産業医の手引き<ダイジェスト>
3章:健康診断の種類と事後措置の実務

1 一般的な健康診断(特殊健康診断を除く)の種類と事後措置の実務

倉持 晋久

要旨

労働衛生関連の健康診断は、①一般健康診断、②特殊健康診断、③通達で示されている健康診断の3つに大別される。ここでは、一般健康診断について解説する。

Ⅰ.一般的な健康診断(一般健康診断)の種類と施行時期

(1)雇入時の健康診断(安衛則第43条):雇入れの際

(2)定期健康診断(安衛則第44条):1年以内ごとに1回

(3)特定業務従事者の健康診断(安衛則第45条):配置換え、6カ月以内ごとに1回

(4)海外派遣労働者の健康診断(安衛則第45条の2):6カ月以上派遣時、帰国後業務時

(5)結核健康診断(感染症法第53条の2):定期、期日または期間を指定して実施

(6)給食従事者の検便(安衛則第47条):雇入れ、配置換えの際

(7)自発的健康診断(安衛則第50条の2):深夜業従事者など

(8)労災保険の二次健康診断(労災則第18条の16)
1)上記の健康診断結果の保存期間はすべて5年
2)特定業務従事者には深夜業が含まれ、22時~翌朝5時までの間の従事回数が1週に1回以上または1月に4回以上が対象
3)派遣労働者は、定期健康診断は派遣元が施行、特殊健康診断は派遣先が施行
4)パート労働者は、1年以上勤務予定及び1週間の労働時間が常勤の4分の3以上など規定あり
5)所轄労働基準監督署長への報告は定期健康診断と特定業務従事者の健康診断のみ

Ⅱ.健康診断結果の評価、就業区分の判定、保健指導のポイント

①健康診断結果は健康診断実施施設の判定であり一律ではない。産業医判断で判定変更は可能である(例:要精密検査→経過観察、経過観察→要精密検査など)。

②就業区分の判定は産業医の必須業務である。保健指導に関しては、産業医の立場から指導を行い、治療に関しては主治医を尊重する。例えば、高血圧の場合、業務上の危険リスクを想定し治療の必要性を事業者側に理解してもらい予防策を講じてもらう(例:運転業務や高所作業→脳卒中→労働災害、半身麻痺、人身・物損の補償問題など)。

③就業区分の判定は、業種や作業内容によって事業所ごとに設定すべきであり、個人要件を踏まえたうえで、労使ともに納得できるようにしたい。なお就業上の配慮の最終判断は事業者となる。

④事業者の安全配慮義務と労働者の自己保健義務を果たし、労使ともに健康と安全に努めること。

法令・制度等

安衛法(第66条第1項、安衛則第44条第1項)
「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(厚生労働省)
労働安全衛生法に基づく定期健康診断関係資料(厚生労働省)
安衛則第13条第1項第2号に掲げる業務(厚生労働省リーフレット)
定期健康診断結果調(定期健康診断有所見率)e-Stat政府統計の総合窓口

キーワード

健康診断、一般健康診断、定期健康診断、雇入時の健康診断、特定業務従事者の健康診断、海外派遣労働者の健康診断、結核健康診断、給食従事者の検便、自発的健康診断、就業区分判定、事後措置、保健指導、衛生管理者、健康診断結果の保存期間

本篇ダウンロード(医師会員向けページ)

本篇PDF

PAGE TOP