産業医の手引き<ダイジェスト>
10章:労災補償

1 労災補償の制度と仕組み

後藤 博俊

要旨

労災保険制度は、労基法第8章「災害補償」(第75条~第88条)に規定された使用者の災害補償の責任を、使用者が国に保険料を支払い、国が使用者に代わって労基法により使用者に課せられた労災補償の責務を代わって遂行する制度である。現在の労災保険制度では、労基法に基づく使用者責任である労働者の業務上の事由による災害に対する補償の他、通勤による労働者の傷病などに対しても保険給付が行われている。更に被災労働者の社会復帰の促進などの事業も併せて行われている。その費用は、原則として事業主の負担する保険料によってまかなわれている。

Ⅱ.労災保険の適用範囲

労災保険は、原則として一人でも労働者を使用する事業は、業種の規模の如何を問わず、すべてに適用される。また、労災保険における労働者とは、「職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者」をいい、労働者であれば雇用形態の如何を問わず、アルバイトやパートタイマーなどの、いわゆる非正規労働者にも適用される。

Ⅲ.労災保険給付の種類

労災保険給付には、療養給付、休業給付、障害給付(年金・一時金)、遺族給付(年金・一時金)、傷病年金、介護給付、二次健康診断等給付などがある。

Ⅳ.労災保険特別加入制度

労災保険には、一人親方や自営業者等にも加入の認められる特別加入制度がある。

労災保険は、本来、労働者の業務または通勤による災害に対して保険給付の行われる制度であるが、労働者以外でも、その業務の実情、災害の発生状況などからみて、特に労働者に準じて保護することが適当であると認められる一定の者には特別に任意加入が認められている。

労災年金給付などの算定の基礎となる給付基礎日額については、労災保険法第8条の3等の規定に基づき、毎月勤労統計の平均給与額の変動などに応じて、毎年自動的に変更されている。

法令・制度等

労基法、労災保険法
特別加入制度
労災補償の対象となる疾病の範囲を定めた職業病リスト(「労基則別表第1の2」と、これに基づく厚生労働大臣告示で構成されている)

キーワード

労災補償、療養給付、休業給付、障害給付、遺族給付、傷病年金、介護給付、二次健康診断等給付

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