産業医の手引き<ダイジェスト>
1章:産業医活動の基礎

3 労働衛生の3管理と5管理

多比良 清

要旨

Ⅰ.「作業環境管理」

作業環境中の危険・有害因子の状態を把握して、できる限り良好な状態を目指す管理であり、職場巡視、作業環境測定、個人ばく露測定などが関係する。作業環境は、照度、温度、湿度、輻射熱、気流、臭気、騒音、粉じん濃度、床の状態、作業者の動線、危険作業の有無、排気装置の状態、SDS(Safety Data Sheet)交付義務対象の化学物質の使用有無が代表的なチェックポイントである。労働衛生管理のなかでは第一優先順位で考えたい管理である。作業環境測定は、2021(令和3)年4月より、従来からのA・B測定に個人サンプラーによるC・D測定が追加された。

Ⅱ.「作業管理」

危険・有害要因のばく露や作業負荷の軽減が図れる作業方法を定めて、適切な実施を目指す管理である。作業時、保守・点検時、環境改善までの一時的な措置として保護具の使用や適切な装着状況なども含まれる。作業負荷に関係する因子には、①有害または不快な作業環境による負荷、②重筋労働などによる負荷、③不自然な姿勢の作業による負荷、④過重労働による疲労などの心的・身体的負荷と、作業困難、過密作業スケジュール、⑤人間関係の不調和などによる精神的疲労などの心的負荷がある。

Ⅲ.「健康管理」

労働者個人の健康状態を健康診断結果によって就業判定し進行や増悪防止を目指す管理である。就業判定は医学的及び労務管理的な措置を施すことである。近年、労働者の高齢化にともない健康保持増進対策が重要視され労働適応能力までを含めた健康管理も重要性が増加した。健康診断は、労働者全員が対象の一般定期健康診断、危険・有害作業従事者が対象の特殊健康診断、雇入れ時、特定業務従事者、海外派遣及び帰国時などに実施するものがある。

総合的に労働衛生対策を効果的に進めるためには、産業医や衛生管理者などの産業保健スタッフが有機的な連携・協力態勢で臨むとともに、安全管理、更には生産管理と一体となって取り組む「総括管理」の構築が基礎となる。

労使ともに職場に存在する危険・有害リスクや健康と安全の重要性を正しく理解することがとても大切であり、それらの理解を深めて職業性疾病や労働災害の防止を図るために「労働衛生教育」が必要である。

法令・制度等

安衛法令・規則、作業環境測定法、「個人サンプリング法による作業環境測定及びその結果の評価に関するガイドライン」

キーワード

労働衛生3管理、労働衛生5管理、作業環境管理、SDS、A測定、B測定、C測定、D測定、個人サンプラー、作業管理、健康管理、一般定期健康診断、特殊健康診断、労働衛生教育、健康保持増進

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