産業医情報
嘱託産業医のための新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のヒント
このサイトで提供している各種情報は、他の公的機関等から発出されている情報に基づき、感染症流行期における各事業所を対象に産業保健活動への助言・支援を想定して纏めたものです。個人を対象としたものではなく、またその活用については事業所の衛生委員会等において審議・判断等がされることが望ましいことに留意してください。
<目次>
会員活動支援
ご自身の医療機関で働く方への支援情報
- 1:病院・クリニックスタッフの安全のために
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・医療機関等における新型コロナウイルス対策に関する産業保健活動は、次の 3 つがすべて達成されることを目的とします。
① 医療従事者等が SARS-CoV-2 に感染しないこと(感染予防)
② 医療従事者等が心身の状態に合わせて職務に従事できること(就業継続)
③ 医療機関等が診療や介護の業務を継続できること(事業継続)・医療機関の産業医は、以下の立場で行動することが求められます。
① 産業医は、院内感染対策の専門家(インフェクションコントロールドクター)と連携して、医療従事者等の感染や重症化を予防するための活動を推進する。その際、職場や作業の改善と医療従事者等の健康確保については、主体的な役割を担う。
② 産業医は、職場や作業をよく観察して、実態とその変化を把握するよう努め、実行可能な改善策を検討して、関係部署と調整して、事業者に提案する。
③ 産業医は、医療従事者等が感染予防と就業継続を両立できることをめざす。また、産業医は、事業者が感染予防と事業継続を両立できることをめざす。そして、産業医は、医療関係者と事業者との双方に対して、独立した立場から産業保健活動の目的がより良く達成されるよう助言する。「医療従事者の安全確保」「医療従事者のメンタルヘルスを守る」「労働時間のモニタリング」「短期採用者とボランティアを守る」「より多くの医療従事者の採用とトレーニング」にかかる基本的な考え方を示しています。
リンク:医療機関等における産業保健活動 としての新型コロナウイルス対策 (令和 2 年 5 月 15 日版)(日本医師会)
リンク:Five ways to protect health workers during the COVID-19 crisis(ILO)
・医療従事者の感染防止対策のための戦略は、以下の項目が挙げられます。
① 感染経路の遮断
② 感染者の重症化防止
③ 濃厚接触者による感染拡大防止
④ 高リスクな処置の重点的措置
⑤ 心理的ストレスと長時間労働の緩和
⑥ 労働衛生管理の推進感染症流行下での医療現場の従業員の安全配慮のためには、感染予防、職員・従業員の適正配置および業務継続のための工夫などが必要です、そのためには、感染防御の基本的な対策と合わせて、職員・従業員に起こりうる健康リスクに対する労働衛生・産業保健的支援をするための管理体制と、実際の作業環境管理、作業管理、教育啓発、過重労働防止および心理的支援を含む健康管理等について、可能なことから、さらにはリスクに応じた優先順位に基づいて実施に実施する必要があります(CDCのガイドラインのうち「医療従事者の曝露のリスク評価と対応」については感染症学会のガイドに邦訳版があります)。
リンク:医療機関等における産業保健活動 としての新型コロナウイルス対策 (令和 2 年 5 月 15 日版)(日本医師会)
リンク:医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(日本環境感染学会)
医療従事者およびその管理者に向けた、実用的な疲労管理のヒントが紹介されています。CDCのガイドラインでは疲労の蓄積が怪我や疾患の原因となることから、睡眠の量と質の確保にかかる解説、作業中に過度な眠気がある時の対応等の職員・従業員が取り組むべき対策や、事業者としての疲労対策の心構えや具体的な取り組み等が紹介されています。リンク:医療機関等における産業保健活動 としての新型コロナウイルス対策 (令和 2 年 5 月 15 日版)(日本医師会)
リンク:危機発生時の疲労管理:看護師、管理者、および他の医療従事者に向けた指針(CDC)
リンク:What Workers and Employers Can Do to Manage Workplace Fatigue during COVID-19(CDC)
① COVID-19と診断または疑われている患者からの感染
② COVID-19と診断または疑われていない患者からの感染
③ 市中や医療従事者間での感染
という区分において、②については基本的には・標準予防策・ユニバーサルマスキング・診察室でのゾーニングを、①については②のそれと合わせて飛沫感染予防と接触感染予防(「ウイルスを含む飛沫が眼、鼻、口の粘膜に付着するのを防ぐ」「 ウイルスが付着した手で眼、鼻、口の粘膜と接触するのを防ぐ」)を追加します。また、上気道検体採取時やaerosol発生処置など、作業のリスクに応じて手技やPPEの選択などへの配慮や注意が必要です。リンク:医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(日本環境感染学会)
リンク:新型コロナウイルス感染症に対する感染管理(国立感染症研究所)
感染している患者との接触のほか、コロナウイルスの感染確認がされていない無症候性の感染者との接触において、ウイルス排出があると考えられる発症前2日または発症後少なくとも約10日間において感染の可能性があります。これは対患者だけではなく職員・従業員間でも起こり得ます。リンク:新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領(2020年4月20日暫定版)(国立感染症研究所)
病気休業者によるシフト変更や非常勤の職員・従業員の出入制限等による長時間労働が健康に影響するおそれがあります。
COVID-19の診療を行う医療従事者等には、次のようなストレスが生じることを理解して、これらを緩和する対策を検討し、事業者に提案することが望まれます。
① 人間関係の心理的ストレス(各診療科・多職種との連携・混在、接触頻度の低下等)
② 業務内容の心理的ストレス(予定管理の困難さ、不慣れな業務、非定常的な業務等)
③ 差別や中傷による心理的ストレス(医療関係者であることを理由とする拒絶等)
④ 長時間労働による疲労と睡眠不足
加えて、職場や通勤等での自身への感染の可能性に対する不安、自身が感染することによる家族への影響、および医療従事者に対する不当な差別的風評被害等への不安等があります。
また、業務において通常とは異なる患者の死亡を理由とした心理的な負担の可能性が有ります。米国のトラウマティック・ストレス研究センターが作成した「COVID-19関連のメンタルヘルス・マニュアル」のサイトでは、患者の心のケアと合わせて医療従事者に必要な心のケア、そして社会や組織のリーダに求められている事等が紹介されています。リンク:医療機関等における産業保健活動 としての新型コロナウイルス対策 (令和 2 年 5 月 15 日版)(日本医師会)
