産業医の手引き<ダイジェスト>
8章:産業保健活動で押さえておきたい重要事項

4 労働安全衛生マネジメントシステムの概要とISO45001認証のメリット

斉藤 信吾

要旨

Ⅰ.労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS)の概要

 OHSMSとは労働災害を防止し、健康で安全に働くことができる職場を形成するため(1)〜(7)のようなさまざまな活動を組織的、体系的、継続的に進め、確実に効果を得る手法である。

(1)安全衛生方針:安全衛生方針とはOHSMSの基本理念であり、トップの安全衛生に関する姿勢や考え方を文書として明確にすること。

(2)課題の把握と安全衛生目標:安全衛生方針を踏まえ、事業場が一定期間内(多くは1年間)に達成すべき安全衛生上の目標を設定する。安全衛生目標を設定するためには、事業場が取り組むべき課題を事前に把握する必要がある。目標には実施目標と達成目標がある。

(3)安全衛生計画:安全衛生目標を達成するための活動内容、実施時期、責任者などを具体的に定める。

(4)安全衛生計画の実施と進捗管理:計画の実施に際しては、計画どおりに実施されているかの進捗管理、及び目標の達成状況の管理も必要となる。

(5)労働災害の再発防止:労働災害が発生した場合に備えて再発を防止するための手順を定めておく。万が一、労働災害が発生した場合は、確実に再発防止の処置を行う。

(6)内部監査:上記(1)~(5)の運用・活動内容を評価し、課題を改善につなげる。

(7)マネジメントレビュー:働く人の健康と安全の確保はトップの責務であること、また、OHSMS運用に必要な経営資源に関する権限を有することから、トップ自らがOHSMSを見直し、改善につなげる。

Ⅱ.OHSMSにおける産業医の役割

OHSMSを運用している事業場には、健康管理・健康づくりに関する活動はOHSMSとは別に運用されている事業場も少なくない。
多くの事業場では安全スタッフが安全衛生目標・計画を作成しており、OHSMSへの産業保健スタッフの関与が弱いように見受けられる。OHSMSの目的には作業に関連する「ケガ」だけではなく「疾病」の予防も含まれており、更には「安全で健康的な職場の提供」も含まれている。
安全と健康のバランスが取れたOHSMSを運用するためには産業医が積極的にOHSMSに関与することが不可欠である。

法令・制度等

労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針(2019(令和元)年改正)厚生労働省
労働安全衛生マネジメントシステム―要求事項及び利用の手引き JIS Q 45001(ISO45001)日本規格協会、ISO45001:2018
労働安全衛生マネジメントシステム 要求事項の解説 日本規格協会
産業保健スタッフのためのISO45001―マネジメントシステムで進める産業保健活動―中央労働災害防止協会、これだけでわかるISO45001 中央労働災害防止協会

キーワード

労働安全衛生マネジメントシステム、OHSMS、ISO45001、リスクアセスメント、PDCA

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