産業医の手引き<ダイジェスト>
10章:労災補償

4 障害年金をもらいながら働くことを支援する

脊尾 大雅

要旨

Ⅰ.障害年金の仕組み

障害年金を受給するときは、初診日時点で国民年金か厚生年金のどちらに加入していたかによって受給できる内容が変わる。国民年金の場合は障害基礎年金、厚生年金の場合は障害厚生年金の要件にあてはまることで受給できる。

受給できる要件は両年金ともに、

・初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上の期間について、保険料が納付または免除されていること。

・初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと。

・障害等級表に該当する障害の状態にあること(障害基礎年金は1、2級、障害厚生年金は1、2、3級)。

Ⅱ.「労務提供義務を支える障害年金」という考え方

社会保障制度を使う場合は疾病利得についても考えなければならない。障害年金の趣旨は、障害により生活や就労に支障があり生活の安定が図れない場合に、生活をサポートするために支給されるものである。永久的に支給されるものではないが、一定の状態が続くようであれば継続して支給されることから、場合によっては就労意欲の低下や疾病利得を考える方もいるだろう。社会保障制度全般のひとつの側面として、そのように考える気持ちも理解ができる。

ただし、やはり障害によって就労に制限がある方に対しては必要な制度である。よって年金制度自体の問題というよりも「適正な利用、運用」という見方が重要であり、社会保険労務士もここを支援していきたい。

Ⅲ.自立の観点からみた障害年金の必要性

障害者の2018(平成30)年5月の平均賃金をみると、身体障害者は21万5千円、知的障害者は11万7千円、精神障害者は12万5千円、発達障害者は12万7千円となっている。

法令・制度等

国民年金法、障害者総合支援法、厚生年金保険法、障害者雇用促進法、障害者差別解消法
平成30年度障害者就業実態調査

キーワード

障害年金、障害基礎年金、障害厚生年金、労務提供義務、疾病利得、社会保障制度、社会保険労務士、身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者

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