産業医の手引き<ダイジェスト>
8章:産業保健活動で押さえておきたい重要事項

3 多様な雇用形態に応じた活動(派遣労働者等非正規雇用労働者の健康管理のノウハウ)

大﨑 陽平

要旨

Ⅰ.非正規雇用労働者に対する健康管理体制の現状を把握する場合のポイント

(1)その企業に在籍する社員の雇用形態の種別と人数、割合などを把握する
非正規雇用労働者の内訳として多い順に、①パートタイム労働者、②アルバイト、③契約社員、④派遣労働者、⑤嘱託、を中心におよその人数などを把握しておく。また、⑥その他として、臨時雇用や出向社員(受け入れ側、送り出す側)なども把握できるとよい。呼称は企業により異なるため注意する。

(2)健康診断の実施対象者を中心に健康管理対象を把握する
非正規雇用労働者に対する健康診断の対象条件を確認する。以下のいずれの条件にも該当する場合は一般健康診断の対象(義務)となる。
①期間の定めのない雇用契約の場合、もしくは期間の定めがある場合でも1年以上が予定されている場合
②その者の1週間の労働時間数が、その事業場の同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上の場合
上記以外にも、②で4分の3以上ではなく、2分の1以上に該当する場合は法令上、実施が望ましいとされる。特定業務従事者の健康診断は6カ月以内に実施されるため、対象となる契約期間も1年以上ではなく6カ月以上となる。特殊健康診断は労働時間に関係なく、有害業務に従事する場合は実施する。その他、健康管理に関する制度や施設利用の案内なども対象条件を確認する。

Ⅱ.派遣労働者の健康管理を実施する場合のポイント

(1)健康診断をはじめとする安衛法で定められる健康管理は、派遣法により派遣元、派遣先のどちらか、もしくは双方に実施義務が振り分けられているので確認する。

(2)派遣先は派遣元と同様に派遣労働者の人数を含めた労働者数で産業医が選任されており、健康支援の対象外とすることはできない。ただし、健康相談の内容によって雇用者である派遣元と連携する必要が出ることもある。その際にも労働者の同意を得ながら行う。特に労働現場の環境や作業に起因する健康上の課題は、指揮命令を行う派遣先が主体となって対応する。

法令・制度等

パートタイム労働法のあらまし
パートタイム労働者の健康管理マニュアル
派遣労働者に係る労働条件及び安全衛生の確保について
製造業における派遣労働者に係る安全衛生管理マニュアル
派遣先が講ずべき措置に関する指針
派遣労働者の心の健康づくり〜労働者の心の健康の保持増進のための指針〜
労働者派遣法

キーワード

非正規雇用労働者、雇用形態、短時間労働者、パートタイム労働者、アルバイト、派遣労働者、派遣先、派遣元

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