予防接種のお話

予防接種とは? 目次

1. 予防接種(ワクチン)とは?

毒性を弱めた病原体(ウイルスや細菌)や毒素を、前もって投与しておくことにより、その病気に罹りにくくすることを予防接種といい、投与するものをワクチンあるいはトキソイド(以下、ワクチン)といいます。

2. ワクチンの種類

ワクチンには作り方によって次の3種類があります。(トキソイドを不活化ワクチンに含めることもあります。)

(1) 生ワクチン

生きた細菌やウイルスを繰り返し培養するなど、病原性が弱くなったものを選別して作ったもの

(2) 不活化ワクチン

細菌やウイルスを、ホルマリン処理などによって毒性をなくしたもの

(3) トキソイド

細菌が作る毒素を、ホルマリン処理などによって毒性をなくしたもの

生ワクチン 不活化ワクチン トキソイド
  • 麻しん
  • 風しん
  • 麻しん風しん混合
  • 水痘
  • おたふくかぜ
  • 黄熱
  • BCG
  • ロタウイルス
  • 百日咳(DPT-IPV:四種混合として)
  • 日本脳炎
  • インフルエンザ
  • A型肝炎
  • B型肝炎
  • インフルエンザ菌b型(ヒブ)
  • 13価結合型肺炎球菌
  • 23価莢膜ポリサッカライド肺炎球菌
  • ヒトパピローマウイルス
  • 狂犬病
  • 不活化ポリオ
  • 髄膜炎菌
  • ジフテリア・破傷風混合
    (DTトキソイド:二種混合として)
  • DPT-IPV:四種混合として
  • 成人用ジフテリア
  • 破傷風

生ワクチンは1回接種で有効といわれてきましたが、最近では麻しん風しん混合ワクチンや水痘ワクチンのようにある程度の間隔をあけて2回の接種が勧められるようになりました。

不活化ワクチンやトキソイドは2~4回の接種に加えて、定期的な追加接種が必要です。

3. 混合ワクチン

あらかじめ2種類以上のワクチンを混合したワクチンがあります。

(1) DTトキソイド=ジフテリア+破傷風
(2) MRワクチン=麻しん+風しん
(3) DPT+IPVワクチン=百日咳+ジフテリア+破傷風+不活化ポリオ

4. ワクチンの投与方法

わが国のワクチンの大部分が皮下注射で投与する皮下接種ですが、口から飲む経口接種(ロタウイルスワクチン)や皮膚にスタンプのように接種する経皮接種(BCGワクチン)があります。また筋肉内の深い部位に注射する筋肉内注射で投与する場合もあります(ヒトパピローマウイルスワクチンなど)。

5. 定期接種と任意接種

予防接種法という法律で接種することが勧められているワクチンが定期接種で、A類疾病とB類疾病に分けられます。A類疾病は結核、ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオ、麻疹、風疹、日本脳炎、ヒブ(インフルエンザ菌b型)感染症、小児の肺炎球菌感染症、水痘、ヒトパピローマウイルス感染症、B型肝炎で、B類疾病は季節性インフルエンザと高齢者の肺炎球菌感染症があります。A類疾病は主に集団予防、重篤な疾患の予防に重点を置き、国の積極的な勧奨があり、本人(保護者)に努力義務があります。B類疾病は主に個人予防に重点を置き、本人(保護者)に努力義務はありません。国の積極的な勧奨もありません。

(1) 法定接種

定期接種のワクチンは、次の場合に無料(B類疾病のワクチンは一部自己負担あり)で受けられるところが多いです。(法定接種といいます。)

① 決まった回数を、決まった間隔で。
② 決まった年齢内に。
③ 高齢者インフルエンザワクチンは、決まった時期に。
④ 決まった場所で。

23区内では23区内どこでも、市町村では原則その市町村内で。
ただし、相互乗り入れといって周辺の自治体での接種も特別の手続きなしで受けられる場合があります。
BCG等は集団接種で行なっている自治体もあります。

病気などの医学的理由で、定期接種の対象年齢内に受けられなかった場合、高齢者の肺炎球菌感染症は治ってから1年間、その他のワクチンは治ってから2年間定期接種として受けることが可能です。

