産業医の手引き<ダイジェスト>
1章:産業医活動の基礎

5 衛生委員会・安全衛生委員会への積極的なかかわり方

加藤 憲忠

要旨

 労働者個人だけでなく、事業場という組織を対象とする産業医にとって、安全衛生委員会の出席は非常に重要な機会である。

Ⅰ.基本事項(法令に定められていること)

衛生委員会は、常時使用する労働者が50以上の事業場(全業種)の事業者に設置が義務づけられており、労働者数と業種によって、安全委員会*も設置しなければいけない事業場では、併せて、安全衛生委員会として設置されている場合が多い。開催頻度は毎月1回以上となっている。安全衛生委員会の議長は、総括安全衛生管理者などが務め、議長を除く委員の半数は、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、ないときは労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき事業者が指名する。安全衛生委員会の調査審議事項は法令で規定されている。議事録は3年間の保存義務があり、内容の周知が必要である。

Ⅱ.安全衛生委員会の意義

安全衛生委員会には、①調査・審議機能、②アカウンタビリティ機能、③啓発・周知機能の3つの機能がある。産業医の提案やアドバイスに対しお墨つきが得られる効果がある。

Ⅲ.情報通信機器を用いた開催

 情報通信機器を用いた安全衛生委員会の開催が可能となったが、実施にあたっては、いくつかの条件を満たすことが必要になる。原則的には現地開催が望ましいことには変わりはない。

Ⅳ.安全衛生委員会へのかかわり方

 安全衛生委員会を含めた産業保健活動に積極的にかかわっていく際の心得として、①できる限り毎回出席、②組織の理解、③産業医の存在を知ってもらう、④普段の産業医活動から問題点を把握、⑤信頼貯金を貯める、⑥リスクの見える化と地道な啓発、⑦ときが来たら素早く一気に行動がある。

*安全委員会の設置が必要な事業場
①常時使用する労働者が50人以上の事業場で、次の業種に該当
林業、鉱業、建設業、製造業の一部の業種(木材・木製品製造業、化学工業、鉄鋼業、金属製品製造業、輸送用機械器具製造業)、運送業の一部の業種(道路貨物運送業、港湾運送業)、自動車整備業、機械修理業、清掃業
②常時使用する労働者が100人以上の事業場で、次の業種に該当
製造業のうち①以外の業種、運送業のうち①以外の業種、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業・小売業、家具・建具・じゅう器等卸売業・小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業

法令・制度等

安衛法(第17条、第18条、第19条)、安衛令(第8条、第9条)、安衛則(第22条、第23条)

キーワード

衛生委員会、安全委員会、安全衛生委員会、委員会の3つの機能、調査・審議機能、お墨つき、アカウンタビリティ機能、開発・周知機能、情報通信機器、組織の理解、信頼貯金

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