産業医の手引き<ダイジェスト>
2章:産業医活動に役立つ産業保健機関や専門職との連携

2 多職種との連携(産業医活動の良きパートナー)

能川 和浩

要旨

Ⅰ.産業保健における多職種連携

多職種連携は、近年、産業保健分野においても注目を集めている。この背景には、企業活動の多様化にともない、産業保健活動も多岐にわたり、かつ複雑化していることが挙げられる。

健康に影響を与える要因として、物理的・化学的・生物学的な作業環境、仕事の量・質や作業の進め方、上司・部下・同僚との人間関係、不規則勤務、雇用条件など枚挙にいとまがない。また、これらの要因は企業活動におけるリスクマネジメントの要素も含んでいる。

産業医は働く人の健康を保持・増進させるだけでなく、企業活動を支える観点からも適切に対応することが求められている。しかしながら、産業医だけで対応するのは限界があり、さまざまな職種の意見を尊重し活用することで、質の高い産業保健活動の展開が可能となる。

Ⅱ.多職種との連携により嘱託産業医業務を効率的に行うポイント

①産業医は、法的に定められた産業医業務を実施する義務を負うが、単独で行う必要はなく、事業所内にいる専門職と連携することで、より効果的・効率的に業務を遂行できる。

②「産業医でなければできない業務」に集中できるように、保健師や衛生管理者に情報の整理を依頼し、業務の優先度を判断する。情報としては、健康管理に関すること(各種健康診断結果、長時間労働による疲労度、休職者や復職者の情報など)と現場の作業管理、作業環境管理に関することが主となる。

③産業医による職場巡視については、巡視前に衛生管理者に作業現場の情報を聴く。

④ストレスチェックについて、外部機関を利用している場合は、集団分析の対象が適切に設定されているかを確認する。また、社員が利用できるサービス(カウンセリングなど)が付加されていることがあるので、有効活用する。

⑤産業医業務に関して困りごとがあれば、産業保健総合支援センターなど、専門機関を積極的に利用する。

Ⅲ.産業保健にかかわる主な職種

産業医、歯科医師、産業看護職(保健師/看護師)、心理職、管理栄養士・栄養士、作業環境測定士、社会保険労務士、労働安全/労働衛生コンサルタント、衛生管理者(一種、二種)、衛生工学衛生管理者、安全衛生推進者・衛生推進者、化学物質管理専門家・環境管理専門家、オキュペイショナルハイジニストなど。

法令・制度等

安衛法令・規則、産業保健活動をチームで進めるための実践的事例集. 厚生労働省. 2019.3

キーワード

多職種連携、パートナー、嘱託産業医、保健師、衛生管理者、外部機関、専門機関、産業保健総合支援センター

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