(2) 法定外接種または公費補助の任意接種

国が定めた基準(法定接種)からは外れますが各自治体の定めた要件を満たす場合に無料または安い自己負担額で接種が受けられる場合があり、法定外接種または公費補助の任意接種といいます。

① 定期接種のワクチンではあるが推奨年齢をはずれた場合
2歳以降小学校入学1年前まで、および小学校入学後から7歳6ヵ月未満までの麻しん風しんワクチンなど。
② 各自治体独自の事業によるもの
通常は任意接種として全額自己負担になるものが、各区市町村で一部の補助が受けられるものがあります。おたふくかぜワクチン、ロタウイルスワクチン、インフルエンザワクチンなどがあります。
(3) 任意接種
上記以外の場合は任意接種となり、接種費用は医療機関によって異なりますが、接種できる年齢や接種回数、接種量はワクチンによって決まっています。
任意接種概念図

万一、予防接種で重い副反応が発生した場合、法定接種では『予防接種法』に基づいて国の『予防接種健康被害救済制度』により救済されます。任意接種では、一般の医薬品の副作用の場合と同じく、『独立行政法人医薬品医療機器総合機構法』により補償されます。法定外接種による場合には、各自治体が独自に加入している保険と『独立行政法人医薬品医療機器総合機構法』の『医薬品副作用被害救済制度』によるものとの両方で補償が受けられます。

法定接種 予防接種健康被害救済制度
法定外接種 各自治体独自に加入している保険および
医薬品副作用被害救済制度
任意接種 医薬品副作用被害救済制度

6. ワクチンの副反応

ワクチンの副反応には、生ワクチンの副反応である『感染型』といってその病原体が感染した時と同様の潜伏期間で症状が出現する場合と、すべてのワクチンで出現する可能性がある『免疫アレルギー型』があります。

その他の主な副反応としては、以下のようなものがあります。

  (1) BCG:腋下リンパ節腫脹
  (2) ロタウイルスワクチン:腸重積症
  (3) 風しんワクチン:血小板減少性紫斑病
  (4) おたふくかぜワクチン:ウイルス性髄膜炎 など

これらは、その病気にかかった時にも起こることがあり、ワクチンの副反応で発生する頻度の方が少ないです。

7. 異なるワクチンの接種間隔

異なるワクチンの接種間隔は、生ワクチンから27日以上、不活化ワクチンとトキソイドでは6日以上あけることされています。これは、発熱などの副反応のでる期間を避けることと、抗体産生の低下を防止する(干渉作用がある時期を避けて、抵抗力を十分に高める)ためです。

8. 接種スケジュールと同時接種について

前もって混合されていない2種類以上のワクチンを、1回の受診で同一の接種対象者に接種することを同時接種といいます。
従来は、海外転居などのために接種間隔をあける時間がない場合など『医師が特に必要と認めた場合に行なうことができる。』とされていました。

しかし、乳児期前半に接種するべきワクチンの数が増えてから、同時接種を行うケースが増えてきました。わが国では平成23年春に同時接種後の死亡例の報告がありましたが因果関係は否定されており、また海外では同時接種は一般的に行なわれています。日本小児科学会でも平成23年4月に同時接種は一般的に行われる医療行為であるとの見解が出されました。 (http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/saisin_1101182.pdf

また同時接種による接種スケジュール例も示されています。(http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20160410_vaccine_schedule.pdf)。
保護者の方が同時接種を希望するか希望しないかによっても接種スケジュールが変わってきます。かかりつけの医師に御相談下さい。また国立感染症研究所感染症疫学センターのホームページも参考にして下さい。
http://www.nih.go.jp/niid/ja/rubella-preschedule.html

9. 母子健康手帳について

必ず母子健康手帳を持参して予防接種記録のページに記載してもらいましょう。母子健康手帳がなくても予防接種は受けられますが、いつも同じ医療機関で予防接種を受けるとは限りません。ワクチンの接種回数や間隔の確認、または将来の予防接種証明書の発行の際に必要になることがあります。海外で出生した場合や紛失した場合などは、お住まいの自治体で新しい母子健康手帳を再発行してもらえます。

