新規開業医のための保険診療の要点

新規開業医のための保険診療の要点(各論)

[1-7] 小児科

<はじめに>
小児科領域の保険診療について、理解していただきたいこと、留意すべきことについて記載します。

I 各種法令における留意事項

1 保険診療と自費診療について

総論でもふれられていますが、小児科では疾病の診断、治療といった保険診療が中心となる小児医療と、小児の健やかな発育、発達を見守る乳幼児健診、疾病を予防する為の予防接種等の自費診療がどうしても混在します。この点に十分注意して保険診療上のルールに即して、レセプトを作成しなければなりません。以下に具体的な注意点と考え方を示します。

  1. 保険診療の診療録と自費診療の診療録を完全に分けること。
    保険診療の診療録に健診、予防接種の記載は認められません。
  2. 乳児健診と同時に疾病が発見され、保険診療を行った場合、(初診料・再診料・外来診療料)算定できません。
    また以前からの疾患にて加療中の場合、健診等と同時に診察を行った場合には、再診料は算定できません。それぞれ、健診料の中に診察料が含まれていると考えます。従って、基本診療料は算定できませんが、診療に伴う、処置料、検査料、処方料、他院紹介に伴う診療情報提供料は算定できます。
  3. 定期予防接種は、予防接種法に基づいて行われています。接種前に、問診、検温、視診、聴診等の診察を行い、接種が可能か否かを判断することを予診といいます。新型コロナワクチンは予防接種法の臨時接種にあたり、国から聴診を一律に行うことは求められていませんが、例外と考えて任意予防接種も、予防接種法に準じて予診を行ってください。
    接種直後の血管迷走神経反射などの副反応などの診察を行った場合も、基本診療料は算定できません。(2)の健診と同様です。
    インフルエンザ予防接種等で来院者が多く、継続する疾患の処方など行う場合、算定ミスのないように十分に注意してください。
    また、保険適応となる予防接種があります。小児科開業医関連としては、B型肝炎ウイルス母子感染の予防(抗HBs人免疫グロブリンとの併用)の目的で使用した場合です。その2回目と3回目にあたる生後1ヶ月と6ヶ月のワクチンについては、保険診療として請求することとなり、定期予防接種としての請求はできません。
  4. 自治体からの公費で行う、3,4ヶ月健診、6,7ヶ月健診、1歳6ヶ月健診、3歳児健診は当然自費診療となりますが、その間、保護者の希望で行う1歳児健診、2歳児健診なども保険請求はできません。また保育園等の入園時健診も保険請求できません。それぞれ自費診療となります。注意してください。
  5. 学校健診は学校保健安全法に基づいて行われています。学校健診で「疾患(の疑い)」として紹介された場合は、保険診療となります。ただし、学校医と保険医が同一の場合は、初診料でなく再診料を算定し、処置料・検査料・処方箋料は算定できます。園医の場合も、同様に考えます。
    また、学校健診を欠席して医療機関で健診を実施する場合には、保険診療にはならず、子ども医療費助成制度も利用できません。学校医以外に来院する児童・生徒も自費請求になります。無用なトラブルを避けるため、地区医師会へ問い合わせしてください。

II 診療録(カルテ)への記載の留意事項

  1. 診療録(カルテ)は、診療経過の記録であるとともに、診療報酬請求の根拠となります。診療の都度、診療事実に基づいて経過と必要事項を適切に記載してください。
  2. 喘息、糖尿病等の特定疾患に対しての特定疾患療養管理料は指導内容、治療計画等についての記載が必須となります。
  3. 記載はペン等で行い、修正等は履歴が確認できるように修正液は用いず必ず、二重線で行ってください。電子カルテにおいても修正の履歴が確認できることが必要です。
  4. 記載の都度、署名も行ってください。

III 傷病名付与の留意事項

  1. 診断の都度、医学的に妥当適当な傷病名を記載することが必要です。
  2. 必要に応じて慢性、急性の区別、部位、左右の区別をしてください。
  3. 傷病の転帰を記載、傷病名を逐一整理することが必要です。小児科では急性上気道炎といった急性疾患の病名が多く、転帰の記載なく長期間続くのは不適切です。
  4. 疑い病名は診断がついた時点で、速やかに確定病名に変更してください。
  5. 疑い病名での処方は認められません。

