新規開業医のための保険診療の要点

新規開業医のための保険診療の要点(各論)

[1-1] 内科

<はじめに>
1996年厚生労働省の医道審議会が医療法施行令の改正に関して、標榜診療科目名についての意見では、基本的な考えとして以下をまとめました。
(1)独立した診療分野を形成していること、(2)国民の要望の高い分野であること、(3)国民が適切に受診できること、(4)国民の受診機会が適切に確保できるよう、診療分野に関する知識・技術が医師、または歯科医師に普及・定着していること、の4点をあげています。
医療法施行令によって、この時点に病院及び診療所などの医療機関が表示や広告をしてもよいと認められた内科系の標榜診療科目名は以下の科名が認められています。
内科、循環器内科、呼吸器内科、消化器内科、(または胃腸内科)、腎臓内科、神経内科、糖尿病内科(代謝内科)、血液内科、感染症内科、心療内科です。
平成20年3月31日(医政発第0331042号)では、厚生労働省医政局長から各都道府県知事宛に「広告可能な診療科名の改定について」の発出があり、診療科名の具体例が示されました。
提示された内科系の診療科名は以下のとおりとなります。
内科、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、心臓内科、血液内科、気管食道内科、胃腸内科、腫瘍内科、糖尿病内科、代謝内科、内分泌内科、脂質代謝内科、腎臓内科、神経内科、心療内科、感染症内科、漢方内科、老年内科、女性内科、新生児内科、性感染症内科、内視鏡内科、人工透析内科、疼痛緩和内科、ペインクリニック内科、アレルギー疾患内科、内科ペインクリニック、内科(循環器)、内科(薬物療法)、内科(感染症)、内科(骨髄移植)、以上です。
内科領域の診療における保険診療の適用は広範囲にわたり、個々の領域で専門性の高い分野が含まれますが、内科系学会レベルにおける最新情報が必ずしも保険適応になっていない点に十分留意すべきです。
今回は、内科の基本的な留意事項を外来中心に記載していますので、詳細は医療保険の手引き等をご参照下さい。

I 各種法令における留意事項

療養担当規則が基本となります。(1)厚生労働大臣の定めのない医療行為は、たとえ学会で常識となっていても認められません。(2)健康診断は自己負担。(3)研究目的(治験を含む)で行われたものは請求できません。(4)食事摂取ができる状態では注射薬よりも内服薬が優先されます。(5)単なる疲労や通院不便などでは入院は認められません等です。
さらに、医療保険給付対象外の診療、公費負担医療(精神保健福祉法、生活保護法、感染症法など)、労災保険の適用については法令に準じた給付を要します。
診療報酬請求書記載要領に沿った請求書作成の確認とともに、算定にあたり施設基準が設けられており、特に、診療報酬改定時には確認を要します。

II 診療録(カルテ)への記載の留意事項

  1. 診断根拠(症状·検査)および治療とその結果について具体的に記載してください。
    1. 初診時に漠然とした広範囲の諸検査を行わず、順序立てた検査の結果を待って、患者に結果を説明し、さらに精密な検査を行い確診に至る努力をしなければなりません。
    2. 初診時から悪性腫瘍の疑いで、複数の腫瘍マーカーの検査に当たっては、病歴や一般採血検査、画像診断を参考にして適切に行うべきです。
    3. 回数や頻度に制限が設けられている検査については、前回施行日を記載する必要があります。
    4. 医学管理料の多くは診療録に記載をもって要件を満たすとなっており、患者への説明と同意の記載も必要です。
  2. 「予防のため」、「保険適用はないが多数の報告がある」等は認められません。
    1. ビタミン剤の漫然とした処方、習慣的疼痛緩和のための湿布処方等が例となります。

III 傷病名付与の留意事項

  1. 再審査請求時には病名の追加は認められないので、医療行為に該当する病名を明記すること。病名が診察時点で判明しないときは、疑い病名を挙げるべきです。
  2. 病名はできるだけ整理し、転帰を明確にしてください。
    1. 急性・慢性の別、身体部位を明記してください。
      • 基本的に急性疾患は早期に中止、治癒が記載上望ましいと思われます。
      • 閉塞性動脈硬化症(部位を明記)・不整脈(上室性、心室性など)が例となります。
    2. 治療継続中の疾患を除き、病名の転帰(中止、治癒、死亡)は、日付を記載しなければなりません。
      • 咽頭炎、気管支炎、肺炎等は注意を要します。
    3. 再発や増悪は、再発日、増悪日を記載してください。
    4. 保険請求のための「レセプト病名」は認められません。