リンク:「COVID-19関連のメンタルヘルス・マニュアル」(Center for the Study of Traumatic Stress)
リンク:新型コロナウィルス感染の拡大およびそれに関連した社会情勢がもたらす労働者の心理面への影響に関して、産業保健職が留意すべき事(日本産業衛生学会産業精神衛生研究会)
- 2:管理体制の構築
患者および職員・従業員の感染防止対策はもちろんですが、業務を継続する必要性に立てば、「職員・従業員の身体および心理的状態に合わせた対応と適正配置」や「診療・介護の業務継続に必要な具体的な業務計画の検討」が必要であり、それを支える産業保健的な視点での管理体制が必要です。リンク:事業場における安全衛生管理体制のあらまし(厚生労働省)
職場における産業保健対策は、まずはトップが自ら対策に取り組みという意思表示をすることが重要で、それは今回の場合も同様です。患者だけではなく自らの職員・従業員を守るという方針や、院内・院外に関わらず罹患した場合の必要な支援などを明言ことは、患者への感染や院内感染防止への意欲を醸成するためにも大切です。リンク:経営トップによる「安全衛生方針」に基づく労働災害防止活動の推進(東京労働局)
職員・従業員の罹患確定者や擬似症例などが発生した場合の対応を一元化して混乱を避けるために、窓口を一本化すること、および、その際の対応を決めておくことが望まれます。特に、確定例や擬似症例または濃厚接触者として職場を休む職員・従業員が多数出ることを念頭に、期間中の残存人員の見積もりや、回復後の労働力としての見通しを予測しておくことは、業務継続の観点から重要です。こうした対応は、産業保健に習熟した医師もしくは職員・従業員を担当者とすることが望まれます。リンク:事業場における安全衛生管理体制のあらまし(厚生労働省)
万が一感染をした場合や擬似症例等の症状、または濃厚接触者として休業する場合の休業中の賃金の取り扱いや、労働災害申請に掛かる支援等について、制度面での説明ができるように準備しておく必要があります。リンク:新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)「4 労働者を休ませる場合の措置(休業手当、特別休暇など)」(厚生労働省)
- 3:作業環境管理の主なポイント(環境改善への対策)
COVID-19感染者やその疑いがある場合には、患者の診療は陰圧室で行い、陰圧発生装置やHEPA フィルター内蔵簡易陰圧装置等を使用するよう指導しましょう。陰圧室がない場合は、できるだけ個室および換気できることが必要です。リンク:新型コロナウイルス感染症に対する感染管理(国立感染症研究所)
リンク:医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(日本環境感染学会)
感染者の病室以外にも、リスクが高いと考えられる室内の換気対策が必要です。窓がない部屋では扉を開けたり、建物空調管理での外気の取り込み量を増やしたりするなどの方法で換気量をあげることも可能です。その際、空気が室内で撹拌され循環することを回避し、排気は人間の顔の高さよりもなるべく低い位置から行う等の対策を実施するよう助言しましょう。換気方法と併用する補助的な対策として、空気清浄機を使用することも勧められます。居室等の換気量の目安を調べるシミュレーター(エクセルファイルのダウンロード)があります。
リンク:医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(日本環境感染学会)
密集の可能性がある職場の場所(食堂等)や状況(会議等)を把握し、環境面では広い室内を用いるなどの気積拡大、椅子を減らして利用人数を制限するなどの環境対策を図りましょう。
感染リスクの高いエリアをゾーニングして立ち入り制限をします。その際、感染エリアと非感染エリアを誰が見てもわかるように掲示・色わけ等での見える化を図ります。また、外来等で発熱・呼吸器症状のある受診者は空間的に隔離可能な空間を用意します。また、受付窓口等の対面が生じる場所には、透明なシートやパネルを設置するなど、他者との間に仕切り板を設置することも勧められます。
食堂や休憩室でのお互いの距離の確保に配慮できるように、全体に周知をして職場の理解を醸成しましょう。また社会的距離を確保できるように、予め距離の確保された座席位置を明示したり、社会的距離に合わせて椅子の数を減らしたりするなどの対策をしておきましょう。リンク:医療機関等における産業保健活動 としての新型コロナウイルス対策 (令和 2 年 5 月 15 日版)(日本医師会)
リンク:新型コロナウイルス感染症に対する感染管理(国立感染症研究所)
リンク:医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(日本環境感染学会)
発熱・呼吸器症状のある受診者は空間的に隔離可能な空間を用意しましょう。当該者にはサージカルマスク等の着用させて環境中への飛沫の飛散・拡散を防ぎましょう。
トイレ内のレバーや蛇口、患者の飛沫がかかりやすい場所、頻繁に行き来するドアのドアノブ、複数人が使用するキーボードなど、施設内で飛沫や排泄物等が付着しやすい場所を特定します。使用する消毒液を適切に選択・調整し、消毒実施者に付着することを防ぐための手袋や防護衣等を使用して、定期的に消毒します。
所属長は、手指消毒用アルコールを職場に備え付け、物品、機器、衣類類の消毒手順を定めましょう。なお、共有の物品・機器等(パソコン、タブレット、電話、FAX、 コピー機)は消毒用アルコール(70-80%)で、共有の設備(机、椅子、棚、 ドアノブ、スイッチ、ハンドル、手すりなど)は次亜塩素酸ナトリウム(0.05%)で、トイレの便座は 0.1%の次亜塩素酸ナトリウムによる清拭で消毒することが求められます。消毒液がない場合は界面活性剤(石鹸)を利用して水拭きしましょう。清拭には使い捨てのペーパータオルなどを使用し、清拭を行う作業者の手袋は、頑丈で水を通さない材質のものを使用します。医療関係者等は、マスクを消毒する必要がある場合は、過酸化水素ガスプラズマ滅菌、60-65℃以上の高温と80%の高湿滅菌、紫外線殺菌照射で消毒します(アルコール、マイクロウェーブ、オートクレーブによる消毒は禁止する)。その際、 使用者の名前を明示し、マスク同士が接触しないようにしましょう。リンク:医療機関等における産業保健活動 としての新型コロナウイルス対策 (令和 2 年 5 月 15 日版)(日本医師会)
リンク:新型コロナウイルス感染症に対する感染管理(国立感染症研究所)
リンク:社会福祉施設等に対する「新型コロナウイルス対策 身のまわりを清潔にしましょう。」の周知について(厚生労働省)
汚染された手から他の箇所への伝播を防ぐために、手洗いを励行します。なおWHOは、患者への感染を防ぐ観点から、医療従事者に手指洗浄が必要とされるシチュエーションとして5つのタイミング(「患者に触れる前・無菌操作の前・体液曝露リスクの後・患者に触れた後・患者周辺環境に触れた後」)を示していますが、これと合わせて、職員・従業員間等での汚染の可能性があるシチュエーション等を予め洗い出しておくことも大切です。リンク:WHO Guidelines on Hand Hygiene in Health Care(WHO)
