新規開業医のための保険診療の要点

新規開業医のための保険診療の要点(各論)

[2-7] 連携(病診連携・医介連携・診療情報提供)

I 病診連携・医介連携

1 病診連携等とは

国は少子高齢化に伴う疾病構造・医療需要の変化に対し、地域医療構想による医療機能の分化と連携の推進や、医師確保計画および外来医療計画による医療提供体制の整備の方向性を示してきました。
国(厚生労働省)が進めている「医療の機能分化と連携」とは、「病院完結型の医療」から「地域完結型の医療」への転換のために、各々の医療機関の機能に応じて役割を分担し(機能分化)、患者の状態に応じて医療機関同士が連携することで「医療の質、患者の生活の質や満足度の向上を目指した医療提供体制の均てん化、および効率化」を実現するため目指すことであります。
わが国には大学病院からかかりつけ医まで様々な医療機関があります。これらの病院が連携することで、従来の「一病院完結型医療」から、「地域完結型医療」へ転換し、各地域にて切れ目のない医療を提供する体制を構築することを目的とします。
特に、かかりつけ医機能・総合診療機能を十全に発揮するためには高度医療・先進医療を担う特定機能病院等をはじめ、高度急性期機能、急性期機能、回復期機能、慢性期機能等地域医療を支える医療機関との医療連携、地域包括ケアシステム、ひいては地域共生社会実現のために様々な医療職、介護福祉職との多職種連携、行政との連携など様々な連携の推進が必要です。

2 病介連携とは

我が国における医療及び介護の提供体制は、世界に冠たる国民皆保険を実現した医療保険制度及び創設から22年目を迎え社会に定着した介護保険制度の下で、着実に整備されてきました。しかし、高齢化の進展に伴う高齢者の慢性疾患の罹患率の増加により疾病構造が変化し、医療ニーズについては、病気と共存しながら、生活の質(QOL)の維持・向上を図っていく必要性が高まってきています。一方で、介護ニーズについても、医療ニーズを併せ持つ重度の要介護者や認知症高齢者が増加するなど、医療及び介護の連携の必要性はこれまで以上に高まってきています。特に、認知症への対応については、地域ごとに、認知症の状態に応じた適切なサービス提供の流れを確立するとともに、早期からの適切な診断や対応等を行うことが求められています。
また、人口構造が変化していく中で、医療保険制度及び介護保険制度については、給付と負担のバランスを図りつつ、両制度の持続可能性を確保していくことが重要です。
(厚生労働省ホームページより抜粋)
2014年に「地域医療・介護総合確保推進法」が成立され、区市町村において「在宅医療・介護連携の推進事業」が進められています。
このような背景のもと、自治体ごとの医療と介護の連携、具体的には、保健所、地域包括支援センター、市町村、医療機関、介護施設の連携の強化がますます必要になってきています。