IV 診療報酬上の留意事項

保険医は基本的には診療報酬点数表に該当する項目について契約診療を行うので、診療の根拠が診療録に記載され、診療報酬明細書に反映されなければなりません。

<基本診療料>

1 初・再診料

  1. 一度診療が終了していても、検査の結果のみを聞きに来た場合など、前の診療と一連の行為と考えられる場合、診察料の算定は不可となります(電話再診を含む)。
  2. 再診料における外来管理加算は、厚生労働大臣の定める検査等を行わないとして、厚生労働大臣の定める計画的な医学管理を行っている場合は算定できます。また、算定の場合には診療録に内容の記載義務があります。
  3. 地方厚生局長に届け出た医療機関は、初診時に機能強化加算、外来感染症対策向上加算、連携強化加算、サーベイランス強化加算の算定が可能です。
  4. 地方厚生局長に届け出た医療機関は、再診時に時間外対応加算、地域包括診療加算の算定が可能です。

<特掲診療料>

1 医学管理料

  1. 特定疾患療養管理料
    特定疾患が主病であり、計画的に療養上の管理を行った場合が適応となり初診から1ヶ月後より、月2回まで算定可能です。この場合、管理内容を診療録に記載することが要件となっています。基本的に他の管理料も指導内容、治療計画等の診療録への記載が算定要件となっています。
  2. 地域包括診療料
    脂質異常症、高血圧症、糖尿病、慢性心不全、慢性腎臓病(透析を行っていないもの)又は認知症のうち2つ以上の疾患を有する入院外の患者に対し、月1回に限り算定可能となります。
  3. 生活習慣病管理料
    脂質異常症、高血圧症又は糖尿病を主病とする患者に対して、患者の同意を経て治療計画を策定し、治療計画に基づき生活習慣病に関する総合的な治療管理を行った場合に、月に1回に限り算定可能となります。投薬が令和4年度診療報酬改定で包括から除外されました。
  4. 療養・就労両立支援指導料(初回、2回目以降)
    厚生労働大臣が定める疾患に罹患している患者に対して、患者と事業者が共同して作成した勤務情報を記載した文書の内容を踏まえて、就労の状況を考慮して療養上の指導を行うとともに、患者の同意を得て勤務する事業所に選任されている、産業医、統括安全衛生管理者、衛生管理者、衛生推進者、保健師に対して、病状、治療計画、就労上の措置に関する就労と療養の両立に必要な情報を提供した場合、月に1回に限り算定可能です。
  5. 認知症サポート指導料(6ヶ月に1回算定)
    認知症患者に対する支援体制の確保に協力している医師が、他の保険医療機関からの求めに応じて、患者又は家族の求めに応じて療養上の指導を行い、療養の方針に係る助言を行った場合に算定することができます。
  6. 診療情報提供料I
    保険医療機関が、診療に基づき、別の保険医療機関での診療の必要を認め、患者の同意を得て診療状況を示す文章を添えて患者の紹介を行った場合に、紹介元保険医療機関ごとに患者1人につき月1回に限り算定できます。
  7. 診療情報提供料II
    診療を担う医師以外の医師による助言(セカンドオピニオン)を得ることを推進し、家族又は患者の求めに応じて、診療方針に対して助言を行うために必要かつ適切な情報を添付した診療状況を示す文書を患者又は家族に提供した場合1月に1回に限り算定できます。
  8. 傷病手当金意見書交付料
    健康保険法第99条第1項の規定による傷病手当金に係る意見書を交付した場合に算定できます。
  9. 療養費同意書交付料
    「あん摩・マッサージ・指圧、はり・きゅう」療養費に係る同意書を交付した場合に算定できます。

