新規開業医のための保険診療の要点
新規開業医のための保険診療の要点(総論)
[10] 検体検査
療養担当規則では、「各種の検査は、診療上必要があると認められる場合に行う。」また「健康診断は、療養の給付の対象として行ってはならない。」と定められています。診療上必要不可欠な検査であっても段階を踏んで最小限に行うことが必要です。
下記に示す検体検査とは患者から採取した検体を調べるもの、生体検査は患者の身体から直接情報を得るものとします。
I 検査の一般的な注意事項等
- 検査は組み合わせの規定があります。例えばTC、LDL-C、HDL-Cを同時に測定した場合は主な2項目のみ算定することになります。
- 検査回数について上限が定められている検査もあります。例えばHbA1cは原則月一回のみなどです。
- 症状等による画一的な検査(いわゆるセット検査)ではなく、患者ごと、症状ごとに必要項目の検査を選択して行わなければなりません。
- 類似検査項目の併施や複数の関連項目の同時検査は査定対象になりやすいので気を付けましょう(例:CRPと赤沈)
- 半永久的な感染症抗原抗体検査等を短期間に再検査を実施したり、腫瘍マーカー・肝炎ウイルスマーカー、糖尿病疑いでのHbA1cなどを繰り返し頻回に行った場合は過剰と判断される場合があります。
- 単なるスクリーニングと判断されるような検査は保険診療の対象外です。特に初診時に必ず検査を実施するなどが見受けられます。
- 医学的必要性が乏しい、または、結果が治療に反映されていない検査は認められません。例えば、糖尿病と既に診断されている患者に対して行う常用負荷試験など
- 研究目的、または健康診断目的と推定される検査は保険診療と認められません。
- 段階を踏んでいないと、重複とみなされる場合があります。また、検査は治療に必要と認められた場合に実施するものです。必要以上に実施回数が多い場合は過剰と見なされる場合があります。(例:BNP、HbA1c、肝炎ウイルスやリウマチ関連検査など)。
II 検体検査
主に血液・尿・便・ぬぐい液などを検体とします。
除外診断を行う際には検査会社に検体を提出しますが、疑った病名と検査項目が一致しているか、また複数提出した検査項目によっては主なもののみ算定できることがあるので留意が必要です。
検査項目によっては、検査の間隔や他の検査と併用して行われていると主なもののみ算定できるなど、制限があるものがあります。
1 時間外緊急院内検査加算
- 診療時間以外の時間、休日又は深夜に外来患者に対して診療を行った際、医師が緊急に検体検査の必要性を認め、保険医療機関の従事者が保険医療機関内に具備されている検査機器等を用いて検体検査を実施した場合に算定(200点)できます。算定は該当する検査を開始した時間となります。
- 同一患者に対して、同一日に2回以上該当する検体検査(複数の区分にまたがる場合を含む。)を実施したとしても、1日につき1回のみの算定となります。
- 入院中の患者については算定できませんが、時間外、休日又は深夜に外来を受診した患者に対し、検体検査の結果、入院の必要性を認めて、引き続き入院となった場合は算定できます。
- 時間外緊急院内検査加算を算定する場合は、夜間・早朝等加算は算定できません。 また、同一日に外来迅速検体検査加算も算定できません。
- 緊急の場合とは、直ちに処置・手術等が必要である重篤な患者について、通常の診察のみでは的確な診断が困難であり、かつ、通常の検査体制が整うまで検査の実施を見合わせることができないような場合をいう。
2 外来迅速検体検査加算
- 当日当該保険医療機関で行われた検体検査(別に厚生労働大臣が定めるものの結果)について、当日中に結果を説明し文書により情報を提供し、結果に基づく診療が行われた場合に、5項目を限度として、検体検査実施料の各項目の所定点数にそれぞれ10点を加算できます。対象の検査は表1となります。
- 以下の検査項目は包括規定が適用されておりますが、その規定にかかわらず、実施した検査項目数に相当する点数を加算できます。
- 区分番号「D006」出血・凝固検査の注の場合
- 区分番号「D007」血液化学検査の注の場合
- 区分番号「D008」内分泌学的検査の注の場合
- 区分番号「D009」腫瘍マーカーの注2の場合
