産業医の手引き<ダイジェスト>
9章:年代、性別、疾病、障害に応じた配慮

4 障害者の雇用に際して知っておきたいこと

山本 健也

要旨

Ⅰ.はじめに

長引く経済の低迷、少子高齢化による労働力の減少などを背景に、企業を取り巻く雇用環境が大きく変貌しているなかで、障害者雇用を取り巻く環境も大きく変わりつつある。

Ⅱ.統計でみる障害者雇用

2022(令和4)年に民間企業で雇用されている障害者数は前年より1万6,172.0人多い61万3,958.0人となり19年連続で過去最高を更新し、実雇用率も前年から0.05ポイント上昇した2.25%であった。特に精神障害者の伸び率が大きい(対前年比11.9%増)。また、障害者雇用促進法により障害者を雇用する義務がある「43.5人以上の従業員を雇用する民間企業」について、法定雇用率を達成している企業の割合は前年から1.3ポイント上昇して48.3%であった。

Ⅲ.コロナ禍と障害者雇用

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)蔓延の影響は障害者雇用にも影響を与え、コロナ禍拡大期を含む5年間(2018~2022年)の障害者実雇用率、雇用者数及び雇用率充足企業の割合の平均の伸び率は、コロナ禍前の5年間(2013~2017年)に比して下回った。また、それまで障害者の就労環境を支援していたさまざまな仕組みが機能しなくなるなどの問題も発生した。事業者は「障害者は個別の困りごとを持つ」ということを念頭に、時勢や環境の変化に取り残されないよう、そのニーズを適切に収集してサポートをする必要がある。

Ⅳ.障害者雇用を取り巻く近年の状況の変化

近年の障害者雇用を取り巻く環境変化として「ダイバーシティー&インクルージョン(D&I)」さらにはエクイティ(公正性)という概念を加えた「ダイバーシティー エクイティ&インクルージョン(DE&I)」「障害者雇用促進法の改正による法定雇用率の引き上げ」「改正障害者差別解消法の施行に伴う合理的配慮の民間事業場での義務化」「SDGs目標8『いきがいも経済成長も』」などが注目されている。

企業にとってこれからの障害者雇用は、生産性を求めた人材活用としての戦略性を備えた視点が重要である。障害者雇用対策を起点とした取り組みが、障害のない構成員も含めた「すべての従業員の生涯働けるためのインフラ整備」につながることが期待される。

法令・制度等

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)
障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)
厚生労働省「障害者雇用状況の集計」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33335.html
外務省「JAPAN SDGs Action Platform」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/statistics/goal8.html

キーワード

合理的配慮、法定雇用率、ダイバーシティー・エクイティ&インクルージョン、SDGs

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