リンク:WHO Guidelines on Hand Hygiene in Health Care(WHO)(日本語訳)
- 4:作業管理の主なポイント(人の動き・動作への対策)
患者の待合室や談話室等と合わせて、職員・従業員が使うスペースのうち、事務室や医療者控室など密集の可能性がある場所や状況を洗い出し、密集防止対策(時間差利用、会議のオンライン化など)を検討しましょう。
所属長は、高リスクな領域への立ち入りは関係者だけに制限したり、共用施設は利用範囲の縮小、利用時間を制限したりしましょう。なお、食堂等は集中を避けるために利用時間延長して、職場によって昼休みの時間をずらして利用するなどの工夫も効果的です。リンク:医療機関等における産業保健活動 としての新型コロナウイルス対策 (令和 2 年 5 月 15 日版)(日本医師会)
リンク:新型コロナウイルス感染症に対する感染管理(国立感染症研究所)
診察時等の患者との距離は⼀定の距離(理想的には 1 メートル以上)を保つことや、パーテーションの設置などを検討します。合わせて、フェイスガードなどのプロテクター等の着用を検討します。また、委託業者等との物品の受け渡し等の場所を限定して、双方の接触を出来るだけ減らすことも必要です。リンク:医療機関等における産業保健活動 としての新型コロナウイルス対策 (令和 2 年 5 月 15 日版)(日本医師会)
リンク:医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(日本環境感染学会)
感染の可能性がある汚染物の処理について、付着防止のために決められた手順で回収と密閉・廃棄を遵守します。廃棄する場所は原則医療廃棄物として廃棄します。リンク:新型コロナウイルス感染症に係る廃棄物対策に関する広報資料(環境省)
サージカルエプロンやマスクの着脱を介した接触感染を防ぐことを含め、各種PPEの正しい着脱が動画等で紹介されています。
リンク:新型コロナウイルス感染症関連情報(職業感染制御研究会)
作業に伴うリスクに応じた PPE選択方法が示されています。リンク:新型コロナウイルス感染症に対する感染管理(国立感染症研究所)
- 5:健康管理
感染リスクが高いと考えられている高齢者をはじめ、基礎疾患(糖尿病、心不全、呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患など)など)がある方や透析を受けている方、免疫抑制剤や抗がん剤などを用いている方の就業に際しては、感染の可能性が低い業務に限定するなどの安全配慮が必要です。基礎疾患の有無等について、個人情報保護を遵守すること等により本人から申告がしやすいように配慮することも忘れないでください。また、妊娠をしている職員・従業員が「母性健康管理指導事項連絡カード」などを介して就業にかかる主治医の見解を申請した時には、必要な配慮をしなければなりません。リンク:新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)(厚生労働省)
リンク:新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置について(厚生労働省)
自身の体調維持管理を改めて見直すとともに、万が一体調不良が発生した際には、発生日やそれ以前の状況を報告できるように、日々の健康状態をモニタリングし、可能であれば行動にかかる記録もしておくことが望まれます。
事業者は、職員・従業員が体調不良の報告を躊躇しないように、申告による不利益がないことやその際の対処について、予め明確に示しておくことが望まれます。なお、本人の自己申告だけではなく、上司・部下・同僚等の多面的な視点での健康状態の把握をすることについて職場として相互の協力を促すことも望まれます。
職場を含めて直接対面での会話が制限されていることから、既知の知人等との間でのコミュニケーション手段として、電話や情報通信機器を介したコミュニケーションに慣れ、使いこなせるようにすることが望まれます。また、プライベートの時間を確保し、リラックスをして過ごせる工夫を身につけるなど、まだ終息が見通せないストレッサーに対して、自身のストレスコーピング能力を高めることが大切です。- 6:医療スタッフの過重労働防止
長時間労働の標的疾患である脳・心臓疾患等について、作業者側のリスク(循環器疾患ハイリスク者の把握)を把握し、リスクの高い職員・従業員への過度な負荷が継続しない等の適正配置・配慮が必要です。
過重労働による労災認定では「異常な出来事」「短期間の過重業務」「長期間の過重業務」でそれぞれ要件が異なっていますので、予防の観点から、時間外労働時間のほか、勤務形態や精神的負荷等の労働時間以外の要因についてもモニタリングの対象とすることが望まれます。
合わせて、職場以外の負荷要因(家庭での家事や育児などの負担等)についても考慮することが望まれます。
リスクやモニタリング結果に基づく配置や分掌をもとに、シフトや休憩時間の確保等を配慮します。スタッフ数が確保できない場合は、可能な範囲での業務縮小やルール変更によるシフト変更を検討します。例えば、医師の場合は24時間対応の主治医制ではなくチーム制にして、夜間は当直チームに全て申し送りをして勤務間インターバルと休憩休息の確保が可能なシフトにする、等の対策が考えられます。
なお、必要に応じて臨時の職員・従業員の採用およびトレーニングなどを検討します。リンク:新型インフルエンザ等発生時の診療継続計画作りの手引き 別紙3「当院の受け入れ能力の事前評価」等(日本医師会)
過重労働の標的疾患であるメンタルヘルス不調について、作業者側のリスク(既往歴、coping等のうち、把握可能な情報について)を把握し、リスクの高い職員・従業員への過度な負荷が継続しない等の適正配置・配慮が必要です。また、職場のサポートが少ない場合にはストレス反応が高くなるため、職場の支援状態を把握することも必要です。
メンタルヘルス不調の前段階と言われる「高ストレス状態」をモニタリングすることが望まれます。定期的なセルフチェックを促してスコアが高い場合などに自己申告をしてもらうことや、ラインケアとして上司や同僚等から見守りや声かけをすることも有用です。
また、精神障害の労災認定では、「特別な出来事」に該当する場合と、該当しない場合でも「業務による心理的負荷が強い」状況がその要件となってますので、予防の観点から、これらの要因にかかる負荷の有無をはモニタリングすることが望まれます。
合わせて、業務要因だけではなく業務以外の要因(家庭環境等)に基づく負担への配慮も必要です。
リスクやモニタリング結果に基づく配置や分掌をもとに、シフトや休憩時間の確保等を配慮します。特に、個人のストレスコーピング能力を十分に発揮してストレス反応を低減するために、必要な時間の確保を支援し、また本人を取り巻く周囲のスタッフが必要に応じて相互にサポートができるような労働環境の確保に努めましょう。そのことが結果的には、スタッフの職場離脱を防いで業務の維持継続につながります。必要に応じて業務を必要最低限まで段階的に縮小することも計画しましょう。- 7:医療体制の維持
