ヘルスリテラシーLesson『子育て』 篇
子育てに関するヘルスリテラシーを向上させて、
子どもの健康を守りましょう。
小児科は何歳まで?
子どもの身体は、
大人の身体のミニチュアではありません
子どもは胎児期から18歳頃まで身体が大きくなり、機能面でも発達していきます。子どもの身体は常に変化しており、その変化についてよく知っているのが小児科医です。
身体が発展途上にある子どもは、それぞれの発達段階特有の病気を起こしやすく、同じ病気でも大人とは異なる症状が現れることも。そのため、子どもへの医療と大人への医療には違いがあるのです。
医療機関を初めて受診する際、一般的に15歳以下であれば小児科、高校生になる16歳頃から内科を受診し始めることが多いようです。
しかし、16~18歳は身体もまだまだ成長発達の途中。加えて、その年代の多くは高校生で、小児科は学校との連携にも慣れていることから、高校生でも小児科で診察することが増えてきました。
小児科は、保護者のかかりつけ医でもあります
一般的に、小さな子どもほど熱が出る、お腹が痛くなるなど病気にかかることが多いほか、転んだり、高いところから転落したりとよくケガをします。そのたびに保護者は、「何科を受診したら良いの?」と悩みますが、小児科医は子どもの全身を診る総合医。
診察して、より専門的な医療が必要と判断した場合は、然るべきところを紹介する「ゲートキーパー」の役割も担っています。迷ったら、まず小児科を受診しましょう。
また、最近は核家族化が進み、子育ての悩みを相談できる人が近くにおらず、ネットに溢れる情報に惑わされ 、一人で悩みを抱え込んでしまう保護者も多く見られます。
小児科は「保護者のかかりつけ医」でもあるので、子育てに悩んだ時も相談してみてください。
え、うちの子が食物アレルギー?
意外と多い?食物アレルギーの子どもたち
食物アレルギーとは、特定の食べ物や成分に対して、体の免疫機能が過剰に反応することです。皮膚の赤み、じんましん、呼吸困難、ときには生命にかかわる重い症状「アナフィラキシー」が起きることもあります。
最近では乳児の約10%に食物アレルギーがあるというデータ*があり、乳児期にアレルギーの原因となる食べ物として、卵・小麦・牛乳が多く報告されています。
また、小学生以上ではエビ・カニなど甲殻類に対するアレルギーも増加。そのほか、野菜・果物・肉・魚などでもアレルギー症状が出る場合があるので、離乳食で初めて口にする食べ物は一度にたくさん与えず、少量ずつゆっくりと慣らしていくことが大切です。
*厚生労働省 政府レポート「食品のアレルギー表示について」より
「食べずに治す」から、「食べて治す」時代へ
これまで、食物アレルギーは食べ物の成分が腸から体内に吸収されて発症すると考えられ、症状が出たら食べさせない「除去食」が行われてきました。
しかし近年、食物アレルギーは調理をする際、空気中に飛び散った食べ物のエキスが皮膚の表面に付着することで起きる可能性が示唆されています。このことから、新生児の頃から丁寧にスキンケアをすることで予防する試みが行われています。
さらに現在では、皮膚はアレルギーを作るほうに働き、腸はアレルギーを治すほうに働くことがわかってきました。そのため、原因となる食べ物を「食べて治す」治療法が行われるようになりました。原因となる食物を極少量から摂り続けることで、身体が慣れ、症状が出なくなるのです。
しかし、摂る量が多かったり体調が悪かったりするとアナフィラキシーを起こすことも。治療の際は必ず医師に相談し、指示を守った調理の仕方で決められた量を食べさせるようにしましょう。
定期ワクチン、そんなに大切?