【例】患者から1回に採取した血液等を用いて区分番号「D009」腫瘍マーカーの「2」の癌胎児性抗原(CEA)と「8」のCA19-9を行った場合、検体検査実施料の請求は区分番号「D009」腫瘍マーカーの「注2」の「イ」2項目となりますが、外来迅速検体検査加算は、行った検査項目数が2項目であることから、20点を加算できます。 - 同一患者に対して、同一日に2回以上、その都度迅速に検体検査を行った場合も、1日につき5項目が限度となります
- 外来診療料に含まれる検体検査とそれ以外の検体検査の双方について加算する場合も、併せて5項目を限度となります。
- 入院中の患者については算定できませんが、時間外、休日又は深夜に外来を受診した患者に対し、検体検査の結果、入院の必要性を認めて、引き続き入院となった場合は算定できますが、診療報酬明細書の摘要欄に、引き続き入院した場合である旨を記載しなければなりません。
- 文書により情報を提供する場合の文書は、患者に対して説明を行うために十分なものであれば、様式は任意でかまいません。
外来迅速検体検査加算の対象検査項目表1
区分番号 | 検査項目 |
---|---|
D000 | 尿中一般物質定性半定量検査 (※院内で行った場合に算定) |
D002 | 尿沈渣(鏡検法)(※D002-2尿沈渣のフローサイトメトリー法は対象外です) |
D003 | 糞便検査「7」糞便中ヘモグロビン |
D005 | 血液形態・機能検査 「1」赤血球沈降速度測定(ESR) 「5」末梢血液一般検査 「9」ヘモグロビンA1c(HbA1c) |
D006 | 出血・凝固検査
「2」プロトロンビン時間(PT) 「11」フィブリン・フィブリノゲン分解産物(FDP)定性・半定量・定量 「20」Dダイマー (※「15」Dダイマー定性と「17」半定量は対象外です) |
D007 | 血液化学検査
「1」 総ビリルビン、総蛋白、アルブミン、尿素窒素、クレアチニン、尿酸、アルカリホスファターゼ(ALP)、コリンエステラーゼ(ChE)、γ-グルタミルトランスフェラーゼ(γ-GT)、中性脂肪、ナトリウム及びクロール、カリウム、カルシウム、グルコース、乳酸デヒドロゲナーゼ(LD)、クレアチンキナーゼ(CK)
(※血糖(グルコース)は対象ですが、血糖の試験紙法は対象外です)
「3」 HDL-コレステロール、総コレステロール、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)
「4」 LDL-コレステロール
「18」グリコアルブミン
|
D008 | 内分泌学的検査 「9」甲状腺刺激ホルモン(TSH) 「15」遊離サイロキシン(FT4)、遊離トリヨードサイロニン(FT3) |
D009 | 腫瘍マーカー 「2」癌胎児性抗原(CEA) 「3」α-フェトプロテイン(AFP) 「6」前立腺特異抗原(PSA)、CA19-9 |
D015 | 血漿蛋白免疫学的検査
「1」C反応性蛋白(CRP) (※CRPの定性は対象外です) |
D017 | 排泄物、滲出物又は分泌物の細菌顕微鏡検査 「3」その他のもの (※「1」と「2」は対象外です) |
<注意点>
1 生化学検査
- 総鉄結合能(TIBC)(比色法)と不飽和鉄結合能(UIBC)(比色法)を同時に実施した場合は、不飽和鉄結合能(UIBC)(比色法)又は総鉄結合能(TIBC)(比色法)の所定点数を算定する。
- HDL―コレステロール、総コレステロール及びLDL―コレステロールを併せて測定した場合は、主たるもの2つの所定点数を算定する。
- 蛋白分画、総蛋白及びアルブミン(BCP改良法・BCG法)を併せて測定した場合は、主たるもの2つの所定点数を算定する。 マンガン(Mn)は、1月以上(胆汁排泄能の低下している患者については2週間以上)高カロリー静脈栄養法が行われている患者に対して、3月に1回に限り算定することができる。
- グリコアルブミンは、HPLC(2カラム)、HPLC(1カラム)-発色法、アフィニティークロマトグラフィー・免疫比濁法によるグリコアルブミン測定装置を用いて測定した場合、EIA法又は酵素法により測定した場合に所定点数を算定する。
