新規開業医のための保険診療の要点

新規開業医のための保険診療の要点(総論)

[5] 基本診療料

I 基本診療料と特掲診療料の相違

基本診療料は初診、再診及び入院診療の際(特に規定する場合を除く)に原則として必ず算定可能な項目です。基本診療料は診察や治療の有無や内容に関わらず、毎回(毎日)算定可能な診療料となります。
これに対し特掲診療料は基本診療料と異なり、その診療や治療を行った場合に所定の点数のみ算定可能な診療料となります。

II 基本診療料

1 初・再診共通事項

  1. 外来機能の明確化及び医療機関間の連携を推進する観点から、紹介状なしで「特定機能病院」、「地域医療支援病院」それぞれ一般病床200床以上の「紹介受診重点医療機関」(紹介受診重点医療機関は令和4年10月1日以降)を受診した場合に、患者から定額負担を徴収することになります。
    初診 7,000円(令和4年10月1日から実施)
    再診 3,000円(令和4年10月1日から実施)
  2. 健康診断や予防接種を実施した日に、合わせて保険診療を実施した場合は、基本診療料(初診料、再診料等)は算定できません。診療報酬請求する場合は、診療実日数と初・再診料の回数に差異が生じますので、摘要欄に「初診料は他法により算定」や「再診料は予防接種で算定」などの記載をしてください。

2 初診料

初診料とは、医学的(発熱やケガ、心身の不調等の訴え等)な患者の訴えにより、初めて医師が診察したときに算定できるものです。

<注意点>

  1. 既に治療していた傷病が、治癒・中止など転帰した場合は、新たに初診料を算定することが可能となります。初診料が算定できるのは、医療機関に初めて受診したときだけではありません。
  2. 患者が自分の都合で診療を中止し1ヵ月以上経過後に受診した場合、新たに初診料の算定が可能です。ただし、算定には注意点があります。
    1. 中止の開始日は最終来院日ではありません。処方されている期間は治療中となるため、処方した日数を過ぎた日が患者の都合で中止した日となります。
    2. 患者さんの都合ではなく、医師からの指示で1か月以上間隔が空いたとしても、初診料は算定できません。医師の指示した期間は症状があり、医師の指示した期間は経過観察期間と見なされるためです。
    3. 慢性疾患等は同一の疾病または負傷であると推定される病名等の場合は、初診として取り扱われません。
      (「皮膚疾患」「睡眠障害」や「アレルギー性疾患」、さらに逆流性食道炎や便秘を含む「消化器疾患」等、慢性疾患とみなされる可能性が高い)
  3. 現に診療中の患者が、同一医療機関の別の診療科で他の傷病を別日に初診をおこなった場合、初診料は算定できず再診料を算定します。
    ただし、別日ではなく同一日に他の傷病について初診をおこなった場合には、複数科初診料(144点)を算定します。
    例)糖尿病で内科に受診している患者が、内科の受診がない日に皮膚科を初めて受診した場合には再診料を算定しますが、内科を受診した同日に皮膚科を初めて受診した場合には、内科で再診料、皮膚科で同日複数科初診料(144点)を算定することになります。
    また、初診料と同様に、再診料を算定した同一日に、別の傷病で別の診療科で再診を受けた場合には、複数科再診料(37点)を算定することができます。(表1 参照)
     
    内科と皮膚科を同日に受診された場合の診察料(例)表1
      2科とも初診 2科とも再診 1つ目再診
    2つ目初診
    内科(1つ目) 288 点 73 点 73 点
    皮膚科(2つ目) 144 点 37 点 144 点
    ※同一日に他科を受診したとしても、関連のある疾病と見なされた場合は、同日複数科初診料等は算定できません。
  4. 6歳未満の患者に対し初診を行った場合、乳幼児加算(75点)を算定できる。下記(5)との併算定は出来ません。
  5. 医療機関の標榜する診療時間以外に初診を行った場合は時間外加算(85点)、深夜(午後10時~午前6時)に初診を行った場合は深夜加算(480点)、休日に初診を行った場合は休日加算(250点)が算定できる。6歳未満の患者に対しては、時間外加算(200点)、深夜加算(695点)休日加算(365点)を算定する。
    1. 休日加算の対象となる日は、日曜日と、「国民の祝日」と12月29日・30日・31日と1月2日・3日となります。土曜日や木曜日を休日としている医療機関が土曜日、木曜日に診察を行っても休日加算は算定できません。時間外加算を算定することになります。
    2. 休日加算の対象となる医療機関等は下記のとおりとなります。
      • 客観的に休日における救急医療の確保のために診療を行っていると認められる地域医療支援病院、救急病院又は救急診療所
      • 「救急医療対策の整備事業について」に規定された保険医療機関又は地方自治体等の実施する救急医療対策事業の一環として位置づけられている保険医療機関(区市町村が輪番制などにより定めた診療所等)
      • 休日を休診日とする医療機関が、急病等やむを得ない理由で来院した患者に診療を行った場合
      • 休日を診療日とする医療機関が、診療応需体制を解いている時間帯に、急病等やむを得ない理由で来院した患者に診療を行った場合
        ◎小児科標榜医療機関(小児外科含む)が6歳未満の乳幼児を診療した場合、特例により、夜間・休日・深夜に診療を行った場合、診療時間内であっても時間外・休日・深夜加算(6歳未満の乳幼児の点数)を算定できます。小児科標榜医療機関において小児科以外の医師が診療を行った場合も算定可。
        ※休日加算の例を図2に表示しているため参照してください。
  6. 別に施設基準を満たす診療所が、午後6時(土曜日は正午)から午前8時までの間、 休日又は深夜の時間帯を診療時間に初診を行った場合は夜間・早朝加算(50点)を 算定できます。
    ※休日加算等の例として図2「時間外・深夜加算・休日加算の算定内訳」を参考としてください。