予防接種はタイミングが重要
赤ちゃんは、一般的に0歳の間に6種類、のべ15~16回もの予防接種を受けます。接種は適切なタイミングで受けることが大切ですが、スケジュールを覚えておくことは 、とても大変。母子手帳や予診票のほか、自治体から配布されたリーフレットなどで、接種時期を確認しておきましょう。
保護者の中には、予防接種への不安から「受けさせたくない」と思う方もいるようです。しかし、実際に病気にかかった時の重症度や合併症の頻度・程度を比べると、予防接種の副反応は軽微なものです。
また、予防接種は体温が37.5°C以上の時や、風邪などの症状が悪くなっている時、ワクチンの成分に対してアレルギーがあり重い反応を引き起こす場合は接種できません。鼻水や咳が出ていても、症状が良くなっていたら接種できます。
「同時接種」は、
保護者と赤ちゃんの負担を軽くする
0歳児が受けるワクチンは、ロタウイルス以外すべて注射です。以前は1回の受診で1種類1本だけしか注射できず、予防接種のために何度も病院に通う必要がありました。
しかし、現在は1回の受診で複数のワクチンを接種する「同時接種」ができます。同時接種は効率よく予防接種を進められるうえ、赤ちゃんが痛くて怖い思いをする回数も減らせます。
また、海外では以前から行われており、その安全性は研究で明らかになっています。「でも、やっぱり心配」という方は、かかりつけ医に相談してみてください。
子どもの異変!救急車を呼ぶべき?
子どもの体調は、刻々と変わります
「さっきまで元気だったのに…」。子どもは急に熱を出したり、吐いたり、下痢をしたり、ケガをしたりします。慌てず、適切に対応するためには、まず家から徒歩や車で10分ほどで行ける「かかりつけ医 」を持っておくと安心です。
平日でも夕方になったら、かかりつけ医の診療が終了する前に、子どもの体調をチェックする習慣をつけ、気になる症状があったら診療時間内に受診してください。
注意したいのは、金曜日の夕方や土曜日の午前中。日曜・祝日は多くのクリニックが休診です。普段から休日や夜間に受診できる場所を調べておくといいでしょう。さらに、喘息などの基礎疾患がある場合は、どんな症状が出たら救急受診をすべきか、かかりつけ医に相談しておきましょう。
休日や夜間に子どもが体調を崩して病院に行くべきか迷った時は、 「こども医療電話相談事業 #8000」 にご相談を。小児科医や看護師が、適切な対処の仕方のほか、受診する病院などについて教えてくれます。
救急を受診するのは、どんな時?
以下のような時には、救急外来を受診しましょう。
・生後4か月未満の赤ちゃんが 38°C以上の熱を出した
・初めての「ひきつけ」(痙攣発作)
・痙攣が1分以上続いている
・短時間に何回も吐く
・ヒューヒューゼーゼーして苦しそうな呼吸をしている
・頭から転落した
・30分以上止まらない鼻血
・長時間泣き止めないか出血が止まらない外傷
見過ごしちゃダメ!小児の肥満
「BMI」の子ども版、「カウプ指数」とは?
子どもの成長は喜ばしいもの。しかし、「うちの子、周りの子と比べて太り気味では?」など発育状況に不安を抱く保護者の方も多いのでは。
その時、身長と体重のバランスを測る指標となるのが「カウプ指数」。大人の「BMI」のようなものです。乳幼児のカウプ指数は15~18が「標準」で、15未満を「痩せ」、18以上を「肥満」と判定します。
また、最近注目されているのが、カウプ指数が6歳頃から上昇する状態を指す「Adiposity rebound(アディポシティ・リバウンド)」という言葉。この状態が6歳未満で起こると、将来、生活習慣病になる可能性が高まるといわれています。
「子どもだから少しくらい大丈夫」と放っておかず 、しっかり対処する必要があります。
適切な体重を維持するために
コロナ禍の外出自粛によって肥満気味の子どもが増えています。一方、「痩せたい」という願望や、いじめなどによるストレスのため拒食症となり、極端に体重が減る子どもも増えています。体重の大きな減少はあらゆる臓器の働きを低下させ、ときには生命の危険を招くこともあるため注意が必要です。
適切な体重をキープするには、1日3食を規則正しく、適量摂ることが大切です。欲しがるからと多量のお菓子やジュースを与えることは避けましょう。
また、受験を控えた子どもに高カロリーの「夜食」を与えることは、結果として不健康な状態につながります。寝る前の2~3時間は高カロリーの食べ物や飲み物を控えてください。
外遊びやスポーツなどで1日1~2時間ほど身体を動かすことも重要です。外遊びは、肥満防止だけでなく近視の予防やコミュニケーション力の向上にも役立ちます。身体だけでなく心の発達のためにも、ぜひ積極的に取り組ませてください。