産業医の手引き<ダイジェスト>
8章:産業保健活動で押さえておきたい重要事項

10 COVID-19(新型コロナウイルス感染症)に学ぶ予防活動の実際

今井 鉄平

要旨

Ⅰ.流行の各段階と産業医に求められる役割

(1)第1波 ~未知の感染症への対応~
〇感染予防対策に関する事業所内体制の構築に関する事業者への助言
〇医学情報の収集と職場への情報提供

(2)第2~3波 ~感染予防策の徹底~
〇感染予防対策に関する医学的妥当性の検討と助言、管理方法に関する教育・訓練の検討と調整
〇事業継続を支援する観点で継続的な感染予防対策の検討と助言

(3)第4~5波 ~ワクチン接種率の向上~
〇従業員のメンタルヘルスや差別防止への配慮
〇措置の強化や緩和に関する医学的妥当性の検討と助言

(4)第6~8波 ~感染急拡大への対応~
〇従業員の健康状態にあわせた配慮の検討と実施
〇事業所に感染者(疑い例含む)が出た場合の対応
〇措置の強化や緩和に関する医学的妥当性の検討と助言

Ⅱ.中小企業における取り組みの実際

企業規模を問わず、以下4つの取り組みは最低限必要となる。

(1)対策の意思決定者が存在する
明文化された事業継続計画(BCP:Business Continuity Planning)がなくても、経営者のリーダーシップのもとで柔軟な意思決定が行われやすい。

(2)情報(外部・内部)収集体制がある
外部情報(厚生労働省など外部機関などからの情報)に加え、内部情報(社内の発熱者などの情報)も適切に収集できる体制を構築しておく。

(3)感染対策のルールが存在する
最低限必要な事項(例:発熱時の出勤自粛など)についてはルールとして明示しておく。

(4)事業継続に向けた検討がされている
規模が小さいほどよりコロナ禍の影響を受けやすいため、事業継続に向けた取り組みは中小企業では非常に重要である。

法令・制度等

日本産業衛生学会「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド(第5版)」. 2021
今井鉄平、他「中小企業における新型コロナウイルス対策への取り組みと望まれる支援―企業経営者・担当者へのインタビュー調査結果から―」. 産業衛生学雑誌. 2022
日本産業衛生学会中小企業安全衛生研究会「中小企業の皆様に役立てていただくための手軽な取り組み集 新型コロナ対策」. 2021
東京商工会議所「企業向け新型コロナウイルス対策情報一覧」. 2022
大阪府「超簡易版BCP『これだけは!』シート」. 2021

キーワード

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)、パンデミック、事業継続計画(BCP)、感染防止対策、社会機能維持

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