産業医の手引き<ダイジェスト>
5章:企業以外の組織(医療機関、教育機関、公的団体)の労働衛生管理

3 公務職場における労働衛生管理と公務災害認定の仕組み

寺田 勇人

要旨

Ⅰ.公務職場の労働衛生管理の特徴

労基法、安衛法及び関係法令は、公務員にも原則として適用されるのだが、公務の特殊性などの理由により一部適用除外事項が設けられており、その内容を踏まえて産業医活動に臨みたい。

公務の事業場においても、常時使用する職員数50人以上の事業場であれば産業医(省庁など国の事業所では健康管理医)を選任しなければならないが、労働基準監督機関が異なるため、国は人事院へ、東京都は東京都人事委員会へ、東京23特別区は特別区人事委員会へ選任報告書を提出する規則となっている。衛生管理者についても同様である。ただし、清掃工場、土木事務所、保健所、消防署、警察署などの現業系の事業場は公務であっても所轄の労働基準監督署長宛に選任報告書を提出することが必要である。

一方、公立学校などで、学校保健安全法の規定により任命または委嘱された学校医が当該学校において産業医の職務を行う場合には、労働基準監督機関(所轄の労働基準監督署)への報告義務が免除されている。

公務職場における各種健康診断の実施は、一般企業と同様に、年1回の一般定期健康診断とストレスチェックを、特定業務従事者には年2回の健康診断を、有害業務従事者には特殊健康診断を実施し、必要な事後措置を行う必要がある。このことは事業場の規模に関わらず必要である。また、過重労働対策とストレスチェック制度に関連する産業医による面接指導も同様に実施されている。

2018(平成30)年度に産業保健委員会が東京都内47地区医師会に所属する認定産業医に実施した嘱託産業医業務実態調査では、契約する業種別事業所数では「官公署」が3番目に多く約1割を占めており重要な領域である。

公務職場は、勤務時間が規則的な事務系が中心で暦どおりの出勤というイメージが強いが、実際には、清掃工場、清掃事業所、上・下水道事業所、保健所、消防署、警察署、屠畜場、市場衛生検査所、土木や建築関連部署では危険有害作業や不規則勤務が存在するので注意されたい。

Ⅱ.国や地方公共団体の災害補償

労災保険法は、国の直営事業及び非現業の官公署の事業については適用されない(第3条第2項)とある。その理由は、他の災害補償制度により保護されているからである。

公務災害の認定について、国(省庁等)と行政執行法人では、省庁ごとに判断して人事院に報告する流れとなっている。東京都の常勤職員では、地方公務員災害補償基金東京支部が申請を受理し認定審査事務を行い、必要な補償を行う仕組みとなっている。

法令・制度等

労基法、安衛法、国家公務員法、地方公務員法、人事院規則、労災保険法

キーワード

省庁、国の事業所、国家公務員、地方公共団体、地方公務員、人事院、特別区人事委員会、公務の特殊性、適用除外事項、健康管理医、公務災害、東京都公務災害補償基金

本篇ダウンロード(医師会員向けページ)

本篇PDF

PAGE TOP