II 診療報酬上の留意事項

1 診療情報提供料1

診療に基づき、患者の同意を得て、診療情報を示す「診療情報提供書」を添えて患者の紹介を行った場合に、紹介先の医療機関ごとに患者1人につき月1回に限り算定できます。

  1. 医療機関以外であっても、以下の示す施設、状況等で、患者等の同意を得て診療情報を示す「診療情報提供書」を添えて患者の紹介を行った場合は算定可能です。
    1. 区市町村又は指定居宅介護支援業者等
    2. 精神障害者施設等(患者または家族等の同意)
    3. 小児慢性特定疾病やアレルギー疾患を有する児童等及び医療的ケア児が通学する学校医等に対して、主治医が学校医等へ診療情報提供を行った場合ただし、学校医が学校等に対して「情報提供書」を提出した場合は算定できません。
      説明:令和4年度の診療報酬改定によりこれまでの情報提供先である小学校、中学校等に加え幼稚園型認定こども園を含む幼稚園、高等学校、中等教育学校の後期課程、特別支援学校の幼稚部及び高等部、高等専門学校等が追加されました。
      保健所若しくは精神保健福祉センター、児童相談所、指定障害児相談支援事業者に情報提供した際も算定できます。
      小児慢性特定疾病医療支援の対象である患者、障害児である患者又はアナフィラキシーの既往歴のある患者若しくは食物アレルギー患者について、当該患者が学校生活を送るに当たり必要な情報を、学校医等に対し提供した場合も算定可能です。
  2. 診療情報提供書には紹介先の医療機関名等の記載が無ければなりません。転居等で次に受診する医療機関が判明していない場合も算定はできませんので、ご注意ください。
  3. 紹介元医療機関への単なる返事など、受診行動を伴わない情報提供は算定できません。
  4. 診療を伴わない情報提供は算定できません。
  5. 診療情報提供料1の加算は下記のとおりです。
    1. 精神障害者施設等に対して、退院後の情報を提供し紹介した場合、200点が加算できます。
    2. ハイリスク妊産婦共同管理料1の算定医療機関から、別の同1算定医療機関に対し情報提供し紹介を行った場合は、ハイリスク妊婦紹介加算として、妊娠中1回に限り200点が加算できます。
    3. 認知症の疑い患者について鑑別診断等の必要を認め、専門医療機関に対して情報提供し紹介を行った場合は、認知症専門医療機関紹介加算として100点が加算できます。
      また、専門医療機関で認知症と診断された外来患者が、症状が増悪し当該専門医療機関に情報提供し紹介を行った場合は、認知症専門医療機関連携加算として50点が加算できます。
    4. 精神科以外の保険医療機関が、うつ病等の診断治療等の必要性を認め、精神科医療機関に予約を行い情報提供し紹介を行った場合は、精神科医連携加算として200点が加算できます。
    5. 長期継続的にインターフェロン治療が必要な肝炎の外来患者を、連携して治療を行う肝疾患の専門医療機関に対して紹介を行った場合は、肝炎インターフェロン治療連携加算として50点が加算できます。
    6. 地域連携診療計画加算を算定する患者について退院月又は翌月に、連携する医療機関に対し、地域連携診療計画に基づく情報を提供した場合に、地域連携診療計画加算として50点が加算できます。
    7. 入院又は介護老人保健施設等に対して、訪問看護ステーションから得た情報提供し紹介を行った場合は、療養情報提供加算として50点が加算できます。
    8. 施設基準を申請している保険医療機関が、患者の紹介を行う際に、検査結果、画像情報等のうち主要なものについて、電子的方法により閲覧可能な形式で提供した場合又は電子的に送受される診療情報提供書に添付した場合に、検査・画像情報提供加算として、次に掲げる点数を加算できます。
      • ア 退院する患者について、当該患者の退院日の属する月又はその翌月に、必要な情報を提供した場合200点。ただし、上記①を算定している場合は、算定はできません。
      • イ 入院中の患者以外の患者について、必要な情報を提供した場合30点を加算できます。

2 診療情報提供料2

治療法の選択等に関して、別の医療機関の医師の意見を求める患者の要望(セカンドオピニオン)により、治療計画、検査結果等、別の医療機関で必要な情報を添付して「診療情報提供書」を患者に提供し、別の医療機関による医師の助言を得るための支援を行った場合に、患者1人につき月1回に限り算定できます。

注:セカンドオピニオンは、現在診察を実施している医療機関以外の医師による助言を求めるものです。セカンドオピニオンを実施する医療機関は診療情報提供書等の資料により、治療方針等について「助言」や「変更」など患者に対し提案することになりますので、基本的には診療とはならず、一般的には自費診療になります。(セカンドオピニオンの結果、診察や治療を実施した場合は保険診療となります。)このため、患者からセカンドオピニオンの要望があった場合は、セカンドオピニオンを実施する医療機関では自費となる事を説明する事が必要です。また、セカンドオピニオンを受ける医療機関が、実施する体制等を整えているかを事前に確認していることも必要となります。
セカンドオピニオンの結果により、治療方針の変更を患者から求められた場合に、自院では対応できず、セカンドオピニオンを実施した医療機関での診療を患者が望む場合の紹介状は、診療情報提供料1を算定することになります。

