2020年1月1日(水曜日)

年頭所感~東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会のレガシー~

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東京都医師会長 尾﨑治夫

新年あけましておめでとうございます。
東京都医師会員の皆さん、本年もよろしくお願い申し上げます。

さて、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下オリ・パラ)開催まで200日余りとなりました。
1964年の東京オリンピックでは、新幹線や首都高速といったインフラがレガシーとして残り、その後の経済成長に大きく貢献しました。
2020年のオリ・パラでは、この機会に予防医療を中心とした医療体制づくりをレガシーとして残し、その後の少子高齢社会の中での健康寿命延伸につなげたいと考えています。

東京都医師会が掲げるレガシーは、タバコ対策、熱中症対策、外国人医療対策、感染症対策、障がいのある人と共存するバリアフリー化、運動で健康になるという意識改革です。

 

タバコ対策

我が国では遅々として進まなかったタバコ対策ですが、タバコフリーの都市環境で開催を迎えるというIOCとWHOの協約のもと、国もようやく重い腰を上げ、改正健康増進法を制定したものの、100平米以下の飲食店は喫煙可能という緩い規制に終わりました。狭い店舗が多い東京では、8割が例外となってしまうという事態に、開催都市東京は強い危機感を抱きました。

小池都知事主導のもと、医療関係団体の支援もあって、子どもと従業員を受動喫煙から守るという新しい発想の都条例が制定され、都内では小中学校の敷地内が全面禁煙化、飲食店は84%が禁煙になることとなりました。本年4月の条例全面施行に伴いタバコ対策は今後飛躍的に進んでいくことと思います。

熱中症対策

オリ・パラに向け準備中の熱中症対策のノウハウは、本番に向け一層充実するものと考えられ、今後温暖化がさらに進む我が国での有効な対策につながるでしょう。

マラソンや競歩が熱中症の危険から札幌に会場を移すことになったのは大変残念ですが、同じコースを走るパラリンピックのマラソンは東京で開催されます。障がい者の方の体温調節のことを考えると、よりしっかりとした対策のもと、無事成功裏に終わるよう、さらに関係者の尽力が必要と考えています。

外国人医療

観光立国を目指す我が国では、オリ・パラを機にさらに訪日外国人が増えていくことが予測され、この機会に充実した対策を立てておくことは極めて重要です。

あらかじめ旅行会社などと連携し、医療保険への加入、受け入れ医療機関のリスト作成、医療機関側のキャッシュレス化、多言語に対応する電話通訳、タブレット端末などの整備、それぞれの国の文化や習慣の違いに対する理解など、きめ細やかな準備が必要です。

感染症対策

グローバル化に伴い、どのような感染症が入ってくるか予測はつきませんが、少なくともワクチンによって防ぐことのできる麻しん、風しん、侵襲性髄膜炎菌感染症等については、ボランティアを含む多くの大会関係者が可能な限りワクチンを接種できるようこれからも要望していくつもりです。

また、再開の見通しが立たないHPVワクチンの接種についても、オリ・パラとは直接関係はありませんが、医師会、小児科医会、産婦人科医会が中心となり、副反応についてのより丁寧な説明のもと、慎重に再開する方向で検討を始めたいと考えています。

バリアフリー化

段差の解消を始め都内各所でバリアフリー化が進んでいますが、障がいのある方や補助犬に対する理解度や、彼らに対し無意識のうちに持っている心の障壁にも注目していかなければなりません。パラリンピック開催を機に、こうした心のバリアを取り除いていくことも含め、障がいのある方々との真の共存を目指したいと考えています。

運動で健康になる

最後に掲げた「運動で健康になる」という意識改革は、今後さらに高齢化が進む日本が、ぜひとも取り組むべきことと考えています。

アメリカスポーツ医学会では、2007年より「Exercise is Medicine」として医療における運動の体系化に着手しています。我が国でもこれに倣って運動を体系化していく取り組みがなされようとしており、東京都医師会としてもオリ・パラを迎える中で、積極的に関わっていきたいと考えています。

日本人のリスク要因別死因の1位である喫煙、3位である運動不足。オリ・パラを機に上記の対策が進むと、これらのリスクが回避されるとともに、熱中症、感染症対策等の前進と相まって、疾病予防および介護予防に大いに貢献することになると思います。

 

東京都医師会員の皆さん。皆さんの力を結集して、こうしたレガシーづくりが正夢となるよう、そして東京都が元気な子ども達と高齢者で溢れる都市になっていくように頑張っていきましょう。

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