産業医の手引き<ダイジェスト>
4章:職業性疾病の予防

7 交替制勤務・深夜業従事者の健康管理

酒井 一博

要旨

製造業における交替制勤務は、労働時間の大幅な短縮と相まって改善がみられる反面、サービス業・流通業や医療・福祉など24時間にわたる事業での、夜勤を含む変則勤務における産業保健上の課題がある。

Ⅰ.交替制勤務も持つ複合リスク

交替制勤務の持つ主要なリスクには①安全リスク②健康リスク③生活リスクなどがある。

Ⅱ.製造業における交替制勤務

製造業の交替制には主に①「連操型交替制」②「土日休業型交替制(週番型交替制)」の2つのタイプがある。

Ⅲ.連操型交替制の仕組みと生活

連操型交替制の代表的なものは4組3交替制であり、4組のうち3組が交替で業務に就き1組が休みを取る。交替勤務を編成する際のポイントのひとつは勤務の順序であり、勤務直の順番が「日勤→夕勤→夜勤」を正循環、「日勤→夜勤→夕勤」を逆循環と呼び、双方にメリット・デメリットがある。また、第2のポイントは交替制の1周期についてであり、8日周期を基本とした早期(急)交替と20日周期を基本とした長周期(緩)交替、及びその中間の周期に分けられる。また、1勤務あたりの労働時間を通常の1.5倍(12時間)あるいは2倍(16時間労働)に延長し、それと引き換えに出勤回数を減らす「圧縮勤務」などもある。

Ⅳ.交替制勤務の健康影響

夜勤交替制に就労すると、昼夜逆転の不規則生活が常態化するため、全般的には日内リズムの変動、仕事もミスや事故が起きやすい、社会的及び家族的な関係維持の困難、睡眠や食習慣の乱れ、疲労状態の継続などの影響がみられる。特に、胃腸への影響、循環器への影響及び性別特有の影響などが課題である。

Ⅴ.産業保健対策

・深夜業(22時~翌朝5時)を行う業務に対しては安衛則第45条において6カ月以内に1度の定期健康診断を行うことが義務づけられている。
・夜勤の就労が禁忌となる可能性がある疾病がある。
・夜勤交替制勤務に共通する作業条件・安全衛生条件に基づく一次予防対策の構築に、産業医は積極的に関与することが望まれる。
・職場の管理者が夜勤交替制勤務のリスクを十分に認識し、従業員のリスクコミュニケーションを図ることが対策の第一歩である。
・夜勤生活への対処行動(コーピング)を従業員に提供することが望まれる。

法令・制度等

安衛法第66条の2、安衛則第45条

キーワード

連操型交替制と週番型交替制、正循環と逆循環、早期(急)交替と長周期(緩)交替、圧縮勤務

本篇ダウンロード(医師会員向けページ)

本篇PDF

PAGE TOP