開業医のための保険診療の要点(巻頭)
序文
日本の国民皆保険制度は、1961年の導入以来、国民が平等に医療サービスを受けられる仕組みとして重要な役割を果たしてきました。この制度により、日本は高い医療水準を達成し、今や「人生100年時代」と呼ばれる超高齢社会を迎えています。
しかし、高齢者の割合が増え続けるのと同時に、国民医療費も増加の一途をたどり、2022年度には過去最高の約46兆7千億円(前年度比+3.7%)に達しました。医療費の増加と少子化による生産年齢人口の減少は、社会保障費の増大や医療従事者不足など、さまざまな課題を引き起こし、現行の医療保険制度が維持できなくなる危機的な状況をもたらしています。
国民皆保険制度は国民の健康と生命を守るために欠かせない社会基盤であり、今後もこの制度を維持していくことが国民の一致する願いであると確信しております。持続可能な医療保険制度を実現するために、財政基盤の安定化や負担の公平化、医療費の適正化など様々な対策が必要です。我々医療提供者も、医療保険制度を正しく理解し、ルールを遵守して適切に運用することが求められています。
本会では、新規開業される医師の皆様が保険診療の仕組みやルールを理解し、日常の診療で活用していただくことを目的として、令和4年に「新規開業医のための保険診療の要点」を発行いたしました。本書は、保険診療の基礎知識を集約した「総論」と、診療科別に診療報酬請求上の留意点等を整理した「各論」の2部構成による実践的なガイドブックとなっており、新規開業医のみならず、経験豊富な開業医の皆様からも高い評価をいただいております。
このたび、令和6年度診療報酬改定を踏まえ、新規開業医に限らず医療現場で広くご活用いただけるよう、冊子名を「開業医のための保険診療の要点」と改め、総論と各論を1冊に統合した改訂版を発行する運びとなりました。
本書が、地域医療に貢献される先生方の、適正な保険診療の実践にお役立ていただければ幸いと存じます。
令和6年12月
公益社団法人東京都医師会
会長 尾﨑治夫