新規開業医のための保険診療の要点

新規開業医のための保険診療の要点(各論)

[1-2] 外科

<はじめに>
外科は算定条件が細かく分かれています。例えば創傷処理では長さや深さによって、点数が違いますし、皮膚腫瘍摘出術では露出部と露出部以外では点数が違います。
また皮膚科や整形外科と共通するところも多く、そちらの算定要件も知らなければなりません。例えば皮膚科軟膏処置というのもありますし、捻挫で絆創膏固定は足関節と膝関節しか算定できません。
適切な診療報酬請求を行うために、複雑な算定条件を知る必要があります。

I 各種法令における留意事項

外科においても医学的に妥当適切な診療を行い、診療報酬点数表に定められた請求を行うことが必要です。

II 診療録(カルテ)への記載の留意事項

外科は外傷や熱傷等を診療するため、その部位や範囲、色、形状等を診療録に図示したほうがいいと思います。

III 傷病名付与の留意事項

  1. 必ず部位を付けてください。右前腕切創、頸部皮膚腫瘍等
  2. 部位や、範囲は審査の判断に必要です。
  3. 熱傷は2度以上でないと熱傷処置はとれません。深度も書いて下さい。

IV 診療報酬上の留意事項

<特掲診療料>

1 検査

  1. 超音波検査
    原則として、単なる挫傷に対する局所診断を目的とした超音波検査は認められません。
  2. 内視鏡検査
    原則として肛門鏡検査時における超音波内視鏡検査実施加算は痔核に対しては認められません。

2 処置

  1. 創傷処置
    1. 処置の範囲とは、包帯等で被覆すべき創傷面の広さ、又は軟膏処置を行うべき広さになります。
    2. 同一疾病又はこれに起因する病変に対して創傷処置、皮膚科軟膏処置又は湿布処置が行われた場合は、それぞれの部位の処置面積を合算し、その合算した広さを、いずれかの処置に係る区分に照らして算定するものとし、処置ごとを併せて算定することは出来ません。
    3. 複数の部位の手術後の創傷処置については、それぞれの部位の処置面積を合算し、その合算した広さに該当する点数により算定してください。
    4. 軟膏の塗布又は湿布の貼付のみの処置では算定できません。
    5. 熱傷処置を算定する場合は、創傷処置は併せて算定できません。
  2. 熱傷処置
    1. 熱傷処置を算定する場合は、創傷処置、爪甲除去(麻酔を要しないもの)及び穿刺排膿後薬液注入は併せて算定できません。
    2. 熱傷には電撃傷、薬傷及び凍傷が含まれます。
    3. 100平方センチメートル未満については、第1度熱傷では算定できません。
    4. 範囲とは、包帯等で被覆すべき創傷面の広さ、又は軟膏処置を行うべき広さです。
    5. 初回の処置を行った日から起算して2月を経過するまで行われた場合に限り算定し、それ以降に行う当該処置については創傷処置の例により算定してください。
  3. 絆創膏固定術
    足関節捻挫又は膝関節靭帯損傷に絆創膏固定術を行った場合に算定できます。ただし交換は原則として週1回となります。
  4. 重度褥瘡処置
    重度の褥瘡処置を必要とする患者に対して、初回の処置を行った日から起算して2月を経過するまでに行われた場合に限り算定し、それ以降に行う当該処置については創傷処置の例により算定してください。
    1. 処置の範囲とは、包帯等で被覆すべき創傷面の広さ、又は軟膏処置を行うべき広さです。
    2. 皮下組織に至る褥瘡(筋肉、骨等に至る褥瘡を含む。)に対して行った場合に算定できます。
    3. 重度褥瘡処置を算定する場合は、創傷処置、爪甲除去(麻酔を要しないもの)及び穿刺排膿後薬液注入は併せて算定できません。
    4. 局所陰圧閉鎖処置(入院)を算定する場合は、重度褥瘡処置は併せて算定できません。
    5. 局所陰圧閉鎖処置(入院外)を算定する場合は、重度褥瘡処置は併せて算定できません。
  5. 爪甲除去(麻酔を要しないもの)
    注:入院中の患者以外の患者についてのみ算定できます。
    1. 在宅寝たきり患者処置指導管理料又は在宅気管切開患者指導管理料を算定している患者については、爪甲除去(麻酔を要しないもの)の費用は算定できません。
    2. 熱傷処置を算定する場合は、爪甲除去は併せて算定できません。
    3. 重度褥瘡処置を算定する場合は、爪甲除去は併せて算定できません。
    4. 副鼻腔手術後の処置を算定した場合、爪甲除去は別に算定できません。
  6. 皮膚科軟膏処置
    1. 各号に示す範囲とは、包帯等で被覆すべき創傷面の広さ、又は軟膏処置を行うべき広さです。
    2. 同一疾病又はこれに起因する病変に対して皮膚科軟膏処置、創傷処置又は湿布処置が行われた場合は、それぞれの部位の処置面積を合算し、その合算した広さを、いずれかの処置に係る区分に照らして算定するものとし、処置ごとを併せて算定することはできません。
    3. 同一部位に対して皮膚科軟膏処置、創傷処置、面皰圧出法又は湿布処置が行われた場合はいずれか1つのみにより算定し、併せて算定できません。
    4. 在宅寝たきり患者処置指導管理料を算定している患者(これに係る薬剤料又は特定保険医療材料料のみを算定している者を含み、入院中の患者を除く。)については、皮膚科軟膏処置の費用は算定できません。
    5. 100平方センチメートル未満の皮膚科軟膏処置は、第1章基本診査料に含まれるものであり、皮膚科軟膏処置を算定することはできません。
    6. 局所陰圧閉鎖処置(入院)を算定する場合は、皮膚科軟膏処置は併せて算定できません。
    7. 局所陰圧閉鎖処置(入院外)を算定する場合は、皮膚科軟膏処置は併せて算定できません。
  7. 鶏眼・胼胝処置
    1. 同一部位について、その範囲にかかわらず月2回の算定が限度です。
  8. 湿布処置(消炎鎮痛等処置)
    半肢の大部又は頭部、頸部及び顔面の大部以上にわたる範囲のものについて算定するものであり、それ以外の狭い範囲の湿布処置は基本診療料に含まれ、湿布処置を算定することはできません。
    同一部位に対して湿布処置、創傷処置、皮膚科軟膏処置、面皰圧出法が行われた場合はいずれか1つのみにより算定し、併せて算定できません。
    また、令和4年度診療報酬改定により、保険給付の範囲内で処方できる湿布薬の上限枚数が、1処方につき70枚から63枚に変更されました。やむを得ず63枚を超えて投薬する場合には、その理由を処方箋及び診療報酬明細書に記載しなければなりません。