手指衛生の実施、マスクの着用、咳エチケットの実施、作業時のサージカルマスクの着用、共用の備品を触る場合の手袋装着、その際に顔(眼、鼻、口)を触らないようにするなど、基本的な感染防止手技を行う。
不要不急の会議やイベントの中止や延期を検討する。また、上気道の手術や内視鏡検査等の高リスクな処置のうち、緊急ではないものの延期を検討する。
事業者は、可能な限り公共交通機関を利用しない通勤方法(自家用車、自転車、徒歩等)や時差出勤を勧めましょう。また、事務作業では情報通信機器を活用した在宅勤務(テレワーク)の導入を検討しましょう。また、他の医療機関と兼務することをなるべく自粛させ、他の医療機関からの非常勤職員の出入りを制限する必要もあります。
時間や余力が少ない時には、リスクの評価とそれに基づく優先順位設定を検討することが、効率的に職場の対策を進めるためには、効果的です。COVID-19に対してのリスクアセスメントツールが幾つか開発されています。リンク:職場での新型コロナウイルス感染症予防及びリスク低減 アクションチェックリスト(ILO)
職員・従業員が体調不良となった時に連絡すべき職場の産業保健窓口を確保しましょう。
ウイルスへの曝露の疑いがあるだけでは、すぐにPCR検査の対象となるわけではありません。まずは検査に依存せず、感染対策上の観点から就業制限等を含めた対応を優先させて実施する必要があります。非医療従事者と同様に、明らかに疑わしい症状がある場合や、曝露後の健康観察期間中に症状が発生した場合などは、PCR検査の対象となります。リンク:医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(日本環境感染学会)
事業者は、感染者の職場復帰については産業医に相談の上、感染者や濃厚接触者が職場に復帰する手続きを定めましょう。通常、職場復帰は、発症後 14 日が経過し、解熱後 3 日以上が経過していることを条件としています。なお、PCR検査実施の有無により、異なる復職基準が例示されています。例えばアメリカのCDCでは、自覚症状があっても検査を実施していない場合は、「解熱後少なくとも3日経過して呼吸器症状がないこと、かつ発症から少なくとも10日経過していること」としています。検査陽性だが自覚症状は現れていない場合は「検査で陽性になってから少なくとも10日経過していること」としています。なお、産業医は、医療従事者等が職場復帰を希望する際には面談を行って、心身の状態、生 活習慣、就業に向けた準備状況等を総合的に検討して、職場復帰が可能かどうかについての判断を行い、職場が配慮すべき事項があればその内容を上司と相談して、事業者に報告して対応を検討しましょう。リンク:医療機関等における産業保健活動 としての新型コロナウイルス対策 (令和 2 年 5 月 15 日版)(日本医師会)
確定例については保健所等に報告をし、その後の対応について指示を受ける事となります。なお、濃厚接触者等の把握のために、今朝による確定を待つ間に、発症前の行動歴や接触者について予め把握をしておくと、陽性確定後の対応がスムーズになります。リンク:新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領(2020年4月20日暫定版)(国立感染症研究所)
職場での濃厚接触者の可能性がある職員・従業員については、症状の発症や潜伏期間等からその時点でのウイルスの排出の可能性が低い場合はすぐに自宅待機とする必要はありませんが、感染防止対策をした上で、保健所の指示を待ちます。彼らの不安に対してはその後想定される必要な対策や労務管理上の配慮等について明確に説明をし、また必要に応じて産業保健スタッフ等によるケアをする必要があります。
主治医からのアドバイスに従い、体調を確認しながら職場へ復帰をさせます。退院時(自宅療養・宿泊療養の解除を含む)には他人への感染性は低いが、まれにPCR 陽性が持続する場合があります。医療従事者の復職基準としては、症状の消失および2回の検査陰性が条件となっていますが、退院後(宿泊施設での療養・自宅での療養を含む)2 週間程度は外出を控えることが望ましいので、この期間は在宅勤務もしくは自宅待機を行うことが望まれます。なお復職をする場合、完全に元も体調に戻るまでの間はでフェイスマスクの着用をするなどの医療従事者よりもタイトな感染防止対策の実施が求められています。リンク:新型コロナウイルス情報 企業と個人に求められる対策(日本渡航医学会 産業保健委員会 日本産業衛生学会 海外勤務健康管理研究会)
職場で感染者が出た場合や、擬似症状疑い・濃厚接触者等で職場を離脱する職員・従業員が複数発生した場合の人手不足への対策は、残ったスタッフの安全衛生を守るためにも重要です。業務やシフトの見直し等の対応をしない職員・従業員の負担が際限なく増加する恐れがあります。復帰基準を満たさない段階での復職はかえって職場のリスクを高めることにもなりますので、少ない人数で実施可能な必要最低限の業務を精選し、状況に応じて段階的に業務を縮小して医療提供を継続できるようにするための計画を今後のためにも検討しておくことが望まれます。リンク:Strategies to Mitigate Healthcare Personnel Staffing Shortages(CDC)
リンク:新型インフルエンザ等発生時の診療継続計画作りの手引き 別紙3「当院の受け入れ能力の事前評価」等(日本医師会)
対象施設におけるPPEの使用の最適化や供給計画を作る際に利用できます。リンク:CDCによる個人防護具消耗試算のためのエクセル集計ツールの公開(職業感染制御研究会)
差し迫ったPPE不足の対処方法についてのアイデアを医療従事者に呼びかけ、解決策の例を「ボックス:PPEの保全と管理に関する推奨事項の概要」として紹介しています。
事業所支援
事業所で働く方への支援情報
- 1:事業所・担当者への対応
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以下のリンクに、■労務管理の基本的姿勢(テレワーク支援や雇用調整助成金を活用した休業の活用等)、■職場における感染予防対策の徹底(職場および通勤・外勤における感染予防対策、■風邪症状を呈する職員・従業員への対応について、■新型コロナウイルス感染症の陽性者等が発生した場合の対応、等が示されています。特に、「在宅勤務(テレワーク)の実施が困難な業種・職種についての留意事項」として、「医療機関」「新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養施設」「旅客・貨物運送事業の運転者等」「介護・福祉事業の職員・従業員の感染防止」「保育所等の職員・従業員」「宿泊施設の職員・従業員」の感染防止対策の方針が示されています。
資料として「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト」および「新型コロナウイルス感染症の陽性者等が発生した場合における衛生上の職場の対応ルール(例)」が示されています。 また、感染防止対策の検討にあたって、産業医等の助言を得つつ、妊娠中の女性職員・従業員や、高齢者、基礎疾患(糖尿病、心不全、呼吸器疾患など)を有する方々に対する十分な労務管理上の配慮の必要性について示されています。リンク:緊急事態宣言時に事業の継続が求められる事業で働く方々等の感染予防、健康管理の強化について(厚生労働省)