IV 診療報酬上の留意事項

<基本診療料>

1 初・再診料

  1. 初診料算定の条件
    傷病について医学的に初診の診療行為があった場合に算定できます。
    医学的に初診の診療行為とは、患者が初めて医療機関を受診し、既往歴、家族歴、現病歴等の丁寧な問診及び視診、聴診、触診等の診察とその記録が診療録に記載され、確認できることです。過去に医療機関を受診していても、前疾患の転帰が終了となっている場合は算定出来ます。小児科では急性上気道炎等、軽症の急性疾患にて初診料の算定機会が多くなりますが、傷病の診療継続中に新たな傷病にて受診があった場合は算定できません。再診料となります。前回の受診時の処方薬の処方日数内での新たな疾患の受診も、前疾患の転帰が記載されていても診療継続中と考えられ再診となります。
    具体的には皮脂欠乏性皮膚炎にて保湿剤等、アレルギー性鼻炎にて抗アレルギー剤が長期処方されているケースが該当します。
    患者が任意に診療を中止し、1ヶ月以上経過した場合、同一病名又は同一症状によるものであっても初診と取り扱うとの規定がありますが、慢性疾患等明らかに同一の疾病と推定される場合は、初診料は算定できません。
    具体的には気管支喘息、アトピー性皮膚炎等が該当します。
  2. 外来患者が来院しても、基本診療料(初診料、再診料、外来診療料)が請求できない例
    初診、再診の際に行った検査、画像診断の結果のみを聞きに来た場合、往診等の後に、薬剤のみを取りに来た場合、初診、再診の際に検査、画像診断、手術等の必要を認めたが、一旦帰宅し後刻又は後日に検査、画像診断、手術等を受けに来た場合、当該基本診療料(初診料、再診料、外来診療料)の一連の行為とみなされ、別に再診料(外来診療料)は算定できません。
  3. 小児診療に対する加算について
    主なものについて記載します。
    1. 基本診療料(初診料・再診料)
      時間外加算:
      医療機関が表示する診療時間外の時間で応能体制を解いている場合、休日、深夜を除く時間に診療で算定できます。
      乳幼児加算:
      6歳未満の乳幼児に算定できます。時間外加算、休日加算、深夜加算又は時間外加算の特例を算定する場合には算定できません。
    2. 小児科(小児外科を含む)を標榜する保険医療機関における夜間、休日、又は<深夜の診療に係る特例>
      小児科を標榜する保険医療機関について、6歳未満の乳幼児に対し、夜間、休日、又は深夜を診療時間とする保険医療機関において夜間、休日又は深夜に診療が行われた場合にも、それぞれ時間外加算、休日加算又は深夜加算を算定できます。なお、診療を行う保険医が小児科以外を担当する保険医であっても算定できます。小児かかりつけ診療料、小児外来診療料を算定する場合も算定できます。
    3. 夜間・早朝加算
      診療所1週あたりの診療時間が30時間以上あることが条件です。
    4. 機能強化加算
      小児かかりつけ診療料や在宅時医学総合管理料などを届け出た医療機関において、初診時に加算できます。かかりつけ医機能を担う医療機関として、患者が受診している他の医療機関及び処方されている医薬品を把握し、必要な管理を行い診療録に記載すること、専門医師又は専門医療機関への紹介、健康診断の結果等に係る相談、保健・福祉サービスに関する相談、夜間休日の問い合わせへの対応を行っている医療機関である旨を院内及びホームページ等に掲示することが必要です。
    5. 地域連携小児夜間・休日診療料
      ア 地域連携小児夜間・休日診療料1(医療機関が定めた時間に対応)
      イ 地域連携小児夜間・休日診療料2(24時間診療が可能な体制)
      夜間、休日又は深夜に急性に発症し、又は増悪した6歳未満の患者であって、やむを得ず当該時間帯に医療機関を受診するものを対象としたもので、慢性疾患の継続的な治療等の為の受診については算定できません。一連の夜間及び深夜または同一休日に、同一の患者に対しては、原則として1回のみ算定できます。尚、病態の度重なる変化等による複数回の受診のため2回以上算定する場合は、診療報酬明細書の摘要欄にその理由を詳細に記載する必要があります。
      地域連携小児夜間・休日診療料は地域の夜間・急病センター、病院等において地域の医師が連携・協力して診療に当たる体制を評価したものであり、在宅当番医制で行う夜間・休日診療では算定できません。
    6. 電話再診料
      外来診療料を算定している場合は、診療を行った当日の電話再診料は算定できません。翌日以降の電話再診については、電話再診料を算定できます。

