開業医のための保険診療の要点

開業医のための保険診療の要点(I. 保険診療の基礎知識)

[12] オンライン請求、オンライン資格確認

1 オンライン請求

(1) オンライン請求の概要

オンライン請求システムは、保険医療機関・保険薬局と審査支払機関、審査支払機関と保険者等を、全国規模のネットワーク回線で結び、レセプト電算処理システムにおける診療報酬等の請求データ(レセプトデータ)をオンラインで受け渡す仕組みを整備したシステムです(図1参照)。

図1

図は支払基金より提供

(2) 保険医療機関・保険薬局のオンライン請求による電子レセプト等の授受

保険医療機関・保険薬局では、請求するレセプトデータをオンライン請求で使用するパソコンに取り込み、オンライン請求センタに送信します。 支払基金では、保険医療機関・保険薬局からオンライン請求センタに送信されたレセプトデータを、Webサーバで受け付け、既存のシステムに接続し、業務処理を行います(国保連合会も同様です)。

(3) オンライン請求のメリット

(図2)を参照してください。

※1 受付・事務点検ASPとは、保険医療機関等が支払基金の事務点検プログラムを利用して、患者氏名の記録漏れなど事務的な誤りがあるレセプトを事前に確認でき、速やかな修正を可能とするサービスです。

※2 振込額明細データとは、オンライン請求を行っている保険医療機関等が対象のサービスで、毎月の請求に対する支払額等の金額情報をオンラインで一括提供します。

※3 5情報14種類の帳票は以下の通りです。

【振込額決定情報】

  1. 振込額合計データ
  2. 振込額明細データ(電子レセプト分)
  3. 振込額明細データ(紙レセプト分)
  4. 当座口振込通知書データ

【再審査情報】

  1. 再審査等支払調整額通知票
  2. 診療報酬相殺通知書
  3. 再審査結果連絡書(原審どおり)

【増減点連絡書情報】

  1. 増減点連絡書データ(電子レセプト分)
  2. 増減点連絡書データ(紙レセプト分)

【返戻内訳情報】

  1. 返戻内訳書データ(電子レセプト分)
  2. 返戻内訳書データ(紙レセプト分)

【資格確認結果情報】

  1. 枝番特定結果
  2. 資格確認結果連絡書(原審査)
  3. 資格確認結果連絡書(再審査)
図2

図は支払基金より提供

2 オンライン資格確認

(1) オンライン資格確認とは(図3参照)

  1. 医療機関・薬局において、オンラインで医療保険の資格確認が可能に
    ⇒患者の保険資格がその場で確認できます。マイナンバーカードも健康保険証として利用可能になります。
  2. 本人確認、本人同意を得た上で
    ⇒特定健診情報、薬剤情報等を医療機関等で見ることが可能になります。
マイナンバーカードを利用したオンライン資格確認のイメージ図図3

