2019年1月1日(火曜日)

年頭所感 東京都医師会長 尾﨑治夫

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東京都医師会長 尾﨑治夫

東京都医師会会員の皆様、新年明けましておめでとうございます。
年の始まりにあたり、所感を述べさせていただきます。

たばこ対策

 昨年6月に都議会で可決・成立した東京都の受動喫煙防止条例は、「従業員と子どもを守る」という新たな考えのもと、受動喫煙を最も受ける場所として注目されていた飲食店において、国の法律よりも厳しく、都内の飲食店の84%が原則屋内禁煙となるもので、たばこ対策の遅れが目立っていたわが国においては、大きな一歩を踏み出した条例といえます。

 疾病予防の大きな柱としてたばこ対策を掲げる東京都医師会としては、今後の具体的な施行にあたって東京都に全面的に協力するとともに、条例施行後に増加するであろう禁煙希望者に対応できる禁煙外来の充実と、診療費の補助を自治体ならびに健保組合に求めていきたいと思っています。さらに禁煙を推進する企業とも手を携え、多くの社員がタバコをやめる方向に導けるよう協力をしていくつもりです。

フレイル対策

 一方、介護予防の柱として掲げてきたフレイル対策も、日本老年医学会の先生方をはじめ多くの方々のご尽力により、フレイルという言葉が地域住民の間に浸透しつつあります。
 昨年本会が主催した都民公開講座でも、定員250名のところ1,500名以上の応募があり、都民の関心の高さがうかがえます。国も保健事業と介護予防の一体化を打ち出しています。

 特定健診についても、社会人になってから40歳代までは徹底したメタボ対策、65歳を超えてからはフレイル対策を意識した健診というように、メリハリをつけたものに変えていくべきではないでしょうか。
 それとともに、東京大学の飯島勝矢教授が進めている地域住民自らがフレイルサポーターとして活躍するような、地域に根づいたフレイル対策を都内の各区市町村で展開していくことも大切です。

子どもに重点を置いた新たな対策

 虐待を受けて死亡したとされる昨年3月の結愛ちゃんの痛ましい事件は、いまだに忘れることができません。止まらぬ少子化の中、子どもに着目した新たな事業に取り組むこととしました。

 まず児童虐待防止策において私たち医師ができることとして、妊娠・出産、育児の中で産婦人科医、小児科医の先生方に、健診時にきめ細やかに対処してもらうことによって、望まない妊娠出産事例に対するフォローや虐待の可能性のある乳幼児の早期発見に努めてもらうよう協力要請をするとともに、東京都の児童相談所や警視庁に対してもより密接な連携をお願いしたいと考えています。

 そして時間はかかると思いますが、何よりも大切なのは、将来を担う子どもたちに対するしっかりとした健康教育を施すことだと考えています。ヘルスリテラシーという言葉がありますが、リテラシーがしっかりと身についた都民に育ってほしいというのが私たちの願いです。

 来年の本格的実施に向けて準備が進んでいるがん教育、そして昨年末よりモデル事業が始まった性教育、従来から行われている禁煙、アルコール、薬物乱用防止などと併せて、ぜひ学校医の先生方に直接学校に出向いて講義を行ってもらいたいというのが私たちの願いであり、そのためのテキストも作成中です。

東京中を結ぶICTネットワーク

 大都市東京における医療提供体制と地域包括ケアシステムの実現には、「時々入院、ほぼ在宅」の考えの中で、病院救急車を利用した高齢者搬送システムの構築と、入院した患者さんが最終的に地元に戻ってこられるような連携システムの構築が必要です。発達した交通網のもと、自由に移動ができる患者さんの流れを東京のどこからでも把握できるICTネットワークづくりが必要です。

 病院間を結ぶものとして東京総合医療ネットワークが目々澤肇理事の主導のもとスタートしています。また各地域では多職種連携ネットワークがすでにつくられていますが、MCSやカナミックなどいろいろな連携システムが混在しており、これらを横に結ぶ新たな仕組みをつくることも必要です。東京都とも連携しながらこれらの課題解決に向けて取り組んでいこうと考えています。

 元号が変わる新たな節目の年を迎えました。東京オリンピック・パラリンピックも開催まで570日あまり、こちらの諸課題解決も含め、東京都医師会は会員の皆様の協力のもと、さらに前進してまいりたいと考えています。本年もよろしくお願いいたします。

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