第1回 定例記者会見(令和元年7月9日開催)
1.3期目の東京都医師会長就任にあたり
<尾﨑 治夫 東京都医師会長>
3期目の東京都医師会長就任にあたり
3期目の会長就任にあたり「引き続きタバコ対策、フレイル予防、成人の疾病予防と高齢者の介護予防に力を注ぐ。また成育基本法が成立したことにより、 妊娠から出産、成人期までつながる、切れ目のない医療を全世代にわたって支援し、東京の医療を支えていく医師会を目指すとともに、東京から日本を変えていくという意気込みを持ち、さらに来年の東京オリンピック・パラリンピック開催に伴う対策について万全を期する」と抱負を語った。
全世代にわたって都民の医療を支える医師会を目指す
現在、多くの課題について検討しているが、具体化しつつある「周産期メンタルヘルス(うつ病)対策」 、 「学校医による健康教育」について説明した。
「妊産婦が自殺する原因として、精神疾患(うつ病)が絡んでいることが多く、妊婦が安心して出産するための対策として、メンタル面のサポートは精神科医、妊娠中の病気等は産婦人科医、出産後は小児科医と連続したフォローをしていく連携体制を構築していきたい。そうすることで、出産前後の母親の不安などが緩和され、育児放棄や児童虐待の防止につながることになる」と述べた。
また、学校教育の中で健康教育をさまざまな形で充実させ、しっかりとしたヘルスリテラシーを身につけてもらうことがこれからの時代には必要である。「がん教育は2020年までにすべての中学校・高校で医師等の外部講師が授業を実施、性教育については、高校等で産婦人科医が授業を実施するとともに、中学校では学習指導要領を超えた内容でモデル授業を行っている。
将来的には全都的に展開していきたいが、 都内の小・中・高校は約2600校、児童生徒は約126万人である。専門医だけでは対応が困難であるため、学校医の先生方に活動を担っていただき、授業を通じて命の大切さを伝え、医学的に正確な情報を教えることで、子どもの頃からヘルスリテラシーを培ってもらいたい」と述べた。
東京から日本を変えていくという視点を持って活動する
高齢者の運転による交通事故が発生し問題となっている。当初、認知症がクローズアップされていたが、高齢による運動技能、身体機能の低下等による要因が事故を引き起こす場合がある。
多面的に高齢者の運転を考えるため、 内科医、精神科医、眼科医、弁護士、モータージャーナリストなど多職種から意見を聞き、検討する会「高齢社会における運転技能及び運転環境を考える会」を立ち上げることとした。会では健康寿命の延伸のために、高齢の運転者が長く運転するための技能サポートや車の安全機能(自動ブレーキ等の整備)対策、免許返納後の対応策を講じることなど、行政にも協力を得るとともに改善策を考えていく。
地域医療の中ではかかりつけ医が重要なキーマンであり、日医かかりつけ医研修制度により最新の医療情報を熟知し、身近で頼りになる医師を養成している。看護職においても専門的な知識が必要であり、かかりつけ医と一緒に働くパートナーとして、 医療・介護・福祉の幅広い知識を兼ね備えた看護職も必要と考え、「医療介護等人材検討委員会」を設置し、新しい職種の制度について検討していくこととなった。
2.東京オリンピック・パラリンピックに向けてのワクチン対策について
~侵襲性髄膜炎菌感染症、麻しん、風しん等~
<鳥居 明 東京都医師会理事>
東京オリンピック・パラリンピック開催に伴い訪日外国人旅行者数は約4000万人、1日の来場者は92万人と予想されている。WHOは一定期間、限定された地域において同一目的で集合した多人数の集団をマスギャザリングと定義しているが、オリンピック等はまさしくマスギャザリングであり、感染症がまん延する「過密」と「移動」という2つの条件が満たされる。
このような条件下で注意が必要な疾患は、空気感染し感染力が強い麻しん、妊娠中に感染すると胎児に影響を及ぼす風しん、病状の進行が早く重症化する侵襲性髄膜炎菌感染症等であり、感染症が発生した場合、拡大して都民等の健康に影響を及ぼすことが予想され、大会運営に支障が生じる可能性がある。
「麻しん・風しん・侵襲性髄膜炎菌感染症はワクチンで防ぐことができるが、発生予防とまん延防止には全国レベルでの対策が必要である。感染症対策は喫緊の課題と捉え、本会では日本医師会、東京都に対してワクチン接種の啓発等を要望している」と述べた。