開業医のための保険診療の要点(参考・巻末)
おわりに
令和6年度の診療報酬改定は第8次医療計画の始まりです。地域の医療需要と医療資源の状況を分析し、病床の機能分化や連携強化を図ることで、地域の実情に応じた医療提供体制の構築を目指しています。また、外来医療の機能強化や、かかりつけ医の役割の明確化などを通じて、地域包括ケアシステムとの連携が推進されます。また医療のデジタル化の推進や、医師の働き方改革など、医療提供体制の効率化と生産性向上に向けた取り組みも行われることになりました。
そこで令和6年度改定では賃上げ・基本料等の引き上げとしてのベースアップ評価料の新設、医療DXの推進、ポストコロナの感染症対策の推進として発熱患者等対応加算の新設、同時報酬改定における対応として医療機関と介護保険施設等との連係の強化、外来医療の機能分化・強化等では生活習慣病管理料(Ⅱ)の新設、医療機能に応じた入院医療の評価として地域包括医療病棟の新設、質の高い訪問診療・訪問看護の確保に対しては在宅医療におけるICTを用いた医療関係職種・介護関係職種等との連携の推進、さらに働き方改革も踏まえた救急患者のいわゆる下り搬送の評価など多岐にわたっています。
これらは今後訪れる人口構造の変化や高度先端医療の開発・普及に伴って国民医療費が増大する懸念が指摘されるなど、社会保障制度に対する諸問題が浮き彫りにされる一方、国家財政が一層厳しさを増す中で、国民医療費を徴収した保険料だけでは賄いきれず、多くを税金に頼っている現実を背景に、医療保険の効率化や適正化が益々強く求められるようになったことに起因しています。
このように医療を取り巻く環境が急速に変化する中でも、国民の健康と生命を守ってきた “わが国が世界に誇る国民皆保険制度” を維持する事が肝要です。その使命を遂行するために、保険診療の基本的ルールを遵守しつつ質の高い医療を提供することが我々保険医に求められています。
以上のような認識から東京都医師会は令和4年度に、適切な保険診療を実践するために役立つガイドブックとして「新規開業医のための保険診療の要点」を作成しました。 そして今回、令和6年度の改定内容も踏まえて新たに本書「開業医のための保険診療の要点」として発刊することになりました。
本書を作成するに当たって東京都各科医会の格別なご理解とご協力を賜りましたこと、また本書の記載内容に関してご指導頂いた関東信越厚生局東京事務所、東京都社会保険診療報酬支払基金並びに東京都国民健康保険連合会に深甚なる謝意を表したいと思います。
また、本書が発刊できたのは執筆頂いた医療保険委員会委員はもとより、東京都医師会医療保険課スタッフの献身的な努力の賜物でもあります。改めてご尽力賜りましたすべての関係各位に心よりお礼申し上げます。
東京都医師会員各位には日常診療の現場において本書を十分にご活用頂いた上で、忌憚のないご意見・ご感想をお寄せくださいますよう期待しております。
令和6年12月吉日
公益社団法人 東京都医師会
医療保険委員会 委員長 藤間 芳郎