開業医のための保険診療の要点(II. 診療科別の基礎知識)
[7] 整形外科
保険診療に伴う請求は医科診療報酬点数表に基づいて行います。この場合該当する点数項目の確認だけでなく、通則や診療報酬の算定要件、診療録への要点記載、診療報酬明細書(レセプト)への記載要件なども十分確認してください。
算定に当たり厚生局への届出を要する項目が多数あり、社保・国保への支払い請求時に査定されなくても、厚生局個別指導において未届けが判明した場合、返還命令を出されることがあります。
社保・国保へ保険請求した項目が査定される場合がありますが、その場合には「A:保険適応なし」、「B:過剰な実施」、「C:不適切な実施」のいずれであるか検証することが重要です。納得がいかない場合には再審査請求が可能です。
令和6年度の診療報酬改定は6月1日から施行となりました。全体改定率は+0.88%で、医療関係職種へのベースアップ実施、入院時の食費引上げ等を差し引いた医科本体としては+0.52%となりました。
詳細については下記のホームページを参照ください。
厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00045.html
日本医師会ホームページ
https://www.med.or.jp/japanese/members/iryo/r06kaitei/
1 各種法令における留意事項
保険診療は健康保険法や療養担当規則等に基づいた保険者と保険医・保険医療機関との間の公法上の契約であることを理解する必要があります。保険医療の関係法令を遵守した上で、医科診療報酬点数表に決められた請求を行うことが義務付けられていますので、これに反した場合は行政指導(保険医資格停止、等)となる場合があります。ぜひもう一度、療養担当規則の確認をお願いします。
●義肢・装具証明書の発行
整形外科では療養費に係る書類等についても注意が必要です。治療に必要な義肢装具等は、医師の関与で製作所が作成・提供(一部の既製品も含む)した場合は、患者は基準に従った代金を実費で製作所に支払い、保険組合には医師の証明書を添えて請求することで療養費として還付されます。この場合の書類は保険給付に係るものなので、無償で発行します。
●施術同意書の発行
あんま・はり・きゅう・マッサージ(柔道整復以外)については療養費同意書交付料を算定できますが、同意においては対面診療が義務付けられていること、それぞれの施術において適応が設定されていること、ご自分の医療施設において治療手段がない場合に限定されることから、一般的には整形外科医療機関から施術同意書が発行される例は少なくなります。
●自費診療
近年、保険未採用の新しい治療法が開発され普及してきました。例えば、多血小板血漿療法などの再生医療や体外衝撃波療法などがあります。自費で実施する美容医療、健康診断、プラセンタ注射などを保険診療と同日に実施してしまうと混合診療(療養担当規則12条、18条、20条)となるため、迷われたときには自己判断せずに厚生局に相談してください。
2 診療録(カルテ)への記載の留意事項
医師は、診療した行為のすべてを遅滞なく診療録(カルテ)に記載することが義務付けられています(療養担当規則、医師法)。さらに保険医は、保険請求するすべての項目(検査、処置、手術、投薬、等)について、その請求の根拠を診療録に記載することが義務付けられています(療養担当規則)。診療録は患者の診断、治療の過程を証明する文書として、訴訟等のトラブル発生時に重要な証拠となります。第三者が診療経過を確認できる内容(見読性)で記載する必要があります。
処方や注射の目的、物理療法やリハビリテーション目的の来院時でも、患者の病状がいつもと変わらないとして診療録の記載を怠たると、無診察治療とみなされることがあります。
