新規開業医のための保険診療の要点

新規開業医のための保険診療の要点(各論)

[2-9] 審査情報提供事例等について

社会保険診療報酬支払基金では、「審査情報提供検討委員会」を設置し、診療報酬請求の審査に関する情報提供事例の検討と併せ、審査上の一般的な取扱いに係る事例についても検討を行い結果について、「支払基金における審査の一般的な取扱い」や「審査情報提供事例」として情報提供を行っております。
国民健康保険中央会においても同様に「審査情報提供事例について」として情報提供しております。
本各論では、「審査情報提供事例」の代表的な例をお示ししておりますが、それ以外の事例についても、社会保険診療報酬支払基金、国民健康保険中央会のホームページに掲載されており、また、新たな事例等の情報提供も更新されておりますので、定期的に確認する事をお勧めいたします。
なお、本書に掲載した事例や、社会保険診療報酬支払基金、国民健康保険中央会の示す事例等に示された適否が、すべての個別診療内容に係る審査において、画一的あるいは一律的に適用されるものではないことにご留意ください。

<社会保険診療報酬支払基金>
検査
項目取扱い取扱いの根拠留意事項
アルブミン定量(尿)
(糖尿病性早期腎症)
糖尿病性早期腎症(第1期又は第2期の記載がないもの。)に対してのアルブミン定量(尿)の算定を認める。 D001の8アルブミン定量(尿)は通知に「糖尿病又は糖尿病性早期腎症患者であって微量アルブミン尿を疑うもの(糖尿病性腎症第1期又は第2期のものに限る。)に対して行った場合に、3ヶ月に1回に限り算定できる。」とある。
糖尿病診療ガイドラインに糖尿病性腎症病期分類の表が記載されているが、第1期とは尿蛋白(アルブミン)が正常であるもの、第2期とは尿蛋白(アルブミン)が微量アルブミン尿であるものと定義し、第2期を早期腎症と呼称している。傷病名「早期腎症」は、尿蛋白が陰性で、アルブミン定量(尿)の測定により微量アルブミンを診断できる患者であり、通知に該当すると考えられる。
赤血球沈降速度
(ESR)とC反応性蛋白(CRP)
(併施)
原則として、同一検体での赤血球沈降速度(ESR)とC反応性蛋白(CRP)の併施算定は認められる。 ESRとCRP検査データは、通常、並行的に変化するものであるが、両者のデータの乖離(かいり)は炎症初期及び回復期等に認められる場合がある。また、血管内凝固症候群など両者の乖離(かいり)が診断のきっかけとなることもあるなど、両者の併施は有用である。
赤血球沈降速度(ESR)
(高血圧症)
初診時以外で、「高血圧症」のみの病名に対する赤血球沈降速度(ESR)の算定は認められない。 「高血圧症」とESRは病態生理学的にみて、必然的な検査とは認められない。
HbA1c ①
(膵臓疾患)
原則として、糖尿病若しくは糖尿病疑いの明示がなく、膵臓疾患のみの場合のHbA1c検査は認められない。 HbA1c検査は、糖尿病の治療のコントロールを目的として実施される検査であり、「糖尿病」または「糖尿病疑い」の場合に認められる検査である。 膵臓疾患、特に慢性膵炎では糖尿病の合併が多く見られ、血糖値の平均を評価することには臨床的有用性がある。こうした場合は「糖尿病」または「糖尿病疑い」等の病名を明細書に記載することとなるが、これらの病名がない場合には、詳記等により検査をする医学的な必要性が認められる場合に限られる。
HbA1c ②
(肝臓疾患)
原則として、糖尿病若しくは糖尿病疑いの明示がなく、膵臓疾患のみの場合のHbA1c検査は認められない。 HbA1c検査は、糖尿病の治療のコントロールを目的として実施される検査であり、「糖尿病」または「糖尿病疑い」の場合に認められる検査である。 上記、膵臓疾患と同様の留意事項
プロトロンビン時間(PT)②
(術前検査)
原則として、消化管内視鏡検査(ポリープ切除を実施しない場合)の術前検査として、プロトロンビン時間(PT)は認められる。 当初の目的が消化管内視鏡(特に大腸内視鏡)検査であって、観察の結果で、そのままポリープ切除術など観血的な医療行為に移行することがある。
フェリチン 原則として、鉄欠乏性貧血の疑い病名に対するD007の26フェリチン半定量又はフェリチン定量の算定は認められる。 フェリチンは肝、脾、小腸粘膜などに含まれる鉄蛋白質で血液中に微量に存在し、体内貯蔵鉄の量を反映する。鉄欠乏性貧血では、早期よりフェリチンが低下するためその診断に有用である。
リポ蛋白分画とコレステロール分画
(併施)
原則として、リポ蛋白分画とコレステロール分画の併施は認められない。 脂質異常症は、血液中の脂質すなわちLDL-コレステロール(LDLC)、HDLコレステロール(HDL-C)中性脂肪(TG)のうち少なくとも一つが病的範囲にある状態をい。日本動脈硬化学会では、脂質異常症の診断基準として、LDLC140mg/dl以上、TG150mg/dl以上を挙げ、HDL-C40mg/dl未満を低HDL-C血症としている。また、同学会の動脈硬化性疾患予防ガイドラインはLDL-Cを重視し、患者を冠動脈疾患の有無とLDLC以外の主要危険因子により4カテゴリーに分け、その脂質管理目標値に従った管理を推奨している。一方、リポ蛋白は脂質と蛋白の複合体をさし、カイロミクロン、超低比重リポ蛋白(VLDL)、低比重リポ蛋白(LDL)、高比重リポ蛋白(HDL)が含まれる。ある種の病的状態で中間比重リポ蛋白(ILD)あるいはレムナントが増加する。
従来、脂質異常症の分類については、脂質代謝過程で障害されている経路や機構を把握する目的でリポ蛋白分画が測定され、Fredricksonの分類を改変したWHOの表現型分類が用いられている。しかし、実際の臨床の場では上記の日本動脈硬化学会の基準に基づいた診療が行われている。また、リポ蛋白は脂質値(コレステロール分画)やアポ蛋白値と相関して変動することが多く、コレステロール分画についてはその測定も容易であり、その測定値でリポ蛋白の値を類推できることから、日常の脂質異常症の診療はコレステロール分画測定にて足りると考えられ、原則として両検査の併施は認められない。
