開業医のための保険診療の要点

開業医のための保険診療の要点(II. 診療科別の基礎知識)

[12] 耳鼻咽喉科

耳鼻咽喉科は他科と比べ処置の比重の多い診療科です。処置・検査に当たっては医科点数表を参考に、適切な保険請求をしてください。以下に代表的な注意事項を記載します。

1 各種法令における留意事項

保険診療に当たっては「医科点数表」を基に診療・保険請求してください。医学的に妥当適切な診療を行い、定められた請求を行うことが必要です。

2 診療録(カルテ)への記載の留意事項

医療行為の正当性を証明するものはカルテです。必要事項の記載には、漏れがないようにしてください。

  1. 高度難聴指導管理料:指導内容の要点を診療録に記載すると定められています。
  2. 耳鼻咽喉科特定疾患指導管理料:診療計画及び指導内容の要点を診療録に記載すると定められています。
  3. アレルギー性鼻炎免疫療法治療管理料:療法の開始前に患者に説明した内容の要点を診療録に記載すると定められています。 上記(1)~(3)については、算定要件と併せて算定可能時期にもご留意ください。

上記1~3については算定要件と併せて算定可能時期にもご留意ください。

3 傷病名付与の留意事項

  1. 対称器官のある疾患の場合は、必ず患側記載(右・左・両側)をお願いします。例えば、単なる「耳垢栓塞症」だけで耳垢栓塞除去を算定した場合、(片側・両側)の区別がつかないため、必ず患側(右・左・両側)を記載してください。
  2. 急性と慢性では処置・検査・投薬に違いがあるため、急性・慢性の区別をしてください。
  3. 古い病名のままでの診療報酬請求は場合によっては保険審査上、査定となる場合があります。できるだけ病名整理をお願いします。
  4. 初診料算定に関係するので、治癒・中止等の転帰記載を必ずお願いします。
  5. アレルギー性鼻炎単独では、抗アレルギー剤点眼薬は保険審査上、査定対象です。アレルギー性結膜炎等の病名が必要です。
  6. 適応傷病名が限定された検査(例:sIL-2R、MPO-ANCA)や投薬(例:イソソルビド、ミティキュア、オゼックス細粒/錠小児用)、処置(例:耳垢栓塞除去(複雑)、扁桃処置)等にご留意ください。

4 診療報酬上の留意事項

<基本診療料>

1 初診料算定に当たっての一般留意事項

  1. 現に診療継続中の患者につき、新たに発生した他の傷病で初診を行った場合には、当該新たに発生した傷病について初診料の算定は不可です。
  2. 患者が任意に診療を中止し、1か月経過した後、再び同一保険医療機関において診療を受ける場合には、その診療が同一病名又は同一症状によるものであってもその際は、初診として取り扱うことが可能です。
  3. 前項に関わらず、明らかな慢性疾患等明らかに同一の疾病又は負傷であると推定される場合は初診算定不可です。
  4. アレルギー性鼻炎の場合(東京都社保・国保の場合):最終来院日から1か月以上、かつ最終服薬終了日から1か月以上経過した場合には、初診料は算定可能です。

<特掲診療料>

1 医学管理料

  1. 管理料算定に当たっては、点数表に記載されているように、診療録への指導内容等の記載が必須ですのでご留意ください。
  2. 病名があれば、指導料が算定可能と考えている医療機関を見かけますが、保険審査上、査定となる場合があるのでご注意ください。
    (例:0歳、慢性気管支炎病名で特定疾患指導管理料算定)
  3. 医学管理料算定に当たっては、必要に応じて施設基準を満たしてください。
  4. 高度難聴指導管理料 届出必要
    以下の場合に算定可能です。
    1. 人工内耳植込術を行った患者
    2. 伝音声難聴で両耳の聴力レベル60dB以上の場合
    3. 混合性難聴又は感音性難聴の患者
    ※①は1回/月、②③は1回/年、算定可能です。
  5. 耳鼻咽喉科特定疾患指導管理料 届出不要
    対象となる患者は、15歳未満で、発症から3か月以上遷延している若しくは当該管理料を算定する前の1年間において3回以上繰り返して発症している滲出性中耳炎の患者で、1回/月算定可能です。 診療計画及び指導内容の要点を「診療録」へ記載してください。
  6. アレルギー性鼻炎免疫療法治療管理料
    アレルギー性鼻炎患者に対して、アレルゲン免疫療法による治療の必要性を認め、治療内容等に係る説明を文書を用いて行い、当該患者の同意を得た上でアレルゲン免疫療法による計画的な治療管理を行った場合に、月1回算定可能です。療法の開始前に患者に説明した内容の要点を「診療録」に記載してください。

2 検査

<検査の一般的留意事項>
  1. 検査は段階を踏んで行ってください。
  2. 画一的なセット検査は保険審査上、査定対象となるのでご注意ください。
  3. 同一月の複数回の検査は必要に応じて行ってください。
<耳鼻科領域の注意すべき主な検査>
  1. 鼻咽腔直達鏡と硬性ファイバーは別物です。硬性ファイバーを用いて観察した際に鼻咽腔直達鏡検査として算定することは振替請求となるのでご注意ください。
  2. 中耳ファイバーは中耳を観察した場合に算定可能です。外耳道異物あるいは鼓膜穿孔の確認等での保険請求は認められませんのでご注意ください。
  3. 特異的IgE検査は、アレルギーが確定してから抗原検索の目的で行われるものと解釈されております。アレルギー疑いでの同検査は保険審査上、査定となる場合があるのでご注意ください。
  4. 同日の標準純音聴力検査と簡易聴力検査の併施は保険審査上、認められません。主たる検査で算定してください。
  5. チンパノメトリーは感音性難聴では保険請求上、認められません。
  6. 鼻腔通気度検査は、当該検査に関連する手術日の前後3月以内に行った場合、若しくは睡眠時無呼吸症候群又は神経性(心因性)鼻閉症の診断目的で行った場合に算定可能となります。なお、手術日前後3月以内の場合は、手術名及び手術日(手術前に検査実施の際は手術予定日)をレセプトの摘要欄に記載が必要です。
  7. 重心動揺計は、平衡機能検査(標準検査)を行った上、実施の必要が認められたものに限り算定可能です。
  8. A群β溶連菌迅速試験定性と細菌培養同定検査を同時に実施した場合は、A群β溶連菌迅速試験定性の所定点数のみを算定するとなっております。