医学管理料の多くは診療録への要点記載が求められます。外来管理加算は充実した診療内容が診療録記載に反映される必要があります。各種検査、画像診断は必要性と結果についての判断・評価コメント記載が必要です。
3 傷病名付与の留意事項
傷病名の決定は医療行為です。医学的に妥当適切な傷病名を医師自ら決定してください。他の職員が病名を付与することは医師法で禁止されています。整形外科疾患は解剖学的部位、左右、急性・慢性の記載が必要です。診断根拠のない、査定を防ぐための「レセプト病名」は、不実記載により保険請求したと疑われることになるので避けてください。必要な処方、検査を実施したのに傷病名だけでは説明不十分と思われる場合は、摘要欄記載及び症状詳記で補ってください。また、急性病名や疑い病名は早期に転帰を付けて整理してください。
4 診療報酬上の留意事項
<基本診療料>
1 初・再診料
- 一度診療が終了していても、検査結果のみを聞きに来た場合など、前の診療と一連の行為と考えられる場合、診察料を再度算定できません(電話等再診を含む)。
- 再診料における外来管理加算は、通常の診察よりも詳細な内容の診療が実施された場合が算定要件(診療報酬点数表を参照)となっているため、診療録への記載を充実させてください。単に慢性疼痛疾患管理料、リハビリテーション料、処置料、手術料等を請求しないだけでは算定できません。
- 外来リハビリテーション診療料を算定した場合には、規定されている日数(7日又は14日)の間は、リハビリテーションに係る再診料(外来診療料)は算定できません。
<特掲診療料>
1 医学管理料
医学管理料、在宅療養指導管理料(在宅医療の部)は、目に見えない「医師の技術」に対する評価です。多くの場合、医学管理や療養指導を適切に行った上で、診療録への指導内容の要点記載が算定要件となっています。
- 特定疾患療養管理料
特定疾患を主病として管理していることが算定要件です。主病とは特定疾患を主体的かつ診療内容の大半を占めて治療している疾患であり、単に併存する疾患に対して算定することはできません。指導した内容の要点を診療録に記載することが算定要件なので、単に検査や身体所見のみを記載するだけでは不十分です。 - 慢性疼痛疾患管理料
疼痛を症状とする慢性疾患に対してマッサージ又は器具等による療法を行った場合が適応です。原則、外来管理加算及び処置料等を包括し、月ごとに算定の選択が可能です。特定疾患療養管理料、特定疾患処方管理加算等の他の管理料とは併算定できません。 - 小児運動器疾患指導管理料
20歳未満の患者に成長に応じた継続的診察が必要な病態に対して診療を行った場合に、最初の算定から6月間は連月、それ以降は6月に1回算定できます。小児運動器疾患に関する研修を修了した医師が、治療計画に基づき療養上の指導を行った場合に算定できます。適応疾患は、1)先天性の運動器疾患、腫瘍や外傷後の四肢変形、側弯症、装具を使用する患者、2)医師が継続的なリハビリテーションが必要と判断する状態の患者、3)その他の成長に応じた適切な治療法選択のために継続的診療が必要な患者です。単純な骨折や靭帯損傷、捻挫、打撲等の外傷性病変、感染などの急性期病変だけでは適応になりません。初回算定時に治療計画を作成し、患者の家族等に説明して同意を得ると共に、毎回の指導要点を診療録に記載します。地方厚生局への届出が必要です。 - 二次性骨折予防継続管理料
3 骨粗鬆症を有する大腿骨近位部骨折を手術した病院において二次性骨折予防継続管理料1を算定した患者が対象となります。継続して骨粗鬆症の計画的な評価及び治療等を「骨折リエゾンサービス(FLS)クリニカルスタンダード」及び「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」に沿った適切な評価及び治療効果判定(骨量測定、骨代謝マーカー、脊椎X線等)と、必要な治療を継続して実施した場合に算定します。初回算定月から1年を限度として、月1回算定可能です。地方厚生局への届出が必要です。 - 下肢創傷処置管理料