治療上必要となる場合は、当該理由を詳記することにより認められる場合もある。
ヒアルロン酸①
(肝機能障害、肝細胞癌疑い)
「慢性肝炎」の病名がない場合、「肝機能障害」又は「肝細胞癌疑い」に対するヒアルロン酸は認められない。 「肝機能障害」では、慢性肝炎かどうか明確ではない。「肝細胞癌疑い」では、ヒアルロン酸の測定は診断の参考とならない。
D-59ヒアルロン酸②
(肝硬変)
原則として、肝硬変に対するヒアルロン酸は認められない。 「肝硬変」では、既に肝の線維化が認められるものであり、ヒアルロン酸の測定は、疾患の経過観察の参考とならない。
ヒアルロン酸③
(肝細胞癌)
原則として、「慢性肝炎」の病名がない場合、肝細胞癌に対するヒアルロン酸は認められない。 「肝細胞癌」では、ヒアルロン酸の測定は、経過観察や治療方針の決定には参考とならない。
ヒアルロン酸④
(原発性胆汁性肝硬変)
原則として、「慢性肝炎」の病名がない場合であっても、原発性胆汁性肝硬変に対するヒアルロン酸は認められる。 「原発性胆汁性肝硬変」は、診断時には必ずしも肝硬変とは言えず、そのステージングの参考となる。
T3、FT3、T4、FT4
(併施)
原則として、T3とFT3、T4とFT4の併施は認められない。T3およびT4、あるいはFT3およびFT4の組み合わせによる併施は認められる。 日常の臨床の場で、甲状腺ホルモンの動向をみるためには、特定の場合を除き総甲状腺ホルモンT3、T4の測定によってのみでも可能であるが、総甲状腺ホルモン(T3やT4)は、血中ではその大部分が蛋白(TBG等)と結合した形で存在しており、実際の生体での作用は遊離系のfreeT3(FT3)、freeT4(FT4)濃度によって決定されることから、病態の把握には遊離ホルモンの測定がより有用となる。また、甲状腺ホルモンの総量と遊離系ホルモン量とは概ね相関して増減することから、特定の場合を除き、甲状腺ホルモンの測定は、その遊離系ホルモン量あるいは甲状腺ホルモン総量測定のいずれかによることが望ましい。 まれに、TBG異常症等でT3・T4とFT3・FT4との間に乖離(かいり)が見られることがあり、臨床的にそのようなことが想定されT3とFT3、T4とFT4の併施測定の医学的必要性が認められる場合に限り認められる。
インスリン(IRI)
(糖尿病確定後の患者)
原則として、糖尿病確定後の患者に対して、インスリン(IRI)は認められる。 糖尿病として診断されても、その型別の判断が困難である症例も見受けられる。糖尿病の病態把握、特にインスリン抵抗性を知るために、一定間隔での経過観察が必要な場合もある。まれな病型であるが、slowly progressive I型糖尿病においては、発症初期には一見II型糖尿病のような臨床症状を呈する。 C-ペプチド(CPR)との併施は、インスリン異常症等の場合を除き原則として認められない。インスリン治療中は認められない。
C-ペプチド(CPR)
(糖尿病確定後の患者)
原則として、糖尿病確定後の患者に対して、C-ペプチド(CPR)は認められる。 糖尿病として診断されても、その型別の判断が困難である症例も見受けられる。特にインスリン抵抗性を知るために、一定間隔での経過観察が必要である。
まれな病型であるが、slowly progressive I型糖尿病においては、発症初期には一見II型糖尿病のような臨床症状を呈する。また、小児・若年の糖尿病においては、発病初期の場合が多く、病型の判定の困難なことがある。
インスリン(IRI)との併施は、インスリン異常症等の場合を除き原則として認められない。
糖尿病確定診断後の患者に対する連月のインスリン(IRI)の算定について 糖尿病確定診断後の患者に対するインスリン(IRI)の連月の算定は、原則として認めない。ただし、症状詳記等から薬剤変更時、コントロール不良例、治療方針の評価及び決定等、連月の算定の必要性が医学的に判断できる場合は認める。 審査情報提供事例(平成18年3月27日第2次提供事例)より「原則として、糖尿病確定後の患者に対して、インスリン(IRI)は認められる。」とされ、その理由として「糖尿病として診断されても、その型別の判断が困難である症例も見受けられる。糖尿病の病態把握、特にインスリン抵抗性を知るために、一定間隔での経過観察が必要な場合もある。まれな病型であるが、slowly progressive I型糖尿病においては、発症初期には一見II型糖尿病のような臨床症状を呈する。」としている。
インスリン(IRI)は、インスリン分泌能の評価を行い、病型の診断(I型等)を行う検査であり、病型の診断が既に行われ症状が安定している患者に対しては頻回に実施する検査ではないが、薬剤変更時、コントロール不良例、治療方針の評価及び決定等、経過観察が必要な場合もある。これらの状態が病名又は症状詳記等で医学的に判断できる場合は、連月の算定は原則認められると判断した。以上のことから、糖尿病確定診断後の患者に対してのIRIの算定は、一定間隔での経過観察が必要な場合等もあるため認めるが、病型の診断が既に行われ、症状が安定している患者に対しては頻回に実施する検査ではないため、連月の算定については原則として認めないとし、症状詳記等から薬剤変更時、コントロール不良例、治療方針の評価及び決定等、連月の算定の必要性が医学的に判断できれば認める場合もあるとして取り扱うこととする。
α-フェトプロテインレクチン分画
(AFP-L3%)
(慢性肝炎)
原則として、初診月又は再診月に傷病名が「慢性肝炎」のみの場合、α-フェトプロテインレクチン分画(AFP-L3%)は認められない。 告示・通知から、「慢性肝炎」のみでは認められない。
輸血 血小板製剤のみの輸血に対し、不規則抗体検査は認められない。 現在供給されている血小板濃厚液は赤血球(不規則抗体の標的)をほとんど含まないので、不規則抗体は適当とは認められない。