2 検査

<基本的事項>

検査は主訴、身体所見を踏まえて必要な項目を最小限度に行う必要があります。
疾患と病態によっては広範囲にわたる検査が必要になりますが、診断のロジックがレセプトに反映されることが重要です。検査結果は当該患者に十分説明して理解のもとに次の段階に移行することにより、トラブルの予防にもなります。
検体検査は、尿・糞便検査、血液学的検査、生化学的検査等がありますが、個々の手技料、判断料については請求漏れの無いように注意してください。
検査に伴って薬剤を使用した場合は、点数表の「検査」の部で、薬材料のみを算定することになります。
算定回数が複数月に1回とされている検査を行った場合は、レセプト摘要欄に前回実施日(初回の場合は初診である旨)を記載してください。

<各論>

  1. パルスドプラ法加算(超音波検査(断層撮影法))【肝癌】
    原則として、肝癌(疑い含む)に対する超音波検査(断層撮影法)を施行する場合、血流の定量的評価により診断の向上を図る目的で行われるため、パルスドプラ法加算の算定は認められます。
    ただし、肝血管腫での算定は認められませんのでご注意ください。
  2. パルスドプラ法加算(超音波検査(断層撮影法))【乳癌】
    原則として、乳癌が疑われる患者に対するスクリーニング検査として、乳癌自体の血流量が少ないので、パルスドプラ法は意味がないため、超音波検査の断層撮影法におけるパルスドプラ法加算は認められません。
    乳腺腫瘍での算定も認められませんのでご注意ください。
  3. 輸血
    現在供給されている血小板濃厚液は赤血球(不規則抗体の標的)をほとんど含まないので、不規則抗体は適当とは認められません。
  4. HbA1c①(膵臓疾患)
    原則として、HbA1c検査は、糖尿病の治療のコントロールを目的として実施される検査であり、「糖尿病」または「糖尿病疑い」の場合に認められる検査なので糖尿病若しくは糖尿病疑いの明示がなく、膵臓疾患のみの場合のHbA1c検査は認められません。
  5. HbA1c②(肝臓疾患)
    原則として、HbA1c検査は、糖尿病の治療のコントロールを目的として実施される検査であり、「糖尿病」または「糖尿病疑い」の場合に認められる検査です。糖尿病若しくは糖尿病疑いの明示がなく、肝臓疾患のみの場合のHbA1c検査は認められません。
  6. 細菌顕微鏡検査(血液培養)
    原則として、臨床的に感染症の診療にあたっては、原虫類、一部のスピロヘータ類は塗抹検査でその種類を特定できるが、細菌類、真菌類の多くは培養検査の結果を待たなければなりません。また、検体塗抹検査によって菌が検出されるためには、材料中に多量の菌の存在が必要であり、化学療法の普及した今日にあっては、塗抹検査で菌の検出されることは極めて限られており、日常診療での有用性は極めて限られていると判断される血液培養の際の検体での細菌顕微鏡検査は認められません。
    ただし、マラリア、アメーバ赤痢等顕微鏡検査による形態学的診断が極めて重要な役割を演じる疾患であって、当該疾病を疑う医学的必要性が認められる場合は、D005の7血中微生物検査により算定します。
  7. リポ蛋白分画とコレステロール分画(併施)
    原則として、リポ蛋白分画とコレステロール分画の併施は認められない。
    根拠として、脂質異常症の分類については、脂質代謝過程で障害されている経路や機構を把握する目的でリポ蛋白分画が測定され、Fredricksonの分類を改変したWHOの表現型分類が用いられています。しかし、実際の臨床の場では上記の日本動脈硬化学会の基準に基づいた診療が行われています。また、リポ蛋白は脂質値(コレステロール分画)やアポ蛋白値と相関して変動することが多く、コレステロール分画についてはその測定も容易であり、その測定値でリポ蛋白の値を類推できることから、日常の脂質異常症の診療はコレステロール分画測定にて足りると考えられ、原則として両検査の併施は認められません。ただし、治療上必要となる場合は、当該理由を詳記することにより認められる場合もあります。
  8. インスリン(IRI)(糖尿病確定後の患者)
    原則として、糖尿病確定後の患者に対して、その型別の判断が困難である症例も見受けられます。糖尿病の病態把握、特にインスリン抵抗性を知るために、一定間隔での経過観察が必要な場合もあります。まれな病型であるが、slowly progressive I型糖尿病においては、発症初期には一見II型糖尿病のような臨床症状を呈するので、インスリン(IRI)は認められます。
    ただし、C-ペプチド(CPR)との併施は、インスリン異常症等の場合を除き原則として認められず、インスリン治療中は認められないのでご注意ください。
  9. 糖尿病確定診断後の患者に対する連月のインスリン(IRI)の算定
