梅雨入り前から熱中症予防対策を!!
2020年は新型コロナ感染症拡大防止のため、多くの都民が約2か月間自粛生活となりました。その結果運動不足で普段から汗をかけないことや屋内に居ること、外出した際に体が暑さに慣れていないこと(暑熱順化が出来ていない)もあり、適切に汗をかけず体の中に熱がこもり、熱中症を発症しやすい状態になっています。
また、多くの方がマスクを装着していますが、マスクを装着すると喉の渇きを感じにくくなり、水分補給を行う回数が減るため、かくれ脱水(自分が自覚していないが脱水に陥っている状態)になりやすくなります。つまり、マスクを装着して外出した場合は、外出前から心がけて水分摂取しないと熱中症になる可能性が昨年よりも高くなると思われます。
特に「高温多湿の環境」に注意が必要です。2020年5月から気温が高くなってきました。毎年、梅雨明け後から熱中症患者が急増しています。室内でも熱中症にかかります。屋外はもちろん、室内でも水分補給をこまめに行い、風通しを良くし、室内温度を調整しましょう。
参考として、東京消防庁の令和元年の熱中症による救急搬送状況の概要及び詳細を後半部分に掲載いたしますが、注目すべきことは
気温が高くなくても湿度が高いと熱中症で救急搬送されていたことです。
- 室内で熱中症になった事例
居室内は窓が開いている場合でも無風状態である場合、また冷房、扇風機等も使用していなかった屋内で30分以上居れば熱中症になる事があります。
【予防のポイント】
気温が高くなくても湿度が高いと、熱中症になることがあるので、
① 水分補給を計画的、かつ、こまめにしましょう!
② 適時窓を開け、風通しを良くしたりしますが、無風状態であればエアコンや扇風機等を活用し、室内測定温度28℃以下及び測定湿度70%以下になるように調整し、熱気を溜めないようにしましょう。
- 特に乳幼児が、締め切った車の中で熱中症になった事例もあるので注意が必要です。
【予防のポイント】
夏場の車内の温度は、短時間で高温になります。
① 少しの間でも子供を車内に残さないようにしましょう。
② 子供が、自分で内鍵をかけたり、車の鍵で遊んでいて誤ってロックボタンを押してしまい閉じ込められる事故が報告されています。車を降りる際は、必ず鍵を持って降りましょう。
③ 2歳未満のお子さんはマスクを装着すると熱がこもり熱中症のリスクが高まるので、マスクを装着しないで下さい。
- 屋外に居た場合や運動していた場合の予防ポイント
クラブ活動の指導者は、複数の生徒が熱中症で救急搬送されることが散見されているので、無理のないようにクラブ活動に留意しましょう。
① 水分補給を計画的、かつ、こまめにしましょう。
② 屋外では帽子を使用しましょう。
③ 襟元を緩めたり、ゆったりした服を着るなど服装を工夫しましょう。
④ 指導者等が積極的、計画的に休憩をさせたり、体調の変化を見逃さないようにしましょう。
⑤ 実施者は自分自身で体調管理を行い、体調不良の時は無理をせず休憩しましょう。
(1)暑さに身体を慣らしていく
暑い日が続くと、体が次第に暑さに慣れて(暑熱順化)、暑さに強くなります。 暑熱順化は、「やや暑い環境」で「ややきつい」と感じる強度で毎日30分程度の運動(ウォーキングなど)を継続することで獲得できます。暑熱順化は運動開始数日後から起こり、2週間程度で完成するといわれています。
そのため、日頃からウォーキングや入浴などで発汗する習慣を身につけていれば、夏の暑さにも対抗しやすくなり、熱中症にもかかりにくくなります。汗をかかないような季節の段階から、ウォーキングし、汗をかく機会を増やしていれば、夏の暑さに負けない体をより早く準備できることになります。
(2)高温・多湿・直射日光を避ける
熱中症の原因の一つが、高温と多湿です。屋外では、強い日差しを避け、屋内では風通しを良くするなど、高温環境に長時間さらされないようにしましょう。例えば、
- 服装を工夫する。具体的には襟元を緩める、ゆったりした服を着るなど通気を良くする。
- 窓を開け、通気を保つ。
- 扇風機等を使用し、室内に熱気を溜めない。
- すだれ・よしず等を使用する。
- グリーンカーテンを作る。窓に遮光フィルムを貼る。
- エアコンによる室内温度の調整をする。
- 屋外では頭部を守るため帽子や日傘を使用する。
- 日陰を選んで歩く。遊ぶ時は日陰を利用する。
- 熱中症計や温度計や湿度計を設置して、こまめに確認し室内の温度・湿度の調整を行う。
(3)水分補給は計画的、かつ、こまめに飲水する
特にマスク装着時や高齢者はのどの渇きを感じにくくなるため、早めに水分補給をしましょう。特にマスク装着時には外出前からこまめに水分補給を行って下さい。その際外出1~2時間前から水分300~500ml(常温でも可)を約1時間かけてゆっくりと飲んで下さい。普段の水分補給は、健康管理上からも糖分やカフェインがない麦茶や水がよいでしょう。
水分補給目的のアルコールは尿の量を増やし体内の水分を排出してしまうため逆効果です。 なお、持病がある方や水分摂取を制限されている方は、夏場の水分補給等について必ず医師に相談しましょう。
(4)運動時などは計画的な休憩をする
学校での体育祭の練習、部活動や試合中などの集団スポーツ中に熱中症が発生していることから、実施する人はもちろんのこと、特に指導者等は熱中症について理解して、計画的な休憩や水分補給など、熱中症を予防するための配慮をしましょう。
汗などで失われた水分や塩分をできるだけ早く補給するためには、水だけでなく、スポーツドリンクなどを同時に摂取するのもよいでしょう。また、試合の応援や観戦などでも熱中症が発生していることから、自分は体を動かしていないからといって注意を怠らないでください。例えば、
- 指導者等が積極的、計画的に休憩をさせる。
- 指導者等は、体調の変化を見逃さない。
- 実施者は自分自身で体調管理を行い、体調不良の時は無理をせず休憩する。
- 屋外での応援や観戦など、運動をしていなくても高温環境にいることを忘れず、水分補給を心がける。
(5)規則正しい生活をする
夜更かし、深酒、食事を抜くなど不規則な生活により体調不良な状態では、熱中症になる恐れがあります。
(6)乗用車等で子供だけにしない
車内の温度は短時間で高温になります。少しの間でも、子供を車内に残さないようにしましょう。
熱中症とは、「熱」が体の「中」にこもる「症」状である。