インフルエンザ関連検査 原則として、「インフルエンザ」又は「インフルエンザ疑い」以外でインフルエンザ関連検査の算定は認められない。 本検査は、インフルエンザウイルス感染症の診断を行うためのものであり、「インフルエンザ」又は「インフルエンザ疑い」の明示がない、インフルエンザ関連検査の算定は認められない。
梅毒血清反応
(STS)定性②
人工腎臓実施時(初回)に梅毒血清反応(STS)定性の算定は認められる。 梅毒は、血液を介して感染が広がるおそれがあることから、観血的検査等を実施するに当たって感染の有無の確認を行うことに意義は認められる。 梅毒血清反応(STS)半定量、梅毒血清反応(STS)定量の算定は認められない。
梅毒血清反応
(STS)定性③
原則として、内視鏡検査時における梅毒血清反応(STS)定性は認められる。 梅毒は、血液を介して感染が広がるおそれがあることから、内視鏡検査を実施するにあたって感染の有無の確認を行うことに意義は認められる。
HIV-1抗体、HIV-1、2抗体定性、HIV-1、2抗体半定量、HIV-1、2抗体定量、HIV-1、2抗原・抗体同時測定定性又はHIV-1、2抗原・抗体同時測定定量② 内視鏡検査時の検査として、HIV-1抗体、HIV-1、2抗体定性、HIV-1、2抗体半定量、HIV-1、2抗体定量、HIV-1、2抗原・抗体同時測定定性又はHIV-1、2抗原・抗体同時測定定量は認められない。 本検査は、スクリーニング検査としては、認められない。
HBs抗原 原則として、内視鏡時におけるHBs抗原の算定は認められる。 B型肝炎は、血液を介して感染が広がるおそれがあることから、内視鏡検査を実施するにあたって感染の有無の確認を行うことに意義は認められる。
HBs抗原定性・半定量②
(人工腎臓実施時)
人工腎臓実施時(初回)にHBs抗原定性・半定量の算定は認められる。 B型肝炎は、日常の臨床現場で遭遇することが稀ではない感染症であるが、血液を介して感染が広がるおそれがあることから、観血的検査等を実施するに当たって、感染の有無の確認を行うことに意義は認められる。
HBs抗原定性・半定量③ 原則として、内視鏡検査時におけるHBs抗原定性・半定量は認められる。 B型肝炎は、日常の臨床現場で遭遇することが稀ではない感染症であるが、血液を介して感染が広がるおそれがあることから、内視鏡検査を実施するにあたって感染の有無の確認を行うことに意義は認められる。
HBs抗原①
(B型肝炎疑い)
原則として、健診等の結果、血液検査の結果及び症状等から、「B型肝炎の疑い」病名がある場合において、スクリーニングを目的として実施した、区分番号「D013」肝炎ウイルス関連検査の「3」のHBs抗原の算定は認められる。 区分番号「D013」肝炎ウイルス関連検査の「3」のHBs抗原については、健診等で肝機能障害や黄疸が指摘された場合や、血液検査の結果及び全身倦怠感に引き続き食欲不振、悪心・嘔吐などの症状からB型肝炎が疑われる場合に実施されており、B型肝炎ウイルスの感染を見逃さないために高感度又は高精度に測定することは臨床上有用である。したがって、B型肝炎が疑われた時点で高感度又は高精度の区分番号「D013」肝炎ウイルス関連検査の「3」のHBs抗原を実施することは必要と認められる。
HBs抗原③
(B型肝炎の経過観察)
原則として、「B型肝炎」の抗ウイルス療法、肝庇護療法及び免疫療法の治療をしている経過観察において、区分番号「D013」肝炎ウイルス関連検査の「3」のHBs抗原を測定し算定することは認められる。 区分番号「D013」肝炎ウイルス関連検査の「3」のHBs抗原については、B型肝炎(診断時以外)患者に対する抗ウイルス療法、肝庇護療法及び免疫療法の治療効果を判定するうえで、肝細胞内のB型肝炎ウイルスの増殖の病態を把握するためにHBs抗原定量値を経時的に測定することが最も有用である。したがって、B型肝炎(診断時以外)患者に対する抗ウイルス療法、肝庇護療法及び免疫療法の治療効果を判定するうえで、区分番号「D013」肝炎ウイルス関連検査の「3」のHBs抗原を実施することは必要と認められる。
HCV抗体定性・定量②
(人工腎臓実施時)
人工腎臓実施時(初回)にHCV抗体定性・定量の算定は認められる。 C型肝炎は、日常の臨床現場で遭遇することが稀ではない感染症であるが、血液を介して感染が広がるおそれがあることから、観血的検査等を実施するに当たって、感染の有無の確認を行うことに意義は認められる。
HCV抗体定性・定量③
D013
原則として、内視鏡検査時におけるHCV抗体定性・定量は認められる。 C型肝炎は、日常の臨床現場で遭遇することが稀ではない感染症であるが、血液を介して感染が広がるおそれがあることから、内視鏡検査を実施するにあたって感染の有無の確認を行うことに意義は認められる。
抗核抗体、抗DNA抗体定性、抗DNA抗体定量
(疑い病名、「注記」がない場合)
原則として、「疑い病名」あるいは「注記」がない場合、抗てんかん剤に対する抗核抗体、抗DNA抗体定性、抗DNA抗体定量は認められない。 抗てんかん剤の副作用としてSLE様症状は稀であるので、認めない。 「疑い病名」又は「注記」の記載がある場合は認める。
ループスアンチコアグラント定性、ループスアンチコアグラント定量①
(膠原病疑い)
「c2施uc2抗Rリン脂質抗体症候群」の病名がない場合、「膠原病疑い」に対するループスアンチコアグラント定性、ループスアンチコアグラント定量は認められない。 膠原病のスクリーニング検査としてループスアンチコアグラント定性、ループスアンチコアグラント定量を測定することは適当でない。
ループスアンチコアグラント定性、ループスアンチコアグラント定量②
(習慣流産)
