産業医の手引き<ダイジェスト>
8章:産業保健活動で押さえておきたい重要事項

6 医療機関における作業環境管理の実際

久保田 大介

要旨

Ⅰ.概要・法規制について

医療機関ではさまざまな化学物質を日々使用しているため、適切な労働衛生についての管理を行い作業者へのばく露の低減に努める必要がある。化学物質の規制としては、有機則・特化則などの作業環境測定や化学物質のリスクアセスメントの他に化学物質体系の見直しにより個別規制から自律的管理への移行が検討されているため、リスクアセスメント対象物にかかわる事業者への責務が重くなることが考えられる。本稿では作業者への化学物質のばく露の低減を目的として、医療機関で使用頻度の高いホルムアルデヒド及びエチレンオキシドを中心とした作業環境管理方法を紹介する。

Ⅱ.ホルムアルデヒド作業における管理について (管理濃度:0.1ppm)

①病理組織切出し・撮影台に設置されているプッシュプル型換気装置や局所排気装置の吸引口を塞ぐことがないように作業を行う必要がある。②排気装置が空調などの気流影響を受けないようにビニールカーテンなどを設置して気流を確保する。③洗浄作業台に設置されている排気装置において吸排気口付近を資材などで塞がないように作業を行う必要がある。

Ⅲ.エチレンオキシド作業における管理について (管理濃度:1ppm、 女性則対象)

①滅菌設備にボンベタイプを使用する現場では、ボンベの危険性(高圧ガス・重量物・設置場所・保管温度)やレギュレーターなどの取り扱い・管理について定期的に確認をする必要がある。②エアレーション時間について、滅菌物の材質や詰め込み量によってはガスが残留する可能性があるため、業務上支障がなければ規定時間以上のエアレーションを行うことが望ましい。③滅菌設備の排気について、扉パッキン・排気チューブ・接続部の劣化によって、室内にガスが拡散する可能性がある。排気口の外部排出部が資材などで塞がれることや、空調室外機などの関係で、内部に再侵入する可能性もあるため、定期的な点検をする必要がある。

Ⅳ.有機溶剤など他物質の管理・換気対策・保護具の管理について

①薬剤の入れ替え・補充作業時(短時間作業)では、窓・出入口の開放など換気のよい状態で作業を行う。②部屋が狭隘・換気状態が悪い状態で作業を行う必要がある場合は、保護メガネ・保護手袋・防毒マスクなどの着用をする。使用においては、顔面との接着部の位置や締め紐の位置、締め方を確認し、着用後に空気の漏れ込みがないことを確認する必要がある。③排気装置の制御風速が基準値を満たしているか定期点検する。資材やほこりなどで吸排気口が塞がれていないか、他の空調設備などで気流が乱されていないかなどを確認する。

法令・制度等

安衛法令・規則、有機則、特化則、女性労働基準規則、作業環境測定法
医療機関における作業環境管理(座談会). 作業環境. 2022; 43(3):5-21

キーワード

化学物質、ホルムアルデヒド、エチレンオキシド、作業環境、局所排気装置、プッシュプル型換気装置、病理組織切出し作業、滅菌設備、保護具、検知管

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