3 連携強化診療情報提供料 届出必要

令和4年度の診療報酬改定において、診療情報提供料(III)は、名称を「連携強化診療情報提供料」に変更するとともに、かかりつけ医機能を有する医療機関等から紹介された患者に対して継続的な診療を行っている場合であって、紹介元の医療機関からの求めに応じて診療情報の提供を行った場合、患者1人につき月1回に限り150点を算定できます。
連携強化診療情報提供料を算定する場合には、紹介先、紹介元の医療機関が、注1から注5までのいずれかに該当していることが必要です。

連携強化診療情報提供料 注のまとめ表1
注番号 紹介元 対象患者 紹介先
紹介元に診療情報を提供した場合に、連携強化診療情報提供料が算定可能
定回数制限
注1 地域包括診療加算等かかりつけ医機能の施設基準の届出ている事 敷地内禁煙 月に1回
注2 200床未満の病院又は診療所 敷地内禁煙かつ外来機能報告対象病院等
注3 敷地内禁煙かつ地域包括診療加算等かかりつけ医機能の施設基準を届出ている事
注4 難病(疑いを含む)患者 難病診療連携拠点病院又は難病診療分野別拠点病院
てんかん(疑いを含む)の患者 てんかん支援拠点病院
注5 妊娠中の患者 3月に
1回
産科又は産婦人科を標榜 敷地内禁煙 月に
1回
産科又は産婦人科を標榜で、妊娠中の患者の診療につき十分な体制を整備してる事

4 電子的診療情報評価料

上記1の「診療情報提供料1」(5)診療情報提供料1の加算の⑨検査・画像情報提供加算は、診療情報を電子媒体により提出した紹介元が算定できますが、電子的診療情報評価料は、施設基準を申請している保険医療機関(紹介先)が、診療情報提供書の提供を受けた患者に係る検査結果、画像情報、画像診断の所見、投薬内容、注射内容、退院時要約等の診療記録のうち主要なものについて、電子的方法により閲覧又は受信し、当該患者の診療に活用した場合に30点が算定できます。

5 がん治療連携指導料

「がん治療連携計画策定料」を算定した外来患者の、治療計画に基づく診療情報を計画策定病院に文書により提供した場合、がん治療連携指導料として月1回に限り300点が算定できます。ただし、診療情報提供料1との併算定はできません。

6 退院時共同指導料1

入院中の患者に対し、退院後に在宅での療養を担う医療機関の医師等が、入院中の医療機関に赴き、退院後の在宅での療養に必要な説明、指導を、入院医療機関の医師等と共同して行った上で、文書により情報提供した場合に、入院中に1回(別に定める疾病の患者については2回)に限り、在宅療養を担う医療機関で退院時共同指導料1(在宅療養支援診療所:1500点、それ以外:900点)が算定できます。(入院医療機関では退院時共同指導料2を算定)
在宅療養を担う医療機関は、入院中の医療機関で行う共同指導の際に、初診料、再診料、往診料、訪問診療料は算定できません。

7 療養・就労両立支援指導料

厚生労働省においては、「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」を作成し、企業や医療機関における仕事と治療の両立支援について取り組んできます。診療報酬においても平成30年診療報酬改定において「療養・就労両立支援指導料」が設定され、当初、対象疾患が「がん」であったものが、令和2年度には「脳血管疾患」「肝疾患(慢性経過)」、「指定難病」が、令和4年度には「心疾患」「糖尿病」「若年性認知症」が追加されました。