原則として、「抗リン脂質抗体症候群」の病名がない場合であっても、「習慣流産」に対するループスアンチコアグラント定性、ループスアンチコアグラント定量は認められる。 習慣流産の原因となる母体疾患として、「抗リン脂質抗体症候群」を持っている可能性が高いと考えられる。抗リン脂質抗体は、流産との関連性が大きく、不育症の重要な要因でもあるため、これらの母体疾患の有無を検討し、異常があれば治療を加えることで流産を予防することが可能である。
抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体(MPO-ANCA)
(ANCA関連血管炎)
原則として、ANCA関連血管炎(疑いを含む)に対して、抗好中球細胞質ミエロペルオキシターゼ抗体(MPO-ANCA)は認められる。 急速進行性糸球体腎炎は急速に腎機能に影響を及ぼす病態の一つの総称であり、具体的傷病名として多くの疾患が包合されている。ANCA関連血管炎は急速進行性糸球体腎炎の様々な原因疾患の中の一つであり、MPO-ANCAの測定はANCA関連血管炎の診断および病態把握に有用であると考えられる。 「ANCA関連血管炎の疑い」に対して、MPOANCAを連月算定する場合は、ANCA関連血管炎を疑う所見等のコメントが必要であり、単に「ANCA関連血管炎の疑い」の病名が記載されているだけでは、MPOANCAの算定は認められない。
血清補体価(CH50)
(膠原病の疑い)
原則として、初診時に「膠原病の疑い」の病名に対する血清補体価(CH50)は認められる。 清補体価検査は、その病態にII型・III型アレルギー機序が関与する膠原病(全身性エリテマトーデス、クリオグロブリン血症、血管炎症候群等)では低値を示すことが一般的に知られている。したがって、CH50は膠原病の診断を進める際に用いる血清補体価検査として有用である。
アレルギー性鼻炎の疑いに対するD015の10非特異的IgE半定量及び非特異的IgE定量の算定について アレルギー性鼻炎の疑いに対して、D015の10非特異的IgE半定量及び非特異的IgE定量の算定は、原則として認められる。 IgEは血清中にごく微量存在する免疫グロブリンで、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、じんま疹I型(即時型)アレルギー反応が関与する疾患などのI型アレルギー疾患で高値を示す。非特異的IgEは、IgEの血中総濃度を測定する検査であり、I型アレルギーのスクリーニング検査として有用である。このため、アレルギー性鼻炎の疑いに対するD015の10非特異的IgE半定量及び非特異的IgE定量の算定は、原則として認められることとした。
細菌顕微鏡検査
(血液培養)
原則として、血液培養の際の検体での細菌顕微鏡検査は認められない。 臨床的に感染症の診療に当っては、原虫類、一部のスピロヘータ類は塗抹検査でその種類を特定できるが、細菌類、真菌類の多くは培養検査の結果を待たなければならない。また、検体塗抹検査によって菌が検出されるためには、材料中に多量の菌の存在が必要であり、化学療法の普及した今日にあっては、塗抹検査で菌の検出されることは極めて限られており、日常診療での有用性は極めて限られていると判断される。 原則として、血液培養の際の検体からの細菌顕微鏡検査は認められないが、マラリア、アメーバ赤痢等顕微鏡検査による形態学的診断が極めて重要な役割を演じる疾患であって、当該疾病を疑う医学的必要性が認められる場合は、D005の7血中微生物検査により算定する。
心電図検査① 原則として、上部及び下部消化管内視鏡検査時(鎮静目的の薬剤を使用している場合、使用していない場合)において心電図検査の算定要件を満たさない場合は、当該検査の算定は認められない。 同上
超音波検査 原則として、単なる挫傷に対する局所診断を目的とした超音波検査は認められない。 単なる「挫傷」に対する超音波検査の算定は、挫傷局所の診断検査としては一般的ではない。なお、「単なる挫傷」とは「部位や併存症または合併症(疑い病名を含む)などの傷病名記載のない挫傷」のことをいう。
パルスドプラ法加算 原則として、肝癌(疑い含む)に対する超音波検査(断層撮影法)を施行する場合、パルスドプラ法加算の算定は認められる。 肝癌(疑い含む)に対する超音波検査(断層撮影法)を施行する場合、パルスドプラ法加算の算定は、血流の定量的評価により診断の向上を図る目的で行われる。 肝血管腫での算定は認めない。
パルスドプラ法加算 原則として、乳癌が疑われる患者に対するスクリーニング検査として、超音波検査の断層撮影法におけるパルスドプラ法加算は認められない。 乳癌自体の血流量が少ないので、パルスドプラ法は意味がない。また、スクリーニング検査では、早期症例又は他の良性腫瘍も多く含まれる。 乳腺腫瘍での算定も認めない。
パルスドプラ法加算①
(腎悪性腫瘍)
原則として、腎悪性腫瘍に対して超音波検査(断層撮影法)を施行する場合にパルスドプラ法加算は認められる。 腎癌の大半は血管の豊富な腫瘍であり診断的価値は大きい。また腎静脈、下大静脈などへの腫瘍浸潤の診断にも有用である。 原則として良性腫瘍では有用性は低いが、腎血管筋脂肪腫などの血管の豊富な腫瘍では、パルスドプラ法が必要である場合がある。
パルスドプラ法加算②
(尿管腫瘍)
原則として、尿管腫瘍に対して超音波検査(断層撮影法)を施行する場合にパルスドプラ法加算は認められない。 尿管腫瘍は血流がほとんど存在せず、小さいので診断的価値が少ない。 原則として良性腫瘍では有用性は低いが、進行病変では診断的価値が高いことから、悪性腫瘍、血管病変では必要である場合がある。
パルスドプラ法加算③
(精索静脈瘤)
原則として、精索静脈瘤に対して超音波検査(断層撮影法)を施行する場合にパルスドプラ法加算は認められる。 手術適応の決定の際に、精索静脈の血流状態の診断が必要である。
パルスドプラ法 加算④
(精索、精巣捻転症)
精索及び精巣捻転症に対して超音波検査(断層撮影法)を施行する場合にパルスドプラ法加算は認められる。 精巣温存のためには緊急手術を要する疾患であり、その手術適応の決定の際に、精巣の血行障害の診断が必要である。