下肢の潰瘍に対して継続的管理を必要とする者に対し、適切な研修を修了した医師が治療計画に基づき療養上の指導を行った場合に月1回に限り算定できます。初回算定時に治療計画を作成し、患者及び家族等に説明して同意を得ると共に、毎回の指導要点を診療録に記載します。糖尿病合併症管理料は別に算定できません。地方厚生局への届出が必要です。 - 診療情報連携共有料
保険歯科医の求めにより、患者の同意を得て、文書により情報提供を行った場合に3月に1回算定できます。 - 療養費同意書交付料
原則として、その疾病に係る主治の医師(緊急その他やむを得ない場合を除く)が診察に基づき療養給付を行うことが困難であると認めた患者に対して、あん摩、マッサージ、指圧、はり、きゅうの施術に係る同意書又は診断書を交付した場合に算定します。各施術の対象疾患については以下の通り限定されています。 慢性病で医師の適当な治療手段のない者であり、1)はり・きゅうの対象疾患:主として神経痛、リウマチ、類症疾患(頚腕症候群、五十肩、腰痛症、頚椎捻挫後遺症等)。同一疾病での医療の併診は認められません。2)マッサージの対象:主として筋麻痺、関節拘縮等に対するもの。
2 在宅医療
- 在宅患者訪問診療料
通院による療養が困難な患者に対して、当該患者の同意を得て、計画的な医学管理の下に定期的に訪問診療を行った場合が適応になります。往診料(不定期で、患家の求めに応じて赴き診療を行った場合)とは異なるので注意が必要です。また、継続的な診療の必要のない者や通院が可能な者に対して安易に算定してはなりません(例えば、独歩で家族・介助者の助けを借りずに通院できる者など)。在宅時医学総合管理料、施設入居時等医学総合管理料又は在宅がん医療総合診療料の算定要件を持つ主治医から紹介され、併診で訪問診療を行った場合は6月を限度として月1回に限り在宅患者訪問診療料2を算定します。ただし、その診療科の医師でなければ困難な診療、すでに診療した傷病やその関連疾患とは明らかに異なる傷病に対する診療においては6月を超えて算定できます。算定要件として、患者又は家族等の署名付の訪問診療に係る同意書を作成した上で診療録に添付、訪問診療の計画及び診療内容の要点を診療録に記載、訪問診療を行った日における診療時間(開始時刻及び終了時刻)及び診療場所について診療録に記載が必要です。 - 訪問看護指示料
訪問看護ステーションへの訪問看護指示は、通院による療養が困難な者に対する適切な在宅医療の確保を目的としており、必要性の評価をせずに安易に指示料を算定することは認められません。 - 在宅自己注射指導管理料
厚生労働大臣が定める注射薬の自己注射を行っている患者に対して、自己注射に関する指導管理を行った場合に算定します。在宅自己注射を導入前に2回以上の外来、往診若しくは訪問診療により医師による十分な教育期間をとり、十分な指導を行った場合に限り算定します。また、指導内容を詳細に記載した文書を作成し患者に交付します。初回指導を行った月から起算して3月以内の期間に当該指導管理を行った場合には、「導入初期加算」を3月を限度として加算します。「バイオ後続品導入初期加算」は、初回の処方日の属する月から起算して3月に限り月1回算定でき、導入初期加算と共に対面診療を行った場合のみ算定できます。また自己注射薬のみを院外処方する場合は、処方箋料は算定できません。指示事項(方法、注意点、緊急時の措置を含む)、指導内容について診療録に要点の記載が必要です。 - 在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料
本書「Ⅱ 8リハビリテーション」にて説明
3 検査
