2024年1月1日(月曜日)

年頭所感 東京都医師会長 尾﨑治夫

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公益社団法人 東京都医師会
会長 尾﨑 治夫

 

ポストコロナに入った?すべてがカオス?戦争はいつまで続く?
我々は、今何をすべきなのか?

明けましておめでとうございます。
と書いたものの、新年を迎えることは、確かにおめでたいのですが、世界情勢、地球環境の変化はもちろんのこと、医療・介護業界の行く末も、どうも明るいものにはなりそうにもありません。

まず人々の健康を守り、病に陥った方を分け隔てなく助けるという使命を持った我々医療者にとって、どんな理由があろうと、瞬時に人々の命を奪う戦争という愚かな行為を断じて認めるわけにはいきません。いったん始めてしまうと、どちらが正義かという問題ではなく、やめることが難しいのが戦争です。

ウクライナとロシアもしかり。イスラエルとパレスチナもしかりです。
指導者による命を懸けた話し合いということはできないのでしょうか。新年を迎えるにあたり、改めて世界平和を皆で祈念しましょう。

 

コロナを振り返ると、日本は高齢化が最も進んでいるにもかかわらず、昼夜にわたる医療・介護業界の踏ん張りで、コロナによる死亡者が欧米に比べはるかに少なかったことを、私は評価されるべきだと思っています。しかし経済界を中心とした論調は、そうした正当な評価ではなく、一部の発熱外来を受診できなかった人を執拗に取り上げ、かかりつけ医は機能していないと指摘し、いきなりイギリスのGPによる人頭制を取り入れるべきと主張してきました。しかし、後日イギリスのGP制度は、コロナ禍でも全く機能しなかったことが、日本医師会が派遣した調査団の視察、検証によって明らかになりました。要は、医療費削減のために人頭払いの導入を目論んだのです。

 

医療費削減のことばかり考え、少子超高齢社会を迎える日本の社会保障に必要な財源確保を考えようとしない財務省。珍しくコロナ禍で我々の働きを評価して補助金を出してくれたと思っていたら、実は苦虫をつぶした顔で、嫌々コロナの補助金を出していたのが判明しました。補助金を得た診療所は、従業員の給料アップも現在の蓄えで、この先何年もアップするのに十分すぎるほど蓄財しているから、診療報酬は5.5%下げるべきと主張していました。

都医ニュースが配布される頃にはどういう結論になっているかわかりませんが、どうも財務省も経済界も、皆保険制度の中で喘ぎながら頑張っている医療・介護業界があまり好きではないらしい。一生懸命皆保険制度を頑なまでに守ろうとしている我々がどうも嫌いらしい(そろそろ頑なに守るだけではなく、我々が必要な医療を守るためには、ここは保険診療から外してもいい…といった攻めの提案も必要なのかもしれませんが)。

 

どんなに嫌われようと、我々の使命は都民の安全安心をしっかりと守る医療提供体制を作っていくことにあり、介護との連携も今後は必須です。

 

4期目のチーム尾﨑では、「TMA近未来医療会議」を立ち上げ、2040年ぐらいまでの近未来の東京に何が起こるかを、毎回喧々諤々の議論をしながら、得られたものを、都民にもわかりやすい形で本にまとめ出版しました。
5期目のチーム尾﨑では「TMA医療会議」と名称も変え、近未来に起こるであろう課題に、具体的にどう立ち向かっていけば、都民のための医療提供体制を作れるか、具体策を協議している最中です。

中身について幾つか触れると、

1.国が先送りしている社会保障の財源について医療者側からの提言

高齢化と医療の進歩に伴い、医療費は当然増えていくが、根本的な財源確保の議論がなされていない。
高額所得者に対する所得税や企業の内部留保、高齢者の金融資産や相続税等を財源に充てるといった考えもあるが、消費税で広く平等に負担していくことが良いのではないか。

2.かかりつけ医機能についての議論

都市部では専門性を持った診療所の医師が、グループでかかりつけ医機能を担っていくことが現実的ではないか。
そのためには診療情報の共有が必須となるので、東京総合医療ネットワークをさらに推進していく。

3.臨時医療施設の必要性

次のパンデミックや大地震をはじめとする自然災害は、いつ来るかわからず、その際、サージキャパシティとしての臨時医療施設を準備しておくことが必要不可欠。
平時にはシミュレーショントレーニングセンターとして感染症診療に携わるスタッフの訓練に使用し、訓練を積んだスタッフがいざという時にここで診療をするという仕組み。

4.コロナ対応の経験を活かし、在宅医療の24時間体制を確保

地域の医療資源の連携体制構築やITの活用による地区医師会の取り組みを東京都が支援する在宅医療推進強化事業を都医として推進。

 

などなど…まとまったら、皆さんに見てもらうことにします。

 

今年も会員の皆さんと共に、歩んでいきたいと思います。よろしくお願いします。

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