会長あいさつ

どのような年を迎えるのだろうか、新年会、忘年会は…

この原稿を書いている今、とても「皆さん明けましておめでとうございます」といった気分にはなれないでいます。
第3波が国中を襲い、特に北海道、首都圏、中部圏、近畿圏の大都市圏を中心に新型コロナウイルスの感染者数が、今までにない勢いで増えている状況です。

飲食店の時短要請や「Go To Eat」の一時停止が3週間にわたって行われているなか、忘年会、新年会をやりたくても、今年ばかりは見送ろうかという声が日増しに多くなっています。区切りがつかないまま、不安な新年の幕開けになるのでしょうか。

しばらく続くウィズコロナ

少なくとも新しい年の前半は「ウィズコロナ」のなかで迎えることになりそうです。
第3波はいつ収束するのでしょうか。ワクチンの実用化には光が見えてきましたが、まだまだハードルが高い面も残されています。
重症化予防の薬はどうでしょう。トランプ大統領に投与されたという抗体治療薬はどうなのでしょうか。

ワクチンと重症化予防の薬に、さらに光明が見えてくれば、かなり違った展開になるものと思いますが、一般の人たちに使われる前に、思わぬ副作用や副反応があったり、ワクチンについては中和抗体がいつまで持続するのか、また、保管の問題をクリアしなければならないなど、課題は山積しています。

ワクチンや薬に頼れないとなると、感染者をいかに見つけ出し隔離していくか、あるいは高齢者に感染が及ばないよういかにブロックしていくかが大きな課題となるでしょう。第3波を経験している今、クラスター対策のみでは限界が見えてきました。感染者が社会に満遍なく広がるとともに無症状者が多く存在し、発症前から感染力を持つという厄介な特徴がある新型コロナウイルスを考えると、診断はもちろん、公衆衛生学的見地、社会経済活動を動かしていく見地からも、ポイント、ポイントでのPCR検査や抗原検査が必要となってくると思われます。

一部の営利目的のクリニックでの法外な値段設定のPCR検査などを放置することなく、リーズナブルな値段、必要な場面で、PCR検査や抗原検査を誰でも受けられるような体制を整備し、皆が安心して暮らせるようになることが、不要な差別や恐怖を生まない近道ではないでしょうか。
まさに、「正しく恐れる」です。

東京オリンピック・パラリンピックの開催

7月には、東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開かれる予定です。政府は人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として開催すると言っていますが、打ち勝つための７月までの具体的なロードマップは全く示されていません。国民皆が強く想えば打ち勝てると思っているのでしょうか。たとえ日本で奇跡的に打ち勝つことができたとして、世界中の国々の状態はあと半年で好転するのでしょうか。

不透明さが多く残るなか、こうした形で制限してやればできるかもしれないといった、現実的な解決策を模索していくべきではないでしょうか。コロナ禍での開催はこういう形でやるしかないといった提案が必要だと思います。

ポストコロナへの展望は開けるか

医療機関への受診抑制が続くなか、乳幼児健診、ワクチン接種、特定健診、がん検診を受ける方が大幅に減り、多くの高齢者は外出の頻度や社会との接触が減っています。

ポストコロナを迎えられたとき、生まれてから亡くなるまで築こうとしていた予防医療、介護予防の大きな波が消えようとしています。新型コロナウイルスが去ったあとの健全な発育や、生活習慣病やがん対策、フレイル対策、認知症予防などが大幅に後退するのではないかと恐れる毎日です。ぜひ国を挙げて感染症を抑え込む政策を真剣に練るなかで、2025年から2040年の少子高齢社会を乗り切るビジョンを提示してもらいたいと思います。

今回この新しい感染症と向き合うことになって、国の役割、都道府県の役割、医師会の役割、個人の役割などがどうあるべきか、感染症対策一つをとってもいろいろな課題があることが分かってきました。

特に医師会は、日本医師会や東京都医師会に限らず、多くの医師会の活動がマスコミに取り上げられ、その活動が大変重要であることを、多くの国民が理解したと思います。この発信力を生かして、今後は本来の地道な医師会活動がなんであるかを国民・都民に示しながら、しっかりとした医療体制を作るために、日本医師会と連携しながら活動していく必要があります。

一方で、首都東京を守る医師会として、車の両輪である東京都との連携をさらに強めながら常に先進的な対策を打っていくことを目標に努めてまいります。

本年もよろしくお願い申し上げます。