<特掲診療料>

1 医学管理料

医学管理料は対象患者に単に指導を行っただけでは算定できません。指導内容、治療計画等について、具体的に診療録に記載することが必須条件です。算定要件、算定回数制限などがそれぞれの医学管理料ごとに定められていることに十分に留意してください。

  1. 小児かかりつけ診療料
    1. 対象年齢:未就学児、6歳以上の患者にあっては、6歳未満から小児かかりつけ診療料を算定している者に限ります。
    2. 診療時間外の対応体制の整備状況により施設基準が分かれています。
    3. 診療時間外の時間において、患者又はその家族等から電話等により療養に関する意見を求められた場合に十分な対応ができる体制が整備されている医療機関は、小児かかりつけ診療料1を、必要な対応が整備されている医療機関は小児かかりつけ診療料2を算定します。
    4. 同一月に院外処方箋を交付した場合、「処方箋を交付する場合」で算定します。夜間緊急の受診等やむを得ず院内処方した場合、「処方箋を交付しない場合」で算定できますが、診療報酬請求書に理由の記載が必要です。
    5. 当該医療機関で院内処方を行わない場合は院外処方箋を交付しない場合であっても「院外処方箋を交付する場合」で算定します。
    6. 対象患者の診療に係る費用は、原則全て所定点数に包括されます。
      ただし、[表1]の項目は包括対象に含まれず算定可能です。
      診療情報提供書(I)は包括対象に含まれず算定できます。
    7. 臨時的な取扱いにより、新型コロナウイルス感染症(疑いを含む)の外来診療を行う医療機関における院内トリアージ実施料、新型コロナウイルス感染症のPCR検査・抗原検査の検査料や判断料は出来高で算定できます。臨時的取り扱いについては通知文書等を随時確認してください。
    8. 小児かかりつけ診療料の算定にあたっては、急性の病気の対応、慢性疾患の指導管理、患児に対しての、発達段階に応じた助言、指導、健康相談、予防接種の接種状況の確認、指導、情報提供、電話等による緊急の相談等に原則、常時対応するとともに、かかりつけ医として上記の指導等を行うことを書面にて説明し同意を得ることが必要です。
  2. 小児科外来診療料
    1. 対象年齢:6歳未満。
    2. 処方箋の交付についての算定の取り扱いは小児かかりつけ診療料の場合と同様です。
    3. 対象患者の診療に係る費用は、原則全て所定点数に包括されます。診療情報提供料(I)は包括対象のため算定できません。
      ただし、表1の項目は包括対象に含まれないため算定可能です。
    4. 小児かかりつけ診療料と同様に、臨時的な取扱いにより、新型コロナウイルス感染症(疑いを含む)の外来診療を行う医療機関における院内トリアージ実施料、新型コロナウイルス感染症のPCR検査・抗原検査の検査料や判断料は出来高で算定できます。臨時的取り扱いについては通知文書等を随時確認してください。
      なお、以下ア~オに該当する場合は小児科外来診療料を算定できません。
      ア パリビズマブを投与している患者(投与当日に限る)
      イ 在宅療養指導管理料を算定している患者(他の医療機関で算定している患者を含む)
      ウ 小児かかりつけ診療料を算定している患者
      エ 初診即入院となった場合(初診料は入院レセプトで算定)
      オ 電話再診のみの日(再診料を出来高で算定)
    包括対象外(出来高算定可)の項目表1
    小児かかりつけ診療料 小児科外来診療料
    • 小児抗菌薬適正使用支援加算
    • 時間外加算・休日加算・深夜加算・小児科特例加算(初診料・再診料・外来診療料)
    • 機能強化加算(初診料)
    • 院内トリアージ実施料
    • 夜間休日救急搬送医学管理料
    • 地域連携小児夜間・休日診療料