3 投薬

  1. 投薬に当たっては、適応病名、効果・効能に従って処方をお願いします。
  2. 投薬に当たっては、予見できる期間の投薬をお願いします。
  3. 同じ薬効の薬の重複投与は、保険審査上、査定となる場合がありますのでご注意ください。

4 処置、手術

<処置の一般的留意事項>
  1. 耳鏡・鼻鏡・舌圧子・間接吸引で観察しただけでは、処置点数の算定はできませんのでご留意ください。
  2. 2種類以上の処置を同日に行った場合:主たるものの所定点数のみにより算定します。
    例:同日ネブライザ2回算定は不可となります。
  3. 処置通則3 簡単な処置(点耳・簡単な耳垢栓除去・鼻洗浄)は基本診療料に含まれるため、別に算定できません。
  4. 処置通則6 対称器官に係る処置の所定点数:特に規定する場合を除き、両側の器官の処置料に係る点数です。
    片側算定可能な処置:点数表をご参照ください。
    ※鼓室処置、耳管処置(1 カテーテルによる耳管通気法)、副鼻腔手術後の処置、鼓室穿刺、上顎洞穿刺、唾液腺管洗浄、副鼻腔洗浄又は吸引、耳管ブジ―法、唾液腺管ブジー法
    (耳垢栓塞除去:片側・両側で点数が異なる)
  5. 処置通則7 耳鼻咽喉科乳幼児処置加算:耳鼻咽喉科を標榜する医療機関において、耳鼻咽喉科を担当する医師が、6歳未満の乳幼児に耳鼻咽喉科処置を行った場合、1日につき60点が加算できます。
  6. 処置通則8 耳鼻咽喉科小児抗菌薬適正使用支援加算:急性上気道感染症、急性中耳炎又は急性副鼻腔炎により受診した6歳未満の乳幼児に対し、耳鼻咽喉科処置を行った場合であって、抗菌薬の投与の必要性が認められないため抗菌薬を使用しない場合において、療養上必要な指導及び当該処置の結果説明を行い、文書により説明内容を提供した場合に、月1回に限り、80点が加算できます。なお、インフルエンザ又はインフルエンザ疑い、及び新型コロナウイルス感染症又は新型コロナウイルス感染症疑いの場合は算定不可となります。
<耳鼻咽喉領域の注意すべき主な処置>
  1. 耳処置:外耳道入口部から鼓膜面までの部位の処置を行った場合に算定可能です。単に鼓膜等を観察しただけでは算定不可となります。
  2. 鼓室処置:鼓室内の処置なので、鼓膜穿孔の存在が示唆される病名あるいは病状が必要です。
  3. 鼻処置:鼻吸引、単純鼻出血及び鼻前庭の処置は含まれます。口腔、咽頭処置との併用は認められません。
  4. 副鼻腔自然口開大処置:ネブライザ効果の増大を目的に行われるもので、同日にネブライザ処置がなければ保険審査上、不可となります。また東京都の社保・国保では、副鼻腔発育の状態より4歳以下の副鼻腔自然口開大処置は今のところ査定対象となります。
  5. 扁桃処置:慢性扁桃炎の急性増悪、急性腺窩(陰窩)性扁桃炎、扁桃周囲炎又は扁桃周囲膿瘍等が対象疾患となります。
  6. 副鼻腔洗浄又は吸引:副鼻腔洗浄に伴う単なる鼻処置は算定不可となります。
  7. 耳垢栓塞除去(複雑なもの)
    1. 耳垢水等を用いなければ除去できない耳垢栓塞を完全に除去した場合に算定可能です。従って、両側耳垢栓塞症病名で、1日目片側除去で耳垢栓塞除去片側算定、後日反対側除去で耳垢栓塞除去片側算定は算定不可となります。また、耳垢栓塞症病名で、1日目に一部除去したので耳処置算定も不可となります。
    2. 簡単な耳垢栓塞除去法は基本診療料に含まれます。
  8. 口腔咽頭処置と鼻処置を併せて実施した場合、どちらか一方の算定となります。
    また、扁桃処置には、咽頭処置が含まれ、咽頭処置は算定できません。
  9. 耳処置、耳管処置(2 ポリッツェル球による耳管通気法)、鼻処置は一側、両側の区別なく1回につき所定点数を算定すると定められています。副鼻腔自然口開大処置、扁桃処置等についても同様の取り扱いとなります。
  10. 超音波ネブライザは1日につき1回の算定です。

5 令和6年度診療報酬改定における、新規・改定項目

「主な改定項目」

  1. J113耳垢栓塞除去(複雑なもの)
     1 片側 100点→90点
     2 両側 180点→160点
  2. J095-2鼓室処置(片側) 55点→62点
  3. J109鼻咽腔止血法(ベロック止血法)440点→550点
  4. K347-8内視鏡下鼻中隔手術Ⅲ型(前彎矯正術)29,680点(新設)
  5. K347-9内視鏡下鼻中隔手術IV型(外鼻形成術)46,070点(新設)

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