  1. 本指導料は、患者と企業が共同で作成した勤務情報書に基づき、主治医が、患者に療養上必要な指導を実施し、企業の「産業医」「総括安全衛生管理者」「衛生管理者」「安全衛生推進者」「衛生推進者」「保健師」に対して診療情報を提供した場合について評価するものです。診療情報を提供した後であっても、勤務環境の変化により、再度指導等を行った場合でも算定できます。初回が800点、2回目以降が400点月1回算定できます。
  2. 施設基準を申請した保険医療機関において、当該患者に対して、看護師、社会福祉士、精神保健福祉士又は公認心理師が相談支援を行った場合に、相談支援加算として、50点加算できます。
  3. 産業医等への文書の提供に係る診療情報提供料1又は診療情報提供料2の費用は、本指導料の所定点数に含まれ算定できません。
  4. 施設基準を申請した保険医療機関において、療養・就労両立支援指導料を算定すべき医学管理を情報通信機器を用いて行った場合は、初回は696点、2回目以降は348点を算定することになります。

III 選定療養(紹介状なしで大病院に受診する場合の定額負担)

令和4年診療報酬改定により、紹介状なしで200床以上の病院を受診した場合、選定療養費として患者から定額負担額の金額及び算定方法が変更となっています。(令和4年10月実施)

1 定額負担金額

  1. 初診 5,000円 ⇒ 7,000円
  2. 再診 2,500円 ⇒ 3,000円

2 算定方法

定額負担金額の変更に伴い、算定方法についても変更になり、保険給付範囲からの200点控除して計算することとなりました。

例:総医療費10,000円(1000点)で受診した3割負担の患者の場合
※令和4年9月まで
総医療費 保険者請求分 一部負担金 選定療養 患者負担金合計
10,000円7,000円3,000円5,000円8,000円
3,000+5,000=8,000円
※令和4年10月から
厚生労働省説明文書の計算(保険者請求分と一部負担金を各々200点控除)
総医療費 保険者請求分 一部負担金 選定療養 患者負担金合計
10,000円 5,600円 2,400円 7,000円 9,400円
7,000-(2,000×0.7)
=5,600円
3,000-(2,000×0.3)
=2,400円
2,400+7,000=8,000円

IV 医療機器の共同利用

CT、MRI、PET、マンモグラフィー、放射線治療などの高額医療機器については、人口当たりの台数に地域差があり、また医療機器ごとに地域差の状況は異なるため、国は効率的な医療提供体制の構築に向けて、医療機器の共同利用による活用を求めています。
医療機器の共同利用を実施した場合、算定方法は以下のとおりとなります。

1 依頼を受ける医療機関が「設備の使用(撮影等)のみ実施した場合」

依頼を受ける医療機関においてCT等の撮影等のみ行う場合は、初診料、診療情報提供料I、検査料、画像診断料等は算定できません。
依頼する医療機関が実施したものとして、画像診断料等の保険請求を行います。このため、依頼する医療機関と依頼される医療機関との間で使用契約等を締結し、依頼する医療機関が使用料を、依頼を受ける医療機関に支払うことになります。
この場合、依頼する医療機関はCT等の高額医療機器を設置していないため、診療報酬明細書の摘要欄に「画診共同」と記載してください。

2 依頼を受ける医療機関が「設備の使用(撮影等)だけでなく読影等も実施した場合」

検査や画像撮影の結果を読影も含めて実施し、さらに対診も実施した後、その読影結果等を依頼した医療機関に文書により回答した場合には、依頼された医療機関は初・再診料や診療情報提供料I、画像診断等を算定できます。この場合は、「画診共同」の事例にはあたりません。

3 「CT・MRI」共同利用におけるその他の留意点

診療報酬改定において高性能CT・MRIの点数に、「共同利用施設において行われる場合」の点数が設定されています。共同利用の実績が10%以上であれば20点多い点数を算定できますが、上記1により依頼する医療機関が画像診断料等を算定する場合は、依頼を受ける医療機関の共同利用の実績にかかわらず「共同利用施設において行われる場合」の点数を算定できます。

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