狭心症(確定後)の傷病名のみに対するD215の3心臓超音波の算定について 狭心症(確定後)の傷病名のみに対するD215の3心臓超音波イ 経胸壁心エコー法の算定は、原則として認められる。 心臓超音波検査は、高周波の超音波を用いて心臓の動きや構造、血流を観察し、心臓疾患の診断や心機能・血行動態の判定を行う検査であり、狭心症確定後においては、心腔壁運動の異常、心筋虚血の有無の検出等に有用である。以上のことから、狭心症(確定後)の傷病名のみに対するD215の3心臓超音波 イ 経胸壁心エコー法の算定は、原則認められると判断した。
呼吸心拍監視 ① 原則として、上部及び下部消化管内視鏡検査時(鎮痛・鎮静目的の薬剤を使用している場合、使用していない場合)において呼吸心拍監視の算定要件を満たさない場合は、当該検査の算定は認められない。 同上
呼吸心拍監視③
(静脈麻酔による手術)
静脈麻酔による手術に伴う呼吸心拍監視は認められる。 静脈麻酔を用いる場合、その薬剤の特性から合併症として呼吸停止や血圧降下が見られる。これら術中の合併症の情報を早期に取得するために呼吸心拍監視を用いる。
経皮的動脈血酸素飽和度測定 原則として、上部及び下部消化管内視鏡検査時(鎮痛・鎮静目的の薬剤を使用している場合、使用していない場合)において経皮的動脈血酸素飽和度測定の算定要件を満たさない場合は、当該検査の算定は認められない。 鎮静下に内視鏡検査を実施する場合には、モニター等での患者の全身状態の把握を行うことが通知にて示されているが、平成28年3月31日付医療課事務連絡にて、内視鏡検査を実施する際の当該検査については、算定要件を満たしている場合に算定できる旨が通知されており、基礎疾患がない場合などは当該検査は認められない。
内視鏡検査 原則として肛門鏡検査時における超音波内視鏡検査実施加算は痔核に対しては認められない。 肛門鏡検査時における超音波内視鏡検査は痔核に対して診断を進める際に用いる検査としては一般的ではない。
薬剤
項目取扱い取扱いの根拠留意事項
副腎皮質ホルモン剤と免疫抑制剤の併用 原則として、副腎皮質ホルモン剤が使われている疾患のうち、副腎皮質ホルモンに抵抗性のある症例に対して免疫抑制剤の併用は認められる。 原則として、副腎皮質ホルモン剤が使われている疾患のうち、副腎皮質ホルモンに抵抗性のある症例に対して免疫抑制剤の併用は認められる。
脂質異常症、高脂血症、高コレステロール血症等 原則として医薬品の適応を審査する上で、脂質異常症、高脂血症、高コレステロール血症等は同等として取扱うことは妥当である。 高コレステロール血症、脂質異常症、高脂血症は同義であると解釈されている。また、高トリグリセライド血症に適応のある薬剤を投与する場合は、高コレステロール血症の病名のみでは認められず、高コレステロール血症に適応のある薬剤を投与する場合は、高トリグリセライド血症の病名のみでは認められない。
過活動膀胱治療剤① 原則として、「過活動膀胱の記載がない単なる頻尿等」に対して過活動膀胱治療剤(ベシケア錠等)の投与は認められない。 「効能・効果、用法・用量」には、「過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁」と記載されており、「過活動膀胱」の明示がない、単なる頻尿等」に対して過活動膀胱治療剤(ベシケア錠等)の投与は認められない。
過活動膀胱治療剤② 原則として、「神経因性膀胱」に対して過活動膀胱治療剤(ベシケア錠等)の投与は認められない。 「効能・効果、用法・用量」には、「過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁」と記載されており、「過活動膀胱」の明示がない、「神経因性膀胱」に対して過活動膀胱治療剤(ベシケア錠等)の投与は認められない。
キネダック錠 原則として、「糖尿病」の傷病名のみでキネダック錠の投与は認められない。 「効能・効果、用法・用量」には、「次の症状(糖化ヘモグロビンが高値を示す場合)の改善/糖尿病性末梢神経障害に伴う自覚症状(しびれ感、疼痛)、振動覚異常、心拍変動異常」と記載されており、「糖尿病性末梢神経障害に伴う自覚症状(しびれ感、疼痛)、振動覚異常、心拍変動異常」の明示がない、「糖尿病」のみでのキネダック錠の投与は認められない。
フオイパン錠 原則として、逆流性食道炎の傷病名のみでフオイパン錠の投与は認められない。 胃切除(胃全摘、噴門側又は幽門側胃切除、胃管再建など)術後は、十二指腸液の逆流によるアルカリ性食道炎をきたすが、フオイパン錠の有用性は、この十二指腸液のトリプシン等、蛋白分解酵素の阻害作用にある。一方、胃切除を伴わない逆流性食道炎は胃酸の逆流によるものである。両者の病態、治療法は全く異なることから、術後かどうかは明確に区別されなければならない。以上より、逆流性食道炎の傷病名のみでのフオイパン錠の投与は認められないとした。
抗生物質 投与期間14日以内(増減ありの記載のないもの)と規定されている抗生物質について、原則として14日を超えての投与は認められない。 投与期間14日以内(増減ありの記載のないもの)と規定されている抗生物質について、医学的な必要性の明確でない場合の14日を超えての投与は原則として認められない。 耐性菌の発現等を防ぐため、疾患の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめるとともに、必要に応じて検査を行うこと。