10. それぞれのワクチンについて

(1) BCGワクチン

BCGは結核菌に対するワクチンです。以前はツベルクリン検査を行って反応が陰性の赤ちゃんにBCG接種を行なっていましたが、平成17年4月からはツベルクリン検査を行わずに接種するようになりました。出生直後からの接種が可能ですが、細胞性免疫不全症というまれな病気の赤ちゃんが知らずにBCGを受けると重症になりますので、標準では生後5月に達した時から生後8月に達するまでの期間となっています。自治体によって、集団接種か指定医療機関での個別接種かが決まっています。BCGは粟粒結核や結核性髄膜炎といった重症の結核から乳幼児を守るために行なわれていますので、1歳になるまでに接種を済ませましょう。病気などの医学的理由で接種が受けられなかったお子さんは病気の種類によっては治ってから2年間は定期接種として受けられますので、前もって各自治体の担当課へ御相談下さい。海外から帰国した方や、医学的理由以外で期間内に無料での接種が受けられなかった場合には任意接種となります。上述のようにBCGは乳幼児の重症結核の予防のために行なわれるワクチンですので就学以降の接種は通常は不要です。1歳から5、6歳の間に初めてBCG接種を行う場合には、前もってツベルクリン検査を行って陰性であることを確認してからBCG接種を行うという方法もあります。

(2) 4種混合ワクチン、ジフテリア破傷風混合(DT)トキソイド

平成24年11月から、従来のジフテリア、破傷風、百日咳のDPTワクチンに、不活化ポリオワクチンが一緒になった4種混合ワクチン(DPT-IPV)が使用できるようになりました。

①1期:4種混合ワクチンを生後3か月から20日以上(標準的には20~56日)の間隔で3回
②1期追加:1期終了後6月以上(標準的には12月から18月)あけて1回(生後90月に至るまで)
③2期:DTトキソイドを11歳に達した時から13歳に達するまで(標準では11歳に達した時から12歳に達するまで)

(3) 麻しんワクチン、風しんワクチン、麻しん風しん混合(MR)ワクチン

法定接種としては次のように行います。

①1期:生後12ヵ月~2歳未満
②2期:小学校入学前の1年間(4月1日から3月31日まで)

自治体によっては法定外接種として上記以外でも接種可能な場合があります。
(例)1期は2歳から小学校入学1年前(2期接種開始)の直前まで
   2期は小学校入学後7歳6ヵ月未満まで

3期、4期の接種は平成25年3月末で終了になりました。1歳前に自費で接種を受けた方は効果が不十分なので、1歳になったら1期の接種から受け直して下さい。妊娠中に風しん抗体価が低いと言われたお母様も、出産後に風しんまたはMRワクチンが任意接種として受けられますが有料となります。

(4) 日本脳炎ワクチン

標準的な接種期間は下記の通りです。

①1期初回:3歳になったら6日以上(標準的には6~28日)の間隔で2回
②1期追加:1期初回終了後6か月以上(標準的にはおおむね1年)後に1回(7歳6ヵ月未満までに)
③2期:9歳から13歳未満までの間に1回

ただし、平成7年4月2日から平成19年4月1日までの間に生まれたお子さんは、20歳までは日本脳炎ワクチンが無料で受けられます。
平成19年4月2日から平成21年10月1日までの間に生まれたお子さんは、1期の接種年齢に加えて、2期の接種年齢でも、1期の不足分を定期接種として受けられます。

標準的な接種期間からはずれますが、定期予防接種は生後6か月から可能で日本小児科学会では日本脳炎流行地域に渡航・滞在する小児、最近日本脳炎患者が発生した地域・ブタの日本脳炎抗体保有率が高い地域に居住する小児に対しては、生後6か月からの接種を勧めています。

日本小児科学会
日本脳炎罹患リスクの高い者に対する生後6か月からの日本脳炎ワクチンの推奨について

(5) インフルエンザ菌b型(=ヒブ)ワクチン

インフルエンザ菌b型(=ヒブ)は、乳幼児の肺炎や髄膜炎などを起こす菌で、この病気を予防するワクチンがヒブワクチンです。

(i) 生後2ヵ月から生後7ヵ月未満で開始した場合
①初回接種:生後12月に至るまでの間に、27日(医師が必要と認める時は20日)以上(標準的には27~56日)あけて3回
②追加接種:初回接種終了後7月以上(標準的には7月以上13月未満)あけて