リンク:新型コロナウイルス感染症の発生及び感染拡大による影響を踏まえた中小企業等への対応について(概要)(厚生労働省)
リンク:新型コロナウイルス感染症の発生及び感染拡大による影響を踏まえた中小企業等への対応について(厚生労働省)
感染の流行期は長期化する恐れがあるため、職場での感染拡大防止対策をしながらの事業継続が求められます。例えば、発熱者が発生した場合にはこれまで以上の自宅待機期間を求められる場合があり、業務のシェアや在宅可能業務の拡大などにより対応をすることが望まれます。このように、感染防止対策はこれまでの職場環境管理や働き方を大きく変えるものですので、業務との調和を図って事業継続への影響を最小限に抑える工夫が必要です。オフィス業務と製造業など、業種・業態により必要な工夫は違いがあります。また、今後の科学的知見や経験知、ワクチンや治療薬の進歩などの変化は今後の働き方にも影響を与えるものであり、適宜対応できるように健康管理の専門職との連携を密にして情報をモニタリングしておく必要があります。リンク:職場における新型コロナウイルス感染症への感染予防、健康管理の強化について(厚生労働省)
リンク:新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン(経済団体連合会)
リンク:遠隔産業衛生研究会から嘱託産業医の皆様に向けての提言(日本渡航医学会・日本産業衛生学会)
ニューノーマルとは新たな状態・常識を指す用語であり、構造的な変化が避けられない状態を意味します。元々はリーマンショックの後に出てきた概念ですが、今回のCOVID-19の流行後にも同様のことが考えられます。今回の感染症流行に伴い、在宅勤務でのネットワーク環境設備や運用上の問題・Web会議の導入、密集・密閉・密接を避けるための換気やデスクレイアウトの整備など様々な課題が明らかになりました。今後も再び感染症の流行などによって同様の事態になることも考えられ、次の危機に対して備えておく必要があります。また、終息するまでは感染症予防を継続して行う必要があり、引き続き対策を講じておかなければなりません。リンク: 新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」(厚生労働省)
今後、流行第2波の到来などにより業務縮小を余儀なくされる可能性があることを想定し、業務継続に必要な人員確保のために、通勤頻度を減らす工夫(テレワークや時差出勤など)や公共交通機関以外を用いた通勤を推奨することと合わせて、職場と自宅の間の距離やその通勤経路に伴うリスクを考慮した出勤体系を想定しておく必要があります。なおその際、職員・従業員間に業務負荷の格差や、出勤による感染リスクへの不安に伴うストレスが発生する場合もあるため、業務負荷の格差を是正する工夫や感染防止対策の徹底などを図り、またこうした計画を予め周知して理解を求めておくことが望まれます。リンク:新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン(経済団体連合会)
リンク:事業継続ガイドライン 第三版(平成25年8月)(内閣府)
リンク:社会福祉施設・事業所における新型インフルエンザ等発生時の事業継続ガイドライン(厚生労働省)
健康診断については雇入時健康診断・一般健康診断・特定業務者健診は令和2年6月末までの延期が許容されています。また、特殊健康診断については、十分な感染防止対策を講じた健康診断実施機関での実施が困難である場合には、令和2年6月末までの間、延期することとして差し支えないとされています。安全衛生委員会の開催については、テレビ電話による会議方式にすることや、開催を延期することなど、令和2年6月末までの間、弾力的な運用を図ることを許容されていますが、開催する際には感染防止対策の調査審議の積極的な実施も期待されています。リンク:新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)(厚生労働省)
職員・従業員が安心して働くことができる環境整備のための支援策が紹介されています。
- 2:職場環境対策
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感染症対策の基本は、ウイルスの飛散を防ぐことと、ウイルスが伝播しない行動をとることにあります。「ウイルスの飛散を防ぐ」ためには、感染症のような体調不良があったり、その可能性がある人との濃厚な接触があったりした場合などに、不要不急であれば勇気を持って「外出をしない」決断をすることが大切であり、またそれを容認する組織の配慮が必要です。また、発症前の数日間など本人の自覚なくウイルスの排出がある恐れもあるので、咳エチケットやマスク着用・手洗いの励行、「3密防止」、社会的距離の確保など「ウイルスが伝播しない行動」をとることを新しい習慣として身につけましょう。
リンク:職場における新型コロナウイルス感染症への感染予防、健康管理の強化について(厚生労働省)
リンク:新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン(経済団体連合会)
その会議開催のメリットと感染のリスクを比較し、不要不急な会議は中止・延期またはオンラインミーティングでの開催を検討しましょう。開催する場合は参加人数を減らし、換気や「3密防止」、手洗いや消毒励行等の感染防止対策をしましょう。参加前の体調が悪い場合は参加できないことをアナウンスしておきましょう。
また、オンラインミーティングでは、参加者への導入支援のほか、事前にアジェンダやゴールを明確にしておくことや、アイスブレイクや参加者の自己紹介などを介してすべての参加者に発言機会を与える、などの配慮が必要です。リンク:新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)(厚生労働省)
リンク:Getting your workplace ready for COVID-19(WHO)
リンク:COVID-19 epidemic and the rise of virtual meetings(World Economic Forum)
飲食の際はマスクを外す必要があるため、発症前2日間程度の潜伏期間中は、本人が気づかないうちに、食事の際の飛沫の飛散が感染源となる可能性があります。まだ市中感染が完全終息していない再開期の時点では、できるだけグループでの食事は避けましょう。また、感染終息期にグループで食事をする際は、正面で向かい合わない、距離を2m程度確保する、使用後は次のグループのために机上をアルコール等で消毒するなどの感染防止対策が必要です。リンク:新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」(厚生労働省)
在宅勤務が可能な作業は在宅で実施しましょう。市中感染が完全に終息していない場合は、例えば以下の配慮が必要です。特に、人口密度が高くなりやすい場所をあらかじめリストアップし、該当する場所での「3密防止」に必要な対策について掲示等で周知しましょう。
<環境への対応>
*居住者の社会的距離の確保(2mの距離の確保、向き合って座らない等)