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)腸炎、偽膜性大腸炎及び造血幹細胞移植(骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植)時の消化管内殺菌以外に対する塩酸バンコマイシン散(バンコマイシン塩酸塩散)の投与について メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)腸炎、偽膜性大腸炎及び造血幹細胞移植(骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植)時の消化管内殺菌以外に対する塩酸バンコマイシン散(バンコマイシン塩酸塩散)の投与は、原則として認めない。 塩酸バンコマイシン散(バンコマイシン塩酸塩散)の適応は、「MRSA感染性腸炎、クロストリジウム・ディフィシルによる偽膜性大腸炎及び骨髄移植時の消化管内殺菌」に特化されている。また、本薬剤は、通常、経口投与によってほとんど吸収されず、高い消化管内濃度が得られるが、血中にはほとんど現れないことから、消化管以外の感染症には用いられない。したがって、MRSA腸炎、偽膜性大腸炎及び造血幹細胞移植(骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植)時の消化管内殺菌以外での投与は、原則認められないと判断した。
ヘリコバクター・ピロリ感染診断において、プロトンポンプ・インヒビター(PPI)投与中止又は終了後2週間以上経過せず実施したD023-2の2尿素呼気試験(UBT)の算定について(検査結果が陽性の場合) ヘリコバクター・ピロリ感染診断において、プロトンポンプ・インヒビター(PPI)投与中止又は終了後2週間以上経過せず実施したD023-2の2尿素呼気試験(UBT)の算定は、検査結果が陽性の場合であっても、原則として認められない。 ヘリコバクター・ピロリ感染診断において、プロトンポンプ・インヒビター(PPI)が投与されている患者に対するD023-2の2尿素呼気試験(UBT)については、PPIの静菌作用により検査結果が偽陰性となる可能性がある。厚生労働省通知(※)にも「ランソプラゾール等、ヘリコバクター・ピロリに対する静菌作用を有するとされる薬剤が投与されている場合については感染診断の結果が偽陰性となるおそれがあるので、除菌前及び除菌後の感染診断の実施に当たっては、当該静菌作用を有する薬剤投与中止又は終了後2週間以上経過していることが必要である。」と示されている。このため、当該検査はPPIの投与を中止又は終了してから2週間以上経過後に実施する必要がある。一方、投与中止又は終了後2週間以上経過せず実施し、結果「陽性」だった場合は、ヘリコバクター・ピロリ(HP)感染について「真に陽性」と判断し得る。しかし、ヘリコバクター・ピロリ(HP)感染者の偽陰性率はPPI服用中が33%、服用中止後3日目9%、7日目3%、14日目0%と報告されている。本検査において重要なことは、偽陰性例(真の陽性例の見落とし)の発生を極力避けることによって、ヘリコバクター・ピロリ感染を正確に診断することである。以上のことから、ヘリコバクター・ピロリ感染診断において、PPI投与中止又は終了後2週間以上経過せず実施したD023-2の2尿素呼気試験(UBT)の算定は、検査結果が陽性の場合であっても、原則認められないと判断した。
モサプリドクエン酸塩の効能・効果である慢性胃炎に伴う症状の改善に対する特定疾患処方管理加算2の算定について モサプリドクエン酸塩(商品名:ガスモチン錠等)の効能・効果である慢性胃炎に伴う症状の改善に対する特定疾患処方管理加算2の算定は認められる。 モサプリドクエン酸塩(商品名:ガスモチン錠等)の効能・効果は「慢性胃炎に伴う消化器症状(胸やけ、悪心・嘔吐)」と添付文書に記載されている。慢性胃炎に伴う消化器症状(胸やけ、悪心・嘔吐)は、消化管運動を活発化させる神経伝達物質であるアセチルコリンの分泌により、症状の改善が図られる。モサプリドクエン酸塩の作用機序は、選択的なセロトニン5-HT4受容体アゴニストであり、消化管内在神経叢に存在する5-HT4受容体を刺激し、アセチルコリン遊離の増大を介して上部及び下部消化管運動促進作用を示すと考えられている。よって、本剤は、慢性胃炎の症状に直接適応のあるものと判断できる。(胃の粘膜に作用して種々の症状を改善する。)また、平成16年7月7日付け厚生労働省保険局医療課事務連絡「疑義解釈資料の送付について」において、「特定疾患に対する薬剤を投与したときの45点の加算は、特定疾患に直接適応のある薬剤の処方の場合のみ算定できるのか。」の問に対して、「そのとおり」と回答されている。以上のことから、モサプリドクエン酸塩の効能・効果である慢性胃炎に伴う症状の改善に対する特定疾患処方管理加算2の算定は認められると判断した。
単なる動脈硬化症に対するペリシット錠の投与について 単なる動脈硬化症に対するペリシット錠の投与は、原則として認めない。 ペリシット錠の適応は「高脂血症の改善」に加えて「ビュルガー病、閉塞性動脈硬化症、レイノー病、レイノー症候群に伴う末梢循環障害」とされている。上記の動脈疾患は、末梢循環障害を主要症状とする一群である。したがって、単なる「動脈硬化症」に対するペリシット錠の投与は、原則認められないと判断した。
除菌前の感染診断の請求がないヘリコバクター・ピロリ除菌療法について、内視鏡検査による胃炎の診断及びヘリコバクター・ピロリの感染診断(陽性)が、他医療機関(検診も含む)で実施された場合の取扱いについて ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎において、除菌前の感染診断の請求がないヘリコバクター・ピロリ除菌療法については、内視鏡検査による胃炎の診断及びヘリコバクター・ピロリの感染診断(陽性)が、他医療機関(検診も含む)で実施された場合、病名及び症状詳記等にその旨の記載があれば、原則として認める。なお、内視鏡検査又は造影検査において確定診断がなされた胃潰瘍又は十二指腸潰瘍についても同様に取扱う。 平成25年2月21日付け保医発0221第31号「「ヘリコバクター・ピロリ感染の診断及び治療に関する取扱いについて」の一部改正について」の記の1の対象患者に「内視鏡検査において胃炎の確定診断がなされた患者」とある。