    糖尿病確定診断後の患者に対するインスリン(IRI)の連月の算定は、原則として認められません。ただし、症状詳記等から薬剤変更時、コントロール不良例、治療方針の評価及び決定等、連月の算定の必要性が医学的に判断できる場合は認められますので、ご注意ください。
  10. 狭心症(確定後)の傷病名のみに対するD215の3心臓超音波の算定
    狭心症(確定後)の傷病名のみに対するD215の3心臓超音波イ経胸壁心エコー法の算定は、狭心症確定後においては、心腔壁運動の異常、心筋虚血の有無の検出等に有用である。以上のことから、原則として認められます。
  11. ヒアルロン酸①(肝機能障害、肝細胞癌疑い)
    原則として、「慢性肝炎」の病名がない場合、「肝機能障害」では慢性肝炎かどうか明確ではなく又は「肝細胞癌疑い」ではヒアルロン酸の測定は診断の参考とならないためヒアルロン酸は認められません。
  12. ヒアルロン酸②(肝硬変)
    原則として、肝硬変では既に肝の線維化が認められるものであり、ヒアルロン酸の測定は、疾患の経過観察の参考とならないためヒアルロン酸は認められません。
  13. ヒアルロン酸③(肝細胞癌)
    原則として、「慢性肝炎」の病名がない場合、「肝細胞癌」では、ヒアルロン酸の測定は、経過観察や治療方針の決定には参考とならないので、ヒアルロン酸は認められません。
  14. ヒアルロン酸④(原発性胆汁性肝硬変)
    原則として、「慢性肝炎」の病名がない場合であっても、原発性胆汁性肝硬変は診断時には必ずしも肝硬変とは言えず、そのステージングの参考となるためヒアルロン酸は認められます。
  15. α-フェトプロテインレクチン分画(AFP-L3%)(慢性肝炎)
    原則として、初診月又は再診月に傷病名が「慢性肝炎」のみの場合、α-フェトプロテインレクチン分画(AFP-L3%)は告示・通知から、「慢性肝炎」のみでは認められません。
  16. 抗核抗体、抗DNA抗体定性、抗DNA抗体定量(疑い病名、「注記」がない場合)
    原則として、「疑い病名」あるいは「注記」がない場合、抗てんかん剤の副作用としてSLE様症状は稀であるので、抗てんかん剤に対する抗核抗体、抗DNA抗体定性、抗DNA抗体定量は認められません。
    ただし、「疑い病名」又は「注記」の記載がある場合は認められます。
  17. ループスアンチコアグラント定性、ループスアンチコアグラント定量①(膠原病疑い)
    「c2施uc2抗Rリン脂質抗体症候群」の病名がない場合、「膠原病疑い」に対するループスアンチコアグラント定性、ループスアンチコアグラント定量はスクリーニング検査として測定することは認められません。
  18. アルブミン定量(尿)(糖尿病性早期腎症)
    アルブミン定量(尿)は、糖尿病又は糖尿病性早期腎症患者であって微量アルブミン尿を疑うもの(糖尿病性腎症第1期又は第2期のものに限る。)に対して行った場合に、3月に1回に限り算定できます。なお、アルブミン定量(尿)、トランスフェリン(尿)及びIV型コラーゲン(尿)これらを同時に行った場合は、主たるもののみ算定することにご注意ください。
  19. 抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体(MPO-ANCA)(ANCA関連血管炎)
    原則として、ANCA関連血管炎(疑いを含む)は急速進行性糸球体腎炎の様々な原因疾患の中の一つであり、MPO-ANCAの測定はANCA関連血管炎の診断および病態把握に有用であると考えられるので、抗好中球細胞質ミエロペルオキシターゼ抗体(MPO-ANCA)は認められます。
    ただし、「ANCA関連血管炎の疑い」に対して、MPO-ANCAを連月算定する場合は、ANCA関連血管炎を疑う所見等のコメントが必要であり、単に「ANCA関連血管炎の疑い」の病名が記載されているだけでは、MPOANCAの算定は認められないのでご注意ください。
  20. HBs抗原①(B型肝炎疑い)
    原則として、健診等の結果、血液検査の結果及び症状等から、「B型肝炎の疑い」病名がある場合において、高感度又は高精度の区分番号「D013」肝炎ウイルス関連検査の「3」のHBs抗原をスクリーニングを目的として実施した場合、区分番号「D013」肝炎ウイルス関連検査の「3」のHBs抗原の算定は認められます。
  21. HBs抗原②(B型肝炎の経過観察)
    原則として、「B型肝炎」の抗ウイルス療法、肝庇護療法及び免疫療法の治療をしている経過観察において、肝細胞内のB型肝炎ウイルスの増殖の病態を把握するためにHBs抗原定量値を経時的に測定することが最も有用であるため、区分番号「D013」肝炎ウイルス関連検査の「3」のHBs抗原を測定し算定することは認められます。