    • 診療情報提供料(I)
    • 電子的診療情報評価料
    • 診療情報提供料(II)
    • 連携強化診療情報提供料
    • 往診料
    • 小児抗菌薬適正使用支援加算
    • 時間外加算・休日加算・深夜加算・小児科特例加算(初診料・再診料・外来診療料)
    • 機能強化加算(初診料)
    • 院内トリアージ実施料
    • 夜間休日救急搬送医学管理料
    • 地域連携小児夜間・休日診療料



    • 診療情報提供料(II)
    • 連携強化診療情報提供料
    • 往診料
  3. 小児抗菌薬適正使用支援加算
    1. 対象は、小児かかりつけ診療料または小児外来診療料を算定している、急性気道感染症または、急性下痢症により受診した基礎疾患のない患者。診察の結果、抗菌薬の必要性が認められず抗菌薬を使用しない者に対して、療養上の必要な指導及び検査の結果を文書により説明、提供した場合算定できます。
    2. 急性気道感染症は具体的に、「急性上気道炎」「急性咽頭炎」「急性気管支炎」「急性鼻副鼻腔炎」等が該当します。急性胃腸炎でも算定できます。
    3. 小児科を担当する専任の医師が診療を行った初診時、月に1回算定、インフルエンザ感染の疑われる患者には算定できません。
    4. 軟膏や点眼薬などの外用の抗菌薬を処方した場合も算定できます。
    5. 届出は必要ありません。
  4. 小児運動器疾患指導管理料
    運動器疾患を有する20歳未満の患者に対して、小児の運動器疾患に関する専門の知識を有する医師が、計画的な医学管理を継続して行い、療育上必要な指導を行った場合に算定できます。
    [対象患者]
    1. 先天性股関節脱臼、斜頸、内反足、ペルテス病、脳性麻痺、脚長不等、四肢の先天奇形、外傷後の四肢変形、二分脊椎、脊髄係留症候群又は側湾症を有する患者
    2. 装具を使用する患者
    3. 医師が継続的なリハビリテーションが必要と判断する状態の患者
    4. その他、手術適応の評価等、成長に応じた適切な治療法の選択のために、継続的な診療が必要な患者
    初回算定時に治療計画を作成し、患者の家族等に説明して同意を得るとともに、毎回の指導の要点を診療録に記載することが必要です。
    6月に1回に限り算定できます。但し、初回算定日の属する月から起算して6月以内は月に1回算定できます。
    小児科療養指導料を算定している患者は算定できません。
  5. 小児特定疾患カウンセリング料
    小児科又は心療内科を担当する医師又は医師に指示を受けた公認心理師が、乳幼児期及び学童期における特定の疾患を有する患者及びその家族に対して日常生活の環境等を十分に勘案した上で、一定の治療計画に基づいて療養上必要なカウンセリングを行った場合に算定できます。