記の3に「2の感染診断により、ヘリコバクター・ピロリ陽性であることが確認された対象患者に対しては、ヘリコバクター・ピロリ除菌及び除菌の補助が薬事法上効能として承認されている薬剤を薬事法承認事項に従い、3剤併用・7日間投与し除菌治療を行うこと。」とある。記の7に「健康診断として内視鏡検査を行った場合には、診療報酬明細書の摘要欄にその旨を記載すること。」とある。平成25年3月28日付け厚生労働省保険局医療課事務連絡「疑義解釈資料の送付について(その13)」の医科(問6)に「健康診断で行った内視鏡検査で胃炎が見つかった患者も除菌治療の対象となるのか。」の問に対して、「対象となる。(以下省略)」と回答されている。このことから、「内視鏡検査において胃炎の確定診断がなされた患者」であり、「除菌前の感染診断によりヘリコバクター・ピロリ陽性であることが確認された患者」であれば、除菌療法の対象患者となる。ただし、内視鏡検査及び除菌前の感染診断の実施機関について特に記載されていない。以上のことから、除菌前の感染診断の請求がないヘリコバクター・ピロリ除菌療法について、内視鏡検査による胃炎の診断及びヘリコバクター・ピロリの感染診断(陽性)が、他医療機関(検診も含む)で実施された場合、病名及び症状詳記等にその旨の記載があれば、原則認められると判断した。なお、内視鏡検査又は造影検査において確定診断がなされた胃潰瘍又は十二指腸潰瘍についても同様に取扱うものとする。
糖尿病に対するグリニド薬とSU剤(スルホニル尿素系製剤)の併用投与について 糖尿病に対するグリニド薬とSU剤(スルホニル尿素系製剤)の併用投与は原則として認められない。 グリニド薬(スターシス、グルファスト等)については、添付文書の「重要な基本的注意」に「本剤は、速やかなインスリン分泌促進作用を有する。その作用点はスルホニル尿素系製剤と同じであり、スルホニル尿素系製剤との相加・相乗の臨床効果及び安全性が確認されていないので、スルホニル尿素系製剤とは併用しないこと。」等記載されている。また、SU剤(アマリール、グリミクロン等)については、日本糖尿病学会編「糖尿病治療ガイド」(2018-2019)において、薬物療法の使用上の注意点として、「2種類以上のSU薬の併用や、速効型インスリン分泌促進薬との併用は、治療上意味がない。」と示されている。このことから、糖尿病に対するグリニド薬とSU剤の併用投与は原則認められないと判断した。
潰瘍性大腸炎に対するペンタサ錠とペンタサ注腸の併用投与について 潰瘍性大腸炎に対するペンタサ錠とペンタサ注腸の併用投与は、原則として認める。 潰瘍性大腸炎の治療については、左側あるいは全大腸炎型でも遠位大腸の活動性がある場合には、内服療法に加え局所投与の併用が望ましい。ペンタサ錠は小腸から大腸の広い範囲で吸収される特徴があるが、大腸の末端までは、高い濃度のメサラジンが行き届かない。潰瘍性大腸炎では、病変が直腸からびまん性に口側に進展することから、ペンタサ注腸は、病変部位に十分な薬剤を到達させる製剤である。なお、ペンタサ注腸の「効能・効果に関連する使用上の注意」には「脾湾曲部より口側の炎症には効果が期待できない」とある。また、厚生労働省研究班(鈴木班)による治療指針でも左側大腸炎型・全大腸炎型の軽症・中等症の寛解導入療法で、内服に注腸の併用は効果増強が期待できるとあり、重症例でも併用が認められている。寛解維持療法でも内服と注腸の併用は有用であるとされている。(潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針:平成27年度改訂版(平成28年3月31日))これらのことから、ペンタサ錠とペンタサ注腸は大腸内でも作用する部位が異なるため、潰瘍性大腸炎に対する併用投与は、原則認められると判断した。
同一成分の持続性Ca拮抗薬(配合錠と配合錠以外(単剤))の併用投与の取扱いについて 同一成分の持続性Ca拮抗薬(配合錠と配合錠以外(単剤))の併用投与については、個々の医薬品の添付文書に基づき、含有成分の用法・用量の範囲内においては、原則として認められる。 <カデュエット配合錠4番(アムロジピンベシル酸塩・アトルバスタチンカルシウム水和物)とノルバスクOD錠5mg(アムロジピンベシル酸塩)の併用投与について>カデュエット配合錠4番は、アトルバスタチンとして10mg及びアムロジピンとして5mgが含有されている配合薬であり、持続性Ca拮抗薬にも該当する。ノルバスクOD錠5mgは、アムロジピンとして5mgが含有されている薬剤であり、持続性Ca拮抗薬に該当する。カデュエット配合錠の添付文書の「用法及び用量」には、「以下のアムロジピンとアトルバスタチンの用法・用量に基づき、患者毎に用量を決めること。」と記載され、アムロジピンの項に「通常、成人にはアムロジピンとして2.5~5mgを1日1回経口投与する。なお、症状に応じ適宜増減するが、効果不十分な場合には1日1回10mgまで増量することができる。」と記載されている。また、「用法及び用量に関連する使用上の注意」には、「配合用量以外の用量を投与する場合は、個別のアムロジピン製剤又はアトルバスタチン製剤を用いることができるが、それぞれの成分の用法・用量の範囲内で投与すること。」と記載されている。カデュエット配合錠4番とノルバスクOD錠5mgの併用投与については、アムロジピン製剤の投与量は合計10mgとなり、個別のアムロジピン製剤の成分の用法・用量の範囲内で投与したものであり、「用法及び用量に関連する使用上の注意」に則した投与として妥当と考える。<ユニシア配合錠HD(カンデサルタンシレキセチル・アムロジピンベシル酸塩)とアムロジピン錠5mg(アムロジピンベシル酸塩)の併用投与について>ユニシア配合錠HDは、カンデサルタンシレキセチルとして8mgとアムロジピンとして5mgが含有されている配合薬であり、持続性Ca拮抗薬にも該当する。