- ヘモグロビンA1c(HbA1c)、グリコアルブミン又は1,5-アンヒドロ-D-グルシトール(1,5AG)のうちいずれかを同一月中に合わせて2回以上実施した場合は、月1回に限り主たるもののみ算定する。ただし、妊娠中の患者、1型糖尿病患者、経口血糖降下薬の投与を開始して6月以内の患者、インスリン治療を開始して6月以内の患者等については、いずれか1項目を月1回に限り別に算定できる。
- 肝胆道疾患の診断の目的で尿中硫酸抱合型胆汁酸測定を酵素法により実施した場合は、コレステロール分画に準じて算定する。ただし、胆汁酸を同時に測定した場合には、いずれか一方の所定点数のみを算定する。
- ALPアイソザイム及び骨型アルカリホスファターゼ(BAP)は、アガロース電気泳動法によって、一連の検査によって同時に行った場合に算定する。また、骨型アルカリホスファターゼ(BAP)と併せて実施した場合には、いずれか主たるもののみ算定する。
- リポ蛋白(a)は、3月に1回を限度として算定できる。
- ヘパリンの血中濃度測定においては、同一の患者につき1月以内に当該検査を2回以上行った場合においては、算定は1回とし、1回目の測定を行ったときに算定する。
- KL-6、肺サーファクタント蛋白―A(SP-A)及び肺サーファクタント蛋白-D(SP-D)のうちいずれかを併せて実施した場合は、主たるもののみ算定する。KL-6は、EIA法、ECLIA法又はラテックス凝集比濁法により、肺サーファクタント蛋白-A(SP-A)及び肺サーファクタント蛋白-D(SP-D)は、EIA法による。
- 心筋トロポニンIと心筋トロポニンT(TnT)定性・定量を同一月に併せて実施した場合は、主たるもののみ算定する。
- 25-ヒドロキシビタミンDは、原発性骨粗鬆症の患者に対して、ECLIA法、CLIA法又はCLEIA法により測定した場合は、骨粗鬆症の薬剤治療 方針の選択時に1回に限り算定できる。なお、本検査を実施する場合は関連学会が定める実施方針を遵守すること。
- 25-ヒドロキシビタミンDは、ビタミンD欠乏性くる病若しくはビタミンD欠乏性骨軟化症の診断時又はそれらの疾患に対する治療中にECLIA法、CLIA法又はCLEIA法により測定した場合は、診断時においては1回を限度とし、その後は3月に1回を限度として算定できる。
- ペントシジンは、尿素窒素又はクレアチニンにより腎機能低下(糖尿病性腎症によるものを除く。)が疑われた場合に、3月に1回に限り算定できる。ただし、シスタチンCを併せて実施した場合は、主たるもののみ算定する
- シスタチンCは、EIA法、ラテックス凝集比濁法、金コロイド凝集法又はネフェロメトリー法により実施した場合に限り算定できる。
- シスタチンCは、尿素窒素又はクレアチニンにより腎機能低下が疑われた場合に、3月に1回に限り算定できる。ただし、ペントシジンを併せて実施した場合は、主たるもののみ算定する。
- イヌリンは、尿素窒素又はクレアチニンにより腎機能低下が疑われた場合に、6月に1回に限り算定できる。ただし、クレアチニン(腎クリアランス測定の目的で行い、血清及び尿を同時に測定する場合に限る。)を併せて実施した場合は、主たるもののみ算定する。
- 血液ガス分析の所定点数には、ナトリウム、カリウム、クロール、pH、PO2、PCO2及びHCO3-の各測定を含むものであり、測定項目数にかかわらず、所定点数により算定する。なお、同時に行ったヘモグロビンについては算定しない。
- 血液ガス分析は当該検査の対象患者の診療を行っている保険医療機関内で実施した場合にのみ算定できるものであり、委託契約等に基づき当該保険医療機関外で実施された検査の結果報告を受けるのみの場合は算定できない。ただし、委託契約等に基づき当該保険医療機関内で実施された検査について、その結果が当該保険医療機関に速やかに報告されるような場合は、所定点数により算定する。
なお、在宅酸素療法を実施している入院施設を有しない診療所が、緊急時に必要、かつ、密接な連携を取り得る入院施設を有する他の保険医療機関において血液ガス分析を行う場合であって、採血後、速やかに検査を実施し、検査結果が速やかに当該診療所に報告された場合にあっては算定できるものとする。 - Ⅳ型コラーゲン又はⅣ型コラーゲン・7Sは、プロコラーゲン-Ⅲ-ペプチド(P-Ⅲ-P)又はMac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体と併せて行った場合には、主たるもののみ算定する。