(ii) 生後7ヵ月から生後12ヵ月未満で開始した場合
①初回接種: 生後12月に至るまでの間に、27日(医師が必要と認める場合は20日)以上(標準的には27~56日)あけて2回
②追加接種:初回接種終了後7月以上(標準的には7月以上13月未満)あけて

(iii) 12月~60月で開始した場合
1回接種

開始年齢が遅くなると必要な接種回数が減ります。しかし、この菌が起こす病気は年齢の小さなお子さんほど重症になりやすいので、できるだけ早くに接種を始めましょう。

(6) 小児用肺炎球菌ワクチン(肺炎球菌13価結合型ワクチン)

肺炎球菌は乳幼児の肺炎や髄膜炎、中耳炎を起こしたり、高齢者の肺炎の原因菌となりますが、いくつかの型があります。小児用肺炎球菌ワクチン(商品名プレベナー13)は、13の型(=13価)の肺炎球菌に有効で、ワクチンの付きにくい乳幼児にも効果のあるワクチンです。

(i) 生後2ヵ月から生後7ヵ月未満で開始した場合
①初回接種: 生後24月に至るまでの間(標準的には1歳未満)に27日以上あけて3回
②追加接種:初回接種終了後60日以上あけて生後12月に至った日以降において1回

(ii) 生後7ヵ月から生後12ヵ月未満で開始した場合
①初回接種: 生後24月に至るまでの間(標準的には1歳未満)に27日以上あけて2回
②追加接種: 初回接種終了後60日以上あけて生後12月に至った日以降において1回

(iii) 12~24月で開始した場合
60日以上あけて2回接種

(iv) 24~60月で開始した場合
1回接種

この病気も年齢の小さなお子さんが重症になりやすいので、できるだけ早くに始めましょう。

(7) 成人用肺炎球菌ワクチン(肺炎球菌23価莢膜ポリサッカライドワクチン)

23種類の肺炎球菌に効く(=23価)ワクチンが成人用肺炎球菌ワクチン(商品名ニューモバックスNP)ですが、免疫力の弱い2歳未満の乳幼児には効果がありません。65歳以上の方、または脾臓摘出後、鎌状赤血球症、慢性心疾患、慢性肺疾患、慢性腎不全などの病気のある2歳以上の方が接種対象で、5年ごとの再接種が可能です。当該年度に、65,70,75,80,85,90,95,100歳になる人は定期接種(B類疾病)として1回接種可能です。

(8) ヒトパピローマウイルスワクチン

子宮頸がんはヒトパピローマウイルスの16型および18型の感染が主な原因であることが知られていますが、この16型と18型のヒトパピローマウイルスは外陰上皮内腫瘍という外陰ガンの先行病変や、膣上皮内腫瘍という膣ガンの先行病変を引き起こすこともあります。また6型と11型のヒトパピローマウイルスは尖圭コンジローマという外陰部のイボ(良性腫瘍)の原因となります。子宮頸がん予防ヒトパピローマウイルスワクチンには、16型と18型に効くサーバリックス(商品名)と、16、18、6、11の4つの型に効くガーダシル(商品名)の2種類があります。
本ワクチン接種後に痛みなどの神経症状を訴える例があり、接種との因果関係が不明なため、現在は積極的勧奨が差し控えられています。

(9) 水痘(=みずぼうそう)ワクチン

平成26年10月から定期接種となり、生後12か月以上36か月未満(標準では生後12か月から15か月)で3月以上(標準では6月から12月)あけて2回接種します。

(10) ムンプス(=おたふくかぜ)ワクチン

これも1歳になったら受けられます。おたふくかぜにかかると髄膜炎や難聴を合併したり、思春期以降では不妊の原因になることがあります。
最近では2回の接種が勧められており、日本小児科学会では、1回目を生後12~15ヵ月、2回目を5歳以上7歳未満で接種することを推奨しています。

(11) ロタウイルスワクチン

ロタウイルスはノロウイルスと同じ様に胃腸炎の原因となり、下痢、嘔吐、腹痛、白色便(白色でないこともある)といった症状がみられます。また、まれに脳症をおこすことがあります。ロタウイルスは、外殻蛋白VP7の抗原の違いからG1~G14の14種類に分けられ、また同じく外殻蛋白のVP4の抗原の違いから20種以上のP型があります。世界で流行するのはG1P(8)型が65%と最多で, G2P(4), G3P(8), G4P(8),G9P(8)を含めた5つの型で90%以上を占めます。

