新規開業医のための保険診療の要点(総論)
[6] オンライン診療
オンライン診療とは、遠隔医療(情報通信機器を活用した健康増進、医療に関する行為)のうち、医師-患者間において、 情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い、診断結果の伝達や処方の診療行為をリアルタイムより行う行為と定義されている。
令和4年度診療報酬改定により従来の枠組みであったオンライン診療料は廃止され、情報通信機器を用いた初診、再診、医学管理料に関わる評価が新設された。また、対象患者、算定要件等に関して大幅な変更が行われた。
<コロナ禍における臨時的取り扱いとの相違点>
- オンライン診療の実施・算定は電話では不可、リアルタイムでの双方向ビデオ通話の み適応。
- 治療計画の策定が必要。
- 初診オンライン診療による勃起不全治療薬の処方不可。
- オンライン診療に責任を有する医師は、研修を受講することが必要。
- 施設基準に係る届出の提出が必要。
I 初診料(情報通信機器を用いた場合)<251点 対面288点の約87%>
<対象患者>
「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に基づき、医師が情報通信機器を用いた初診が可能と判断した患者
<算定要件>
- 厚生労働省が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関。
- 厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に沿って診療を行った場合。診療内容、診療日及び診療時間等の要点を診療録に記載すること。
- 原則として保険医療機関に属する保険医が保険医療機関内で実施すること。
- 患者の急変時等の緊急時には必要な対応を行えること。ただし夜間や休日等に対応できない場合には患者が速やかに対面診療を行える医療機関を事前に患者に説明して以下の内容を診療録に記載しておく。
ア 当該患者に「かかりつけの医師」がいる場合には、当該医師が所属する医療機関名イ 「かかりつけ医」がいない場合には、対面診療により診療ができない理由、適切な医療機関としての紹介先の医療機関名、紹介方法及び患者の同意。
- 対面診療を提供できる体制を有すること。患者の状況によって対応することが困難な場合には、他の医療機関と連携して対応できる体制を有すること。
- 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に沿って診療を行い、一般社団法人日本医学会連合が作成した「オンライン診療の初診に適さない症状」等を踏まえ、当該診療が指針に沿った適切な診療であったことを診療録及び診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。また処方を行う際には、一般社団法人日本医学会連合が作成した「オンライン診療の初診での投与について十分な検討が必要な薬剤」等の関係学会が定める診療ガイドラインを踏まえ、当該処方が指針に沿った適切な処方であったことを診療録及び診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。
- 予約に基づく料金、いわゆる「予約料」の徴収は不可。
- オンライン診療を行う際の情報通信機器の運用に要する費用として「情報通信機器の運用に要する費用」を、療養の給付と直接関係のない「サービス等の費用」として別途徴収可能。
<施設基準>
- 情報通信機器を用いた診療を行うにつき十分な体制が整備されていること。
- 厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に沿って診療を行う体制を有する医療機関であること。
II 再診料・外来診療料(情報通信機器を用いた場合)<73点 対面と同様>
対象患者、算定要件ともに初診料算定の要件に準ずる。
III 情報通信機器を用いた医学管理料等
検査料が包括されている医学管理料については、情報通信機器を用いた実施を評価の対象にしない。
上記以外の医学管理料については、以下に該当するものを除き、評価の対象とする。
- 入院中の患者に対して実施されるもの
- 救急医療として実施されるもの
- 検査などを実施しなければ医学管理として成立しないもの
- 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」において、実施不可とされているもの
- 精神医療に関するもの
なお、地域包括診療科、認知症地域包括診療科、生活習慣病管理科は令和4年度診療報酬改定においてオンライン診療の対象外となっている。
点数名称 | 対象医学管理料 | (参考)対面診療での点数 |
---|---|---|
特定疾患療養管理料 | 196点 | 225点 |
小児科療養指導料 | 235点 | 270点 |
てんかん指導料 | 218点 | 250点 |
難病外来指導管理料 | 235点 | 270点 |
糖尿病透析予防指導管理料 | 305点 | 350点 |
精神科在宅患者支援管理料 | 100点 | 3000点 |
在宅自己注射指導管理料 | 1070点 | 1230点 |
ウイルス疾患指導料 | 287点 | 330点 |
皮膚科特定疾患指導管理料 | 218点 | 250点 |
小児悪性腫瘍患者指導管理料 | 479点 | 550点 |
がん性疼痛緩和指導管理料 | 174点 | 200点 |
がん患者指導管理料 | 435点 | 500点 |
外来緩和ケア管理料 | 252点 | 290点 |
移植後患者指導管理料 | 261点 | 300点 |
腎代替療法指導管理料 | 435点 | 500点 |
乳幼児育児栄養指導料 | 113点 | 130点 |
療養・就労両立支援指導料 | 696点 | 800点 |
がん治療連携計画策定料2 | 261点 | 300点 |
外来がん患者在宅連携指導料 | 435点 | 500点 |
肝炎インターフェロン治療計画料 | 609点 | 700点 |
薬剤総合評価調整管理料 | 218点 | 250点 |
地域包括診療料 | - | 1560点 |
認知症地域包括診療料 | - | 1580点 |
生活習慣病管理料 | - | 1280点 |
※赤字は令和4年度診療報酬改定ではオンライン診療の対象外になっているもの
IV 在宅時医学総合管理料におけるオンライン在宅管理
在宅時医学総合管理料について、訪問による対面診療と情報通信機器を用いた診療を組み合わせて実施した場合の評価を新設するとともに、オンライン在宅管理料を廃止する。
<算定要件>
別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして届け出た保険医療機関において行われる場合に限り算定する。
<施設基準>
情報通信機器を用いた診療を行うにつき十分な体制が整備されていること。
V 施設入居時等医学総合管理料におけるオンライン在宅管理
施設入居時等医学総合管理料について、訪問による対面診療と情報通信機器を用いた診療を組み合わせて実施した場合の評価が新設された。
<算定要件>
別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして届け出た保険医療機関において行われる場合に限り算定する。
<施設基準>
情報通信機器を用いた診療を行うにつき十分な体制が整備されていること。
VI 外来栄養食事指導料
栄養食事指導の実施を更に推進する観点から、初回から情報通信機器等を用いた場合の栄養食事指導が算定可となった。(電話での実施も可)
イ 外来栄養食事指導料1 | 初回(月2回まで) | 対面時260点 | オンライン235点 |
---|---|---|---|
2回目以降(月1回) | 対面時200点 | オンライン180点 | |
ロ 外来栄養食事指導料2 (診療所) |
初回(月2回まで) | 対面時250点 | オンライン225点 |
2回目以降(月1回) | 対面時190点 | オンライン170点 |
<算定要件>
- 上記イの点数は、当該医療機関の管理栄養士のみ算定可能
- 上記ロの点数は、当該医療機関以外の管理栄養士が算定可能