産業医の手引き<ダイジェスト>
4章:職業性疾病の予防

3 騒音性難聴対策

目澤 朗憲

要旨

Ⅰ.騒音性難聴の病態

騒音性難聴の病態として、騒音のばく露を長期にわたって受けると不可逆的な聴力の障害が発生する。聴力検査では、4,000Hzの周波数に目立った聴力低下が認められ、典型的な「C5dip」と呼ばれる谷型の聴力図を呈する。この状態が騒音性難聴であり、的確な治療法がないので人体への影響を防ぐための予防が大事となる。

Ⅱ.騒音性難聴

騒音性難聴には業務上災害の認定基準が策定されている。騒音性難聴には有効な治療法が確立されていないことから、労災での補償は傷害補償給付のみである。

Ⅲ.騒音の人体への影響

騒音の人体への影響は侮れないものがある。そのために騒音防止対策として厚生労働省から「騒音障害防止のためのガイドライン」が示されている。目的は労働安全衛生法令に基づく措置を含め騒音障害防止対策を講じることによる。騒音作業に従事する労働者の騒音障害の防止である。

Ⅳ.騒音作業場の作業環境管理と作業管理

騒音作業場には、作業環境測定基準が設けられている。騒音レベルをA測定とB測定から測定し、その結果により管理区分Ⅰ・Ⅱ・Ⅲに分けられ、それぞれの管理区分ごとの対策が必要となる。
作業環境面の対策として騒音源対策、伝播経路対策、受音者対策が挙げられる。
作業面の対策として防音保護具が挙げられる。

Ⅴ.騒音作業従事者の健康管理

健康管理においては、定期健康診断を6カ月ごとに1回聴力検査などを行い、雇い入れ時健康診断では、既往歴や聴力検査などを行うことなどが必要とされる。

Ⅵ.健康診断結果に基づく事後措置

健康診断の結果、前駆期の症状が認められる者及び軽度の聴力の低下が認められる者に対しては、屋内作業場にあっては第Ⅱ管理区分に区分された場所、屋内作業場以外の作業場にあっては等価騒音レベルで85dB(A)以上90dB(A)未満の作業場において防音保護具の利用を励行させる他、必要な措置を講ずること。
中等度以上の聴力低下が認められ、聴力低下が進行するおそれがある者に対しては、防音保護具の利用を励行の他、騒音作業に従事する時間の短縮など必要な措置を講ずること。

法令・制度等

安衛則、労災保険法、安衛則第588条、作業環境測定基準、「騒音障害防止のためのガイドライン」(2023(令和5)年4月20日)

キーワード

騒音、騒音作業、難聴、騒音性難聴、C5dip、騒音源対策、伝播路対策、受音者対策、防音保護具、耳栓、耳覆い(イヤーマフ)、聴力検査、障害補償給付

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