新規開業医のための保険診療の要点

新規開業医のための保険診療の要点(各論)

おわりに

いわゆる2025年・2040年問題と呼ばれる人口構造の変化や高度先端医療の開発・普及に伴って国民医療費が増大する懸念が指摘されるなど、社会保障制度に対する諸問題が浮き彫りにされています。国家財政が一層厳しさを増す中で、国民医療費を徴収した保険料だけでは賄いきれずその多くを税金に頼っている現実を背景に、医療保険の効率化や適正化が益々強く求められるようになりました。

一方、今般のコロナ禍を受けて令和4年度診療報酬改定では、オンライン診療を初診から原則解禁するなどDX化を推進する方向性が随所に盛り込まれました。さらに外来感染対策向上加算、オンライン資格確認やリフィル処方箋など多くの新設項目や変更が加えられ、将来振り返ってみると、今年度改定は保険診療の歴史的な転換点であったと認識されるようになるかも知れません。

このように医療を取り巻く環境が急速に変化する中でも、国民の健康と生命を守ってきた“わが国が世界に誇る国民皆保険制度”を維持する事が肝要です。その使命を遂行するために、保険診療の基本的ルールを遵守しつつ質の高い医療を提供することが我々保険医に求められています。

以上のような現状認識から東京都医師会は、適切な保険診療を実践するために役立つガイドブックの必要性を痛感し、本書「新規開業医のための保険診療の要点(総論)及び(各論)」の作成を決意しました。「総論」では医療保険制度に係る重要情報を診療科横断的に整理し、一方「各論」では各診療科別に日常診療で留意すべきポイントを懇切丁寧に説明するよう心掛けました。つまり本書の総論と各論は“縦の糸と横の糸”として、“保険診療の要点”を詳細かつ幅広に網羅しています。

「各論」を作成するにあたって東京都各科医会の格別なご理解とご協力を賜りましたことを、この場を借りてご紹介するとともに感謝申し上げます。また、本書「総論」・「各論」の記載内容に関してご指導頂いた関東信越厚生局東京事務所、東京都社会保険診療報酬支払基金並びに東京都国民健康保険連合会に深甚なる謝意を表したいと思います。

本書が発刊できたのは、執筆頂いた医療保険委員会委員はもとより、東京都医師会医療保険課スタッフの献身的な努力の賜物でもあります。改めてご尽力賜りました全ての関係各位に心よりお礼申し上げます。

今後は本書をデジタル化して利便性向上に努める事に加えて、診療報酬改定毎の改訂も予定しております。東京都医師会員各位には日常診療の現場において本書を十分にご活用頂いた上で、忌憚のないご意見・ご感想をお寄せ下さいますよう期待しております。

令和4年6月吉日
公益社団法人 東京都医師会
理事(医療保険) 黒瀬 巌

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