- 心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)定性及び定量は、ELISA法、免疫クロマト法、ラテックス免疫比濁法又はラテックス凝集法により、急性心筋梗塞の診断を目的に用いた場合に限り算定する。 ただし、心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)定性又は定量とのミオグロビン定性又は定量を併せて実施した場合は、主たるもののみ算定する。
- アルブミン非結合型ビリルビンは、診察及び他の検査の結果から、核黄疸に進展するおそれがある新生児である患者に対して、生後2週間以内に経過観察を行う場合に算定する。
- セレンは、長期静脈栄養管理若しくは長期成分栄養剤を用いた経腸栄養管理を受けている患者、人工乳若しくは特殊治療用ミルクを使用している小児患者又は重症心身障害児(者)に対して、診察及び他の検査の結果からセレン欠乏症が疑われる場合の診断及び診断後の経過観察を目的として実施した場合に限り算定する。
- ALPアイソザイム(PAG電気泳動法)、ALPアイソザイム及び骨型アルカリホスファターゼ(BAP)及び骨型アルカリホスファターゼ(BAP)を併せて実施した場合は、主たるもののみ算定する。
- レムナント様リポ蛋白コレステロール(RLP-C)は免疫吸着法-酵素法又は酵素法により実施し、3月に1回を限度として算定できる。
- アセトアミノフェンは、同一の患者につき1月以内に2回以上行った場合は、第1回目の測定を行ったときに1回に限り算定する。
- マロンジアルデヒド修飾LDL(MDA-LDL)は、冠動脈疾患既往歴のある糖尿病患者で、冠動脈疾患発症に関する予後予測の補助の目的で測定する場合に3月に1回に限り算定できる。ただし、糖尿病患者の経皮的冠動脈形成術治療時に、治療後の再狭窄に関する予後予測の目的で測定する場合、上記と別に術前1回に限り算定できる。
- リポ蛋白リパーゼ(LPL)は、高トリグリセライド血症及びLPL欠損症が疑われる場合の鑑別のために測定した場合に限り算定できる。また、ヘパリン負荷が行われた場合、投与したへパリンは薬剤として算定できるが、注射料は算定できない。
- 肝細胞増殖因子(HGF)はELISA法により、肝炎にて劇症化が疑われる場合又は劇症肝炎の経過観察に用いた場合に限り算定する。
- 2,5-オリゴアデニル酸合成酵素活性は、ウイルス血症を伴う慢性活動性肝炎患者のインターフェロン製剤の投与量及び治療効果の判定に用いた場合に算定する。
- プロカルシトニン(PCT)定量又は同半定量は、敗血症(細菌性)を疑う患者を対象として測定した場合に算定できる。ただし、エンドトキシンを併せて実施した場合は、主たるもののみ算定する。
- インフリキシマブ定性は、関節リウマチの患者に対して、インフリキシマブ投与量の増量等の判断のために、イムノクロマト法により測定した場合に、患者1人につき3回を限度として算定できる。
- 1,25-ジヒドロキシビタミンD3は、ラジオレセプターアッセイ法、RIA法又はELISA法により、慢性腎不全、特発性副甲状腺機能低下症、偽性副甲状腺機能低下症、ビタミンD依存症Ⅰ型若しくは低リン血症性ビタミンD抵抗性くる病の診断時又はそれらの疾患に対する活性型ビタミンD3剤による治療中に測定した場合に限り算定できる。ただし、活性型ビタミンD3剤による治療開始後1月以内においては2回を限度とし、その後は3月に1回を限度として算定する。
2 内分泌学検査
- C-ペプチド(CPR)を同時に血液及び尿の両方の検体について測定した場合は、血液の場合の所定点数のみを算定する。
抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ抗体(抗GAD抗体)は、すでに糖尿病の診断が確定した患者に対して1型糖尿病の診断に用いた場合又は自己免疫介在性脳炎・脳症の診断に用いた場合に算定できる。 - 脳性Na利尿ペプチド(BNP)は、心不全の診断又は病態把握のために実施した場合に月1回に限り算定する。