3 投薬

<基本的事項>

  1. 処方63枚を超えた湿布薬の投薬の場合には調剤料、処方料、超過分の薬剤料、処方箋料及び調剤技術基本料は算定できません。
  2. 薬剤の適正量の処方と病名漏れに注意してください。
  3. 令和4年度診療報酬改定で、3回まで使用可能なリフィル処方箋が導入されましたが、個々の診療所の患者の受診状況や疾患の安定性に考慮した対応が求められます。

<各論>

  1. 副腎皮質ホルモン剤と免疫抑制剤の併用
    原則として、副腎皮質ホルモン剤が使われている疾患のうち、副腎皮質ホルモンに抵抗性のある症例に対して免疫抑制剤の併用は認められます。
  2. 脂質異常症、高脂血症、高コレステロール血症等
    原則として医薬品の適応を審査する上で、脂質異常症、高脂血症、高コレステロール血症等は同等として取扱うことは妥当です。
    ただし、高トリグリセライド血症に適応のある薬剤を投与する場合は、高コレステロール血症の病名のみでは認められず、高コレステロール血症に適応のある薬剤を投与する場合は、高トリグリセライド血症の病名のみでは認められないのでご注意下さい。
  3. 過活動膀胱治療剤①
    原則として、「効能・効果、用法・用量」より「過活動膀胱の記載がない単なる頻尿等」に対して過活動膀胱治療剤(ベシケア錠等)の投与は認められません。
  4. 過活動膀胱治療剤②
    原則として、「効能・効果、用法・用量」より「過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁」と記載されており「神経因性膀胱」に対して過活動膀胱治療剤(ベシケア錠等)の投与は認められません。
  5. キネダック錠
    原則として、「効能・効果、用法・用量」には、「次の症状(糖化ヘモグロビンが高値を示す場合)の改善/糖尿病性末梢神経障害に伴う自覚症状(しびれ感、疼痛)、振動覚異常、心拍変動異常」と記載されており、「糖尿病性末梢神経障害に伴う自覚症状(しびれ感、疼痛)、振動覚異常、心拍変動異常」の明示がない「糖尿病」の傷病名のみでキネダック錠の投与は認められません。
  6. フオイパン錠
    原則として、胃切除(胃全摘、噴門側又は幽門側胃切除、胃管再建など)術後は、十二指腸液の逆流によるアルカリ性食道炎をきたしますが、フオイパン錠の有用性は、この十二指腸液のトリプシン等、蛋白分解酵素の阻害作用にあります。一方、胃切除を伴わない逆流性食道炎は胃酸の逆流によるものであります。両者の病態、治療法は全く異なることから、術後かどうかは明確に区別されなければならないので逆流性食道炎の傷病名のみでフオイパン錠の投与は認められません。
  7. ヘリコバクター・ピロリ(以降「HP」という。)感染診断において、プロトンポンプ・インヒビター(以降「PPI」という。)投与中止又は終了後2週間以上経過せず実施したD023-2の2尿素呼気試験(UBT)の算定(検査結果が陽性の場合)
    検査結果が陽性の場合であっても、原則として認められません。根拠としては、HP感染診断において、PPIが投与されている患者に対するD023-2の2尿素呼気試験(UBT)については、PPIの静菌作用により検査結果が偽陰性となる可能性があるためです。厚生労働省通知にも「ランソプラゾール等、HPに対する静菌作用を有するとされる薬剤が投与されている場合については感染診断の結果が偽陰性となるおそれがあるので、除菌前及び除菌後の感染診断の実施に当たっては、当該静菌作用を有する薬剤投与中止又は終了後2週間以上経過していることが必要である。」と示されています。このため、当該検査はPPIの投与を中止又は終了してから2週間以上経過後に実施する必要があります。
    一方、投与中止又は終了後2週間以上経過せず実施し、結果「陽性」だった場合は、HP感染について「真に陽性」と判断し得ます。しかし、HP感染者の偽陰性率はPPI服用中が33%、服用中止後3日目9%、7日目3%、14日目0%と報告されています。本検査において重要なことは、偽陰性例(真の陽性例の見落とし)の発生を極力避けることによって、HP感染を正確に診断することです。以上のことから、HP感染診断において、PPI投与中止又は終了後2週間以上経過せず実施したD023-2の2尿素呼気試験(UBT)の算定は、検査結果が陽性の場合であっても、原則認められないと判断されます。
