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拝見!医師の一日

虐待防止のための子育て支援

小石川医師会 副会長
吉村小児科 院長
内海 裕美先生

栄養状態の改善、小児医療の進歩などにより、子どもたちの病気は大きく変わりました。増加する児童虐待は、現代の子どもの健康にかかわる大きな社会問題です。20年ほど前から、虐待防止のための子育て支援に熱心に取り組んできた吉村小児科の内海裕美先生にお話をうかがいました。

日常の不安を解消するための子育て支援セミナー

虐待防止のための子育て支援として始めたのが、現在、副会長を務める小石川医師会の「子育て支援セミナー」です。平成8年から毎月開催しており、2歳くらいまでの約20組の親子が参加します。「乳児期の子育ての悩みは常に変わります。日常の子育て不安を解消するには、このペースで続けることが大切」と内海先生は考えています。

ちょっと聞いてみることができる、「子どもの心相談医」

内海先生が担当する日本小児科医会の「子どもの心」対策部は、うつや発達障害なども含め、広く子どもの心の相談に応じる小児科「子どもの心相談医」を養成しています。

かんしゃくが強い、言葉の発達の遅れが気になる、赤ちゃん返りで困っている、「学校へ行きたくない」「死にたい」と子どもが言っているときなどに、どこに相談に行けばよいのか困ってしまう方が多いのではないでしょうか。「児童精神科の数は少なく、精神科のハードルも高い。かかりつけの小児科に『子どもの心相談医』というプレートが表示してあれば、病気以外のことも聞きやすいと思うんです」と内海先生。現在は研修を受けた「子どもの心相談医」が全国で1000人強いるそうです。

子どもを大切に思う気持ちが伝わる絵本の読み聞かせ

絵本の読み聞かせは、子どもに向き合うとき、短い時間で、誰にでもでき、何回でも使えるよい方法です。

吉村小児科の待合室には絵本がたくさんあります。帰りたくないと言って泣いてしまう子どももいるそうです。

「いま、親がとても忙しいので、どんなに一生懸命子育てをしても、子どもが"大切にされている"と感じづらい環境です。それが日本の子どもの自己肯定感が低い、という調査結果につながっていると思います。大好きな人が自分のために時間を割いて絵本を読んでくれた記憶の積み重ねは、とても重要です。よかれと思ってスマホの絵本や知育アプリを見せる方もいますが、お母さんお父さんによる絵本の読み聞かせとは全く違います」と内海先生は教えてくれました。

自分にマルをしましょう

クリニックでの診療では、親とだけではなく子どもと対話をするようにしているそうです。子どもには「自分はできるんだ」という気持ちを根づかせ、その姿を見た親にも「うちの子はすごいな」と思ってもらう狙いがあります。

「いまは子どもをほめるのが上手じゃない親がとても多いので、いいところを見つけてほめるようにしています。子どもをほめるし、親もほめます。『仕事はちゃんとできるのに、なんで子育てはうまくいかないんだろう』と悩む親には『一生懸命やろうとしているから悩んでいるんだね』と認知を変える。『しかも、ちゃんとできてるよ』と。100%はできていなくてもいいんです。そもそも子育てに100%はありませんからね。『ここにつれてきているだけでもマル。だから寝るときに自分にマルしなさい』と言うんです。自分にバツをつけているお母さんがとても多いです。それで子どもにもバツをつけてしまう」と内海先生。ほめることは、虐待防止のための親の心への子育て支援であり、子どもの生きる力の源であり、「自己肯定感」を育てることにもつながります。

地域で連携して子どもを守る

子ども家庭支援センターは虐待の通告先であるだけではありません。経済的に困っている、養育能力が低い家庭なども、子ども家庭支援センターにつなげます。センターは行政による情報収集が可能であり、多種多様なサービスがあります。

「こういった連携が虐待防止につながります。予防接種や乳児健診など、子どもが小さいうちは医療機関に来る機会が多い。つまり、私たちの目の前を被虐待児が必ず通っているのです。児童虐待の予防から早期発見、対応のために『病気を治して終わり』ではなく、子ども・家族の成長に、他機関と連携しながら時間軸で寄り添い、子どもたちに『最善の利益』をもたらす役割が小児科医にはあるのです」。

子ども家庭支援センターだけではなく、福祉、教育センター、園・学校、他の医療機関といった多機関と連携することではじめて地域で子どもを守ることができます。「この子・この親子のために『うちはこれができる』とそれぞれのノウハウを結集し、みんなで総合的に育て守っていくことが必要だと思います」と内海先生は連携の重要性を教えてくれました。

上羽 瑠美先生

内海 裕美先生

文京区生まれ。1980年東京女子医科大学医学部卒業。1997年より吉村小児科院長。日本小児科学会認定医、日本小児科医会「子どもの心」研修委員会委員、厚生労働省児童虐待防止対策協議会メンバー、小石川医師会副会長、文京区要保護児童対策協議会メンバー、NPOチャイルドライン支援センターオブザーバー。

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