- 脳性Na利尿ペプチド(BNP)、脳性Na利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)及び心房性Na利尿ペプチド(ANP)のうち2項目以上をいずれかの検査を行った日から起算して1週間以内に併せて実施した場合は、主たるもの1つに限り算定する。
- 脳性Na利尿ペプチド(BNP)、脳性Na利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)及び心房性Na利尿ペプチド(ANP)のうち2項目以上を実施した場合は、各々の検査の実施日を診療報酬明細書の摘要欄に記載する。
- 脳性Na利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)は、心不全の診断又は病態把握のために実施した場合に月1回に限り算定する。
脳性Na利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)、脳性Na利尿ペプチド(BNP)及び心房性Na利尿ペプチド(ANP)のうち2項目以上をいずれかの検査を行った日から起算して1週間以内に併せて実施した場合は、主たるもの1つに限り算定する。 - 脳性Na利尿ペプチド(BNP)、脳性Na利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)又は心房性Na利尿ペプチド(ANP)のうち2項目以上を実施した場合は、各々の検査の実施日を診療報酬明細書の摘要欄に記載する。
3 腫瘍マーカー
- 腫瘍マーカーは、悪性腫瘍の患者であることが強く疑われる者に対して検査を行った場合に、悪性腫瘍の診断の確定又は転帰の決定までの間に1回を限度として算定する。悪性腫瘍の診断が確定し、計画的な治療管理を開始した場合、当該治療管理中に行った腫瘍マーカーの検査の費用は特定疾患治療管理料の悪性腫瘍特異物質治療管理料に含まれ、腫瘍マーカーは原則として、特定疾患治療管理料の悪性腫瘍特異物質治療管理料と同一月に併せて算定できない。ただし、悪性腫瘍の診断が確定した場合であっても、次に掲げる場合においては特定疾患治療管理料の悪性腫瘍特異物質治療管理料とは別に腫瘍マーカーの検査料を算定できる。
- 急性及び慢性膵炎の診断及び経過観察のためにエラスターゼ1を行った場合
- 肝硬変、HBs抗原陽性の慢性肝炎又はHCV抗体陽性の慢性肝炎の患者について、α-フェトプロテイン(AFP)、PIVKA-Ⅱ半定量又は定量を行った場合ウ子宮内膜症の診断又は治療効果判定を目的としてCA125又はCA602を行った場合
- 家族性大腸腺腫症の患者に対して癌胎児性抗原(CEA)を行った場合
- 前立腺特異抗原(PSA)は、診察、腫瘍マーカー以外の検査、画像診断等の結果から、前立腺癌の患者であることを強く疑われる者に対して検査を行った場合に、前立腺癌の診断の確定又は転帰の決定までの間に原則として、1回を限度として算定する。ただし、前立腺特異抗原(PSA)の検査結果が4.0ng/mL以上であって前立腺癌の確定診断がつかない場合においては、3月に1回に限り、3回を限度として算定できる。なお、当該検査を2回以上算定するに当たっては、検査値を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。
- CA125及び「23」のCA602を併せて測定した場合は、主たるもののみ算定する。
- I型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTX)及びデオキシピリジノリン(DPD)(尿)は、原発性副甲状腺機能亢進症の手術適応の決定、副甲状腺機能亢進症手術後の治療効果判定又は骨粗鬆症の薬剤治療方針の選択に際して実施された場合に算定する。なお、骨粗鬆症の薬剤治療方針の選択時に1回、その後6月以内の薬剤効果判定時に1回に限り、また薬剤治療方針を変更したときは変更後6月以内に1回に限り算定できる。
- I型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTX)、オステオカルシン(OC)又はデオキシピリジノリン(DPD)(尿)を併せて実施した場合は、いずれか1つのみ算定する。