アムロジピン錠5mgは、アムロジピンとして5mgが含有されている薬剤であり、持続性Ca拮抗薬に該当する。ユニシア配合錠HDの添付文書の「用法及び用量に関連する使用上の注意」には、「以下のカンデサルタンシレキセチルとアムロジピンベシル酸塩の用法・用量を踏まえ、患者毎に用量を決めること。」と記載され、アムロジピンベシル酸塩の項に「通常、成人にはアムロジピンとして2.5~5mgを1日1回経口投与する。なお、症状に応じ適宜増減するが、効果不十分な場合には1日1回10mgまで増量することができる。」と記載されている。ユニシア配合錠HDとアムロジピン錠5mgの併用投与については、アムロジピンの投与量は合計10mgとなり、当該成分量から判断し、「用法及び用量に関連する使用上の注意」に則した投与として妥当と考える。以上のことから、同一成分の持続性Ca拮抗薬(配合錠と配合錠以外(単剤))の併用投与については、個々の医薬品の添付文書に基づき、含有成分の用法・用量の範囲内においては、原則として認められると判断した。
アルツハイマー型認知症の病名と脳血管障害(脳梗塞後遺症、多発性脳梗塞等)の病名とが併存している場合におけるアリセプト内服薬(錠・ドライシロップ・ゼリー等)の投与について アルツハイマー型認知症の病名と脳血管障害(脳梗塞後遺症、多発性脳梗塞等)の病名とが併存している場合におけるアリセプト内服薬の投与は、原則として認める。 認知症疾患治療ガイドライン2010(日本神経学会監修)において、アルツハイマー型認知症(AD)が脳血管障害と共通の危険因子を有することや、病理学的にも、特に高齢者ではアルツハイマー型認知症の病理所見と脳血管障害が重なる病態が多く認められるとされている。また、近年では、血管性認知症(VaD)の疾病概念が変更され、「脳血管障害を有するアルツハイマー型認知症(AD)」あるいは「混合型認知症」という概念が広まっている。以上のことから、アルツハイマー型認知症の病名と脳血管障害(脳梗塞後遺症、多発性脳梗塞等)の病名とが併存している場合におけるアリセプト内服薬の投与については、原則認められると判断した。
<国民健康保険中央会>
医学管理料
項目取扱い取扱いの根拠留意事項
生活習慣病管理料 原則として、境界型糖尿病、耐糖能異常に対し生活習慣病管理料の算定は認められない。 境界型糖尿病は糖尿病の予備軍であり確定疾患ではない。また、糖尿病のICD10コードはE14、耐糖能異常、境界型糖尿病はR730と異なることからも糖尿病とは異なるため認められない。
特定疾患療養管理料 同上 同上
慢性疼痛疾患管理料 原則として、単なる下肢痛に対しB001の17慢性疼痛疾患管理料の算定は認められない。 慢性疼痛疾患管理料の留意事項通知に「慢性疼痛疾患管理料は、変形性膝関節症、筋筋膜性腰痛症等の疼痛を主病とし、疼痛による運動制限を改善する等の目的でマッサージ又は器具等による療法を行った場合に算定することができる。」とあるが、単なる「下肢痛」だけでは当該管理料は認められない。
処置
項目取扱い取扱いの根拠留意事項
ネブライザー①
(気管支炎)
原則として、気管支炎に対する喉頭及び喉頭下ネブライザーの算定は認められる。 喉頭及び喉頭下ネブライザーによる吸入療法は、気管支へも到達し得るものであり、全身療法に比べ、より少量の薬剤が効率的に病変部位に達し、優れた効果と安全性を両立するものであることから気管支炎に対しても有効であると認められる。 薬剤塗布の目的をもって行った加圧スプレー使用は、J098口腔・咽頭処置により算定する。
ネブライザー②
(喘息)
原則として、喘息に対する喉頭及び喉頭下ネブライザーの算定は認められる。 同上 同上
超音波
ネブライザー①
(気管支炎)
気管支炎に超音波ネブライザーの算定は認められる。 吸入療法は、全身療法に比べ、より少量の薬剤が効率的に病変部位に達し、優れた効果と安全性を両立するものであることから気管支炎に対して有効であると認められる。
超音波
ネブライザー②
(喘息)
喘息に超音波ネブライザーの算定は認められる。 吸入療法は、全身療法に比べ、より少量の薬剤が効率的に病変部位に達し、優れた効果と安全性を両立するものであることから喘息に対して有効であると認められる。
画像診断
項目取扱い取扱いの根拠留意事項
画像診断 原則として、慢性関節リウマチの病名で膝関節、足関節、手関節など左右の関節にそれぞれレントゲン撮影を実施した場合、左右患側であれば別々に算定することは認められる。 原則として、慢性関節リウマチの病名で膝関節、足関節、手関節など左右の関節にそれぞれレントゲン撮影を実施した場合、左右患側であれば同一部位でないため別々に算定することは認められる。 経過観察の段階において、継続的に左右別々に算定することは認められない場合もある。
画像診断①
(腎・尿管)
画像診断における腎と尿管は、同一の部位の取扱いとする。 腎・尿管は連続した臓器であり、同一の部位と考えられる。
画像診断②
(仙骨・尾骨)
画像診断における仙骨と尾骨は、同一の部位の取扱いとする。 仙骨と尾骨は撮影条件を変える必要がなく同一の部位と考えられる。
透視診断
①(腎盂造影)・
②(尿管造影)
腎孟造影撮影時・尿管造影撮影時の透視診断については認められない。 透視診断料は、透視により疾病・病巣の診断を評価するものであり、消化管の造影剤使用撮影に際し腸管の所要の位置に造影剤が到達しているか否かを透視により検査する場合等、撮影の時期決定や準備手段又は他の検査、注射、処置及び手術の補助手段として行う透視については算定できない。
透視診断③(膀胱造影)・⑤(子宮卵管造影) 膀胱造影撮影時・子宮卵管造影の透視診断については認められない。 同上
透視診断⑥
(関節造影)
原則として、関節造影撮影時の透視診断については認められない。 同上
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