必要な検査項目を選択しセット検査は避けてください。検査を行う根拠、結果、評価を診療録に記載してください。算定要件が規定されている検査項目に注意してください(尿沈渣、MPO-ANCA、等)。結果が治療に反映されない検査は研究的、健康診断的とみなされ算定が認められないことがあります。
- 骨粗鬆症関係検査
- NTX、DPD(尿)は、骨粗鬆症の薬剤治療方針の選択時に1回、その後6月以内の薬剤効果判定時に1回、また薬剤変更時は変更後6月以内に1回に限り算定できます。TRACP-5bは代謝性骨疾患や骨折の併発がない肺癌、乳癌、前立腺癌の骨転移の診断補助として実施した場合に1回算定でき、その後は6月以内の薬剤効果判定時に1回、また治療方針変更時は変更後6月以内に1回に限り算定できます。ucOCはVitK2剤の治療前、β-CTXも骨粗鬆症の薬剤治療方針の選択時に1回と6月以内の効果判定時に1回に限り算定できます。
- 25-ヒドロキシビタミンは、原発性骨粗鬆症の場合は骨粗鬆症の薬剤治療方針の選択時に1回に限り算定、ビタミンD欠乏性くる病若しくはビタミンD欠乏性骨軟化症の場合は診断時に1回、その後は3月に1回を限度として算定可能です。1,25-ジヒドロキシビタミンD3は、慢性腎不全、特発性副甲状腺機能低下症、偽性副甲状腺機能低下症、ビタミンD依存症Ⅰ型又は低リン血症性ビタミンD抵抗性くる病の診断治療時のみが検査適応となり、骨粗鬆症は適応外です。
- オステオカルシンは、続発性副甲状腺機能亢進症の手術適応の決定及び原発性又は続発性の副甲状腺機能亢進症による副甲状腺腺腫過形成手術後の治療効果判定に際して実施した場合のみ算定できます。
- 関節リウマチ関係検査
- インフリキシマブ定性の算定は、関節リウマチの患者に対し増量等の判断のために、イムノクロマト法により測定した場合が適応で3回に限ります。
- RF定量、MMP-3、抗ガラクトース欠損IgG抗体定性、同定量、C1q結合免疫複合体、モノクローナルRF結合免疫複合体及びIgG型リウマトイド因子のうち3項目以上を実施の場合は、2項目に限り算定できます。
- 抗ガラクトース欠損IgG抗体定性、同定量とRF定量を実施のときは主たるもののみの算定になります。
- 抗シトルリン化ペプチド抗体定性、同定量、MMP-3、抗ガラクトース欠損IgG抗体定性、同定量、C1q結合免疫複合体、モノクローナルRF結合免疫複合体、IgG型リウマトイド因子のうち2項目以上実施の場合は主たるもののみ算定になります。
- 抗シトルリン化ペプチド抗体定性、同定量検査の適応は以下のいずれかの場合に限られます。
- 関節リウマチと確定診断できない場合に原則1回請求できます。検査結果が陰性の場合は3月に1回算定でき、この場合は検査値を診療報酬明細書の摘要欄に記載します。
- 治療薬選択のため実施する場合も1回のみの算定になります。治療経過により再度の薬剤選択が必要の場合は6月に1回算定できますが、診療報酬明細書の摘要欄に必要性の記載が必要です。
- 超音波検査
検査で得られた画像を診療録に添付し診療録に主な所見を記載します。医師以外が検査を実施した場合は、その文書について医師が確認した旨を診療録に記載します。同一月の2回目以降の検査は100分の90の点数で算定します。注射や麻酔に際して補助的に超音波画像を利用する場合では算定できません。 - 骨塩定量検査
検査の種類にかかわらず、4月に1回に限り算定ができます。
4 画像診断
画像診断においても診断、評価所見等を診療録に記載が必要です。
- 時間外緊急院内画像診断加算
診療時間以外で、直ちに何らかの処置・手術等が必要な状態のため、緊急に当該保険医療機関において撮影及び診断を実施した場合に限り算定できますが、この場合、初・再診料の夜間・早朝等加算との併算定はできません。 - 電子画像管理加算
