2019年12月21日(土曜日)

第18回 東京都医師会 都民公開講座「『フレイル・認知症』を知って、楽しく健康長寿」(開催報告)

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第18回 東京都医師会 都民公開講座「『フレイル・認知症』を知って、楽しく健康長寿」

年齢を重ねるにつれてリスクが高まる、「フレイル」(加齢により筋力や活力が低下し、体・心・社会生活において虚弱になった状態)と「認知症」。どちらも予防が呼びかけられるなか、何をすればいいかわからないという人は少なくありません。

そこで、今年度は「フレイル」と「認知症」 に焦点をあて、「『フレイル・認知症』を知って、楽しく健康長寿」をテーマに、10月14日と12月8日の2日間「楽しみながら続けられる予防の工夫」を伝える都民公開講座を開催いたしました。

当日の模様は以下の動画をご覧ください。

当日の模様

     ※画面が表示されない場合にはこちらをクリックしてください。


第18回 東京都医師会 都民公開講座
「『フレイル・認知症』を知って、楽しく健康長寿」採録

プログラム


笑う門には健康来たる?〜医学で解き明かす「笑い」の効果〜


福島県立医科大学医学部疫学講座
 主任教授 大平哲也氏

フレイルと認知症に共通する予防法とは

フレイルとは加齢によって心身の活力が低下した状態を指します。徐々に進んでいくのが特徴で「最近やせてきた」「階段の上り下りで息切れがする」「疲れやすくなって外出がおっくうになった」などの変化を感じたら、フレイルを意識すべきです。しかし、さほど不安に思うことはありません。

フレイルは健康と介護を要する状態の中間地点で、トレーニングや食事などに気をつけることでまた健康な状態に戻していくことができるからです。ぜひ前向きな気持ちで、要介護にならない生活を心がけていただきたいと思います。

日本の高齢者が要介護状態や寝たきりになる理由の第1位は認知症です。75歳から急増し、85歳で約4割の人が発症します。原因の約半数は、生活習慣だと言われます。そこで、見直したいのが喫煙習慣や塩分過多の食事です。高血圧や糖尿病といった動脈硬化に関連する症状があると、認知症の発症リスクが高くなるため、減塩に取り組みましょう。

運動の習慣化や趣味・コミュニケーションの充実も脳の活性化に大事なので、取り入れてください。これらは認知症だけではなく、脳卒中やフレイルの予防につながることもわかっています。

心身に好影響をもたらす「笑い」のある暮らしを

今日のテーマ「笑い」も大きな役割を果たします。ここでいう笑いとは、面白いと感じて声を出して笑うこと、つまりハッハッハと息を吐き出す行為です。試していただくとわかるのですが、笑いには運動効果があります。腹筋を使いますし、のどの筋肉を使うので嚥下や唾液の分泌にいい影響を与えます。

実際に、ほぼ毎日笑う人は笑わない人と比較して口腔機能を維持できるという報告もあります。そして65歳以上の毎日笑う人と笑わない人を比較した認知機能の調査では、笑っていない人ほど認知機能低下の症状が多くみられ、将来認知機能が低下しやすいことがわかりました。このほかにも糖尿病やアレルギー、睡眠、免疫力などとの関係性も医学的に証明されており、「笑いを増やす暮らし」が推奨されています。

この後皆さんが体験される「笑いヨガ」は、誰でも笑える方法の一つです。福島県立医科大学と大阪大学、岡山大学の共同研究で笑いヨガの効果を調べたところ、体脂肪や血圧に変化があり、幸福感が得られることもわかりました。「笑い」は心と体にいいものなのす。ストレスが減ると脳卒中や心臓病のリスクが低くなります。加えて、脳が活性化されたり人づきあいが良くなったりすることから、認知症を発症しにくくなります。

笑う門には福来たると言います。健康に関しては「笑うからこそ幸せがやってくる」のだと言えるでしょう。笑いを意識すると周囲にも笑いが生まれます。皆で楽しみながら、健康な毎日を送ってください。

様々なデータから「予防の大切さ」が伝えられ、いかに楽しみながら予防をするかを考えました

笑トレで毎日元気


日本笑いヨガ協会 代表
 高田佳子氏

声を出して笑うと血液循環が良くなって全身が温まり、自律神経も整います。いいことずくめの笑いを、ストレッチや筋トレと組み合わせて楽しめるように考案されたのが、インド生まれの笑いヨガをベースにした笑トレです。

フレイル予防には「ワインオープナー笑い(※1)」「歯みがき笑い(※2)」「うがい笑い(※3)」がおすすめです。例えばワインオープナー笑いは、スクワット動作があるので足腰の筋力維持につながります。歯みがき笑いとうがい笑いは、表情筋を使うことで誤嚥や食べこぼしといった口元のフレイル対策に効果を発揮します。驚かれる方が多いのですが、同じように筋肉を使う動作でも、笑いが加わることで軽々とできます。ぜひ毎日取り入れてください。

※1:ワインオープナー笑い
① かかとをつけて、つま先を90度に開く。
② 背筋をまっすぐにしたまま「エー」と言いながらひざを曲げ、腕を少し上げる。
③ さらにひざを曲げ、「エー」と言いながらより深く腰を落として腕を上げる。
④ 「ハハハハ」と笑いながら足を伸ばし、腕を下ろす。

※2:歯みがき笑い
① 口角を左右に引きつけるように口をしっかり開きながら「イヒヒヒヒ」。
② 大きく口を開けて「アハハハハ」。
③ ①と②を逆の手でもやる。

※3:うがい笑い
① 口に空気を含んで口の周りの筋肉をムグムグとしっかり動かす。
② 「ブハハハハ」と勢いよく、息を吐き出して笑う。

大きな声で笑いながら身体を動かすことで、身体が温かくなりました

だじゃれ de 健康


日本だじゃれ活用協会 代表理事
鈴木英智佳氏

今、小学校の国語の教科書に「だじゃれ」が載っていることをご存じでしょうか。ことば遊びの一つとして紹介されているのですが、語彙力が必要なだじゃれは子どもだけではなく、大人にとってもいい脳トレになります。

これを証明すべく、あるテレビ番組の企画でだじゃれを発した時の脳の活動状態を調べました。すると、脳の前頭前野の活動がよくなることがわかりました。しかも驚いたことに、だじゃれをつくったり伝えたりした人だけでなく、聞いた人も「なるほど!」と思うことで脳の活動がよくなっていました。特別な道具はいりませんから、いつでもどこでもできる身近な脳トレとして楽しんでください。

だじゃれとは、似た音や同じ音を使ったことば遊びです。お題と音が似た言葉を組み合わせれば、だじゃれになります。例えば「バク」で、どうぞ皆さん試してみてください。お題は暮らしの中に無限にあります。「サンマ三枚におろす」「ブドウ粒どう?」のように食べ物で考えてもいいですし、名前を使った掛け合いをしてもいいでしょう。大切なのは、言葉にすることです。

コミュニケーションを取らなくなると認知症やフレイルのリスクが高まるという話がありました。日々楽しく取り入れてほしいと思います。

お題をもとに短時間でたくさんのだじゃれを考えるなど、参加者は積極的にだじゃれ作りに取り組んでいました

関連資料

開催概要

日 時 第1回:10月14日(月・祝) 13:30 ~ 16:30 (開場 13:00)
第2回:12月 8日(日) 13:30 ~ 16:30 (開場 13:00) 
会 場 東京都医師会館 (地図
東京都千代田区神田駿河台2-5
主 催 東京都医師会
共 催 朝日新聞社
後 援 東京都
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