本書のご使用にあたって

開業に至るまでの道のりは様々ですが、病院勤務を経たのちに開業される先生が多い事と存じます。しかしながら、勤務医の業務は多忙を極めるため、保険診療を行うための健康保険関連法令、規則、診療報酬算定基準などによる実務は医療機関の事務職が担当することが多く、医師ご本人が保険医療の詳細について勉強し理解する機会を逸したまま開業される場合も少なからず見受けられます。そのような先生が開業後にお困りにならないよう保険診療を行う上で重要と思われる項目を取り纏めて本書を作成いたしました。

医療機関は、開業後概ね１年以内に関東信越厚生局が実施する新規個別指導の対象となります。本指導では新規開業医療機関において、保険診療が適切に行われているかが調査され、不適切な算定などが認められた点について指導が行われます。新規個別指導時にお困りにならないためにも、開業される前に一度本書をお読みいただき、さらに日々の診療においても適宜ご参照いただきながら適正な保険診療を実践されるようお勧めいたします。

このように本書はもともと新規開業医向けのガイドブックとして編集されておりますが、「地区医師会」等で実施する様々な医療保険講習会や保険診療に係る事業においても活用いただけるようにも工夫されています。また、新規に開業される先生だけでなく、既に開業されている諸先生にも日常の臨床現場で参考書として活用していただければ幸いです。

本書は「総論」と「各論」に分けて構成されています。「総論」は健康保険関連法令等などを基に保険診療を行う際に、診療科に関わらず必要な項目や情報がまとめられています。一方「各論」では、各診療科別に保険診療上特に留意すべきポイントを整理しておりますが、これらは診療報酬改定等により定期的に変更されることが多い内容ですのでご注意ください。また、診療ルールや法令のご紹介のみならず、より実践的に診療を行う際に役立つよう種々の要点や注意点を丁寧に説明しました。

なお本書の内容は東京都医師会のホームページにも掲載しており、「疑義解釈」や「臨時的な取扱い」など、随時変更される事項など最新の情報はホームページをご参照ください。

本書ではさらに各診療科別により詳細な情報を得る有効な手段として「各科医会」のご案内を「各論」に掲載しておりますので、是非ご利用いただき医会入会のご参考として下さい。

最後に、本書は東京都の委託事業（都内医療機関の保険医療の適正化）の一環として、東京都医師会に設置されている「東京都医師会医療保険委員会」（担当事務：医療保険課）により制作いたしました。作成に当たっては関東信越厚生局等関係組織の皆様にご協力いただきました事をこの場を借りて御礼申し上げます。

令和4年3月
公益社団法人東京都医師会
副会長　平川博之