    [対象疾患] 18歳未満の気分障害、神経症性障害、ストレス関連障害及び身体的要因に関連した行動症候群、心理的発達の障害又は小児期及び青年期に通常発症する行動及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害の患者。 公認心理師による場合の算定要件として、一連のカウンセリングの初回は医師が行い、3月に1回程度は医師がカウンセリングを行う必要があります。医師の指示、治療計画に基づき20分以上行った場合に算定し、医師、公認心理師合わせて月2回まで、特定疾患療養管理料、通院在宅精神療法、心身医学療法を算定している場合は公認心理師による算定はできません。
  6. 小児悪性腫瘍患者指導管理料
    小児悪性腫瘍、白血病又は悪性リンパ腫の15歳未満の患者又はその家族等に対し、治療計画に基づき療養上必要な指導管理を行った場合に、月に1回に限り算定できます。ただし家族等に対して指導を行った場合は、患者を伴った場合に限り算定できます。
    必要に応じて、患者の通学する学校との情報共有、連携を行うことが算定要件です。
  7. 小児慢性特定疾病の児童及び医療的ケア児に係る診療情報提供料
    小児慢性特定疾病やアレルギー疾患を有する児童等、及び医療的ケア児が通学する学校医等に対して、主治医が学校医等へ診療情報提供を行った場合に診療情報提供料(I)が月1回算定できます。
    令和4年度の診療報酬改定によりこれまでの情報提供先である小学校、中学校等に加え幼稚園型認定こども園を含む幼稚園、高等学校、中等教育学校の後期課程、特別支援学校の幼稚部及び高等部、高等専門学校等が追加されました。保健所若しくは精神保健福祉センター、児童相談所、指定障害児相談支援事業者に情報提供した際も算定できます。
    <注意事項>
    • 主治医と学校医が同一の場合は算定不可。
    • 小児科外来診療料を算定している場合は包括対象となり、算定不可。
  8. 特定疾患療養管理料
    別に定める特定疾患に対し、治療計画に基づき療養上の管理を行った場合、月2回まで算定できます。
  9. 小児科療養指導料
    小児科を標榜し小児科のみを専任する医師が、慢性疾患であって生活指導が特に必要なものを主病とする15歳未満の患者で入院中以外のものに対して、一定の治療計画に基づき療養上の指導を行った場合に限り算定できます。
    対象疾患及び状態は、脳性麻痺、先天性心疾患、ネフローゼ症候群、ダウン症等の染色体異常、川崎病で冠動脈瘤のあるもの、脂質代謝障害、腎炎、溶血性貧血、先天性股関節脱臼、内反足、二分脊椎、骨系統疾患、先天性四肢欠損、分娩麻痺、先天性多発関節拘縮症及び児童福祉法第6条の2に規定する小児慢性特定疾病及び小児慢性特定疾病医療支援の対象に相当する状態の患者です。小児科療養指導料は、当該疾病又は状態を主病とする患者又はその家族に対して、治療計画に基づき療養上の指導を行った場合に月1回に限り算定できます。
    但し、家族に対して指導を行った場合は患者を伴った場合に限り算定できます。
  10. 乳幼児栄養指導料
    3歳未満の乳幼児に対する初診時に、育児、栄養その他の療養上必要な指導を行った場合に算定できます。
  11. てんかん指導料
    てんかん(外傷性のものを含む)の患者またはその家族に対し、治療計画に基づき療養上必要な指導を行った場合に、月1回に限り算定できます。
    特定疾患療養管理料、小児科療養指導料、小児悪性腫瘍患者指導管理料を算定している患者には算定できません。