3 手術

  1. 創傷処理
    1. 創傷処理とは、切・刺・割創又は挫創に対して切除、結紮又は縫合(ステープラーによる縫合を含む。)を行う場合の第1回治療のことであり、第2診以後の手術創に対する処置は創傷処置により算定することになります。なお、ここで筋肉、臓器に達するものとは、単に創傷の深さを指すものではなく、筋肉、臓器に何らかの処理を行った場合の事です。
    2. 創傷が数か所あり、これを個々に縫合する場合は、近接した創傷についてはそれらの長さを合計して1つの創傷として取り扱い、他の手術の場合に比し著しい不均衡を生じないようにしてください。
    3. 頭頂部のもの(長径20センチメートル以上のものに限る。)は、長径20センチメートル以上の重度軟部組織損傷に対し、全身麻酔下で実施した場合に限り算定できます。
    4. 露出部とは頭部、頸部、上肢にあっては肘関節以下及び下肢にあっては膝関節以下の事を言います。
    5. デブリードマンの加算は、汚染された挫創に対して行われるブラッシング又は汚染組織の切除であって、通常麻酔下で行われる程度のものを行った場合に限り算定できます。
  2. 皮膚切開術
    1. 長径10センチメートルとは、切開を加えた長さではなく、膿瘍、せつ又は蜂窩織炎等の大きさとなります。
    2. 多発性せつ腫等で近接しているものについては、数か所の切開も1切開としての算定になります。
  3. 皮膚・皮下腫瘍摘出術(露出部)K006(露出部以外)
    1. 露出部とは頭部、頸部、上肢にあっては肘関節以下及び下肢にあっては膝関節以下となります。
    2. 近接密生しているいぼ及び皮膚腫瘍については、1個として取り扱い、他の手術等の点数と著しい不均衡を生じないようにしてください。
    3. 露出部と露出部以外が混在する患者については、露出部に係る長さが全体の50%以上の場合は露出部の所定点数により算定し、50%未満の場合は露出部以外の所定点数により算定します。
  4. 鶏眼・胼胝切除術(露出部で縫合を伴うもの)、(露出部以外で縫合を伴うもの)
    1. 露出部とは創傷処理の露出部と同一の部位となります。
    2. 近接密生している鶏眼・胼胝等については、1個として取り扱い、他の手術等の点数と著しい不均衡を生じないようにしてください。
    3. 露出部と露出部以外が混在する患者については、露出部に係る長さが全体の50%以上の場合は、本区分の所定点数により算定し、50%未満の場合は、鶏眼・胼胝切除術(露出部以外で縫合を伴うもの)の所定点数により算定します。
  5. 爪甲除去術
    爪甲白癬又は爪床間に「とげ」等が刺さった場合の爪甲除去で、麻酔を要しない程度のものは爪甲除去(麻酔を要しないもの)により算定します。

V 令和4年度診療報酬改定における、新規・改定項目

「主な改定項目」

1 下肢創傷処置管理料

下肢創傷処置管理料(500点)が新設されました。入院中以外の患者で、下肢の潰瘍を有するものに対して、下肢創傷処置に関する専門の知識を有する医師が、計画的な医学管理を継続して行い、かつ、下肢創傷処置を算定した日の属する月において、療養上必要な指導を行った場合に月1回に限り算定できます。

2 下肢創傷処置

下肢創傷処置1~3が新設されました。
(1)足部(踵を除く)の浅い潰瘍 135点
(2)足趾の深い潰瘍又は踵の浅い潰瘍 147点
(3)足部(踵を除く)の深い潰瘍又は踵の深い潰瘍 270点
下肢創傷処置の対象となる部位は、足部、足趾、又は踵であって、浅い潰瘍とは、潰瘍の深さが腱、筋、骨又は関節のいずれにも至らないものをいい、深い潰瘍とは潰瘍の深さが腱、筋、骨又は関節のいずれかに至るものになります。

3 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術

消化管ポリポーシス加算(5,000点)が新設されました。家族性大腸線腫症の患者に実施した場合に年1回に限り所定点数に加算できます。

4 小腸内視鏡検査

スパイラル内視鏡によるもの(6,800点)が新設されました。

5 小腸結腸内視鏡的止血術及び小腸・結腸狭窄部拡張術(内視鏡によるもの)

スパイラル内視鏡加算(3,500点)が新設されました。スパイラル内視鏡検査を用いて実施した場合に所定点数に加算されます。

IV その他

あらかじめ予定されている手術に対しては、小外科であっても梅毒定性、HBs抗原、HCV抗体の感染症検査は認められています。

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