ロタウイルスワクチンには1価のロタリックス(商品名)と5価のロタテック(商品名)の2種類があります。両方とも生ワクチンで4週間の間隔で内服します(経口接種)。一方のワクチンだけを内服し、両者の混合、または交互に内服することは行ないません。

初回接種は腸重積症の好発月齢を避けて、生後14週6日までに接種することが推奨されています。

現在は任意接種で、接種にかかる費用は自己負担です。ロタリックス2回分とロタテック3回分は、ほぼ同じ費用になります。

ロタウイルスワクチンの内服後(特に初回接種の1週間以内)に、腸重積症の発現率が高いと言われており、頻回の嘔吐やイチゴジャム様の血便があれば、直ちに医療機関を受診しましょう。また、腸重積症の症状としては、啼泣と不機嫌を繰り返す、腹部膨満、ぐったりする、顔色不良、嘔吐を繰り返すといった症状もあるので、このような症状が見られた場合は速やかに医療機関を受診しましょう

  ロタリックス(1価ワクチン) ロタテック(5価ワクチン)
  G1P(8) G1P(8),G2P(4),G3P(8),
G4P(8),G9P(8)
投与回数 2回 3回
開始時期 生後6週から 生後6週から
終了時期 生後24週まで 生後32週まで
1回量 1.5ml 2.0ml

腸重積症の発症を高める可能性のある未治療の先天性消化管疾患(メッケル憩室など)を有する場合、腸重積症の既往がある場合、重症複合型免疫不全(SCID)の患者さんは接種を受けることができません(接種禁忌)。

(12) インフルエンザワクチン

インフルエンザウイルスにはA型とB型があり、A型にはH1N1(2009年のパンデミックの時に流行した亜型)、H3N2(香港型)などの亜型があります。2009年に流行した新型インフルエンザは現在では季節型インフルエンザA型の1つとみなされています。A型のH1N1,H3N2などの亜型やB型の中でも、毎年流行するウイルス(=株)が少しずつ変わっています。インフルエンザワクチンは、A型H1N1,A型H3N2、B型2種類(山形系統、ビクトリア系統)の計4種類からそのシーズンに流行しそうな株をそれぞれ1つずつ選んで4つの種類を含んだワクチンが作られています。ワクチンを接種しても感染してしまうこともあり、感染予防のワクチンではありません。効果は概ね接種後5か月程度持続すると言われています。それでも重症なインフルエンザや脳症、心筋炎などの重い合併症を起こさないためにも、インフルエンザワクチンは毎年受けることをお勧めします。

2011-12年シーズンから小児のインフルエンザワクチンの接種量が増えました。インフルエンザワクチンは生後6ヵ月から接種できますが、6ヵ月以上3歳未満が1回0.25mL、3歳以上が成人と同じく1回0.5mLとなっています。これにより特に乳児ではワクチンの効果が以前よりは期待できます。13歳未満は1回の接種だけではワクチンの効果が弱いため従来通り2~4週間(4週間が最適)の間隔で2回接種することが勧められています。

通常のインフルエンザワクチンは任意接種で、通常は全額自己負担となりますが、65歳以上の高齢者と60歳以上で心臓、腎臓、呼吸器の病気やヒト免疫不全ウイルスによる免疫不全のある方は定期接種(B類疾病)として一部の自己負担で接種が受けられます。この高齢者インフルエンザワクチンの接種は10月から1月までの期間に行われます。

(13) A型肝炎

A型肝炎ウイルスに対するワクチンです。添付文書上対象年齢の制限はありませんが、WHOは1歳以上の接種を推奨しています。初回接種は0.5mLを2~4週間隔で2回、初回接種後24週を経過した後に0.5mLを追加接種します。

(14) B型肝炎

B型肝炎ウイルスに対するワクチンです。母親がB型肝炎ウイルスに感染している場合には出生した赤ちゃんへの感染予防のために生後12時間以内、1ヵ月時、6ヵ月時の3回投与が保険診療で行なわれます。それ以外の場合は平成28年10月より、平成28年4月1日以降に出生したお子さんが生後1歳に至るまでの間(標準では生後2月に至った時から生後9月に至るまでの期間)に3回の接種が定期接種となりました。1回目と2回目の間は27日以上、3回目は1回目から139日以上あけます。