*可能であれば居室の分散、パーテーションでの仕切り
<人への対応>
*体調確認と有症者の出勤自粛措置
*室内の換気
*在室時間帯のシフト制
なお、室内の気積等から適切な換気量を予測するツールも提供されています(ダウンロードが必要)。リンク:Interim Guidance for Administrators of U.S. Institutions of Higher Education(CDC)
リンク:「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020年5月4日)(新型コロナウイルス感染症対策専門家会議)
リンク:「 新型コロナウィルス感染症対策用換気シミュレータ」(日本産業衛生学会 産業衛生技術部会)
「3密対策」に基づいて居室の人の数を減らすこととあわせて、室内の換気に留意する必要があります。室内の換気は窓及び扉の開放による常時換気が望ましいですが、常時換気ができない部屋(地下の窓がない部屋や、室内の温湿度を一定に保つ必要がある場合)は、断続的な換気(1時間に2回以上(30分に1回以上、数分間程度、窓や扉を全開して空気の入れ替えをする)または機械式換気での外気取り込み量の増加などの対応が望まれます。
また、居室の場所や在室人数によっては犯罪の被害にあうリスクが高くなります。在宅勤務等で室内の密を防げる反面、従業員数が少ないため、換気をしたままでちょっと不在にした際などに、不法侵入や盗難のリスクが高くなります。換気をする場合は室内に誰か滞在すること、居室を不在にする場合には施錠を徹底し、危険物や貴重品等は放置しないように指導をしてください。リンク:感染症流行時の安全衛生活動のヒント(東京大学産業医のサイト)
「3密対策」に基づいて実験室や製造ラインの人の数を減らすこととあわせて、室内の換気に留意する必要があります。室内の換気は窓及び扉の開放による常時換気が望ましいですが、常時換気ができない部屋(地下の窓がない部屋や、室内の温湿度を一定に保つ必要がある場合)は、断続的な換気(1時間に2回以上(30分に1回以上、数分間程度、窓や扉を全開して空気の入れ替えをする)または機械式換気での外気取り込み量の増加などの対応が望まれます。なお、実験室や屋内の製造ライン等におけるドラフトチャンバーや局所排気装置等での換気も無効ではありませんが、これらの局所排気は室内全体の空気の希釈には不十分であることもあるので、全体換気を併用するなど、換気を局所排気装置にのみ依存することは望ましくないことに留意してください。リンク:感染症流行時の安全衛生活動のヒント(東京大学産業医のサイト)
汚染された手から他の箇所への伝播を防ぐために、手洗いを励行します。これと合わせて、職員・従業員間等での汚染の可能性があるシチュエーション(トイレの使用、頻繁に使用される扉等)を予め洗い出し、手が接触しなくても良い方法や定期的な消毒を計画し、また職員・従業員に対しての啓発をすることが必要です。リンク:新型コロナウイルス情報 企業と個人に求められる対策(日本渡航医学会 産業保健委員会 日本産業衛生学会 海外勤務健康管理研究会)
ウイルスに汚染された廃棄物は、自分や家族だけではなく、廃棄物を取り扱う作業者の感染のリスクにもなります。マスク、鼻水のついたティッシュなどはごみ袋がかぶさったごみ箱に捨て、廃棄する際には使い捨ての手袋をして中のごみに直接手が触れないようにして袋を縛ってください。また、使い捨て手袋も同様にごみ袋のかぶさったごみ箱に捨て、廃棄を行った後は石鹸と水でよく手を洗ってください。リンク:新型コロナウイルス感染症に係る廃棄物対策について取りまとめた資料(環境省)
手洗いと環境中の消毒により、手と共用物を介しての接触感染を予防することが重要です。手洗いが最も重要ですが、共用物を介して複数人にウイルスが広がる可能性があるため、以下のポイントを押さえ、職場でルールやマニュアルを作成し、必要な共用物について定期的に消毒しましょう。 ①できる限り物の共用を避ける(マウス・キーボード・イヤホンマイク・実験用保護具など) ②共用を避けられないものは、「使用後」に確実に消毒を行う(ドアノブ・スイッチ・実験器具など) ③消毒は、アルコール(70-83%程度)・次亜塩素酸ナトリウム・効果ありの報告がある市販薬等で、適切な保護具(手袋・マスク・ゴーグル等)を用い「拭取消毒」(噴霧消毒は×)を行う。③感染者がいた場合の環境消毒は、②に加え、使い捨てガウンを使うとともに、作業時に着ていた上着・ズボンなどは消毒作業後袋にいれ密閉し、その後洗濯する。リンク:Clean and disinfecting your facility(CDC)
リンク:新型コロナウイルス対策 身のまわりを清潔にしましょう。(厚生労働省)
リンク:新型コロナウイルス感染症情報(日本渡航医学会・日本産業衛生学会)
リンク:新型コロナウイルスに有効な界面活性剤を公表します(経済産業省)
手洗いと環境中の消毒により、手と共用物を介しての接触感染を予防することが重要です。特に、手洗いは最も基本的な対策です。手洗いの重要性とその具体的方法を、自分自身と所属組織両方で定期的に確認しましょう。石鹸+流水手洗いが最善ですが、流水手洗いだけでも手に付着したウイルス量はある程度減少します。手洗いは1日10回前後必要で、適切なタイミングは、「出勤・登校後、トイレ後、食事前後、共用物を使う前後、外出後、会議等のイベント集合後、帰宅後」です。どうしても手洗いが難しい場合、補助的にアルコール消毒剤を使って手を消毒することもよい取り組みです。いずれの場合も手が荒れやすくなり、ウイルス残存リスクがあがりますので、手洗い・消毒後は、ワセリンやハンドクリームを使った手の保湿にも心がけましょう。リンク:新型コロナウイルス感染症情報(日本渡航医学会・日本産業衛生学会)
リンク:When and How to Wash Your Hands(CDC)
リンク:Clean hands protect against infection(WHO)
テレワークは長時間労働になりがちなことや、適切ではない作業環境に伴う労災の可能性、機器や環境の準備にかかる費用負担、情報セキュリティ対策、業績評価などに起因する問題など、テレワーク導入に際しての注意点が解説されています。リンク:テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン(厚生労働省)
リンク:情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン(厚生労働省)
在宅テレワークの作業環境管理・作業管理
- 3:患者・疑似例が発生した時の対応(症例対応)
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出勤にかかる条件として、「発熱などの風邪の症状があるときは、ご本人の体調回復のためおよび周囲への感染拡大の防止を目的に、出勤しないことを推奨する」「咳などの症状がある場合、飛沫感染・接触感染による対処をする。発熱がなくても呼吸器等の自覚症状がある場合は出勤しないことが推奨されるが、出勤が必要な場合は感染拡散予防のための対策を実施し、対策が困難な職務などの場合には、出勤しないことが推奨される」などが示されています。なお、最近の更新では「発熱や風邪症状を認める場合の基本的な考え方として、 常に新型コロナウイルス感染症の可能性を念頭にした対応が求められること、新型コロナウイルス感染症との診断に至らなかった場合(PCR検査陰性、医療機関を 受診しなかった場合を含む)でも、新型コロナウイルス感染症を完全に否定することはできないこと、最近の感染拡大の状況を鑑みると、診断に至っていない発熱や風邪症状については、 新型コロナウイルス感染症の確定例と同じ対応を行うべきである」と提言されています。