3 再診料

再診料とは、初診後に再度来院して医師が診察を行ったときに算定できるものです。
「初診時又は再診時に行った検査、画像診断の結果のみを聞きに来た場合」は、再診料等は算定できません。

<注意点>

  1. 初診料(3)と同様に、現に診療中の患者が、同一日に他の傷病について再診をおこなった場合には、複数科再診料(37点)を算定します。
  2. 初診料(4)と同様に 6歳未満の患者に対し再診を行った場合、乳幼児加算(38点)を算定できる。下記(3)との併算定は出来ない。
  3. 初診料(5)と同様に再診料の時間外加算(65点)、深夜加算(420点)、休日加算(190点)が算定できる。6歳未満の患者に対しては、時間外加算(135点)、深夜加算(590点)休日加算(260点)を算定する。
  4. 初診料(6)を算定する医療機関は、再診料においても夜間・早朝加算(50点)を算定できます。
  5. 慢性疼痛疾患管理、厚生労働大臣の定める検査、リハビリテーション、精神科専門医療、処置、手術、麻酔及び放射線治療を行わず、計画的な医学管理を行った場合は外来管理加算(52点)が算定できます。
    【厚生労働大臣の定める検査】
    ・超音波検査等
    ・脳波検査等
    ・神経・筋検査
    ・耳鼻咽喉科学的検査
    ・眼科学的検査
    ・負荷試験等
    ・ラジオアイソトープを用いた諸検査
    ・内視鏡検査
  6. 患者又は看護にあたる者から電話等によって治療上の意見を求められ指示を行った場合は、電話再診料が算定できます。外来管理加算と地域包括診療加算等との併算定はできません。
    1. 電話再診はあくまでも患者等からの電話等で指示をした場合に算定できます。医師から電話等をした場合は算定できません。
    2. 電話等とは、電話やリアルタイムで画像等を介した情報機器となります。FAXやメールなどはリアルタイムとは言い難いため、算定することは出来ません。
  7. 「初診時又は再診時に行った検査、画像診断の結果のみを聞きに来た場合」だけでは保険診療とは認められず、再診料等は算定できません。検査結果やレントゲンの結果に基づき医学的な指示、療養上の注意等を行った場合は、保険診療と認められ、再診料等は算定可能です。
  8. 施設基準を満たす医療機関で、費用の項目ごとの明細書を発行した場合は明細書発行加算(1点)が算定できます。
  9. 地域包括診療加算
    脂質異常症、高血圧症、糖尿病、慢性心不全、慢性腎臓病(慢性維持透析を行っていないものに限る。)又は認知症のうち2以上の疾患を有する入院中の患者以外の患者に対して、当該患者の同意を得て、療養上必要な指導及び診療を行った場合に、当該基準に係る区分に従い加算を算定できます。
    1. 施設基準を満たさなければなりません。
    2. 初診時・往診・訪問診療では算定できません。
    3. 原則として院内処方となります。(24時間対応の薬局と連携する場合等は院外処方が可)
    4. 患者の受診している医療機関を全て把握するとともに、処方されている医薬品全てを管理し、カルテに記載すること。
    5. 標榜時間外の電話等による問い合わせに対し、速やかに必要な対応を行う事。
    6. 健康診断や検診の受診勧奨を行い、検査結果等の管理を行う事。また、ワクチン接種等の相談も行っている事。
    7. 7種類以上の内服薬の登用における減算は行わない。
    8. 主治医意見書の作成を行っている事。
    9. 健康診断、ワクチン接種、介護保険に係る相談を行っていることを院内掲示している事。
    10. 患者ごとに担当医を決める必要があります。担当医以外による診察の場合、算定することはできません。
    11. 担当医は「慢性疾患の指導に係る適切な研修」(*)を修了していることが必要です。
      *研修要件 cc…日本医師会生涯教育制度におけるカリキュラムコード
      ・届出日から遡って2年の間に以下の研修を合計20時間以上修了(eラーニングも可)
      ・必須4項目(cc29:認知機能の障害、cc74:高血圧症、cc75:脂質異常、cc76:糖尿病)各1時間以上の受講
      ・主治医機能に関する内容(cc73:服薬管理、cc4:健康相談、cc13:介護保険、cc11:禁煙指導、cc80:在宅医療 等)
      ・医師会が主催する「かかりつけ医研修会」や「日医かかりつけ医機能研修制度 応用研修会」等の受講も対象