12. 海外渡航をご予定の方へ

(1) 海外渡航時に必要なワクチン

海外へ出かける場合には、日本とは違う予防接種が必要になります。海外渡航時の予防接種は、黄熱病のように入国時に予防接種証明書が要求されるものと、日本では既にコントロールされているが海外では流行があるため本人又は家族の健康を守るため推奨されているものがあります。

(2) 海外渡航時の予防接種の主なもの

検疫で要求されるもの
黄熱

渡航者本人または家族に必要なもの
破傷風、A型肝炎、B型肝炎、狂犬病、日本脳炎、ポリオ、BCG、ジフテリア、麻しん、風しん、髄膜炎菌性髄膜炎、腸チフス*、コレラ*など
(*は国内で承認されていません。)

(3) 海外渡航時の予防接種の原則

① 時間的余裕を持って接種の計画を立てましょう。
②WHOのEPIワクチン(麻しん・ポリオ・DPT・BCG)を最優先とします。アジア方面では日本脳炎も優先的に行いましょう。
③ 現地で必要とされるワクチンは必要です。
④長期滞在であれば、渡航先では現地の接種スタイルに合わせましょう。
⑤ 渡航寸前にはワクチン接種を行わないようにしましょう。
 接種終了の目安:生ワクチン 2-3週間以上前
 不活化ワクチン:4日以上前
⑥一時帰国の可能性があるならそのときに追加接種を行うことがあります。

(4) ワクチンについて

①黄熱ワクチン
黄熱は蚊(主にネッタイシマカ)が媒介するウイルス性の感染症で、熱帯アフリカと中南米で流行がみられます。これらの国では国際予防接種証明書が要求されることがあります。検疫所で確認してください。黄熱ワクチンの接種する機関は検疫所などに限られています。厚生労働省検疫所(FORTH)ホームページをご覧ください。
ワクチンは1回接種で一生涯有効です。
なおこのワクチンは卵アレルギー、ゼラチンアレルギーがある場合には注意が必要です。

②破傷風ワクチン
破傷風は世界的に分布しています。わが国では1968年から乳児期に三種混合ワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風)が行われています。これを受けていない人は基礎免疫3-8週間隔で3回接種し、更に6-18ヵ月後に追加接種が必要です。
以前にDPTワクチンを接種している人でも、10年以上経過している人は更に1回の追加接種が必要です。

③A型肝炎ワクチン
A型肝炎は食べ物などから経口感染しますが、発展途上国に滞在する場合にワクチン接種が必要です。特に60歳以下の方は、抗体価保有率が低いので接種をお勧めします。1歳以上の方が受けられます。
2-4週間隔で2回接種し、更に6ヶ月以上滞在する場合には6ヶ月目にもう一度接種します。

④B型肝炎ワクチン
B型肝炎は輸血、注射その他の医療行為、性行為、HBs抗原陽性の母親からの母子感染などによっておこります。発展途上国では注射器その他について配慮がなされていないこともあるので注意が必要です。
4週間隔で2回接種し、更に6ヵ月後に1回接種します。

⑤狂犬病ワクチン
日本では発生がありませんが、アジア、アフリカ、中南米などで流行しています。狂犬病は犬だけでなくキツネ、アライグマ、スカンク、コウモリなどに咬まれても感染する危険があります。発症した場合はほぼ100%死亡します。
予防対策として、4週間隔で2回接種し、更に6-12ヵ月後に1回接種します。その後長期にわたり滞在する場合には1-2年に1回追加が必要になります。
予防対策として3回のワクチン接種した方も発病防止のためには、6か月以内に咬まれた場合には、咬まれた日を0日として、0、3日の2回の接種が必要です。6か月以上経過して咬まれた場合には、0、3、7、14、30、90日の6回の接種が必要で、さらに受傷後の発病防止のためには、0日に抗狂犬病免疫グロブリンの注射も必要になります。

