産業医の手引き<ダイジェスト>
7章:ストレス・メンタルヘルス対策

2 ケースワークを中心としたメンタルヘルスケア

山野 かおる

要旨

Ⅰ.メンタル疾患の留意点

メンタル疾患は長期休業となりやすく、再発・再燃が起きやすい特徴がある。休職から復職に至るまで長期のフォローアップが必要であり、労働者本人のプライバシーに留意しながら主治医、管理監督者と十分に連携したうえで個別に支援することが肝要である。

Ⅱ.復職支援のステップとチェックポイント

メンタル疾患による休職者の発生に備えて、厚生労働省作成の手引きを参考に、社会保険労務士や弁護士からの助言を得ることも含めて、あらかじめ復職支援手順を作成しておくことが望ましい。労働者からの復職の申し出があった場合、産業医は、本人との面接や主治医からの意見を通じて、「症状」ではなく「職場で仕事をする」という観点から「疾患の改善度」「業務遂行能力の程度」「職場環境」を確認して、職場における配慮事項について意見を述べる。復職後もフォローアップ面談を行うとともに、周囲の負担についても注意する。

Ⅲ.うつ病への対応

十分な休養と薬物療法が治療の基本であり、職場復帰の際は業務負担軽減と適正配置(職場の受け入れ態勢の調整)が必要となる。従来型のうつ病では責任感が強く回復が不十分でも焦りから復職を急ぐ場合があるが、重度のうつ病は自殺の原因となる危険があるため、慎重な復職が望ましく、労働者本人の同意を得て主治医と連携し、配慮事項について具体的な意見を得るようにする。

Ⅳ.双極性障害への対応

躁状態が疑われた場合は、判断能力が低下して重大な事故や損失につながる場合があるため、職場においても早期発見・早期介入が求められる。また、病識がなく、休職や医療機関受診を拒否する場合が多いため、家族らの協力を得るよう努め、職場として毅然とした態度を取る必要がある。

Ⅴ.統合失調症への対応

若年発症が多く、被害妄想や視線恐怖など明らかな症状の他に、生活態度の乱れや集中力低下などが発症初期にみられることがある。薬物療法が症状安定のために必要であり、通院継続支援を行うことが望ましい。仕事の量や指示系統を明確にして、過度の負担を与えずに安心して働けるように配慮する。

法令・制度等

「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針」. 2004
「個人情報の保護に関する法律」2005年施行
厚生労働省「改訂 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」. 2009
厚生労働省「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針」. 2015
厚生労働省「こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」

キーワード

メンタルヘルス、職場復帰支援のステップ、主治医との連携、就業上の配慮、うつ病、双極性障害、統合失調症

本篇ダウンロード(医師会員向けページ)

本篇PDF

PAGE TOP