  8. 糖尿病に対するグリニド薬とスルホニル尿素系製剤(以降「SU剤」という。)の併用投与について
    原則として糖尿病に対するグリニド薬とSU剤の併用投与は認められません。根拠としては、グリニド薬(スターシス、グルファスト等)については、添付文書の「重要な基本的注意」に「本剤は、速やかなインスリン分泌促進作用を有する。その作用点はスルホニル尿素系製剤と同じであり、スルホニル尿素系製剤との相加・相乗の臨床効果及び安全性が確認されていないので、スルホニル尿素系製剤とは併用しないこと。」等記載されています。また、SU剤(アマリール、グリミクロン等)については、日本糖尿病学会編「糖尿病治療ガイド」(2018-2019)において、薬物療法の使用上の注意点として、「2種類以上のSU薬の併用や、速効型インスリン分泌促進薬との併用は、治療上意味がない。」と示されています。このことから、糖尿病に対するグリニド薬とSU剤の併用投与は原則認められないと判断しています。
  9. 同一成分の持続性Ca拮抗薬(配合錠と配合錠以外(単剤))の併用投与の取扱い
    個々の医薬品の添付文書に基づき、含有成分の用法・用量の範囲内においては、原則として認められます。根拠として、<カデュエット配合錠4番(アムロジピンベシル酸塩・アトルバスタチンカルシウム水和物)とノルバスクOD錠5mg(アムロジピンベシル酸塩)の併用投与について>カデュエット配合錠4番は、アトルバスタチンとして10mg及びアムロジピンとして5mgが含有されている配合薬であり、持続性Ca拮抗薬にも該当します。ノルバスクOD錠5mgは、アムロジピンとして5mgが含有されている薬剤であり、持続性Ca拮抗薬に該当します。カデュエット配合錠の添付文書の「用法及び用量」には、「以下のアムロジピンとアトルバスタチンの用法・用量に基づき、患者毎に用量を決めること。」と記載され、アムロジピンの項に「通常、成人にはアムロジピンとして2.5〜5mgを1日1回経口投与する。なお、症状に応じ適宜増減するが、効果不十分な場合には1日1回10mgまで増量することができる。」と記載されています。また、「用法及び用量に関連する使用上の注意」には、「配合用量以外の用量を投与する場合は、個別のアムロジピン製剤又はアトルバスタチン製剤を用いることができるが、それぞれの成分の用法・用量の範囲内で投与すること。」と記載されています。カデュエット配合錠4番とノルバスクOD錠5mgの併用投与については、アムロジピン製剤の投与量は合計10mgとなり、個別のアムロジピン製剤の成分の用法・用量の範囲内で投与したものであり、「用法及び用量に関連する使用上の注意」に則した投与として妥当と考えられます。<ユニシア配合錠HD(カンデサルタンシレキセチル・アムロジピンベシル酸塩)とアムロジピン錠5mg(アムロジピンベシル酸塩)の併用投与について>ユニシア配合錠HDは、カンデサルタンシレキセチルとして8㎎とアムロジピンとして5㎎が含有されている配合薬であり、持続性Ca拮抗薬にも該当します。アムロジピン錠5mgは、アムロジピンとして5mgが含有されている薬剤であり、持続性Ca拮抗薬に該当します。ユニシア配合錠HDの添付文書の「用法及び用量に関連する使用上の注意」には、「以下のカンデサルタンシレキセチルとアムロジピンベシル酸塩の用法・用量を踏まえ、患者毎に用量を決めること。」と記載され、アムロジピンベシル酸塩の項に「通常、成人にはアムロジピンとして2.5〜5㎎を1日1回経口投与します。なお、症状に応じ適宜増減するが、効果不十分な場合には1日1回10㎎まで増量することができる。」と記載されています。ユニシア配合錠HDとアムロジピン錠5mgの併用投与については、アムロジピンの投与量は合計10mgとなり、当該成分量から判断し、「用法及び用量に関連する使用上の注意」に則した投与として妥当とされています。