⑥日本脳炎ワクチン
日本脳炎はコガタアカイエカによって媒介されるウイルス性疾患です。日本では年間10例以下の発症ですが、東南アジアや東アジアではいまだに流行しています。東南アジアへ渡航する方で、ワクチン未接種の場合はぜひとも受けることをお勧めします。
わが国では、生後6か月から接種可能で、標準接種は、3歳に1-4週間隔で2回接種し、4歳に追加接種します(これで基礎免疫終了)。その後9歳以上13歳未満に更に1回、計4回の接種を行っています。

⑦ポリオワクチン
ポリオはポリオウイルスによって麻痺などの症状を起こします。わが国では1964年から生ワクチン接種(2回投与)が始まり、発症はみられなくなりましたが、南西アジアやアフリカなどでは依然流行がみられております。わが国では平成24年9月から不活化ワクチンの4回接種が始まりました。
特に昭和50年―52年生まれの人はワクチン効果が低かったため、生ワクチンを2回受けていても海外へ渡航される場合には、不活化ポリオワクチンの接種をお勧めします。またポリオの流行地へ渡航される場合には、今まで生ワクチンを2回接種していても不活化ワクチンの追加接種をお勧めします。

⑧BCGワクチン
わが国では平成14年から小学1年と中学1年のツベルクリン反応とBCG接種が廃止され、平成16年から6ヶ月未満のものに直接BCG接種を行うようになり、平成25年から1歳未満のものにBCGを行っています。外国ではBCG接種は国によってまちまちです。

⑨ジフテリア
東ヨーロッパ、ロシアに行くときは奨められています。わが国では1968年から三種混合ワクチンとして行われています。12歳でジフテリア・破傷風混合ワクチンが接種されていれば、20歳代前半までは免疫がありますが、それ以後は追加接種が必要になります。

⑩麻しんワクチン、風しんワクチン
わが国では平成18年から麻しん風しん混合ワクチンの2回接種が始まりました(満1歳と小学校入学前)。米国や欧州などではMMR(麻しん・おたふく・風しん)の2回接種が行われています。麻しんワクチン、風しんワクチンの2回接種歴のない方あるいは不明な場合は、抗体価を測定し、必要な時はワクチン接種を受けることをお勧めします。

⑪髄膜炎菌ワクチン
アフリカの西海岸、中央部エチオピアにかけてのサバンナ地域で大きな流行があり「髄膜炎ベルト」と呼ばれています。5歳以下の小児に多いが成人の罹患も少なくありません。わが国では平成27年より任意接種として接種可能となりました。2歳以上に接種可能です。

⑫腸チフスワクチン
腸チフスとパラチフスは共にサルモネラ属の細菌によって起こる感染症です。症状は下痢と次第に高くなる段階上の発熱、熱が高い割りに脈拍が遅い、脾腫、発疹などが特徴です。治療が遅れると腸出血や腸穿孔などの合併症を起こし、死亡することもあります。流行地(インド、アジア、アフリカ、中南米の途上国)に長期滞在する人に接種が勧められます。腸チフスワクチンには経口弱毒生ワクチンとVi莢膜多糖体ワクチンがあります。弱毒生ワクチンは腸溶カプセル1個ずつを1日おきに4回食前一時間に内服し、5年毎に追加接種します。Vi多糖体ワクチンは1回接種し、2年ごとに追加接種します。接種医療機関は限られています。厚生労働省検疫所(FORTH)ホームページをご覧ください。なお本ワクチンは、国内では未承認で、個人輸入されています。

⑬コレラワクチン
コレラはコレラ毒素産生性のコレラ菌による感染症で、激しい水様下痢を特徴とし、典型例では米のとぎ汁様の便を大量に排出し、急激な脱水により末梢循環不全に陥り、治療が遅れると死亡します。東南アジア、インド、アフリカ、南米等に常在しています。現在ワクチンは2種類あり、一つは全菌体死菌・リコンビナントワクチン(WC/rBS)経口ワクチンで10-14日間隔で2回接種します。もう一つは弱毒生ワクチン(CVD103-HgR)経口ワクチンで1回接種します。接種医療機関は限られています。厚生労働省検疫所(FORTH)ホームページをご覧ください。なお本ワクチンは、国内では未承認で、個人輸入されています。

予防接種に関するお問い合わせ東京都医師会 疾病対策課
電話:03-3294-8821(代)
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