- Ⅰ型コラーゲン架橋C-テロペプチド-β異性体(β-CTX)(尿)は、骨粗鬆症におけるホルモン補充療法及びビスフォスフォネート療法等、骨吸収抑制能を有する薬物療法の治療効果判定又は治療経過観察を行った場合に算定できる。ただし、治療開始前においては1回、その後は6月以内に1回に限り算定できる。
- Ⅰ型コラーゲン架橋C-テロペプチド-β異性体(β-CTX)は、骨粗鬆症におけるホルモン補充療法及びビスフォスフォネート療法等、骨吸収抑制能を有する薬物療法の治療効果判定又は治療経過観察を行った場合に算定できる。ただし、治療開始前においては1回、その後は6月以内に1回に限り算定できる。また、Ⅰ型コラーゲン架橋C-テロペプチド-β異性体(β-CTX)(尿)と併せて実施した場合は、主たるもののみ算定する。
- エストロゲン半定量又は定量については、エストリオール(E3)又はエストラジオール(E2)と同時に実施した場合は算定できない。
- 副甲状腺ホルモン関連蛋白C端フラグメント(C-PTHrP)又は副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)は、高カルシウム血症の鑑別並びに悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症に対する治療効果の判定のために測定した場合に限り算定する。
- エリスロポエチンは、以下のいずれかの目的で行った場合に算定する。
- 赤血球増加症の鑑別診断
- 重度の慢性腎不全患者又はエリスロポエチン、ダルベポエチン、エポエチンベータペゴル若しくはHIF-PH阻害薬投与前の透析患者における腎性貧血の診断
- 骨髄異形成症候群に伴う貧血の治療方針の決定
- 抗IA-2抗体は、すでに糖尿病の診断が確定し、かつ、「18」の抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ抗体(抗GAD抗体)の結果、陰性が確認された患者に対し、1型糖尿病の診断に用いた場合に算定する。なお、当該検査を算定するに当たっては、抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ抗体(抗GAD抗体)の結果、陰性が確認された年月日を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。
4 感染症免疫学的検査
- 梅毒血清反応(STS)定性、梅毒血清反応(STS)半定量及び梅毒血清反応(STS)定量は、従来の梅毒沈降反応(ガラス板法、VDRL法、RPR法、凝集法等)をいい、梅毒血清反応(STS)定性、梅毒血清反応(STS)半定量及び梅毒血清反応(STS)定量ごとに梅毒沈降反応を併せて2種類以上ずつ行った場合でも、それぞれ主たるもののみ算定する。
- マイコプラズマ抗体定性、マイコプラズマ抗体半定量、マイコプラズマ抗原定性(免疫クロマト法)又はマイコプラズマ抗原定性(FA法)を併せて実施した場合は、主たるもののみ算定する。
5 肝炎ウイルス関連検査
- HBs抗原定性・半定量は、免疫クロマト法、赤血球凝集法、粒子凝集法、EIA法(簡易法)、金コロイド凝集法による。
- HBs抗体半定量は、赤血球凝集法、粒子凝集法、EIA法(簡易法)、金コロイド凝集法による。
- 免疫抑制剤の投与や化学療法を行う患者に対して、B型肝炎の再活性化を考慮し、当該治療開始前にHBs抗原、HBs抗体及びHBc抗体半定量・定量を同時に測定した場合は、患者1人につきそれぞれ1回に限り算定できる。
- HCVコア蛋白は、EIA法又はIRMA法による。
- HBc抗体半定量・定量とHBc-IgM抗体を同時に測定した場合は、一方の所定点数を算定する。
- HA抗体とHA-IgM抗体を同時に測定した場合は、一方の所定点数のみを算定する。
- HCV血清群別判定は、EIA法により、C型肝炎の診断が確定した患者に対して、C型肝炎の治療法の選択の目的で実施した場合に、患者1人につき1回に限り算定できる。
- HBVコア関連抗原(HBcrAg)は、HBV感染の診断の補助及び治療効果の判定の目的で、血清又は血漿中のHBVコア関連抗原(HBcrAg)を測定した場合に1月に1回に限り算定する。なお、HBV核酸定量を同時に測定した場合は、主たるもののみ算定する。