  10. モサプリドクエン酸塩の効能・効果である慢性胃炎に伴う症状の改善に対する特定疾患処方管理加算2の算定
    平成16年7月7日付け厚生労働省保険局医療課事務連絡「疑義解釈資料の送付について」において、「特定疾患に対する薬剤を投与したときの45点の加算は、特定疾患に直接適応のある薬剤の処方の場合のみ算定できるのか。」の問に対して、「そのとおり」と回答されているため、算定は認められます。
  11. メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)腸炎、偽膜性大腸炎及び造血幹細胞移植(骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植)時の消化管内殺菌以外に対する塩酸バンコマイシン散(バンコマイシン塩酸塩散)の投与
    本薬剤は、通常、経口投与によってほとんど吸収されず、高い消化管内濃度が得られますが、血中にはほとんど現れないことから、消化管以外の感染症には用いられないため、原則として認められません。
  12. アルツハイマー型認知症の病名と脳血管障害(脳梗塞後遺症、多発性脳梗塞等)の病名とが併存している場合におけるアリセプト内服薬(錠・ドライシロップ・ゼリー等)の投与
    認知症疾患治療ガイドライン2010(日本神経学会監修)において、アルツハイマー型認知症(AD)が脳血管障害と共通の危険因子を有することや、病理学的にも、特に高齢者ではアルツハイマー型認知症の病理所見と脳血管障害が重なる病態が多く認められるとされています。また、近年では、血管性認知症(VaD)の疾病概念が変更され、「脳血管障害を有するアルツハイマー型認知症(AD)」あるいは「混合型認知症」という概念が広まっているため、原則として認められます。
  13. 除菌前の感染診断の請求がないHP除菌療法について、内視鏡検査による胃炎の診断及びHPの感染診断(陽性)が、他医療機関(検診も含む)で実施された場合の取扱い
    病名及び症状詳記等にその旨の記載があれば、原則として認められます。なお、内視鏡検査又は造影検査において確定診断がなされた胃潰瘍又は十二指腸潰瘍についても同様に取扱います。
  14. 潰瘍性大腸炎に対するペンタサ錠とペンタサ注腸の併用投与
    原則として認められます。根拠は潰瘍性大腸炎の治療については、左側あるいは全大腸炎型でも遠位大腸の活動性がある場合には、内服療法に加え局所投与の併用が望ましいことです。ペンタサ錠は小腸から大腸の広い範囲で吸収される特徴がありますが、大腸の末端までは、高い濃度のメサラジンが行き届きません。潰瘍性大腸炎では、病変が直腸からびまん性に口側に進展することから、ペンタサ注腸は、病変部位に十分な薬剤を到達させる製剤です。なお、ペンタサ注腸の「効能・効果に関連する使用上の注意」には「脾湾曲部より口側の炎症には効果が期待できない」とあります。また、厚生労働省研究班(鈴木班)による治療指針でも左側大腸炎型・全大腸炎型の軽症・中等症の寛解導入療法で、内服に注腸の併用は効果増強が期待できるとあり、重症例でも併用が認められています。寛解維持療法でも内服と注腸の併用は有用であるとされています。(潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針:平成27年度改訂版(平成28年3月31日))これらのことから、ペンタサ錠とペンタサ注腸は大腸内でも作用する部位が異なるため、潰瘍性大腸炎に対する併用投与は、原則認められると判断しています。
  15. 単なる動脈硬化症に対するペリシット錠の投与
    適応は「高脂血症の改善」に加えて「ビュルガー病、閉塞性動脈硬化症、レイノー病、レイノー症候群に伴う末梢循環障害」とされています。上記の動脈疾患は、末梢循環障害を主要症状とする一群です。したがって、単なる「動脈硬化症」に対するペリシット錠の投与は、原則認められないと判断しています。