2 検査

各種の検査は、診療上の必要性を十分に考慮し、必要な検査項目を選択し、段階を踏んで、必要最小限の回数で実施します。検査の必要性と評価がカルテから読み取れなくてはなりません。健康診断を目的にした検査、結果が治療に反映されない研究を目的にした検査は認められません。不適切な検査として(入院時セット、術前セット)といった患者ごとに必要な項目を吟味せず画一的に実施される検査、スクリーニング的に多項目(出血凝固系検査、甲状腺機能検査系検査)な検査があげられます。

<算定要件に条件等があり注意が必要な検査>

  1. RSウイルス抗原定性
    当該ウイルス感染症が強く疑われる以下が適応
    入院中の患者、1歳未満の患者、パリビズマブ製剤の適応となる患者
  2. インフルエンザウイルス抗原定性
    発症後48時間以内に実施した場合に限り算定
  3. インフルエンザ関連検査
    インフルエンザウイルス感染症の診断を行うためのものであり、「インフルエンザ」又は「インフルエンザ疑い」の明示がないもの以外で、インフルエンザ関連検査の算定は認められません。
  4. ヒトメタニュウーモウイルス抗原定性
    当該ウイルス感染が強く疑われ、画像診断又は胸部聴診所見により肺炎が疑われる6歳未満の患者
  5. ノロウイルス抗原定性
    当該ウイルス感染症が強く疑われる以下が適応
    3歳未満の患者、65歳以上の患者、悪性腫瘍の診断が確定している患者、臓器移植後の患者、抗悪性腫瘍剤、免疫抑制剤、又は免疫抑制剤効果のある薬剤を投与中の患者
  6. 小児食物アレルギー負荷検査
    問診及び血液検査等から食物アレルギーが強く疑われる16歳未満の小児に対し、原因抗原の特定、耐性獲得の確認のために、食物負荷検査を実施した場合に12月に3回を限度として算定できます。
  7. 細菌薬剤感受性検査
    細菌培養の結果、病原菌の検出ができなかった場合、検査費用の算定はできません。
  8. フェリチン
    鉄欠乏性貧血では、早期よりフェリチンが低下するため、鉄欠乏性貧血の疑い病名に対するフェリチン半定量又はフェリチン定量の算定は認められます。
  9. 赤血球沈降速度(ESR)とC反応性蛋白(CRP)(併施)
    ESRとCRP検査データは、通常、並行的に変化するものであるが、両者のデータの乖離(かいり)は炎症初期及び回復期等に認められる場合があり、赤血球沈降速度(ESR)とC反応性蛋白(CRP)の両者併施算定は認められます。
  10. T3、FT3、T4、FT4(併施)
    甲状腺ホルモンの総量と遊離系ホルモン量とは概ね相関して増減することから、特定の場合を除き、T3とFT3、T4とFT4の併施は認められません。まれに、TBG異常症等でT3・T4とFT3・FT4との間に乖離(かいり)が見られることがあり、臨床的にそのようなことが想定されT3とFT3、T4とFT4の併施測定の医学的必要性が認められる場合に限り認められます。
    T3およびT4、あるいはFT3およびFT4の組み合わせによる併施は認められます。
  11. C-ペプチド(CPR)(糖尿病確定後の患者)
    小児・若年の糖尿病においては、発病初期の場合が多く、病型の判定の困難なことがあるため原則として、糖尿病確定後の患者に対して、C-ペプチド(CPR)は認められます。
    インスリン(IRI)との併施は、インスリン異常症等の場合を除き原則として認められません。
  12. 血清補体価(CH50)(膠原病の疑い)
    血清補体価検査は、その病態にII型・III型アレルギー機序が関与する膠原病(全身性エリテマトーデス、クリオグロブリン血症、血管炎症候群等)では低値を示すことから、初診時に「膠原病の疑い」の病名に対する血清補体価(CH50)は認められます。
  13. アレルギー性鼻炎の疑いに対する非特異的IgE半定量及び特異的IgE定量の算定について
    非特異的IgEは、IgEの血中総濃度を測定する検査であり、I型アレルギーのスクリーニング検査として有用であるため、アレルギー性鼻炎の疑いに対する非特異的IgE半定量及び特異的IgE定量の算定は、原則として認められます。
  14. 抗生物質
    耐性菌の発現等を防ぐため、投与期間14日以内(増減ありの記載のないもの)と規定されている抗生物質は、医学的な必要性の明確でない場合、14日を超えての投与は原則として認められません。疾患の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめるとともに、必要に応じて検査を行って下さい。

<施設基準>

小児科開業医関連では、以下のものに、施設基準がありますので、ご確認ください。

  • 喘息治療管理料
  • アレルギー性鼻炎免疫療法治療管理料
  • 小児かかりつけ診療料 1・2
    (令和4年度診療報酬改定により、1も施設基準が緩和され、さらに緩和された2が新たに加わりました。)
  • 小児食物アレルギー負荷検査