- HBVジェノタイプ判定は、B型肝炎の診断が確定した患者に対して、B型肝炎の治療法の選択の目的で実施した場合に、患者1人につき1回に限り算定できる。
6 自己抗体検査
- リウマトイド因子(RF)定量、マトリックスメタロプロテイナーゼ-3(MMP-3)、抗ガラクトース欠損IgG抗体定性、同定量、C1q結合免疫複合体、モノクローナルRF結合免疫複合体及びIgG型リウマトイド因子のうち3項目以上を併せて実施した場合には、主たるもの2つに限り算定する。
- 抗ガラクトース欠損IgG抗体定性、同定量は、ECLIA法又はレクチン酵素免疫測定法による。なお、リウマトイド因子(RF)定量を併せて実施した場合は、主たるもののみ算定する。
- 抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体を、抗甲状腺マイクロゾーム抗体半定量と併せて実施した場合は、主たるもののみ算定する。
- 抗セントロメア抗体定量又は同定性は、原発性胆汁性肝硬変又は強皮症の診断又は治療方針の決定を目的に用いた場合に限り算定できる。
- 抗シトルリン化ペプチド抗体定性又は同定量は、以下のいずれかの場合に算定できる。
- 関節リウマチと確定診断できない者に対して診断の補助として検査を行った場合に、原則として1回を限度として算定できる。ただし、当該検査結果が陰性の場合においては、3月に1回に限り算定できる。なお、当該検査を2回以上算定するに当たっては、検査値を診療報酬明細書の摘要欄に記載する。
- ①とは別に、関節リウマチに対する治療薬の選択のために行う場合においては、患者1人につき原則として1回に限り算定する。ただし、当該検査結果は陰性であったが、臨床症状・検査所見等の変化を踏まえ、再度治療薬を選択する必要がある場合においては、3月に1回に限り算定できる。なお、当該検査を2回以上算定するに当たっては、その医学的な必要性を診療報酬明細書の摘要欄に記載する。
- 抗シトルリン化ペプチド抗体定性、同定量、マトリックスメタロプロテイナーゼ-3(MMP-3)、抗ガラクトース欠損IgG抗体定性、同定量、C1q結合免疫複合体、モノクローナルRF結合免疫複合体及びIgG型リウマトイド因子のうち2項目以上を併せて実施した場合には、主たるもの1つに限り算定する。
- 抗TSHレセプター抗体(TRAb)及び甲状腺刺激抗体(TSAb)を同時に行った場合は、いずれか一方のみ算定する。
- 抗アセチルコリンレセプター抗体(抗AChR抗体)は、重症筋無力症の診断又は診断後の経過観察の目的で行った場合に算定できる。
抗筋特異的チロシンキナーゼ抗体を併せて測定した場合は、主たるもののみ算定する。
7 細菌薬剤感受性検査
細菌薬剤感受性検査は、結果として菌が検出できず実施できなかった場合においては算定しない。このため、疑い病名では算定できない。
8 抗酸菌分離培養検査
- 抗酸菌分離培養検査は、検体の採取部位が異なる場合であっても、同時に又は一連として検体を採取した場合は、1回のみ所定点数を算定する。
- 抗酸菌分離培養(液体培地法)は、液体培地を用いて培養を行い、酸素感受性蛍光センサー、二酸化炭素センサー又は酸化還元呈色色素を用いて検出を行った場合に算定する。
9 抗酸菌同定(種目数にかかわらず一連につき)
抗酸菌同定は、検査方法、培地数にかかわらず、1回のみ所定点数を算定する。
10 抗酸菌薬剤感受性検査(培地数に関係なく)
- 抗酸菌薬剤感受性検査は、直接法、間接法等の方法及び培地数にかかわらず、感受性検査を行った薬剤が4種類以上の場合に限り算定する。
- 混合薬剤耐性検査においても、使われた薬剤が4種類以上の場合に限り算定する。
11 微生物学検査
- 尿素呼気試験(UBT)を含むヘリコバクター・ピロリ感染診断の保険診療上の取扱いについては「ヘリコバクター・ピロリ感染の診断及び治療に関する取扱いについて」に即して行うこと。
- 「ヘリコバクター・ピロリ感染の診断及び治療に関する取扱いについて」
- 対象患者:ヘリコバクター・ピロリ感染症に係る検査については、以下に掲げる患者のうち、ヘリコバクター・ピロリ感染が疑われる患者に限り算定できる。