4 注射

  1. 疾患の状態に応じた用量・用法に注意が必要です。
  2. ビタミン剤の注射や点滴静注は査定の対象になり易いので慎重に医学的必要性を判断して下さい。

V 令和4年度診療報酬改定における、新規・改定項目

「主な改定項目」

令和4年度診療報酬改定で内科関連項目では、新型コロナウイルス感染症への対応、通信情報機器を用いた診察の評価、かかりつけ医機能の評価では訪問診療のみならず、緊急往診や在宅の看取り件数が実績となる「初診料の機能強化加算」の見直しがあり、「体制要件」から「在宅医療実績」が要件化され、算定にあたり施設基準を満たす必要があります。
診療報酬改定の新設・改定の主な項目を列記します。

  1. (新設)外来感染対策向上加算(6点、月1回):感染症対策の徹底、抗菌薬適正使用等
  2. (新設)連携強化加算(3点、月1回):感染症対策向上加算1病院と連携している。外来感染対策向上加算届出診療所が対象
  3. (新設)サーベイランス強化加算(1点、月1回):感染症防止対策に資する情報を提供する体制が整備されている外来感染対策向上加算を届出でた診療所
  4. (改定)機能強化加算(初診料に80点):要件に緊急往診や見取りの実績が追加
  5. (改定)地域包括診療加算等「2」:直近1年間に、算定患者が3人以上、または、在宅患者訪問診療料(I)、(II)または往診料を算定患者3人以上
  6. (改定)地域包括診療加算または地域包括診療料算定患者の追加:従来の算定対象患者、脂質異常症、高血圧症、糖尿病、または認知症に加えて慢性心不全、維持透析を行っていない慢性腎臓病が追加。6疾患のうち2以上の疾患を有する患者が対象
  7. (新設)電子的保健医療情報活用加算(初診7点、再診4点・いずれか1月1回限り):オンライン資格確認システムを通じて患者の薬剤情報または特定健診情報等を取得し、情報を活用して診療等を実施することの評価
    ※令和5年10月の改定で名称が「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」に改められ、点数も変更されました。
  8. (新設)情報通信機器を用いた診療に対する評価(初診料251点、再診料73点、外来診療料73点):従来のオンライン診療料に替えて新設。また、情報通信機器を用いた医学管理についても評価が見直された(例.特定疾患療養管理料196点)。
    ※詳細は総論6オンライン診療を参照
  9. (改定)生活習慣病管理料:投薬に係る費用が生活習慣病管理料の包括対象から除外された。また、総合的な治療管理を多職種と連携して実施しても差し支えないことが明確化された。
  10. (新設)外来在宅共同指導料:外来から在宅へかかりつけ医師を交代した場合の連携強化
    外来在宅共同指導料1(400点、患者1人に付1回限り):在宅療養を担う医療機関
    外来在宅共同指導料2(600点、患者1人に付1回限り):外来診療を担う医療機関
  11. (新設)リフィル処方箋:処方箋に医師が「リフィル可」とチェックすることにより、繰り返し使用し、薬剤師による服薬管理の下、一定期間に反復回の利用できるが、向精神薬、抗がん剤等の除外薬があることに注意
    算定要件・施設基準等の詳細については、関連する告示・通知等をご確認ください。

以上

VI その他

<おわりに>

診察・検査・治療等に関しては療養担当規則に定められているので、これを日常的に理解する必要があります。さらに、2年ごとに診療報酬改定が行われ、疑義解釈が発出され解釈が変わる事もあるので、医療保険に関する最新の情報を得る必要があります。
最新情報は日本医師会、東京都医師会、地区医師会や内科医会から提供されるので是非利用してください。
毎月の診療の結果が2ヶ月後の診療報酬となって反映されますが、些細な手続き上のミスで査定されることがありますので、カルテのチェックとレセプトのチェックは必要であると思います。

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