(2) オンライン資格確認のメリット

  1. 今までは受付で健康保険証を受け取り、保険証記号番号、氏名、生年月日、住所等を医療機関システムに入力する必要がありました。 オンライン資格確認を導入すると、マイナンバーカードでは最新の保険資格を自動的に医療機関システムで取り込むことができます。保険証でも、最小限の入力は必要ですが、有効であれば同様に資格情報を取り込むことができます(図4参照)。
    オンライン資格確認のメリット 図4
  2. オンライン資格確認を導入すれば、患者の保険資格がその場で確認できるようになるため、資格過誤によるレセプト返戻が減り、窓口業務が削減されます(図5参照)。
    レセプト返戻イメージ図図5
  3. 限度額適用認定証等の連携
    これまで限度額適用認定証等は加入者(患者)が保険者へ必要となった際に申請を行わなければ発行されませんでしたが、オンライン資格確認を導入すれば、加入者(患者)から保険者への申請がなくても、限度額情報を取得でき、加入者(患者)は限度額以上の医療費を窓口で支払う必要がなくなります(図6参照) 。
    限度額適用認定等比較図6
  4. 薬剤情報・特定健診情報の閲覧
    オンライン資格確認を導入すれば患者の薬剤情報・特定健診情報を閲覧することができます。患者の意思をマイナンバーカードで確認した上で、有資格者等(薬剤情報は医師、歯科医師、薬剤師等。特定健診情報は医師、歯科医師等)が閲覧できます(図7参照)。
    薬剤情報・特定健診情報閲覧イメージ図図7
    顔認証付きカードリーダーを利用することで、患者本人からの同意を毎回取得することをシステム上で担保することが可能となります。(図8参照)
    顔認証付きカードリーダー利用図図8
  5. 災害時における薬剤情報・特定健診情報の閲覧
    通常時は、薬剤情報を閲覧するには、本人がマイナンバーカードによる本人確認をした上で同意した場合に限られます。ただし、災害時は特別措置として、マイナンバーカードによる本人確認ができなくても、薬剤情報の閲覧が可能となります(図9参照)。
    (災害時の主なケース)
    • 薬を家に置いて避難してきた……
    • 避難所で持ってきた薬を飲みきってしまった……
    • かかりつけ医以外のところで受診することに……
      ⇒このようなケースでも薬剤情報の閲覧ができるので、よりよい医療を提供することができます。
  6. A000初診料、A001再診料及びA002外来診療料の「医療情報取得加算」の算定
    オンライン資格確認を通じて取得した患者情報を活用して診療を実施することについての評価として、医療情報取得加算が算定可能。
    初診料の場合(月1回) 1点
    再診料及び外来診療料の場合(3月に1回) 1点
    <施設基準>
    • レセプトの電子請求を行っている(オンライン請求等)
    • 電子資格確認を行う体制を有している(オンライン資格確認システム端末)
    • 電子資格確認に関する事項を院内の見やすい場所に掲⽰している
    • 上記掲示事項について、ウェブサイトに掲載している
  7. A000初診料の「医療DX推進体制整備加算」の算定 届出必要
    初診時に、オンライン資格確認により取得した情報を診療に活用すると共に、電子処方箋及び電子カルテ情報共有サービスを導入し、質の高い医療を提供するため医療DXに対応する体制を確保している場合の評価として、令和6年度改定で新設されました。算定月の3月前のレセプト件数ベースマイナ保険証利用率により点数が異なります。
    医療DX推進体制整備加算(月1回)
     1:11点 2:10点 3:8点
    <施設基準>
    • オンライン請求を行っている
    • オンライン資格確認を行う体制を有している
    • オンライン資格確認を活用し、診療情報等を診療を行う診察室等において、医師等が閲覧又は活用できる体制を有している
    • 電子処方箋を発行する体制を有している
    • 電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制を有している
    • マイナンバーカードの健康保険証利用の使用について、十分又は必要な実績を有している など
    災害時対応イメージ図図9

(3) オンライン資格確認の動向

  1. マイナ保険証
    従来の健康保険証は、2024年12月2日以降新たに発行されなくなります。これにより、マイナンバーカードを健康保険証として利用する、いわゆる「マイナ保険証」を基本とするしくみとなります(下図参照)。 マイナンバーカードを保有しない方には、「資格確認書」が無償で交付されることになっています。
  2. 生活保護の医療扶助
    令和6年3月1日よりマイナンバーカードによるオンライン資格確認が始まっています。 指定医療機関の利用するシステムが、生活保護による医療扶助のオンライン資格確認に対応している必要があります。
  3. PMH
    自治体と医療機関等をつなぐ情報連携システム(Public Medical Hub)のことで、自治体が実施主体となっている医療費助成のオンライン資格確認が行えます。 具体的には、マイナンバーカードを難病医療や「マル子」などの受給者証として利用できたり、予防接種の接種券として利用できたりするしくみです。希望する自治体・医療機関から導入が始まっており、今後全国に広まって行くことが予想されます。
  4. その他主な個別機能の追加
    限度額適用認定証情報の提供同意画面の省略や、医療情報等の包括同意などの機能が追加されています。また、救急時医療情報閲覧機能の追加などが予定されています。
12月2日以降の確認方法図10

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