産業医の手引き<ダイジェスト>
7章:ストレス・メンタルヘルス対策

4 ストレスチェック制度における産業医のかかわり方

竹田 透

要旨

Ⅰ.ストレスチェック制度の概要と産業医

(1)ストレスチェック制度の目的
ストレスチェック制度(心理的な負担の程度を把握するための検査)は、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止する一次予防を目的としたものである。事業者は、各事業場の実態に即して実施される二次予防及び三次予防も含めた労働者のメンタルヘルスケアの総合的な取組のなかに本制度を位置づけ、取組を継続的かつ計画的に進めることが望ましい。

(2)ストレスチェック(心理的な負荷を把握するための検査)の実施
職業性ストレス簡易調査票などにより、医師、保健師などが実施者となり、1年以内ごとに1回実施する。その結果を、実施者が原則として労働者本人にのみ返却し、労働者自身のストレスへの気づきを促すとともに、高ストレス者に対しては医師との面接指導を受けるように勧奨する。産業医が実施に関与する場合には、共同実施者として関与することが望ましい。

(3)高ストレス者の面接指導と就業配慮
高ストレスの労働者が事業者に面接指導の実施を申出た場合、事業者は、医師による面接指導を行い、その結果について医師から意見聴取を行ったうえで、必要に応じて就業配慮を行う。面接指導後の事後措置を考えると、面接指導は産業医が行うことが望ましい。高ストレス者のうち、実際に医師の面接指導を申し出る割合が低く、面接指導の実施率を高めることが今後の課題のひとつである。

(4)集団分析と職場環境改善
労働者個人のストレス状況の評価に加え、職場集団のストレスレベルを評価し、労働者の心理的な負担を軽減するための適切な措置を行うことが努力義務となっている。産業医も集団分析の結果の評価を行ったり、職場環境改善の計画にアドバイスをしたりすることが望ましい。心理学の専門家などとの連携を取って職場環境改善を実践することにより、職場のストレスレベルの軽減を図ることが、より積極的なメンタルヘルス対策となる。

(5)労働基準監督署への結果報告
常時50人以上の労働者を使用する事業者には、労働基準監督署へ産業医も記名したうえで心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書の提出が義務づけられている。記名にあたり、個々の面接指導結果の総括や集団分析結果を含め、事業場のストレスの状況やメンタルヘルス対策への今後の取り組みについて産業医から事業者に助言指導を行う機会とすると有効である。

法令・制度等

安衛法令・規則
心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針(ストレスチェック指針)
ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて、労働者の心の健康の保持増進のための指針

キーワード

ストレスチェック、実施者、高ストレス者、面接指導、就業配慮、集団分析、職場環境改善

本篇ダウンロード(医師会員向けページ)

本篇PDF

PAGE TOP