コラム「産業保健のさんぽみち」

2017年6月7日(水曜日)

過重労働対策においての産業医の職務について

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 過重労働などを原因として脳・心臓疾患を発症し死亡した過労死等、仕事によるストレスから精神障害を発症し、自殺したとして労災認定される人は、合わせて200人近くになる。

 このため平成25年度「第12次労働災害防止計画」において、誰もが安心して健康に働くことができる社会を実現するために」として、メンタルヘルス対策及び過重労働対策においても労働災害防止計画が以下のように定められている。

◆目標

 平成23年と比較して、平成29年までに週労働時間60時間以上の雇用者の割合を30%以上減少させる。

◆講ずべき施策

a 健康管理の徹底による労働者の健康障害リスクの低減

 ・健康診断の実施

 ・労働時間の的確な把握、管理に留意した事後措置等の健康管理の徹底

 ・恒常的長時間労働を発生させない労務管理の推進と過労に伴う健康障害のリスクの大幅な低減

 ・健診結果、事後措置

b 働き方・休み方の見直しの推進

・不規則勤務、深夜労働の多い業種、職種に重点

 効果的疲労回復につながる休日、休暇付与、取得推進

・恒常的長時間労働従事労働者の多い業種、職種に重点労使の取組を効果的に促す

「労働基準法36条第1項協定で定める労働時間延長の限界に関する基準」の遵守を図る等により、時間外労働の削減推進

◆産業医の職務として

労働安全衛生法第十四条

.健康診断及び面接指導の実施並びにこれらの結果に基づく労働者の健康を保持増進するための措置に関すること

.作業環境の維持に関すること

.作業の管理に関すること

.衛生教育に関すること

.労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること等と定められており、過重労働対策に関しても労働安全衛生法において、

・第一条:労働基準法と相まって労働災害の防止のための危害防止の基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動推進の措置

・第三条:事業者は労働災害防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場の労働者の安全と健康を確保しなければならない

・第十三条:産業医は、事業者に対し労働者の健康管理等について必要な勧告ができ、事業者はこれを尊重しなければならない

◆まとめ

 以上の観点から産業医は「過重労働による健康障害防止のための総合対策」の主旨に記してあるように過重労働は疲労蓄積の要因であり脳・心臓疾患発症関連性が強いことは医学的知見からも得られている。

 また「第12次労働災害防止計画」においても定められているように、過重な労働による労働者の健康障害を排除するためにも労働者の健康管理に係る適切な措置を実施すべきである。

 このことは「安全配慮義務」の観点(労働契約法第5)からも重要であると考える。

東京都医師会産業保健委員会委員 安藤 進(安藤医院) 所属医師会:葛飾区医師会

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