V 令和4年度診療報酬改定における、新規・改定項目

「主な改定項目」

1 施設基準の変更

今回改定により小児かかりつけ診療料が、診療時間外の対応体制の整備状況により施設基準が分かれました。施設基準に応じた算定と届出をしてください。

  1. 小児かかりつけ診療料1と2共通の施設基準
    1. 小児科を標榜する保険医療機関であること。
    2. 当該保険医療機関において、小児の患者のかかりつけ医として療養上必要な指導等を行うにつき必要な体制が確保されていること。
    3. 専ら小児科又は小児外科を担当する常勤の医師が1名以上配置されていること。
    4. 下記のうち2つ以上に該当していること。
      • 乳幼児の健康診査(市町村を実施主体とする1歳6ヶ月、3歳児等の乳幼児の健康診査)を実施している。
      • 定期予防接種を実施している。
      • 過去1年間に15歳未満の超重症児又は準超重症児に対して在宅医療を提供した実績を有している。
      • 幼稚園の園医、保育所の嘱託医又は小学校若しくは中学校の学校医に就任している。
  2. 小児かかりつけ診療料1の施設基準
    上記共通基準に加え、当該保険医療機関の表示する診療時間以外の時間において、患者又はその家族等から電話等により療養に関する意見を求められた場合に、十分な対応ができる体制が整備されていること。
    具体的には、時間外対応加算1又は時間外対応加算2に係る届出を行っていること。
  3. 小児かかりつけ診療料2の施設基準
    共通基準に加え当該保険医療機関の表示する診療時間以外の時間において、患者又はその家族等から電話等により療養に関する意見を求められた場合に、必要な対応ができる体制が整備されていること。
  4. ※なお、小児科外来診療料は今回の改定により届出の必要がなくなりました。

2 保険医療機関が交付するアレルギー疾患にかかる学校生活管理指導表

今回、小児慢性特定疾病の児、及び医療的ケア児に係る診療情報提供の改定により、保険医療機関が、アナフィラキシーの既往歴または食物アレルギーがある児童生徒等の通学する学校等の学校医に対して、当該児童生徒等が学校生活を送るにあたり必要な情報(学校生活管理指導表)を提供した場合、診療情報提供料(1)が患者1人につき月1回算定できるようになりました。
※本章「IV診療報酬上の留意事項<特掲診療料>(7)」を参照

VI その他

  1. 成長ホルモンを使用する場合
    傷病名は、正しく記入してください。
    身長、体重、使用した成長ホルモン剤の量を、詳記してください。
  2. シナジス®
    適応となる傷病名を正しく記入してください。
    (早産児の場合は、在胎週数と出生体重)、シーズンの初回投与開始日およびその月齢、シーズンにおける通算投与回数、投与日、投与時の体重、投与量、廃棄量をレセプトに詳記してください。
    東京都におけるシナジスの接種期間と投与回数の上限について、東京都新生児医療協議会と小児循環器学会より指針が毎年出ますので、準拠してください。
  3. エピペン®
    処方できるのは、登録医のみ処方できます。
    処方できるのは、自宅用1本、学校用(幼稚園、保育園)1本、合計2本までです。
    エピペンを処方する場合、処方箋料は算定せず、在宅処方にして在宅自己注射指導管理料27回以下で算定してください。
    前回処方から1年以上の間隔があっても、通常、再診料となり、在宅自己注射指導管理料導入初期加算は、算定できません。また、前医から引き続き処方する場合は、初診料を算定できますが、在宅自己注射指導管理料導入初期加算は算定できません。
    導入初期加算は初回のみとなり、実質1回しか算定できません。
    初診から、エピペンを処方する場合で、その必要性を診療録に記載して、レセプトに詳記が望まれます。
  4. シダキュアン®、ミティキュアン®
    処方できるのは、登録医のみ処方できます。
    初回処方日数は、7日と定められていますが、長期の連休や学業・就業等の事情により中断が予想される場合、過敏性が強く7日間では短くリスクが高い場合は、7日を超える処方が可能ですが、その必要性を診療録に記載して、レセプトに詳記が望まれます。
    2回目以降の処方でも、初期量が続く場合には、その必要性について同様のことが望まれます。

<おわりに>

以上、小児科診療の特徴と注意点について記載しました。
診療及び保険請求の際は療養担当規則の遵守とともに医科点数表を繰り返し確認し、算定上の留意点について十分に注意して、請求内容に誤りがないか点検を行なってください。

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