産業医の手引き<ダイジェスト>
1章:産業医活動の基礎

6 産業医面談のノウハウとフィードバック方法

山本 健也

要旨

近年の産業保健を取り巻く環境の変化を背景に、産業医による「面接指導」が新たに加わるなど、産業医面談の目的は大きく変わりつつあり業務のなかで面談に費やす割合も増加している。

Ⅰ.産業医面談の種類とその目的の整理

産業医面談を大別すると「(1)業務と健康の適合を判断する面談」と「(2)個人の健康管理を目的とした面談」に分けることができる。なお、本人との面談後に、あらためて上司などの職場関係者を交えて面談をするなど、職場の共通理解を求めることに留意したい。

(1)業務と健康の適合を判断する面談
① 一般健康診断の事後措置:当該業務の就業を禁止・制限するなどの措置の是非を検討
② 特殊健康診断の事後措置:有所見について、業務との関連の評価や職場環境改善の要否などを検討
③ 過重労働者への面接指導:長時間労働にともなう心身の健康影響の有無を確認し、当該者への保健指導などとともに、必要に応じて業務負荷軽減や作業環境の改善の要否を検討
④ 高ストレス者に対する面接指導:高ストレス者のうち希望者について心身の健康影響の有無を確認し、当該者への保健指導等とともに、必要に応じて業務負荷軽減や作業環境の改善の要否を検討
⑤ 復職面談:面談時点での疾病などからの回復の程度を判断し、復職の可否、及び復職する場合には職場が準備している業務における負荷軽減の可否などについて検討
⑥ 慢性疾病にともなう就業配慮の検討:長期間にわたる就業制限などの配慮が必要な場合に、本人への指導と併せて職場関係者のコンセンサスを形成
⑦ がんなどの両立支援にかかわる面談:主治医との情報連携などを基に治療に必要な勤務条件などについて、本人及び職場関係者のコンセンサスを形成
⑧ 障がい者の合理的配慮等に関する面談:障がい者の求めに応じて障がい及び職務能力を評価し、必要に応じて支援機器の整備や職場の配慮などについて、職場関係者のコンセンサスを形成

(2)個人の健康管理を目的とした面談
① 保健指導:生活習慣病など将来的な疾患の予防により労働力の確保を図る目的で実施
② 健康相談:本人や家族の抱える健康問題について、本人からの依頼により実施

Ⅱ.嘱託産業医のための産業医面談のノウハウ

産業医面談に来室する従業員は、必ずしも本人の意向で訪れているわけではないので、相手の心情を配慮しながら、しかし必要な対応については毅然とした態度をもって進める必要がある。
また、職場関係者や職場巡視により職場情報を事前収集することは、限られた面談時間を効率化できることや従業員との良好な関係性を築くことにもつながる。

法令・制度等

安衛法令・規則、健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針、心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き、事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン、障害者雇用促進法

キーワード

事後措置、過重労働、高ストレス者、面接指導、適正配置、復職面談、両立支援、合理的配慮、保健指導、健康相談

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