合は算定できません。