新規開業医のための保険診療の要点

新規開業医のための保険診療の要点(総論)

[9] 処置・リハビリ・手術など

I 処置

  1. 創傷処置・熱傷・皮膚科軟膏処置・重度褥瘡の処置では、範囲により点数が異なることに留意し、請求の根拠として診療録等に処置の部位・範囲や程度が分かるように記載してください。
  2. 点数表に掲げられていない簡単な処置は、基本診療料に含まれるため、別に算定できません。ただし、使用した薬剤については算定できる場合がございます。
  3. 消炎鎮痛処置(器具等)では、医師の診察や指示内容を忘れず記録し、処置内容の種類、部位・範囲、処置時間をカルテに記載するとともに、必要性や有効性の評価を行う事も重要です。
  4. 適宜、医学的な必要性や有効性の評価を行い、長期に漫然と実施することを避けなければなりません。

<注意点>

  1. 点数表にない簡単な処置の例は以下のとおり
    1. 浣腸、注腸
    2. 吸入
    3. 100cm²未満の第1度熱傷の熱傷処置
    4. 100cm²未満の皮膚科軟膏処置
    5. 洗眼、点眼
    6. 点耳、簡単な耳垢栓除去、鼻洗浄
  2. 通常の導尿、新生児頭大以下の血腫/腫瘍穿刺や治療ではない膣洗浄などは基本診療料に含まれる。
  3. 創傷は通常、治癒過程とともに大きさや深さは縮小するので、それに応じカルテに記載するとともに、診療報酬点数の見直しを行うこと。
  4. 酸素吸入、人工呼吸
    1. 酸素使用量の請求根拠となる、酸素流量、人工呼吸器の設定等を必ず記録してください。
    2. 実際に使用した酸素量を請求してください。一律に概算するなどによる酸素量の請求をしないよう留意してください。

II リハビリテーション

  1. リハビリテーションには、急性期、回復期、維持期・生活期があり、それぞれ時期と疾患によって算定が違います(図1 参照)。主に入院で行われる「急性期から回復期」と、外来で行う「維持期・生活期」のリハビリテーションがあります。「急性期から回復期リハビリテーション」は、以下の疾患別リハビリテーションが医療保険の適応で行われますが、算定要件や日数制限があります。
  2. 「維持期・生活期リハビリテーション」は、主に介護保険で行われます。原則的に医療保険と介護保険のリハビリテーションの併用はできません。(維持期のリハは日数制限を超えた場合、介護保険の適用患者の場合は、介護保険に移行しなければならない。)

<注意点>

  1. 別疾患により医療保険のリハビリテーションが必要となった場合や、医療機関とは別の施設でリハビリテーションを提供することになった場合など、医療保険と介護保険の併用ができる条件があります。詳細は「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について(令和2年厚生労働省告示第108号)」を参照してください。
  2. 医療保険が適応となる急性期から回復期の「疾患別リハビリテーション」は、主に病院で行われますが、それぞれリハビリテーションに必要な算定要件、算定点数別の施設基準、標準算定日数の制限(図2、3参照)を参照してください。
急性期、回復期、維持期・生活期におけるリハビリテーションの保険請求の概略図1
疾患別リハビリテーションと算定について図2
疾患別リハビリテーションの施設基準について図3

III 手術

  1. 当然のことですが、手術は医学的に必要があると認められる場合に行うこととされています。
    外来で行う手術についても、基本的に「点数表にない手術は、保険診療で禁止」されています。特殊な手術や、従来の手技と著しく異なる手術等は、事前に当局と内議が必要です。手術に関する保険診療に関わる項目を、以下に解説いたします。

<注意点>

  1. 特殊手術等
    「保険医は、特殊な療法又は新しい療法等については、厚生労働大臣の定めるもののほか行ってはならない」(療養担当規則第18条)とされています。点数表に記載されていない特殊な手術料は、その都度必ず医療機関の医事部門を通じて地方厚生(支)局へ照会(内議)する必要があります。また、これらの手術費用を患者から別に徴収し、手術以外の費用を保険請求することも認められていません。
  2. 手術に関する情報の患者への提供について
    医師は、医療を提供するに当たり適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう、努めなければならないとされています(医療法1条の4)。手術を行う際には、患者に十分な情報提供を行い、場合により文書等を用いて説明し、理解を得る必要があります。
    なお、入院で行われる一部の手術は、施設基準が定められており、要件を満たさない場合については手術料が算定できません。以下、参考までに記載します。
    【参考】一部の手術(医科点数表第2章第10部手術通則第5号に掲げる手術)の例
    ・人工関節置換術(K082)
    ・頭蓋内腫瘍摘出術(K169)・肺切除術(K511)
    ・弁置換術(K555)
    ・腹腔鏡下胃全摘術(K657-2)
  3. 麻酔の算定上の留意点
    外来手術で麻酔を行う場合は、算定要件について医師も十分に知っておく必要があります。
    ※「麻酔料」の注意点について、以下に例をあげます。
    1. 静脈麻酔は、「1短時間のもの、2十分な体制で行われる長時間のもの(単純な場合)、3十分な体制で行われる長時間のもの(複雑な場合)」があり、「複雑な場合」は常勤の麻酔科医が専従することが要件となります。
    2. 「硬膜外麻酔後における局所麻酔剤の持続的注入」を実施する場合、硬膜外麻酔カテーテルを抜去した際に記録しておかないと、手術の終了時をもって 終了時間とみなされる可能性があるので注意が必要です。
    3. 麻酔時間は、閉鎖循環式全身麻酔の場合、「患者に麻酔器を接続した時点」から「患者が麻酔器より離脱した時点」、脊椎麻酔等の場合は「患者に麻酔薬を注入した時点」から「手術が終了した時点」となります。なお、外来で閉鎖循環式全身麻酔を行う場合は、その必要性について症状詳記を記載することが求められます。
    ※なお、麻酔管理料(I)・(II)は、麻酔科標榜医による手術前後を含めた総合的な医学管理等、麻酔科における診療の質の向上を評価する施設基準が算定要件であるため、省略します。
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