ア 内視鏡検査又は造影検査において胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の確定診断がなされた患者イ 胃MALTリンパ腫の患者ウ 特発性血小板減少性紫斑病の患者エ 早期胃癌に対する内視鏡的治療後の患者オ 内視鏡検査において胃炎の確定診断がなされた患者
- 除菌前の感染診断
ア 除菌前の感染診断については、次の6項目の検査法のうちいずれかの方法を実施した場合に1項目のみ算定できる。ただし、検査の結果、ヘリコバクター・ピロリ陰性となった患者に対して、異なる検査法により再度検査を実施した場合に限り、さらに1項目に限り算定できる。
(ア) 迅速ウレアーゼ試験
(イ) 鏡検法
(ウ) 培養法
(エ) 抗体測定
(オ) 尿素呼気試験
(カ) 糞便中抗原測定イ 上記アに掲げる(ア)及び(イ)の検査を同時に実施した場合又は、(エ)、(オ)及び(カ)のうちいずれか2つの検査を同時に実施した場合にあっては、アの規定にかかわらずそれぞれの所定点数((ア)+(イ)、(エ)+(オ)、(エ)+(カ)、(オ)+(カ))を初回実施に限り算定することができる。 - 除菌の実施
②の感染診断により、ヘリコバクター・ピロリ陽性であることが確認された対象患者に対しては、ヘリコバクター・ピロリ除菌及び除菌の補助が薬事法上効能として承認されている薬剤を薬事法承認事項に従い、3剤併用・7日間投与し除菌治療を行うこと。 - 除菌後の潰瘍治療
除菌終了後の抗潰瘍剤投与については、薬事法承認事項に従い適切に行うこと。 - 除菌後の感染診断(除菌判定)
ア 除菌後の感染診断については、③の除菌終了後4週間以上経過した患者に対し、ヘリコバクター・ピロリの除菌判定のために②に掲げる検査法のうちいずれかの方法を実施した場合に1項目のみ算定できる。ただし、検査の結果、ヘリコバクター・ピロリ陰性となった患者に対して、異なる検査法により再度検査を実施した場合に限り、さらに1項目に限り算定できる。イ (2)②に掲げる(エ)(オ)(カ)の検査を同時に実施した場合は、①の規定にかかわらず主たる2つの所定点数を初回実施に限り算定することができる。ウ 除菌後の感染診断の結果、ヘリコバクター・ピロリ陽性の患者に対し再度除菌を実施した場合は、1回に限り再除菌に係る費用及び再除菌後の感染診断に係る費用を算定することができる。
- 感染診断実施上の留意事項
ア 静菌作用を有する薬剤について
ランソプラゾール等、ヘリコバクター・ピロリに対する静菌作用を有するとされる薬剤が投与されている場合については感染診断の結果が偽陰性となるおそれがあるので、除菌前及び除菌後の感染診断の実施に当たっては、当該静菌作用を有する薬剤投与中止又は終了後2週間以上経過していることが必要である。イ 抗体測定について
除菌後の感染診断を目的として抗体測定を実施する場合については、③の除菌終了後6ヶ月以上経過した患者に対し実施し、かつ、除菌前の抗体測定結果との定量的な比較が可能である場合に限り算定できる。 - 診療報酬明細書への記載について
ア ②の除菌前感染診断及び⑤の除菌後感染診断において、検査の結果ヘリコバクター・ピロリ陰性となった患者に対し再度検査を実施した場合は、診療報酬明細書の摘要欄に各々の検査法及び検査結果について記載すること。イ ⑤の除菌後感染診断を算定する場合には、診療報酬明細書の摘要欄に除菌終了年月日を記載すること。ウ ⑥、アの静菌作用を有する薬剤を投与していた患者に対し、②の除菌前感染診断及び⑤の除菌後感染診断を実施する場合は、診療報酬明細書の摘要欄に当該静菌作用を有する薬剤投与中止又は終了年月日を記載すること。エ ⑥、イにより抗体測定を実施した場合は、除菌前並びに除菌後の抗体測定実施年月日及び測定結果を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。
- その他
ヘリコバクター・ピロリ感染の診断及び治療については、関係学会よりガイドラインが示されているので参考とすること。
- 対象患者:ヘリコバクター・ピロリ感染症に係る検査については、以下に掲げる患者のうち、ヘリコバクター・ピロリ感染が疑われる患者に限り算定できる。