デジタル撮影した画像を電子媒体に保存して管理した場合に算定できます。フィルムへのプリントアウトを行った場合も算定できますが、この場合にはフィルム費用は算定できません。 - 透視診断
診断目的のために行った場合にのみ算定できます。他の検査、注射、処置及び手術の補助手段として行う場合は算定できません。 - 写真診断
他医撮影のフィルム等のエックス線診断料は撮影部位及び撮影方法別に算定できます。 - コンピューター断層診断
他医撮影のCT、MRI等コンピューター断層撮影像(ポジトロン断層・CT、MRI断層複合撮影は含まない)について診断を行った場合は初診料を算定した日に限り算定できます。
5 投薬
- 無診察投薬の禁止
患者を診察することなく投薬、注射、処方箋の交付は認められません。 - 適宜効果判定
例えば、抗菌剤等では抗菌スペクトルの考慮、薬剤感受性検査の実施を行い、漫然と投与することのないよう注意してください。メコバラミン製剤を月余にわたり漫然投与しないでください。 - 湿布の処方
1処方63枚を超えた貼付剤(湿布薬)処方の場合には調剤料、処方料、超過分の薬剤料、処方箋料及び調剤技術基本料は算定できません。例外として、やむを得ず医師が必要と判断した理由を処方箋及び診療報酬明細書に記載した場合は認められることがあります。 - プレガバリン(リリカ)、ミロガバリン(タリージェ)
効能・効果は、添付文書上は「神経障害性疼痛」と記されていますが、保険請求に当たってはこの傷病名のみでは査定される可能性があります。必ず神経障害性疼痛を引き起こした原疾病の傷病名を記載してください。 - 適応外投与に注意
「胃潰瘍、急性胃炎、慢性胃炎の急性増悪期」に適応のあるテプレノン(セルベックス)、レバミピド(ムコスタ)を単なる慢性胃炎の患者に投与。 - 用法外投与に注意
- 外用に適応のない抗菌薬(アミノグリコシド系)を吸入あるいは局所洗浄等で使用。
- 筋注、静注の用法しかないププレノルフィン(レペタン)を硬膜外注入で投与。
- 禁忌投与に注意
フェルビナク(ボルタレン)、ロキソプロフェン(ロキソニン)等の非ステロイド系消炎鎮痛剤を消化性潰瘍の患者に投与。
6 処置
- 通則
- 対称器官の処置で「片側」、「1肢につき」等の規定がないものは、両側に行っても所定点数のみの算定になります(鶏眼胼胝処置など)。
- 時間外、休日、深夜に行われた150点以上の緊急処置はそれぞれ時間外、休日、深夜加算の対象となります。
- 創傷処置
同一疾病又はこれに起因する病変に対して同時に行われた創傷処置、皮膚科軟膏処置は合算した面積で算定します。 - 下肢創傷処置
適応は足趾の血行障害による潰瘍で部位が限局されています。浅い潰瘍とは深さが腱、筋、骨又は関節のいずれにも至らないものをいい、創傷処置、爪甲除去(麻酔を要しないもの)、穿刺排膿後薬液注入は併算定できないこと、軟膏の塗布又は湿布の貼付のみは適応外とされています。 - 熱傷処置
算定は初回処置から起算して2月以内に限られます。それ以降の処置は創傷処置で算定します。第1度熱傷の場合100㎠未満は基本診療料に含まれ薬剤料のみの算定になります。 - 血腫、膿腫穿刺
新生児頭血腫大程度のものが適応になり、それより小範囲のものや試験穿刺については算定できません。 - 消炎鎮痛等処置(3 湿布処置)
半肢の大部又は頭部、頸部及び顔面の大部以上にわたる範囲に行われた場合に算定できますが、それ以下の場合は薬剤料のみの算定になります。 - 治療用装具採寸法
既製品の装具は原則厚労省でリストアップされたものが療養費対象となり、これを処方の場合、加工の必要を認め採寸が行われた場合のみが採寸法の適応になります。この場合、診療報酬明細書の摘要欄に医学的な必要性と加工の内容を記載することが要件になります。 - 治療用装具採型法
フットインプレッションフォーム(足型採取器)で採型を行った場合は、「3 その他」で算定します。 - 皮膚欠損用創傷被覆材
