産業医の手引き<ダイジェスト>
6章:過重労働対策(働き方、働かせ方に関する事項)

1 「働き方改革」の産業医活動への活かし方

簗瀬 有美子

要旨

Ⅰ.ワーク・ライフ・バランス推進のメリット

ワーク・ライフ・バランス推進には次のメリットがある。
企業側:①従業員満足度の向上、②優秀な人材や女性労働者の確保と定着、③コスト削減、④労働生産性の向上、⑤企業イメージの向上
従業員側:①家庭と仕事の両立、②心身の健康、③趣味や自己啓発の時間確保、④仕事に対するモチベーションの向上

Ⅱ.働き方改革やワーク・ライフ・バランス推進に関する産業医からの助言 

ワーク・ライフ・バランス推進のメリットを参考に、企業が実現したい目的を達成するために効果的な選択をするように提案する。具体的なアクションは次のとおり。

(1)推進手順について紹介する
企業側が推進するためには、次のようなステップで進めるのがよい。
①現状の課題・ニーズの把握: 経営層と従業員が一緒に実施する。②最終目標の決定: 企業の目的や目標を明らかにする。③具体的な手法の検討:目的を達成するためのスケジュールや予算を決める。④従業員への周知: 社内への説明や社外への公表を行う。⑤定期的な点検と見直し: 柔軟に改善できるような機会を設定

(2)政府の認定制度や行政相談窓口の活用を促す
認証制度を取得するよう働きかけたり、全国47都道府県に設置されている「働き方改革推進支援センター」などから、有用な情報を入手することを勧める。
認証制度:①くるみん(子育てサポート企業認証)、②えるぼし(女性の活躍推進)、③ユースエール(若者の雇用促進)、④安全衛生優良企業(安全衛生水準の維持・改善)、⑤働きやすい職場認証事業者(自動車運業の労働改善)、⑥スポーツエールカンパニー(運動を通じた健康増進)、⑦健康経営優良法人(経営の視点からの健康増進)

(3)産業医活動で得た情報を基に、従業員の健康・ライフスタイル改善の視点から助言する
①普段の産業医業務(健康診断結果就業判定、面談指導、職場巡視など)を通じて気づいたことや感じたことを企業の担当者と共有し、改善策などを提案する。
②現行の福利厚生サービスや健康保険の保健事業の内容について確認し、それらを可能な範囲で強化・充実させることを提案する。

法令・制度等

労基法、安衛法令・規則、労働時間等設定改善法、短期時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律、派遣法
厚生労働省「働き方改革 一億総活躍社会の実現に向けて」. 2019.4
厚生労働省「産業医・産業保健機能の強化」. 2019.4
内閣府仕事と生活の調和推進室「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2020」. 2021.3

キーワード

働き方改革、ワーク・ライフ・バランス、育児・介護、健康経営、くるみん、えるぼし、ユースエール、安全衛生優良企業、スポーツエールカンパニー、健康経営優良法人

本篇ダウンロード(医師会員向けページ)

本篇PDF

PAGE TOP