リンク:新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)(厚生労働省)
リンク:新型コロナウイルス情報 企業と個人に求められる対策(日本渡航医学会 産業保健委員会・日本産業衛生学会 海外勤務健康管理研究会)
「発熱や呼吸器症状、不安がある時などの対処として、かかりつけ医がいる場合といない場合の対応がフローチャートで示されています。どちらの場合でも、受診をする前にはまず電話で相談をすることとされています。リンク:新型コロナウイルス感染症にかかる相談窓口について(東京都保健福祉局)
「疑似症患者」とは、「臨床的特徴等から新型コロナウイルス感染症が疑われ、新型コロナウイルス感染症の疑似症と診断された者」を指す、とされています。
「濃厚接触者」とは、「患者(確定例)」の感染可能期間に接触した者のうち、次の範囲に該当する者である、とされています。
・ 患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった者
・ 適切な感染防護無しに患者(確定例)を診察、看護若しくは介護していた者
・ 患者(確定例)の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者
・ その他: 手で触れることの出来る距離(目安として 1 メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」と 15 分以上の接触があった者(周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断する)。
なお、「患者(確定例)感染可能期間」が、4/20日の改定により「新型コロナウイルス感染症を疑う症状を呈した 2 日前から隔離開始までの間」と規定されました。リンク:新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領(2020年4月20日暫定版)(PDF)(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
濃厚接触者は必ずしも自宅待機の対象ではないが、以下のことに留意することが示されています。
○ 「濃厚接触者」自身の取り組みについて
(咳エチケット及び手洗い徹底の指導、常に健康状態に注意を払う、不要不急の外出はできる限り控える、公共交通機関の利用は避ける、外出時の感染予防策を指導)
○ 自宅待機の際の本人及び同居人の注意点
○ 「濃厚接触者」に児童生徒等がいる場合の対応リンク:新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領(2020年4月20日暫定版)(PDF)(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
リンク:新型コロナウイルス情報・企業と個人に求められる対策(日本渡航医学会 産業保健委員会・日本産業衛生学会 海外勤務健康管理研究会)
リンク:Prevent the spread of COVID-19 if you are sick(CDC)
「職員・従業員を休ませる場合の措置」として、「使用者の責に帰すべき事由による休業」への該当の是非により、休業補償の取り扱いは異なります。条件による違い(感染例、感染疑い例、発熱等による自主休業事例における休業手当の取り扱い、年次有給休暇と病気休暇の取り扱い、特別休暇の導入等)について解説されています。リンク:新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)(厚生労働省)
・主治医からのアドバイスに従い、体調を確認しながら職場へ復帰をさせる。
・退院時(自宅療養・宿泊療養の解除を含む)には他人への感染性は低いが、まれにPCR 陽性が持続する場合がある。退院後(宿泊施設での療養・自宅での療養を含む)2 週間程度は外出を控えることが望ましいので、この期間は在宅勤務もしくは自宅待機を行うこと、と示されています。リンク:新型コロナウイルス情報 企業と個人に求められる対策(日本渡航医学会 産業保健委員会・日本産業衛生学会 海外勤務健康管理研究会)
リンク:Steps to help prevent the spread of COVID-19 if you are sick(CDC)
次の1)および2)の両方の条件を満たすことなどが示されています。
1) 発症後に少なくても8日が経過している
2) 薬剤*を服用していない状態で、解熱後および症状**消失後に少なくても3日が経過している
*解熱剤を含む症状を緩和させる薬剤
**咳・咽頭痛・息切れ・全身倦怠感・下痢などリンク:新型コロナウイルス情報 企業と個人に求められる対策(日本渡航医学会 産業保健委員会・日本産業衛生学会 海外勤務健康管理研究会)
「原則として、退院基準と同様の基準により、宿泊療養又は自宅療養を解除するものとする。ただし、宿泊療養中又は自宅療養中の軽症者等に PCR 検査を実施する体制をとることにより、重症者に対する医療提供に支障が生じるおそれがある場合には、宿泊療養又は自宅療養を開始した日から 14 日間経過したときに、解除することができることとする。その際、当該 14 日間は、保健所(又は保健所が委託した者)が健康観察を実施し、症状に大きな変化がある等の場合は、医師の診察を受け、必要な場合には入院することとする」と示されています。リンク:新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養及び自宅療養 の対象並びに自治体における対応に向けた準備について(厚生労働省)
リンク:感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律における新型コロナ ウイルス感染症患者の退院及び就業制限の取扱いについて(厚生労働省)
COVID-19陽性者の介護をした家族や介護者は14日間の健康観察のための自宅待機をすべきである、とされてます。したがって、患者である家族よりも自宅待機期間が長くなることがあります。
自宅待機中の注意点(家族と居室を分けること、手洗いの励行、タオル等を共用しない)などの紹介と、体調変化時にはまず電話で医療機関等にコンタクトを取ることなどの注意点、また自宅待機解除の目安について書かれています。CDC版は、ポスターバージョンもあります(日本語対訳表作成中)リンク:ご家族に新型コロナウイルス感染が疑われる場合 家庭内でご注意いただきたいこと~8つのポ イント~(厚生労働省)
リンク:prevent a spread of COVID-19if you are sick(CDC)
