3 心身不調者の発見や対応における社会保険労務士の活用について
要旨
Ⅰ.社会保険労務士について
社会保険労務士法に基づいた国家資格者で、企業の成長に必要なお金、モノ、人材のなかで、人材に関する専門家であり、「労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するとともに、事業の健全な発達と労働者などの福祉の向上に資すること」を目的として、業務を行っている。
メンタルヘルス問題に関しては規模が小さい事業場ほど社会保険労務士に相談することが多い。経営者が身近に相談しやすい存在として社会保険労務士がいることに加えて、近年はトラブルになりやすく、裁判になるケースも見られることから、労務の専門家である社会保険労務士の需要が高まっている。
中小企業では嘱託産業医と小規模企業では地域産業保健センターとの接点があり、良きパートナーとして連携・協力を密にしておきたい。
Ⅱ.社会保険労務士のメンタルヘルス問題へのかかわり方
(1)社内仕組みの構築について(就業規則、休職復職のルールづくり)
就業規則は経営者からのメッセージであり、事業場のルールブックである。メンタルヘルス対策を充実させるためにはこの整備をするとともに、休職復職のルールも作成することが必要である。就業規則は、従業員数10人以上の事業場において作成が義務づけられているものである(労基法第89条)。従業員数10人未満の事業場には就業規則の作成義務はないが、近年増加傾向の就業上のトラブルを防止する観点から作成しておくのもよい。
(2)コンサルティングとして
社会保険労務士は、「メンタルヘルス不調があり欠勤を繰り返す従業員への対応について」「休職の申し出があったときの対応や休職を繰り返す従業員に対する対応について」「労使間トラブルがあった場合の対応について」などの相談を受けることがある。これらは問題があるから相談をするのであるが、それだけでなく、問題が起こる前段階で経営者や人事、総務担当者と話をするなかで、メンタルヘルス不調が疑われる従業員の有無を確認し、安全配慮義務の説明をしつつ、正しい対処ができるようにコンサルテーションを行う。
法令・制度等
社会保険労務士法、労基法、安衛法令・規則、労働契約法
キーワード
社会保険労務士、労務の専門家、連携・協力、就業規則、ルールブック、休職・復職のルールづくり、安全配慮義務、コンサルテーション