上記の症状があれば下記のまずFirstを行って下さい。

◎令和元年の熱中症による救急搬送状況の概要(東京消防庁ホームページより引用)
東京消防庁管内において、令和元年6月1日から9月30日までの4か月間に、熱中症(熱中症疑い等を含む。)により5,634人が救急搬送されています。平成30年と比べて、令和元年の救急搬送人員は2,326人(前年比▼29.2%)減少しました。例年、梅雨明け後の最初に気温が高温となる日に、急激に救急搬送人員が増加する傾向があり、令和元年は、梅雨が明けた7月24日頃から熱中症による救急搬送人員が増加し、8月は過去5年の月別を比較して、過去最高の救急搬送人員となっています。救急搬送人員の初診時程度をみると、2,328人(41.3%)が入院の必要がある中等症以上と診断され、そのうち272人が重症以上と診断されています。全体の救急搬送人員のうち3,005人(53.3%)が高齢者(65歳以上)となっており、そのうち、後期高齢者(75歳以上)が2,167人(72.1%)となっています。救急搬送人員の初診時程度では、後期高齢者のうち1,212人(55.9%)が、中等症以上となっています。また、熱中症の他に気温上昇の影響を受けて体調を崩していると考えられる傷病者も毎年多く搬送されております。
※東京消防庁管内:東京都のうち稲城市と島しょ地区を除きます。
救急要請時の発生場所では、住宅等居住場所が2,267人で全体の40.2%を占め最も多く、次いで道路・交通施設が1,716人で30.5%を占めていました。また、年齢区分別に発生場所を見ると、乳幼児(0~5歳)は「道路・交通施設」、高齢者(65歳以上)は「住宅等居住場所」が多くを占めています。 小学生となる6歳~12歳、中学生となる13歳~15歳、高校生となる16歳~18歳は、いずれも「学校・児童施設等」、「公園・遊園地・運動場等」が多く、この2つで全体の半数以上を占めていました。
◎令和元年の熱中症による救急搬送状況の詳細(東京消防庁ホームページより引用)
(1)気温別の熱中症による救急搬送人員の状況
救急要請時の気温と救急搬送人員では、32℃台及び33℃台は、800人以上の人が 救急搬送され、気温が高いほど搬送人員が多い傾向がみられます(図1)。

(2)救急要請時の気温と湿度の状況(令和元年6月~9月)
下の図は、令和元年6月から9月末までに熱中症で救急搬送された5,634人の救急要請時の気温と湿度を表したもので、赤い色が濃いほど救急搬送が多くなっています。 概ね、気温は26℃から35℃まで、湿度は60%から90%までの範囲で、救急搬送人員が多く分布していることが分かります。また、気温が高くなくても湿度が高いと熱中症で救急搬送されていることが分かります(図2)。

(3)時間帯別の救急搬送状況
時間帯別の救急搬送状況をみると、14時台が569人と最も多く、次いで12時台が554人でした。特に12時台から15時台は500人以上と多くなっています(図3)。

(4)年代別の救急搬送状況
年代別の救急搬送状況をみると、80歳代が1,248人と最も多く、次いで70歳代が1,114人となっていました。人口10万人あたりの救急搬送人員で見ると、70歳代以上になると急激に多くなっており、60歳代以下では10歳代が最も多くなっていました(図4)。

年齢区分別の救急搬送状況をみると、65歳以上の高齢者が3,005人で全体の約半数を 占め、そのうち約7割にあたる2,167人が75歳以上の後期高齢者でした(図5)。

(5)救急搬送時の初診時程度
救急搬送時の初診時程度をみると、救急搬送された5,634人のうち約4割にあたる2,328人が入院の必要があるとされる中等症以上と診断されています。重症以上は272人 で、そのうち62人は生命の危険が切迫しているとされる重篤と診断され、1人が死亡しております。(図6-1)。また、高齢者(65歳以上)は、半数以上の1,591人(52.9%)が中等症以上と診断され、後期高齢者(75歳以上)に限ると、1,212人(55.9%)が中等症以上と診断されています(図6-2、図6-3)。
(6)熱中症の発生場所
救急要請時の発生場所では、住宅等居住場所が2,267人で全体の40.2%を占め最も多く、次いで道路・交通施設が1,716人で30.5%を占めていました(図7)。

- 東京消防庁ホームページ内「夏本番前から熱中症予防対策を!!」
- 環境省ホームページ内「熱中症環境保健マニュアル」
気温、最高気温、平均気温、湿度、天気は気象庁の気象統計情報の東京で測定した数値等を使用しています。
最後に熱中症危険度を判断する熱中症Web「熱中症危険度チェック」もありますので、熱中症を疑った場合Webにアクセスして下さい。(監修:東京都医師会救急委員会委員 三浦邦久)
- 熱中症を防ごう(公益財団法人日本スポーツ協会)
スポーツ活動中の熱中症予防対策について、ガイドブックや動画で解説しています。