リンク:What to Do If You Are Sick(CDC)
「復帰する職員・従業員が医療機関に「陰性証明書や治癒証明書」の発行を求めたり、会社が復帰する職員・従業員に「陰性証明書や治癒証明書」の提出を指示したりするなど、診療に過剰な 負担がかかる要求は行わないこと」と明記されています。リンク:新型コロナウイルス情報 企業と個人に求められる対策(日本渡航医学会 産業保健委員会・日本産業衛生学会 海外勤務健康管理研究会)
- 4:リモート活動とその支援
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新型コロナウイルス感染症が拡大し、医療機関の受診が困難になりつつあることに鑑みた時限的・特例的な対応として、電話や情報通信機器を用いた診療や服薬指導等の取扱いについて通知されました。初診から電話や情報通信機器を用いた診療を実施する場合の条件や留意点、既に対面で診断され治療中の疾患を抱える患者への対応の留意点、処方箋の取扱い、実施状況の月単位での報告等について示されています。なお、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」でのオンライン診療を実施するための研修受講義務については、感染終息までは猶予とされました。また、当該医師が電話や情報通信機器を用いた診療により診断や処方を行うことが困難であると判断し、診断や処方を行わなかった場合において、対面での診療を促す又は他の診療可能な医療機関を紹介するといった対応を行った場合は、応招義務に違反するものではない、とされています。
リンク:オンライン診療の適切な実施に関する指針(PDF)(厚生労働省)
リンク:オンライン診療の適切な実施に関する指針(ホームページ)(厚生労働省)
リンク:新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて(厚生労働省)
労働安全衛生法における「面接指導」を、情報通信機器を用いてする場合の注意点について記されています。事業場や職員・従業員の事情をよく知る産業医が、双方のプライバシーの確保などの環境条件が整った環境下において実施する等の条件のもと、情報通信機器を用いた面接指導の実施が可能としています。リンク:情報通信機器を用いた労働安全衛生法第 66 条の8第1項及び第 66 条の 10 第3項の規定に基づく医師による面接指導の実施について(基発0915 第5号平成27年)(厚生労働省)
リンク:「遠隔産業衛生研究会から嘱託産業医の皆様に向けての提言」第一版(日本産業衛生
学会遠隔産業衛生研究会)
事業所で直接面談をすることが困難な場合(双方への感染の可能性、自宅待機などで出社していない)には、面談の延期という選択肢以外に、動画通信システムによる面談という選択肢があります。オンライン会議室は、個人でのID取得により、利用時間等の一定条件下であれば、無料での利用が可能です。なお、先方も同じアプリケーションで対応できる必要があることや、セキュリティの高さについてはキャリアにより差があるようですので、使用者の責任において実施する必要があります。使用に際しては、自宅や会議室等の場所で、マイク付きイヤホン等を用いて、他人に話し声が聞こえない環境で実施することが望まれます。特にマイク付きイヤホンを用いないと、PCやデバイス内での反響によるハウリングにより聞こえにくくなることがあります。
【ツール例】
・Zoom(Zoom Video Communications, Inc.)
・google-hangout(google)
・Webex(CISCO)
・LINE電話(LINE)
・MS-teams(Microsoft)
・Skype(Microsoft) - 5:流行後期・終息後の支援
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感染症流行の終息後には滞っていた業務なども再開となり、一気に業務が増加することが予想されます。過重労働によって脳・心臓疾患の発症のリスクが増加し、うつ病などの精神疾患を発症することもあります。過重労働対策として、まずは事業所全体として過重労働が起こりやすい状態であることを共有してください。また、他にも「不規則な勤務形態になりすぎないよう夜勤や交替勤務の形態に気を配る」「出張を行うような場合COVID-19対策でストレスがかかりやすいことが予想されるため、回数が増えすぎないようにする」「本人の勤務形態や勤務時間がわかるシステムを整え、必要に応じて産業医や産業保健スタッフにすぐに連携をとれるようにラインケアの重要性を管理職に認識させる」といったことを行ってください。脳・心臓疾患の発症リスクとして高血圧や糖尿病といった生活習慣病も挙げられます。生活習慣病がある場合には定期的な医療機関の受診を忘れないようにしてください。
パンデミックのような非日常下では、人は短期的には不適応や過適応を起こす可能性が高まります。感染症に対する不安も人によって異なり、軽視することはできません。更に、従業員それぞれの置かれた異なる背景(家庭・経済的状況等)や、職場内コミュニケーション質・量の変化が加わって、結果的に業務量格差が生じることが想定されます。指示と報告の齟齬や、人間関係の悪化も起こりえます。①ストレスが増え不安が増すことは自然なことです。それぞれの不安を認め合いましょう。②Web会議やチャットなども利用して、いつもより意識的にコミュニケーションの質や量を確保し、業務量格差を是正しましょう。③不調が生じたら、積極的に職場内で共有しましょう。また上司は積極的に1対1で部下の不調有無を確認しましょう。長引く不調(目安2週間以上)は、早期に相談機関や病院に繋がることが重要です。リンク:こころの耳「新型コロナウイルス感染症対策(こころのケア)」(厚生労働省)
リンク:How to Cope with Job Stress and Build Resilience During the COVID-19 Pandemic(CDC)
リンク:「いまここケア」(東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野)
在宅勤務や運動・移動の自粛などで外出の機会が減少していることから、例年であれば6月中に実践できる「暑熱順化」ができないことによる、熱中症の可能性があります。また、令和2年度の夏は例年よりも暑いとの長期予測が出ていますので、日常的な熱中症予防と合わせて、業種業態によってはリスクアセスメント等を活用した予防的対策が必要です。リンク:熱中症予防対策のためのリスクアセスメントマニュアル(製造業向け)(PDFダウンロード可能)(中央労働災害防止協会)
ツール集
感染症対策や、仕事と対策の両立などの啓発に使えるツールを紹介します。
(提供:東京大学産業衛生室)
※クリックすると各ページにジャンプします。
・感染予防 キホンのキ
・室内換気の方法
・消毒の方法と注意点
・体調不良者発生時の対応
・自宅待機の際の注意点
・在宅勤務の健康リスクと対応
・職場の感染症対策の基本(厚生労働省チェックリストの活用)
・厚生労働省チェックリスト
・ILOチェックリスト
・感染リスクが高い業務のリスクアセスメント
・行動調査シートと体調確認シート