皮膚欠損創に対し、医療材料として2週間(特に必要と認められる場合については3週間)を限度として算定できます。手術縫合創に対しての使用は術後を含め算定できません。
7 手術
- 通則
手術当日に手術(自己血貯血を除く)に関連して行う処置(ギプスを除く)の費用及び注射の手技料は、術前、術後にかかわらず算定できません。 - 創傷処理
切・刺・割創又は挫創に対して切除、結紮又は縫合(ステープラーによる縫合を含む)を行う場合に算定します。筋肉、臓器に達するものとは、創傷の深さではなく、筋肉、臓器に何らかの処理を行った場合をいいます。創傷が数か所あり、これを個々に縫合する場合は、近接した創傷については範囲を合算し算定します。「露出部」とは、頭部、頸部、上下肢にあっては肘関節及び膝関節以下をいいます。指は真皮縫合加算の適応外となっています。 - 皮膚切開術
長径は切開を加えた長さではなく、膿瘍等の病巣の大きさをいいます。 - 腱縫合術
切創等の創傷によって生じた固有指の伸筋腱断裂の単なる縫合は、「創傷処理 2 筋肉、臓器に達するもの(長径5㎝以上10㎝未満)」(小児の場合は小児創傷処理の3)で算定します。 - 難治性骨折電磁波電気(超音波)治療法、超音波骨折治療法
治療の実施予定期間、頻度について患者に指導し、当該指導内容を診療報酬明細書の摘要欄に記載することや、時期、対象等適応にも注意してください。 - 爪甲除去術 麻酔を要しない程度のものは処置の爪甲除去により算定します。
8 麻酔
神経ブロックは、疾病の治療又は診断を目的として行われる手技で、検査・画像診断・処置・手術の施行のための補助手段として行われる麻酔とは異なるので注意してください。
- 静脈麻酔
静脈注射用麻酔剤を用いた意識消失を伴う全身麻酔が適応になり、静脈注射用麻酔剤の使用のないものは算定できません。実施時間が10分未満のものは「1 短時間のもの」で算定します。 - 上・下肢伝達麻酔
上肢は腕神経叢、下肢は少なくとも坐骨神経及び大腿神経の麻酔を行った場合に算定できます。それ以下の部位での伝達麻酔は薬剤料のみの算定となります。 - 神経ブロック
同日複数の神経ブロックを行った場合は、主たるもののみ算定します。神経ブロックと同時に行われたトリガーポイント注射及び神経幹内注射は算定できません。神経ブロックに先立って行われるエックス線透視や造影等に要する費用は神経ブロックの所定点数に含まれます。神経ブロックために補助的に超音波装置を利用した場合、超音波検査を算定できません。 - トリガーポイント注射
施行回数及び部位にかかわらず1日1回のみの算定です。
5 令和6年度診療報酬改定における、新規・改定項目
- 検査
- 骨代謝マーカーである骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)、P1NPが減点、リウマチ検査である抗CCP抗体が減点となりました。
- 処置
- 腰椎穿刺、胸椎穿刺、頚椎穿刺、腱鞘内注射、滑液嚢穿刺後注入(片側)、爪甲除去(麻酔を要しないもの)が増点となり、トリガーポイント注射は減点となりました。
- 手術
- 創傷処理(筋肉、臓器に達するもの 長径10㎝以上 その他のもの)、小児創傷処理(6歳未満 筋肉、臓器に達するもの)、皮膚切開術(長径20㎝以上)、デブリードマン(100㎠未満)、皮膚・皮下腫瘍摘出術(露出部 長径4㎝以上)、骨折非観血的整復術(肩甲骨、上腕、大腿、前腕、下腿)等が増点です。
- 変形性膝関節症に対する末梢神経ラジオ波焼灼療法(一連として)が新設され、講習受講者が実施できることになりました。
- 小児運動器疾患指導管理料
- 疑義解釈で、「外傷に伴う骨端線損傷等」により、手術を行った場合、保存的治療で概ね6か月以上の経過観察が必要な場合、S-HⅢ型以上に適応が拡大されました。