産業医の手引き<ダイジェスト>
3章:健康診断の種類と事後措置の実務

2 特殊健康診断とその事後措置

山本 健也

要旨

 産業現場では、人体に有害な要因を用いた作業工程が少なからず存在する。作業者の有害要因へのばく露防止のためには「作業環境管理」「作業管理」が実施されるが、有害要因による健康影響が起きていないことを確認する手段のひとつとして「特殊健康診断(法令上の表現は、医師による特別の項目についての健康診断)」が規定されている(安衛法第66条2・3項)。その対象となる有害業務は安衛令第22条に規定されている。

Ⅰ.特殊健康診断の検査項目の基本構成

特殊健康診断は、その有害物による健康影響をできるだけ早期に把握することを目的に、各種検査項目が設定されている。
また、問診や診察による自覚症状・他覚所見も重要な項目であり、特に臨床検査項目の設定がない特殊健康診断の場合は、それらを中心に健康影響指標として評価をする必要がある。

Ⅱ.特殊健康診断の結果の判断と事後措置

特殊健康診断では検査項目の多くは非特異的であることから、有所見がある場合は必ずばく露との関連を検証する必要がある。近年、化学物質の特殊健康診断では一次健康診断にばく露評価のための「作業条件の簡易な調査」が設定され、また必要に応じて二次健康診断での「作業条件の調査」を実施することでばく露の評価が可能である。なお、健康診断以外でも、職場巡視や作業者との面談を介してばく露の評価をすることも可能である。
また、異常所見がない場合であっても「有害要因の影響を受けていない」と即断せず、健康診断の精度管理や偽陰性などの可能性を排除して最終的な判断をすることが必要である。

Ⅲ.各種特殊健康診断の特徴

じん肺健康診断については、実施頻度が他の特殊健康診断と異なり、独立したじん肺法のルールに基づく実施となるので留意する。
化学物質にかかる特殊健康診断は、原則6カ月以内に1回の実施であるが、過去の作業環境測定や健康診断結果などの条件により「1年以内に1回」の緩和措置が導入されている。電離側では「医師が必要と認めた場合に実施する検査」と「医師が省略可能と判断できる検査項目」が、実効線量により規定されており、その判断を求められることがある。また、2024(令和6)年4月より新たに、化学物質の「リスクアセスメント対象物健康診断」が必要に応じて実施されることとなり、産業医などの医師が検査項目などについて事業者に意見をすることが求められる。

法令・制度等

じん肺法、安衛法令・規則、有機則、特化則、鉛則、四アルキル鉛中毒予防規則、石綿則、電離則、高圧則、東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則、除染等業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガイドライン、事故由来廃棄物等処分業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガイドライン

キーワード

特殊健康診断、じん肺健康診断、早期健康影響指標、生物学的モニタリング、ばく露との因果関係、リスクアセスメント対象物健康診断

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