<届出>

関東信越厚生局への届出が必要です。2年毎に届出が求められるため、そのたびに研修要件を満たす必要があります。
注意:コロナ感染拡大防止の観点から、特例的に研修要件を満たせない場合も届出を辞退する必要はなく引き続き算定可能とされておりましたが、この取扱いは令和7年4月6日をもって終了します。既に算定中の医療機関は終了日までに研修要件を満たし、届出を提出してください。

4 外来診療料

200床以上の病院において再診を行った場合に外来診療料(74点)を算定できます。

<新設>

令和4年度診療報酬改定により、以下の項目が新設されました。診療所の業務に影響があるため、「[3]施設基準や帳票類等」の「Ⅰ 施設基準」内「2 施設基準例:初・再診料」でも、重複して記載していますので、併せてご参照ください。

1 外来感染対策向上加算

診療所において、平時からの感染防止対策の実施や、地域の医療機関等が連携して実施する感染症対策への参画を更に推進する観点から、外来診療時の感染防止対策を講じた場合に、外来感染対策向上加算(6点)を初診料、再診料、地域包括診療、認知症地域包括診療料、小児科外来診療料、小児かかりつけ診療料、救急救命管理料等に加算できます。

【主な施設基準】
  1. 感染防止対策部門を設置し、院内感染管理者(医師、看護師等の有資格者)を配置
  2. 院内感染管理者は以下を実施
    1. 感染予防策等を定めたマニュアルの作成
    2. 年2回程度、院内研修を実施
    3. 週1回程度、院内を巡回し、感染防止対策の実施状況の把握・指導等を行う
  3. 医療機関および行政機関との連携
    1. 年2回程度、加算1の医療機関又は地域の医師会が主催するカンファレンスに参加(訓練の参加は必須)
    2. 抗菌薬の適正使用について、加算1の医療機関又は地域の医師会から助言等を受けること
    3. 新興感染症の発生時等の有事の際の対応について、連携医療機関等とあらかじめ協議し、地域連携に係る十分な体制を整備すること
    4. 新興感染症の発生時等に、都道府県等の要請を受けて発熱患者の診療等を実施する体制を有し、そのことをホームページ等で公開していること
  4. その他
    1. 「抗微生物薬適正使用の手引き」を参考に、抗菌薬の適正な使用の推進に資する取組を行っていること
    2. 院内感染防止対策に関する取組事項を院内掲示すること
    3. 新興感染症の発生時等に発熱患者の診療を実施することを念頭に、発熱患者の動線を分けることができる体制を有すること
    4. 感染対策向上加算に係る届出を行っていない診療所であること 等

2 連携強化加算

外来感染対策向上加算に係る届出を行っている保険医療機関が、感染対策向上加算1の届出を行っている他の保険医療機関に対し、定期的に院内の感染症発生状況等について報告を行っている場合であって、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において診療を行った場合は、連携強化加算(3点)として、患者1人につき月1回に限り所定点数に加算できます。

【主な施設基準】
  1. 感染対策向上加算1の保険医療機関との連携体制を確保
  2. 連携する(1)の医療機関に対し、過去1年間に4回以上、感染症の発生状況、抗菌薬の使用状況等について報告を行うこと等

3 サーベイランス強化加算

外来感染対策向上加算に係る届出を行っている保険医療機関が、感染防止対策に資する情報を提供する体制につき別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において診療を行った場合は、サーベイランス強化加算(1点)として、患者1人につき月1回に限り所定点数に加算します。

【主な施設基準】
  1. 地域において感染防止対策に資する情報を提供する体制が整備されていること
  2. 院内感染対策サーベイランス(JANIS)、感染対策連携共通プラットフォーム(J-SIPHE)等、地域や全国のサーベイランスに参加していること
外来感染対策向上加算等イメージ図図1

4 オンライン診療の見直し

令和4年度診療報酬改定により、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の見直しを踏まえ、情報通信機器を用いた場合の初診及び再診を行った場合の評価を新設するとともに、従来のオンライン診療料は廃止されました。
今回の改定ではオンライン診療関連について大きく変更されているため、本書「[6] オンライン診療」に取り纏めましたので、そちらを参照してください。
※新設された項目(情報通信機器を用いた場合)

  1. 初診料(情報通信機器を用いた場合)251点
  2. 再診料(情報通信機器を用いた場合)73点
  3. 外来診療料(情報通信機器を用いた場合)73点
本要点は新規開業医を対象としているため、入院料等は割愛します。
時間外・深夜加算・休日加算の算定内訳図2

 
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