産業医の手引き<ダイジェスト>
9章:年代、性別、疾病、障害に応じた配慮

1 高年齢労働者に対する労働衛生対策

西埜植 規秀

要旨

Ⅰ.高年齢労働者の活躍と配慮すべきこと

少子高齢化が急速に進展し人口が減少するなかで、経済社会の活力を維持するため、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できて、活躍できる環境の整備が求められている。

2021(令和3)年に高年齢者雇用安定法が改正され、65歳までの雇用確保(義務)に加え、65〜70歳までの就業機会を確保するための努力義務が事業者に求められている。2020(令和2)年の就業者全体のうち60歳以上の占める割合は21.5%となっており、年々高年齢労働者は増加傾向を認める。人は加齢とともに生理機能、特に心肺機能や筋力の低下がみられ、その他、視力・聴力などの五感に関する機能に加えて、平衡感覚、神経反射機能などさまざまな機能低下が生じる。高齢になると急な変化もあり個人差も大きい。このようなこともあり、課題となっているのが高年齢労働者の労働災害発生の多さである。2020(令和2)年の労働災害による休業4日以上の死傷者のうち60歳以上の労働者が占める割合は26.6%に及んでおり事業者の課題としても大きい。このような背景により、高年齢労働者が安心して安全に働ける職場環境づくりや労働災害予防、高年齢者の健康づくりを推進するため、2020(令和2)年に「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)」が策定された。このガイドラインは、職場環境の改善や健康・体力の状況把握などについて、事業者と労働者に求められる取組みを示したものとなっている。

Ⅱ.「エイジアクション100」の推進

企業における高年齢労働者の安全と健康確保のための環境改善の取組みを促進するために、中央労働災害防止協会により「高年齢労働者の安全と健康確保のための職場改善ツール」として、「エイジアクション100」が開発された。

エイジアクション100は9つの大項目とそれに連なる中項目、小項目からなり、合計100項目の取組みを推奨している。内容としては、5管理(総括管理、作業環境管理、作業管理、健康管理、労働衛生教育)に加え、勤労条件や労働災害防止対策が入っており、これを盛り込んだチェックリストを活用することで、事業場の現状を確認し課題を洗い出したうえで、実施できていない内容から優先度を検討できるものになっている。高年齢労働者に適した職場環境や健康施策の検討を行ううえでも大変参考になる。

法令・制度等

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)
高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)
エイジアクション100 中央労働災害防止協会(https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/age_action_100.pdf)

キーワード

高年齢労働者

本篇ダウンロード(医師会員向けページ)

本篇PDF

PAGE TOP